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2025/05/14

M&A戦略とは?重要性や立案のプロセス・ポイント・注意点をわかりやすく解説

M&A戦略とは?重要性や立案のプロセス・ポイント・注意点をわかりやすく解説

M&Aを成功させるためには、どのような目的でM&Aを行い、どのような手段で実現するかという戦略の立案が重要です。会社の成長戦略の一環として、あるいは後継者問題の解決手段としてM&Aを視野に入れている経営者の方は、まずM&A戦略について理解しておきましょう。

本記事では、M&A戦略の意味やその重要性、立案のプロセスやチェックポイントを解説します。フレームワークを活用した自社分析やM&Aの目的の明確化などを実施し、会社にとって有益なM&Aの実現につなげましょう。

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M&A戦略とは

M&A戦略とは、「M&Aを通じてどのような効果を実現し、そのためにどのようなM&Aを行うかという準備、計画のこと」です。M&Aでは譲渡企業、譲受企業ともに組織や業務の大きな変化を伴います。影響は広範囲に及ぶため、初期段階で基本方針を定めておくことが重要です。

M&A戦略を策定する際には、自社の現状を分析した上でM&Aの目的を明確化し、市場調査の結果なども踏まえて戦略を立案します。適切なM&A戦略を立案することで、より自社の目的と合った企業とのマッチングが可能となり、M&A後の経営統合作業(PMI)もスムーズになる効果が期待できます。

M&A戦略の重要性

M&Aは、会社・事業を譲渡する「譲渡企業」とそれらを譲り受ける「譲受企業」の2つの企業の間で進められます。ここでは、M&A戦略の重要性を譲渡企業と譲受企業の2つの視点から説明します。

譲渡企業におけるM&A戦略の重要性

譲渡企業の場合、M&Aで会社を譲渡する目的は、例えば下記のようなものがあります。

・後継者問題を解決したい
・事業を整理して経営資源を集中したい
・会社を譲渡して創業者利益を得たい

M&Aは、これらの目的を達成するために有効的な手段ですが、必ずしも成功するわけではありません。具体的には、経営資源の集中のために不採算事業を譲渡したいと思っても、買い手が見つからなかったり、不当に低い譲渡価額となってしまったりと問題が発生する場合があるからです。

そのため、M&Aで企業を譲渡する場合には、事前に明確な戦略を立てる必要があります。「自社は本当に譲渡できるのか」「譲渡するとしてどれくらいの金額で譲渡できるのか」など自社分析やマーケティングを通じて検討することで、よりM&Aを円滑に進めることができるでしょう。

▷関連記事:M&Aの売り手企業のメリットや、手続きの流れと課題やリスク軽減方法

譲受企業におけるM&A戦略の重要性

他方、譲受企業がM&Aを検討するケースには、下記のような目的があります。

・企業を買収して事業を拡大したい
・自社と関連する事業を買収してシナジー効果を得たい
・新規事業を買収して経営の多角化を図りたい

譲受企業の場合は、事業を買収した後の経営統合(PMI)を含め、より明確な戦略が必要になるでしょう。

例えば、事業を買収してどれだけのメリットが得られるかは、M&Aの最終的な成功につながる重要なポイントとなります。また、シナジー効果といっても、販売チャネルの拡大による販売シナジーや共同調達による生産シナジーなど様々なシナジー効果があり、どのシナジー効果を狙うか、目的を明確化することが重要です。そのため、事前にM&A戦略をしっかりと立てる必要があります。

▷関連記事:M&Aにおける買い手の狙いは?目的・メリット・成功事例を紹介
▷関連記事:シナジー効果とは?M&Aを成功させるシナジーの種類や事例と評価方法

M&A戦略の立案プロセス

M&A戦略の立案に必要な主なプロセスは、下記のとおりです。

1.フレームワークを活用した自社分析
2.市場調査
3.M&Aの目的の明確化
4.マッチング企業の検討
5.資金不足など想定されるリスクの検討

それぞれの具体的な内容を解説します。

1.フレームワークを活用した自社分析

まずM&A戦略の基礎となるのが、自社の現状分析です。自社の経営資源や財務状況、事業の将来性や不足部分などを把握し、分析を加えます。特に、自社の現状をメタ的な視点から把握し、分析する際にはフレームワークが活用されるケースが多いです。

