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2023/09/14

株式譲渡による事業承継を行うメリットは?手順や成功させるためのポイントを解説

株式譲渡による事業承継を行うメリットは?手順や成功させるためのポイントを解説

中小企業の事業承継において、株式譲渡はよく用いられる方法です。承継方法として、生前贈与、相続、売買の3つがあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

また、株式譲渡による事業承継では、税制や法務の面で注意しなくてはいけないことが多くあり、成功させるためには、事業承継についての知識をしっかりと身に付ける必要があります。

本記事では、株式譲渡による事業承継の3つの方法と各メリット・デメリットを解説し、手順や成功させるためのポイントも解説します。株式譲渡による事業承継を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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事業承継における株式譲渡は後継者に株式を譲り渡すこと

株式譲渡とは、現経営者が保有する株式を後継者へ譲り渡し、経営権を承継することをさします。株式譲渡のスキームは以下の3つになります。

・生前贈与を行う

・相続を行う

・売買を行う

各スキームのメリット・デメリットを解説していきます。

生前贈与を行う

生前贈与は親族内承継で多く利用され、贈与契約で後継者に自社の株式を譲渡する方法です。譲渡側は財産を無償で譲り渡す意思表示を行い、譲受側が応じることで成立し、贈与契約を証明する「贈与契約書」を作成するのが一般的です。

生前贈与の主なメリットは以下のようになります。

・暦年課税を利用して計画的に贈与すれば、贈与税を抑えることができる

・相続時精算課税制度を利用すれば、早期の株式譲渡が可能

株式譲渡を生前に贈与する場合は、贈与税が控除される「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2つの制度のどちらかを活用できます。これらの制度を活用して、控除額の範囲内で計画的に贈与を行うことで、贈与税を抑えることができます。ただし、通年にわたって同額を贈与し続けると定期贈与とみなされる可能性があるので注意が必要です。

暦年課税とは、課税対象となる1年間で贈与された贈与額の合計額から、年間110万円の基礎控除が受けられる制度です。一方の相続時精算課税制度は60歳以上の親、祖父母から18歳以上の子供に対して、2,500万円の特別控除を受けられる制度です。

相続時精算課税制度が適用外の場合は、自動的に暦年課税が適用されます。

また、生前贈与の主なデメリットは以下のようになります。

・株式の時価によっては贈与税が多額になる可能性がある

・一定の法定相続人から遺留分を主張されると、譲渡された株式の権利が侵害される恐れがある

相続時精算課税制度を使用し、控除額を株式の価額が上回った場合、累進課税で計算される贈与税は、多額の納税義務が発生する可能性があります。

さらに、贈与が特別受益とみなされ、遺留分減殺請求をされた場合は、譲渡された株式の一部の権利が侵害されるリスクを含んでいるので注意が必要です。

相続を行う

生前贈与と同じく、親族内承継で多く行われ、現経営者が亡くなってから、遺言や遺産分割協議等で株式を譲渡する方法です。

生前贈与を行わなかった場合の主なメリットは以下のようになります。

・現経営者の死亡後、自動的に株式譲渡が行なわれる

・相続税の基礎控除額は大きく、課税額を抑えることができる可能性が高い

・遺言書を遺しておけば、後継者の指定が可能

相続は現経営者が亡くなると自動的に株式譲渡が行なわれます。また、相続税の基礎控除額は最低3,000万円と大きいので、相続時の納税額を抑えられる可能性があります。なお、相続税が基礎控除額以下の場合は相続税が発生しません。ただし、不動産などの株式以外の全ての資産を含めることで基礎控除を上回ってしまうケースもあるので注意をしましょう。

さらに、相続時に遺言書があれば、会社の経営権を自分が認めた後継者に譲ることもできます。

生前贈与を行わなかった場合の主なデメリットは以下のようになります。

・相続する株式の価額が基礎控除額を上回ると、相続税が多額になる可能性がある

・相続人が複数いる場合は、相続人同士の争いが生じる可能性がある

・遺言があっても、他の相続人から遺留分を主張される可能性がある

生前贈与と同じく、相続する株式の価額が、基礎控除額を上回る場合は相続税が多額になる可能性があります。

また、相続人が複数いる場合は、遺言書等があっても、他の相続人から反抗されてしまう可能性があるだけではなく、遺留分も主張される可能性があります。

相続争いになると、経営権の引き継ぎが円滑にいかないので、相続になった場合でもトラブルにならないように対策しておきましょう。

売買を行う

保有する株式を、金銭等と引き換えに譲渡する方法です。M&Aのように第三者へ行う事業承継の大半が売買による株式譲渡になります。

売買を行う主なメリットは以下のようになります。

・現経営者は多額の売却益を得られる可能性がある

・遺留分を主張される可能性がなく、後継者の地位が安定する

売買での株式譲渡により、現経営者は所得税や住民税を差し引いても、多額の売却益を得られる可能性があります。

また、贈与や相続とは異なり、株式を金銭で買い取っているので、他の相続人から遺留分を主張されることがなく、事業承継が円滑に行われる可能性が高いです。

売買を行う主なデメリットは以下のようになります。

・株式の譲受側に資金力が必要

・譲渡所得税が発生する

金銭による株式の売買になるので、譲受側は十分な資金を準備しなくてはいけません。また、譲渡側は株式を売却した金額を全て受け取れるわけではなく、所得税、住民税等の税金を払う必要があります。

