M&Aで株式交換を行うと、企業の株価が上がる場合や下がる場合があります。株式交換とは、株式を100%取得して譲渡会社を譲受会社の完全子会社にする手法のことで、譲渡会社と譲受会社の関係や株式交換比率によって株価へ与える影響が変わります。
本記事では、株式交換が株価に影響をする理由や株式交換比率の決め方、企業価値評価(バリュエーション)の方法について解説します。
AIマッチングシステム「KEPL」
経営者様の「想い」まで分析し、買手候補との相性を複数の軸でスコア化
成約後の「成功」を見据えた、最適な買手候補をご提案
KEPLが“本当に合う相手”との出会いをサポートします!
株式交換とは
株式交換とは、親会社となる会社が子会社となる会社の発行済株式を全て取得し、対象会社を完全子会社化する手法です。対価には、親会社となる会社の株式のほか、金銭などを用いることもできます。企業グループ内の再編やM&Aを実施する場合などに用いられます。
この手続きでは、株式交換比率などを定めた契約を両社間で締結し、その比率に基づいて、子会社となる会社の株主に親会社となる会社の株式を交付します。
▷関連記事:「株式交換とは?メリットから株式交換比率、株価の変動と注意点」
株式交換が株価に影響する理由
株式交換が企業の株価に影響する主な理由として次の2点が挙げられます。
| ・完全子会社化に伴う上場廃止 ・株主へのプレミアムの支払い |
株式交換と株価の関係について、以下で詳しく紹介します。
完全子会社化に伴う上場廃止
株式交換によって完全子会社となる企業が上場企業の場合、その企業は上場廃止となります。株式交換によって上場廃止となる銘柄の一覧や上場廃止日などは、日本取引所グループの公式サイトで確認が可能です。
上場廃止となる企業の株主に対して交付する株式数が多く、親会社となる企業の既存株主の持分割合が低下する場合、株式の希薄化が生じ、株価に下落圧力がかかる可能性があります。
一方、交付する株式数が少ない場合は、希薄化の影響を抑えられ、株価に上昇圧力がかかる可能性があります。
親会社となる企業が子会社となる企業の株主に株式を交付する際、交付する株式数や交換比率が株価に影響を与える可能性があります。そのため、株式交換では交換比率を慎重に決めることが重要です。
株主へのプレミアムの支払い
株式交換では、子会社となる企業の株主に交付する対価に、市場株価に対する「プレミアム」が上乗せされるケースがあります。
プレミアムが上乗せされる場合、株式交換の実施が公表された後から売買最終日までの間に、対象会社の株価がプレミアムや交換対価の価値を織り込む形で推移するケースが見られます。
株式交換を行うと企業の株価はどうなる?
実際に株式交換が行われると株価はどうなるのか、株式交換が企業の株価に与える影響はケースによって様々です。以下では、株式交換によって株価が上昇・下落する場合についてそれぞれ紹介します。
▷株価が上がるケース
株式交換が投資家に好感を持って受け止められ、シナジー効果や業績向上が期待されると株価は上がりやすくなります。株式交換を行う相手企業の業績が良い場合やブランド力がある場合などは株価が上昇しやすいケースです。
また、株式交換比率やプレミアムが市場から好意的に評価され、対象会社の株価が上がることもあります。業界全体の成長性が評価されることもあり、投資家の期待値が高いほど株価は上昇する傾向にあります。
▷株価が下がるケース
株式交換を行った後に業績の悪化が予想されるなど、株式交換に対する投資家の期待値が低い場合、株価は下がりやすくなります。
例えば、赤字企業と株式交換を行って完全子会社化するケースです。赤字企業を傘下に置くと財務状況が悪化するリスクがあるため、投資家が事業経営への悪影響を懸念して株価が下がることがあります。
また、株式交換によって完全親会社・完全子会社の関係になってもシナジー効果が期待できない場合や、株式の希薄化が懸念される場合も、株価が下落しやすくなります。
株式交換比率とは
株式交換比率とは、「譲渡会社を完全子会社化する際、譲渡会社の株式と譲受会社の株式を交換する比率」のことです。「親会社の1株あたりの価値:子会社の1株あたりの価値」を表します。
株式交換によって買い手企業が自社株を交付する場合、株主が保有している譲渡企業の株式と同等の価値の自社株を交付することが原則です。株式交換比率を用いることで、同等の価値の自社株を交付できます。
例えば、子会社の株式1株に対して親会社の株式を3株交付する株式交換比率であれば、子会社の株式を300株保有する株主には、親会社の株式900株が交付されます。
固定比率方式と変動比率方式の違い
株式交換比率には、固定比率方式と変動比率方式の2種類の方式があります。
固定比率方式とは、株式交換契約の締結時点で交換比率を確定させる方式です。契約締結時点で比率が決まるため、その後の株価変動にかかわらず決まった比率が適用されます。
変動比率方式とは、完全子会社の株価は株式交換契約の締結時の株価で固定し、完全親会社の株価は株式交換の実行日の株価を用いて株式交換比率を算定する方式です。
固定比率方式では、株式交換契約締結時点で交換比率が確定するため、買収企業は株式の交付数を事前に把握できる点がメリットです。発行済株式数の希薄化割合を事前に把握でき、資本構成の見通しを立てやすい点が特徴です。
しかし、契約締結後に株価が大きく変動すると、経済的損失や不均衡が生じるリスクがあります。
変動比率方式では、売り手企業の株主が受け取る対価の経済的価値が一定に保たれるため、株価変動による不利益を回避できる点がメリットです。買い手企業は、株価が上昇すれば交付株数が減少して株式の希薄化を抑制できます。
しかし、実行時まで交換比率が確定しないため、将来の資本構成や会計上の影響を見通しにくい点がデメリットです。
株式交換比率の決め方
株式交換比率は、基本的に完全親会社と完全子会社の交渉により決定します。具体的には、双方の会社の規模や株式価値、発行済株式数などを総合的に判断した上での交渉になります。