主なフレームワークには以下のような種類があります。

・SWOT分析(スウォット分析):自社の状況を「Strength=強み」、「Weakness=弱み」、「Opportunity=機会」、「Threat=脅威」に分けて分析する手法。経営戦略の策定のフレームワークとして有名な手法の1つ

・PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント分析):市場成長率と市場占有率を計算し、事業活動の将来性を見極める手法。どの事業活動に重点的に投資すればよいかの判断に役立つ

・アンゾフの成長マトリクス:製品と市場を既存・新規に分類して分析する手法。それぞれの分類に合わせた成長戦略を提案している。

また、国が提供する「ローカルベンチマーク」や「経営デザインシート」などのツールもあります。自社の状況に応じてフレームワークやツールを活用しながら、分析を行ってください。

2.市場調査

M&A戦略の立案では、自社の現状分析とともに、自社を取り巻く市場の調査も大切です。

自社の主力商品のシェアや市場規模、競合企業の存在や内容、買収予定の企業の将来性や収益性など、市場調査の項目は多岐にわたります。特に、新規事業の買収を目的とする場合は、慎重な市場調査が必要です。M&Aの目的や対象に合わせて的確な調査を実施しましょう。

3.M&Aの目的の明確化

M&A戦略において、目的の明確化はとりわけ重要なポイントです。自社分析や市場調査の結果から、どのような目的でM&Aを行い、M&Aの結果何を得たいのかを明確にします。

例えば、後継者が不在で自社を譲渡したい企業の場合は、譲渡額や譲渡後の従業員の待遇などが気になる点でしょう。この場合、譲渡先の候補企業は自社の経営資源を高く評価してくれる企業、あるいは譲渡後の従業員の雇用維持を約束してくれる信用できる企業となります。

また、譲受企業の場合は、得たいものがノウハウや技術なのか、シェアなのか、優秀な人材なのかを明確にしておくとマッチングのターゲットとなる企業も判断しやすくなります。

4.マッチング企業の検討

M&Aの目的が明確になったら、目的に合った譲渡先、譲受先企業を検討します。

一般的には、数十社の大まかな候補(ロングリスト)を絞り、その後、さらに数社の候補(ショートリスト)に絞る工程が行われます。

マッチング先の選定には、M&A仲介会社などの専門業者の活用が便利です。例えばfundbookでは、譲受企業側は独自のM&Aプラットフォーム「fundbook cloud」からマッチング先をインターネット上で探せます。M&Aの経験豊富なアドバイザーのサポートも受けられ、スムーズなM&Aの進行に役立ちます。

5.資金不足など想定されるリスクの検討

M&Aではトラブルへの備えも重要です。譲受企業の場合はM&Aの株式購入でかかる資金が足りなくなってしまうことも考えられるため、事前に資金調達の方法を検討しておきましょう。

また、譲渡に対する従業員の反発や退職、デューディリジェンスでの重大な瑕疵の発見など想定されるリスクに対しての検討も必要です。

【目的別】M&A戦略を立案するポイント

ここからは、主な目的別にM&A戦略立案のポイントを紹介します。

M&Aをどのような目的で実施するかによって、戦略立案のポイントも変わるため、自社の目的に合わせてポイントを確認しておきましょう。

事業承継が目的の場合

事業承継を目的としてM&Aを実施する場合は、スキーム選択が成功の鍵となります。

雇用の維持や取引先との関係、経営方針を引き継ぐのか抜本的に変えるのかなどによって、適切なスキームは異なります。

戦略を立てるうえで価格設定も重要な要素ですが、簿外債務などの問題が発生した場合の価格反映方法もあらかじめ決めておくことも重要です。

また、M&A実施後の戦略も立案しておきましょう。従業員が大量に離職したり、キーパーソンが離脱したりした場合や取引継続が困難になった場合の対応も決めておくと、M&Aの成功を実現しやすくなります。

事業整理が目的の場合

事業整理を目的としてM&Aを実施する場合は、コア事業とノンコア事業に分けて、選択と集中を実施することが必要です。

どの事業をコアに据えるのか、現実的な戦略を立てておきましょう。

また、今までにかかったコストではなく、将来的なコストや成長見込みに注目し、適切に事業を切り捨てることも必要です。切り捨てる事業を選別するのはもちろんのこと、切り捨てた後の事務処理についても戦略を立てておきましょう。