非上場株式には株式に譲渡制限が設けられている場合も

中小企業のような非上場企業の大半は、会社の乗っ取りや意図しない第三者へ株式が渡らないように、譲渡制限を設けている場合が多いのです。譲渡制限のある株式を売買する時は、会社の承認が必要になるので、注意が必要です。

個人間での株式譲渡は可能ですが、会社の承認を得ていない譲受人は、決議権の行使や配当の受け取りができません。

また、譲受側が株主としての権利を行使するには、名義書換が必要になり、株式譲渡人と譲受人が共同で会社に請求する必要があることも把握しておきましょう。

自社株の必要性

株式会社における最高意思決定機関は「株主総会」であり、決議には「普通決議」「特別決議」の2種類があります。

株主としての権限は自社株の保有割合で変わり、決議の重要度によって、単独で決議を成立させられる株式の割合が変わります。

そのため、中小企業の経営者は、「特別決議(重要度の高い事項の決定を行う)」を単独で成立させることが可能な自社株を単独または、親族と共同で保有しているのが一般的です。

事業承継を行う際は、後継者が承継後に事業を円滑に行うためにも、自社株の保有割合は重要になり、事業承継の種類によって株式を譲渡する相手が異なるので、確認しおきましょう。

事業承継の種類

株式譲渡での事業承継は、引き継ぐ相手によって以下の3つの種類に分かれます。

 事業承継の種類 承継相手
 親族内承継 子ども、兄弟等の親族
 親族外承継 親族以外の従業員や役員
 M&A活用 社内以外の第三者

親族内承継は、子供や兄弟等の親族に経営権を譲渡する方法ですが、一般的に承継相手は子供となることが多いです。親族外承継は、親族以外の従業員や役員に経営権を譲渡することです。

また、M&Aを活用した事業承継では、社内以外からの第三者が後継者になります。

「株主総会」における決議は2種類

株主総会における決議は以下の2種類になります。

・普通決議

・特別決議

各決議を解説していきます。

普通決議

特別決議より重要度の低い事項の決定をします。普通決議で決める主な内容は以下のようになります。

・役員の選任

・役員の解任

・会計参与または会計監査人の解任

・資本金額の増加

・剰余金の配当等

普通決議では、議決権総数の過半数を持っている株主が株主総会に出席し、決議には出席株主の議決権で過半数が必要になります。株式全体の50%以上を保有していると、決議を単独で成立させることが可能です。

特別決議

普通決議より重要度の高い事項の決定をします。特別決議で決める主な内容は以下になります。

・定款の変更

・譲渡制限株式の買い取り

・特定株主からの自社株式の取得

・監査役の解任

・資本金額の減少

・相続人への売渡請求

・事業の全部または一部の譲渡、譲受、賃貸

・解散等

議決権総数の過半数を持つ株主が出席するのは普通決議と同じですが、決議には出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。

また、決議を単独で成立させるには、株式全体の67%以上を保有している必要があるので、覚えておきましょう。

事業承継における株式譲渡の手順

事業承継の株式譲渡は、会社法に従って進めることが必要です。

事業承継における株式譲渡での必要事項を確認しておきましょう。

・手続き方法

・手続きの流れ

・必要書類

・適正価格の確認

・経営承継円滑化法

・譲渡制限の確認

ここでは、各項目を解説していきます。

手続き方法

株式譲渡は株式を譲渡する側が会社に譲渡承認請求を行い、会社の承認機関で承認を受けるのが一般的な流れになります。

手続きとして、株式譲渡を希望する現経営者の譲渡承認請求には、会社に対して譲渡する株式の種類と株数の他、譲受人の氏名や名称が記載された請求書を作成して提出します。

株式譲渡承認請求が行われた後は、株式譲渡承認の決議を行い、取締役会(非設置の場合は臨時株主総会)を開催します。その後、必要な書類の契約を締結すれば株式譲渡の完了になります。

なお、中小企業等では、取締役会を設置していないことも多く、株式譲渡承認の決議を行う承認機関が株主総会になることが多いです。

手続きの流れ

事業承継における株式譲渡の基本的な流れは以下のようになります。

1.株式譲渡承認の請求

2.臨時の株主総会の開催・招集を通知

3.株式譲渡承認の特別決議

4.株式譲渡契約書の締結

5.株式名義書換の請求

6.株主名簿記載事項の交付請求

必要書類

先述したように、中小企業等の大半は株式の譲渡制限を設けており、中小企業であれば主に臨時株主総会での決議が必要になります。

譲渡制限株式を譲渡する場合は、手続きに以下のような書類が必要になるので、覚えておきましょう。

・株主総会招集に必要な取締役の決定書(取締役会設置の場合)

