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2025/03/18

M&Aのプロセスとは?準備から経営統合までの流れを徹底解説【用語解説あり】

M&Aのプロセスとは?準備から経営統合までの流れを徹底解説【用語解説あり】

M&Aのプロセスは細かく複雑です。全体の流れや関連用語を知らないままM&Aを進めてしまうと、あとあとトラブルにつながりかねません。

そのため、M&Aを検討している企業の担当者は、プロセスの流れや関連用語を把握し、理解しておく必要があります。

本記事では、プロセスの流れを「準備」「交渉」「クロージング(成立)」「経営統合(PMI)」の4つの段階に分け、知っておきたい関連用語とあわせて解説します。M&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。

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M&Aのプロセス

M&Aのプロセスとは?準備から経営統合までの流れを徹底解説【用語解説あり】

M&Aのプロセスは以下のとおりです。

・目標や戦略を決定する
・業者を選定する
・マッチング
・基本条件交渉
・最終条件交渉
・クロージングの準備
・クロージングと事後処理
・短期プラン実行
・中長期プランの策定と実行

上記のプロセスは、「準備」「交渉」「クロージング(成立)」「経営統合(PMI)」の4つの段階に分かれています。M&Aを成功させるためには、各段階での入念な準備とスムーズな進行が欠かせません。

4つの段階を順番に解説するため、M&Aに関する全体のプロセスを理解していきましょう。

M&Aのプロセス①準備

M&Aのプロセスにおいて、最初のステップとなる準備には3つの段階があります。

・目標や戦略を決定する
・業者を選定する
・マッチング

準備段階を丁寧に進めることで、後の交渉や統合プロセスがスムーズに進められる可能性が高まります。

次項より、準備のプロセスを順番に解説します。

目標と戦略を決める

M&Aを成功に導くためには、具体的な目標を設定し、実現するための戦略を決めることが重要です。

ここでは買い手側、売り手側それぞれの目標と戦略について例を挙げて考えます。

例えば、買い手側の目標は「既存事業の規模拡大」や「エリアの拡大」などが挙げられます。また、目標を達成するための戦略例としては「同業他社を買収し、生産規模や営業エリアを広げる」などが考えられます。

一方、売り手側の目標として代表的なのは「事業継承」です。この場合、戦略は「自社の事業や文化を理解するブランドを探す」や、「より大きな企業の子会社となり従業員に成長機会を提供する」などが挙げられます。

目標や戦略が曖昧なままM&Aを進めてしまうと、統合後に方向性の違いや経営の停滞などの問題が生じ、失敗に終わる可能性が高まります。

M&Aを成功に導くためにも、準備段階で「目標」と「戦略」を明確にしてから次のプロセスへと進みましょう。

業者を選定する

M&Aを成功させるためには、財務や法務に関する高度な専門知識が求められます。契約書の作成や交渉など、複雑な手続きやテクニックが必要になるため、専門業者のサポートを受けるのが一般的です。

M&A仲介会社やM&Aアドバイザーは、企業間のマッチングや条件交渉、契約締結までのサポートを行う専門家で、売り手企業と買い手企業のニーズを調整し、スムーズなM&Aの実現を支援します。

さらに、交渉が難航した場合には、第三者として解決策を提案し最善の結果を導く役割を担います。

適切な業者を選ぶことは、M&Aプロセス全体の成功を左右すると覚えておきましょう。
▷関連記事:M&A仲介会社とは?FAとの違いや選び方・メリット、手数料の相場を解説

マッチングを行う

M&A仲介会社を選定した後は、希望や条件に合う相手先を探すマッチングの段階に入ります。マッチングでは双方の匿名性を保ちながら、有望な候補企業を見つけるのが一般的です。

まず、売り手企業は特定されないように、所在地や業種、事業規模、売却目的、希望価格などをまとめたノンネームシート(匿名資料)を作成して、買い手候補企業にM&Aのアピールを行います。