事業拡大が目的の場合

事業拡大が目的の場合は、何を拡大するのか具体的に決め、拡大する対象に応じた戦略を立てることが重要です。

事業規模を拡大するのか、エリアやサプライチェーンを拡大するのか、それとも取扱商品・サービスを拡大するのかなど、目的によって適切な戦略が異なります。

また、拡大することで得たいメリットも明確にしておきましょう。スケールメリットの獲得であれば、コストダウンや企業競争力の強化などのメリットが付随します。拡大する目的とともにメリットも明確にしておくことで、よりターゲットを絞った戦略立案が可能になります。

新規事業が目的の場合

新規事業着手による多角化の実現を目的とする場合もあるでしょう。

既存企業を買収できれば、事業を軌道に乗せるまでの時間を省略できるだけでなく、ブランド力や信用力を継承できます。

また、スケールメリットを活かすコングロマリット化(=異なる産業・業種の複数企業が経営統合を行い、大きい1つの企業グループを形成すること)を目的としたM&A、景気や政情の変化に対応するために、事業のポートフォリオ変更を目的としたM&Aもあります。

いずれも未知の分野の事業を買収する際には、買収後の経営戦略を綿密に立てておくことが必要です。その業界でなければわからないこともあるため、M&A実施前に信用できるアドバイザーを見つけておきましょう。

イグジットが目的の場合

イグジットを目的としてM&Aを実施するときは、IPOによるイグジットと比較し、適切な方法を選ぶようにしましょう。新たな事業に着手する場合、M&Aが順当な選択肢になりますが、資金調達や経営拡大を目的とする場合はIPOも視野に入れて比較することが必要です。

また、企業成長の壁にぶつかったときは、まずは上場し、その後、大企業に買い取ってもらうTOBによるイグジットも検討できます。いずれを選択する場合でも手法やタイミングによって自社の価値が大きく変わるため、長期的な戦略計画を立てるようにしましょう。

M&A戦略のチェックリスト

以下は、M&A戦略のチェックリストです。戦略を立案する際の参考として活用してください。

・業界における自社の強みや弱みなど、自社の分析はできているか
・M&Aの対象となる業界の規模・将来性などの市場調査を実施したか
・M&Aの目的は明確となっているか
・マッチング企業のイメージはできているか
・想定されるリスクの検討、対策は行ったか

M&A戦略の立案はM&Aを検討する初期段階で行いますが、立案する項目はM&A全体で重要なものとなります。M&Aを進行する中でも随時振り返りと修正を実施しましょう。

M&A戦略の注意点と成功のポイント

最後に、M&A戦略を策定するときの注意点や成功のポイントを紹介します。

「M&A成約」を目的にしない

M&Aでよくある落とし穴は、M&Aの成約自体が「目的」となってしまうことです。

M&Aはあくまで企業が成長するための経営戦略の1つであり、「手段」でしかありません。M&A戦略を策定する中で、M&Aが本当に必要なのか、最適な戦略であるのか、しっかりと吟味する必要があります。

自社に合ったスキームを選ぶ

M&Aを行う際には、株式譲渡や会社分割、事業譲渡など様々なスキームがあります。

多くの場合、譲渡企業が譲受企業に株式を譲渡し、所有権を移転する「株式譲渡」が一般的ですが、会社の一部または全部の事業を譲渡する「事業譲渡」、会社を新設して合併する「新設合併」などのスキームが適切なケースもあります。

M&A戦略の立案の際には、自社にとってどのスキームが適当なのかも併せて検討しておきましょう。

▷関連記事:M&Aとは?意味・流れ・手法・費用などゼロからわかる完全ガイド【動画付き】
▷関連記事:事業承継スキームの選び方は?種類や円滑に進めるためのポイントを解説

M&Aアドバイザーや戦略コンサルなどの専門家を活用する

M&Aを検討している経営者にとって、企業の買収や戦略の策定は初めての経験であることが多く、戸惑いや不安を感じる場合もあるかもしれません。そのようなときは、M&Aアドバイザーや戦略コンサルなど、専門家の活用も検討してみてください。

専門家の豊富な経験や知識から、課題の解決につながる糸口が見つかる場合もあります。

まとめ

M&A戦略とは、M&Aを通じてどのような効果を実現し、そのためにどのようなM&Aを行うかという基本方針のことです。M&A戦略では、フレームワークを活用した自社分析や市場調査を通じ、M&Aで何を得たいのか、目的を明確にすることが重要です。

なお、経営者の方にとってM&Aは初めての経験であることが多いため、M&A戦略を策定する場合、何から着手し、どこまで検討が必要かわからないこともあるでしょう。

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