・株式譲渡承認の請求書

・臨時株主総会の招集する通知書

・臨時株主総会の議事録

・株主名簿

・株主名簿記載事項証明書の交付請求書

・株主名簿記載事項証明書

・株式譲渡承認の通知書

・株式譲渡契約書

なお、現在は多くの中小企業で、株券を発券していないので、株主名簿への記載が代わりになります。そのため、株主名簿の名義を書き換えなければ、株式を譲渡されても株主として権限を行使できません。

株券を発券していない会社では、株主名簿に記載されることが株主の条件になり、株式譲渡での事業承継の完了後に、株主名簿の名義の書き換え手続きが必要になることに注意してください。

非上場企業の場合は適正価格の確認に注意

株式譲渡で事業承継を行う際に、非上場企業は注意が必要です。

株式を公開している上場企業に比べて、市場で株式の取引がされていない非上場企業は、採用する算定方式によって株価の評価が上下します。そのため、企業評価額の決定が難しくなります。

株式譲渡は、譲渡側と譲受側の合意する価格であれば取引が成立するため、正しい知識がないと適正価格より低く会社を売却してしまう可能性があります。

事業承継を納得できる形で成立させるためにも、会社の適正価格の確認は専門家に相談することをおすすめします。

経営承継円滑化法

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を支援するための法律です。主な支援内容は以下のようになります。

・税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定

・金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定

・遺留分に関する民法の特例 

・所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定

経営承継円滑化法では、事業承継で発生する贈与税や相続税の免除の他、事業承継後に必要な資金の融資を受けられます。メリットが多いので、事業承継を行う際は、経営承継円滑化法の内容をきちんと理解しておきましょう。

なお、経営承継円滑化法に関する手続きや認定条件は、中小企業庁のホームページを参照してください。

譲渡制限の確認

中小企業等の、非上場企業の事業承継を株式譲渡で行う場合は、株式の譲渡制限の確認をしましょう。

株式の譲渡制限に関しては、会社の根本規則である定款または謄本に記載してあります。定款を持っていない場合は、自身が株式を保有する会社に、定款の閲覧や謄本の交付を求めることができます。

何かしらの理由で確認できなくても、法人登記簿を取得すれば確認は可能なので、覚えておきましょう。

株式譲渡による事業承継を成功させるポイント

事業承継は簡単にできるものではなく、成功させるポイントを把握しておく必要があります。株式譲渡での事業承継を成功させるポイントは以下のようになります。

・事業承継の方法や流れを把握して早めに準備する

・政府主導の支援策を活用して税金対策を行う

各ポイントを解説していきます。

事業承継の方法や流れを把握して早めに準備する

先述しているように、事業承継には3つの方法(親族内承継、親族外承継、M&Aの活用)があります。ここでは、増加傾向にあるM&Aを活用した、事業承継の一般的な流れを紹介します。

1.準備の必要性の把握

2.経営状況・経営課題等の「見える化」

3.磨き上げ(経営改善)

4.事業承継計画の策定とマッチング

5.事業承継・M&Aの実⾏

一般的に、事業承継を実施するまでには、後継者の決定や引き継ぎ等も含めて多くの工程があり、5年~10年の準備期間が必要とされています。

事業承継を円滑に行うためにも、早期に事業承継に向けた準備を始めましょう。

節税対策として政府主導の支援策を活用する

事業承継を行う際は、公的な支援策を活用すれば、事業承継にかかる税金を抑えることができます。中小企業庁に記載されている税制と内容は以下になります。

 税制 内容
 法人版事業承継税制(特例措置) 非上場の株式等の承継に伴う贈与・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置
 法人版事業承継税制 非上場の株式等の承継に伴う贈与・相続税の負担軽減措置
 個人版事業承継税制 個人事業主の特定事業用資産の承継に伴う贈与・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置
 経営資源集約化税制 設備投資減税、雇用確保を促す税制、準備金の積立の3つの措置を活用できる
 登録免許税・不動産取得税の特例 M&A時の不動産の権利移転にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減する

政府主導の支援策としては、上記の税金対策の他にも、金融支援や補助金等、さまざまな支援を行っているので、中小企業庁のホームページを参照してください。

まとめ

事業承継における株式譲渡には、生前贈与・相続・売買の3つの方法があります。どの方法でも株主総会での決議に重要な役割を担う自社株の保有割合は、承継後の経営に大きく関係してきます。

また、事業承継を成功させるためには、手順の把握や早期の準備、国の支援策を活用するなどが大切です。このように、株式譲渡での事業承継ではやるべきことが多く、専門的知識が必要不可欠なので、専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。

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