ノンネームシートに反応した企業から有力な企業を絞っていき、売り手企業と買い手企業が具体的な交渉に入ることに合意すれば、秘密保持契約(NDA)を締結します。

秘密保持契約とは、「企業間で取引が行われる際、秘密情報を第三者に開示、漏洩しないことを約束する契約」のことで、NDA(Non-Disclosure Agreement)またはCA(Confidentiality Agreement)とも呼びます。

秘密保持契約を締結したら、提示される機密情報やM&Aを検討していること自体を第三者に開示しないよう、慎重に取り扱いましょう。

次に、売り手企業は自社の事業概要や組織・株主の構成、雇用状況、財務データ、事業計画などをまとめたIM(インフォメーションメモランダム)を買い手企業に対して提示しますが、M&A交渉の内容によってはプロセスレターも提示します。

名称概要
IM売り手企業の事業に関する情報を詳細に記載した資料相対方式と入札方式の場合に必要
プロセスレター売り手企業から買い手企業に対して提示される、Bid(入札)プロセスの進め方、ディール検討のための手順あるいはスケジュール概要などを記載した書面入札方式の場合に必要

どちらも売り手企業側が依頼したM&A仲介会社やM&Aアドバイザーが作成する資料です。

M&A交渉は特定の1社と交渉をする相対方式と、複数の買い手候補企業と入札で決める入札方式があり、プロセスレターは入札方式の場合に必要になります。

買い手候補企業がIMやプロセスレターを分析して交渉を継続した場合、M&Aは次の段階へと進みます。

▷関連記事:M&Aの交渉において重要となる「ノンネームシート」とは
▷関連記事:秘密保持契約書(NDA)-ひな形使用時の注意点 M&Aの情報漏洩対策のために
▷関連記事:企業概要書(IM)の作成方法|M&Aを成功させるために

M&Aのプロセス②交渉

準備が終わると、売り手企業と買い手企業は本格的な交渉へと進みます。M&Aのプロセスにおいて、交渉には以下の2つの段階があります。

・基本条件交渉
・最終条件交渉

次項より、交渉のプロセスを順番に解説します。

基本条件交渉

基本条件交渉は、M&Aの方向性を決定する重要な段階です。

買い手企業が交渉継続を決断した場合、まずは売り手企業の企業価値評価(バリュエーション)を行います。

企業価値評価とは、売り手企業の価値を評価し、M&A価格の参考とする情報を出す作業です。客観性や中立性を維持するためにM&A仲介会社や専門家が算定するのが一般的で、売り手企業の情報は限られるため算定結果は仮のものになります。

次に、M&Aの目的やIMの情報、売り手企業の方針、企業価値評価などに基づいてM&Aのスキームを決定します。

スキームとはM&Aの実際の手法や流れのことで、以下が代表的なスキームです。

スキームの種類概要
株式譲渡売り手企業の株式を買い手企業が購入して子会社化する方法
事業譲渡売り手企業が有する事業を買い手企業に譲渡する方法
会社分割売り手企業の一部、または全ての事業を切り離して買い手企業に譲渡する方法
合併売り手企業の権利義務の全てを買い手企業に譲渡して、売り手企業は消滅する方法
業務提携・資本提携一定の限度で相互の株式を持ち合うことや一方の会社の株式を取得する方法

スキームを選定する際には、対価の種類や税務への影響、手続きの内容などを比較検討します。

なお、基本条件交渉におけるスキームの選択は暫定的で、プロセスの最中に変更されることは珍しくありません。

基本条件交渉の種類概要
トップ面談売り手企業と買い手企業のトップが初めて顔合わせを行う面談事業内容に関する疑問の解消や企業の歴史、経営姿勢などを擦り合わせ、今後の展望や信頼関係を構築する交渉
買収意向の表明買い手企業が買収の方向性や条件を整理して売り手企業に伝える交渉売り手企業に対して意向表明書を作成する
基本合意締結買収に関して基本的な合意に達した段階で、基本的な条件と今後のプロセスの進め方を規定した基本合意書を取り交わすただし、基本的な事項に関する確認書で、法的拘束力はない
基本合意の適時開示売り手企業や買い手企業が上場企業の場合、基本合意書を締結した段階で開示するただし、交渉の内容や開示によって失敗する可能性がある場合は開示をしなくても良い