比率を決める上で最も重要になるのが、完全親会社と完全子会社の一株あたりの株価の算定です。株価を算出せずに比率を決めてしまうと、どちらか一方が損失を被ることになってしまいます。
そのため、まずは専門知識を持った第三者機関により株価を算定した上で、両社の協議により最終的な株価を算定し、その後に比率を決定する交渉を行います。
実際には完全親会社が株式を取得する確率を上げるために、完全子会社の株式にプレミアムを乗せることが一般的です。
なお、、株式交換の手続きに法令違反などの無効事由がある場合、一定の株主や取締役などは、株式交換の効力発生日から6ヶ月以内に株式交換無効の訴えを提起できます。
株式交換比率・株価の算定方法
株式交換比率を決める上で、株価を明確にする必要があります。完全親会社と完全子会社が上場企業であれば株価が公表されていますが、どちらかが非上場企業の場合には、企業価値評価(バリュエーション)という手法を用いて株価を算定しなければなりません。
企業価値評価を理解する上で、まずは「企業価値」と「株式価値」の違いについて理解する必要があります。
企業価値とは「企業の魅力を貨幣価格で表したもの」です。ここでいう「企業の魅力」とは「その企業が将来に渡って生み出すキャッシュフローを現在の価値に換算した金額」を意味します。
一方で、株式価値とは「企業価値から有利子負債を控除し、現預金を加えた金額」です。
企業価値評価には複数のアプローチが存在しますが、各アプローチによってどちらを算出できるかは異なります。株式交換比率を決める上ではどのアプローチも活用できますが、必ず株式価値に直すことは忘れないようにしてください。
以下では、各アプローチおよび手法の概要について説明します。具体的な計算は、各項目の最後に「関連記事」として掲載している記事にて解説していますのでご参照ください。
▷マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、「株式市場やM&A市場における取引価額を基準に株式価値を算定するアプローチ方法」です。具体的な手法としては、「市場株価法」や「類似企業比較法」、「類似取引比較法」が挙げられます。
市場株価法は、上場企業向けに活用される手法です。株式市場にて公表されている株価を基に算出します。1〜3ヶ月間の毎日の終値を平均した値が評価額となります。
類似企業比較法は類似した上場企業の財務指標を、類似取引比較法は類似した会社の実際の取引価額を基準にする手法です。
マーケットアプローチには他社の事例を活用するため客観的な値を算出できるというメリットがあります。一方で、似た会社や取引事例を探すのが困難といったデメリットもあげられます。
▷関連記事:「【企業価値評価】マーケットアプローチとは?よく使われる計算方法やシミュレーション方法」
インカムアプローチ
インカムアプローチは、「今後見込まれる収益やキャッシュフローから、リスクなどを考慮して企業価値を算出するアプローチ方法」です。代表的な手法に「DCF法」があげられます。
DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来的に見込まれるキャッシュフローから、リスクの大きさに合わせて設定した割引率(将来的な価値を現在の価値に直すための利子率)で割引く手法です。そのため、事業計画を作成した上で、キャッシュフローの予測を立てる必要があります。また、将来の会社の収益獲得能力を企業価値に反映させやすく、会社独自の収益性等をもとに価値を測定することから、会社が持つ将来の収益獲得能力や固有の性質を評価結果に反映させられるメリットがあります。
▷関連記事:「【企業価値評価】インカムアプローチとは?DCF法の計算方法」
コストアプローチ
コストアプローチは、「会社の資産および負債を基に株式価値を算定するアプローチ方法」です。帳簿上の数値を基にして計算するため、客観性に優れていることが特徴です。代表的な手法には「簿価純資産法」、「時価純資産法」、「時価純資産+営業権」があります。
簿価純資産法は、帳簿上の純資産額を株式価値とみなす手法です。帳簿上に記載された資産の合計から負債の合計を差し引いて算出します。しかしあくまで帳簿上の値のため、資産・負債の現在における市場価値を反映していません。
時価純資産法は、帳簿上の資産や負債を時価で評価し直し、時価純資産額を算出します。市場価値を反映するものの、将来の収益力は一切評価されていません。
時価純資産+営業権では、修正された時価純資産に営業権を加算して株式価値を算出します。営業権とは、企業が長年培ってきたブランド力や人的資源など、帳簿上で評価できない要因によって期待される超過収益力のことです。時価純資産に営業権を加算することで、将来の収益力を考慮した株式価値を算出できます。
▷関連記事:「【企業価値評価】コストアプローチとは?メリット・計算方法・他の方法との違い」
まとめ
株式交換とは、親会社となる会社が子会社となる会社の発行済株式を全て取得して対象会社を完全子会社化する手法であり、M&Aで活用される手法の1つです。
株式交換によって株価がどうなるのか、影響の仕方はケースによって異なり、株価が上がる場合もあれば下がる場合もあります。
株式交換では株式交換比率を決める必要があり、その際に重要になるのが企業価値の評価です。M&Aでは企業価値の算定をはじめ、専門的な知識が求められるため、M&Aを検討中の方は専門家に相談するようにしてください。
fundbookではM&Aに関するサポートを行っています。
M&Aアドバイザーの専門的な知見やテクノロジー、AIなどを活かし、豊富なネットワークを用いながら最適な相手を見つけて譲渡側・譲受側のマッチングを行っています。全国10万社規模の企業データベースをもとにした独自のマッチングモデルを活かし、M&Aの検討から成約までサポートが可能です。