上記のプロセスを通じて、売り手企業と買い手企業が方向性を共有すれば、最終条件交渉へと進みます。

▷関連記事:株式譲渡とは?株式譲渡と事業譲渡の違いや注意事項を解説【動画付】
▷関連記事:事業譲渡とは?株式譲渡との違いやメリット・デメリットを徹底解説
▷関連記事:会社分割とは?手続きの流れ・吸収分割と新設分割の期間や事業譲渡との違いを解説

最終条件交渉

最終条件交渉のプロセスでは、売り手企業の内実を詳細に調査するデューディリジェンスが実施されます。

デューディリジェンス(Due Diligence:DD)とは、売り手企業に対して企業の価値や将来の収益性、リスクの調査および分析を行う事前調査のことです。

経営環境や事業内容などの実態を財務や税務、法務などの様々な観点から調査して、企業価値評価(バリュエーション)よりも正確な価値を算定します。

結果によってはM&Aスキームの検討や譲渡価額の見直し、見つかった問題への対処方法の取り決めなどを行うため、デューディリジェンスはM&Aにおける重要な工程の1つです。

また、デューディリジェンスの終了後、もしくは並行で、経営統合作業のプランニングが開始され、デューディリジェンスの結果を踏まえて最終契約書が作成されます。

最終契約書とはデューディリジェンスや経営統合作業のプランニングなどを踏まえたうえで、交渉過程で開示された事実関係や資料などが真正かつ正確であることを双方が表明し、保証する条項を織り込んだ契約書です。

基本合意書とは異なり、法的な拘束力があるので、契約後に一方的な理由で破棄される場合は相手方に損害賠償請求を行うことができます。

なお、M&Aのスキームによっては、「株式譲渡契約書」や「事業譲渡契約書」などの名称になります。

M&Aのプロセス③クロージング(成立)

M&Aにおけるクロージングとは、M&Aが実行され、M&Aの対象となる会社や事業の権利が移転することを指します。最終契約書に基づいて最終的な手続きを行う段階で、主に以下のプロセスがあります。

・準備
・事後処理

上記を順番に解説します。

クロージングの準備

M&Aは選択したスキームによってクロージングの内容が異なります。

例えば、株式譲渡を選択した場合には以下のクロージングの準備が必要です。

株式譲渡を選択した場合に必要な準備概要
株式譲渡のための準備買い手企業が相対取引や市場買付、公開買付などの方法で売り手企業の株式を取得するための準備
株主や債権者、従業員の権利を保護する手続き株主や債権者への通知、従業員の雇用契約更新や条件変更への対応を進めるケースによっては不要
独占禁止法関係の手続き公正取引委員会に事前届出をして独占禁止法上の審査を受けるケースによっては不要
契約書に基づく手続き契約書で規定した義務のうち、クロージングまでに行うべきものを行う

クロージングの準備は実際のM&Aのスキームや最終契約書で締結した条項などによって異なるので、M&A仲介会社や支援機関と確認しながら進めましょう。

クロージングと事後処理

クロージングの準備が済んだら、後はクロージング日に譲渡の手続きを行えばM&Aが成立します。

株式譲渡を選択した場合は、契約当事者の意思表示や株券の引き渡しと対価の支払いが行われることで株式の譲渡が成立します。

なお、クロージングが済んだからといってM&Aに関する全ての手続きが終了したわけではありません。

株式譲渡で売り手企業が買い手企業の子会社となった場合や合併で新組織が誕生した場合は、経営陣の変更や新役員選出のための臨時株主総会を開く必要があります。

また、譲渡によって役職の選任や発行済み株式総数の変更などが行われた場合は、登記申請手続きをしなければなりません。

M&Aを実施する際は、クロージングの後も含めたスケジュールを事前に組み立てて進めましょう。

M&Aのプロセス④経営統合(PMI)

M&Aはクロージングの段階で契約が成立し終了しますが、今度は経営統合のプロセスを迎えます。

M&Aでは、成立後の一定期間内に行う経営統合作業をPMI(Post Merger Integration)と呼び、M&A成立後の両社の経営方針や業務ルール、社員の意識を融合し、スムーズにM&Aの目的を実現するためのプロセスです。

M&Aにおける成功とは、契約の締結ではなく、双方の企業が目的を果たし、想定していた効果を実現できるかどうかです。

M&Aを成功させるためには、組織系統や各種規定、人事などを見直して、M&Aが実施されたことを社内に浸透させるプロセスが必要です。

また、現状を分析して中長期的なビジョンを策定し、実行計画を立てることも並行して1行う必要があります。

従業員がM&Aをポジティブに受け入れ組織全体が一体感を持ち、具体的な実行計画を立案して進められれば、シナジー効果を最大化できます。このシナジー効果の最大化こそがM&Aに成功した証といえるでしょう。

M&Aのプロセスを円滑に進める3つのポイント

M&Aのプロセスとは?準備から経営統合までの流れを徹底解説【用語解説あり】

M&Aのプロセスを円滑に進めるためのポイントは以下のとおりです。

1. 目的を明確にする
2. 売買に関する情報を漏洩しない
3. 信頼できる仲介業者を選ぶ

上記を順番に解説します。

1. 目的を明確にする

M&Aを成功させるためには、売り手企業と買い手企業の双方がM&Aを実施する目的や目標を明確にすることが重要です。

目標設定が曖昧なままM&Aのプロセスを進めても、適切な相手企業の選定や交渉がスムーズに進まず、課題に直面する可能性が高まります。

例えば、M&Aを実施する目的が「事業規模の拡大」と「新市場への参入」のように複数ある場合、優先すべき目的を決めましょう。売り手企業の場合も同様です。

目的が明確であることで企業の選定がスムーズに進み、的確な交渉が可能になります。また、統合後のビジョンを具体化しやすくなるため、M&Aの全プロセスにおいて目的設定は最優先課題と言えるでしょう。

2. 売買に関する情報を漏洩しない

M&Aを検討している情報は、売り手企業と買い手企業の双方にとって極めてセンシティブな内容です。

M&Aに関する情報が外部に漏れると、取引先や従業員に不安を与えたり、競合他社に付け入る隙を与えたりする恐れがあります。

そのため、M&Aプロセス全体を通じて情報管理には細心の注意が必要です。

また、秘密保持契約(NDA)を締結後に公開される情報を漏洩すると賠償請求される可能性もあるので、従業員に情報の取り扱いについて注意を徹底しましょう。

3. 信頼できる仲介業者を選ぶ

M&Aを成功させるためには、信頼できる仲介業者の選定が欠かせません。

M&Aには財務や法務、交渉などの多種多様なスキルを要するため、専門知識を持つ仲介業者のサポートがあることにより、スムーズに安心して進められます。

しかし、仲介業者によって手数料や対応が異なるため、選ぶ際は以下のポイントに注意しましょう。

・取り扱いの多い業種・地域・取引規模
・ネットワークの数や過去の実績
・M&A仲介における手数料
・法務や会計などの専門家の有無
・情報管理の徹底度合い
・PMIへの対応の有無

M&A仲介会社は売り手企業と買い手企業の間に立ち、双方の希望をすり合わせながらM&Aの成約までサポートします。ただし、仲介会社によってサポート体制も異なるため、選ぶ際はよく注意しましょう。
▷関連記事:M&A仲介会社とは?FAとの違いや選び方・メリット、手数料の相場を解説

まとめ

M&Aのプロセスは、大きく「準備」「交渉」「クロージング(成立)」「経営統合(PMI)」の4つの段階に分かれます。各段階で適切な対応を行うことがM&Aを成功させる鍵となります。

ただし、実際のM&Aは企業の状況や候補企業の有無、交渉の進展具合によってプロセスが変化するため、柔軟な対応が求められます。

fundbookでは、経験豊富で専門的な知識を持つM&Aアドバイザーが在籍しており、初期相談からクロージングまでトータル的な支援を提供しています。また、独自に開発したM&Aプラットフォームを活用し、企業ごとのニーズに最適な候補企業を迅速かつ的確に選定します。

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