M&Aを検討する際、成約までにどれぐらいの期間が必要なのか知りたい、できるだけ短期間で成立させたいという要望を持つ経営者の方は多いのではないでしょうか。M&Aのおおよその期間を把握することで、事前にスケジュールを立て、計画的に進めることができます。
市場動向の移り変わりが激しい現代では、M&Aに数年かけてしまうとトレンドに乗り遅れてしまうリスクもあります。本記事では、M&Aのおおよそのスケジュールや期間をイメージし、円滑にM&Aのメリットを得られるように解説します。
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
M&Aのスケジュール
M&Aに必要となる期間は規模にもよりますが、最低でも半年~1年以上はかかるといわれていますが、案件によっては数か月程度の短期間で終了するケースや、反対に希望の相手先が見つからない、交渉が難航しているなどの理由から2~3年ほど要するケースもあります。
以下では、一般的なM&Aの手続きの流れに従って、M&Aのスケジュールを説明していきます。
まず、譲渡企業(売り手)はM&A仲介会社などに相談してM&Aの目的の洗い出しや基本方針を決め、秘密保持契約とアドバイザリー契約を結びます。
契約後、決算書類などの資料の提出をし、仲介会社による企業価値評価の実施、企業概要書の作成、ノンネーム登録などを行って、マッチングとよばれる相手企業探しを始めます。
一方、譲受企業(買い手)はM&A仲介会社と秘密保持契約とアドバイザリー契約を締結したうえで、仲介会社を通して譲渡候補企業の検討を行います。
譲渡企業、譲受企業とM&A仲介会社の契約締結が完了し、トップ面談、基本合意へと進みます。この秘密保持契約、アドバイザリー契約の締結、マッチング、トップ面談、基本合意まで、通常3~4ヶ月ほどかかります。
また、M&Aの条件や自社の状況によって、相手企業とのマッチングに更に多くの時間を要することもあります。
そして、譲受企業が譲渡企業の財務状況などを詳細に調査するデューディリジェンス(DD)が行われます。
このデューディリジェンスは、財務、税務、法務、人事など多岐にわたり、弁護士や会計士、税理士といった専門家が譲渡企業の企業価値や譲受け後のリスクなどを調査する重要なものです。
中小企業の場合、デューディリジェンスの準備をその他の手続きと並行して進めておけば、デューディリジェンスを1~2週間で終わらせられるでしょう。
しかし、企業の規模が大きい場合は、デューディリジェンスの調査項目も増えるため、2ヶ月以上かかる場合もあります。
▷関連記事:解説動画付|「デューディリジェンス」とは?種類や手順・費用や注意点
ただし、デューディリジェンスを短期間で終わらせようとするあまりに、シナジー効果を見誤ったり、適切なのれん代の設定ができなかったりしてしまい、M&Aが失敗に終わってしまう可能性があります。
限られた期間内でデューディリジェンスを行うため、譲受企業はチェックリストの活用や事前の計画立案などの準備を整え、最短かつ適切な時間でデューディリジェンスを行えるよう心がけましょう。
また、デューディリジェンスにおいて確認をする譲渡企業の書類が揃っていない場合、デューディリジェンスの期間が伸びることもあるため、譲渡企業は事前に必要な書類などの準備も進める必要があります。
デューディリジェンスが完了したら、その調査結果をもとに譲渡価額や諸条件などの調整をし、最終合意から最終契約の締結、クロージングとなります。
この期間はおおよそ2~4週間になり、M&Aの相談からクロージングまで合計すると、約半年となります。上述のようにマッチングに時間がかかった場合では、半年にその分の期間が加算されます。
そのため、M&Aの期間は半年~1年以上といわれています。
M&Aを短いスケジュールで成立させるメリット
M&Aのスケジュールを短縮させるメリットは以下の様なものが考えられます。
・M&A市場や業界の動向に影響されにくい
・情報漏洩リスクの軽減
▷M&A市場や業界の動向に影響されにくい
M&A市場や各業界の動向は常に変化しています。M&Aを進める中で環境が大きく変わってしまった場合、当初見込んでいた目標が達成できない、M&A自体が中止となる可能性などが出てきます。
スケジュールを短縮することで、上記の様な外部影響を受けにくくすることが見込めます。
▷情報漏洩リスクの軽減
譲渡企業のM&Aは一般的に、会社の経営陣や株主など、限定的なメンバーのみで進められます。スケジュールが長引いてしまった場合、従業員などにM&Aの動きが察知される可能性が出てきます。
M&Aの動きを察知された場合、従業員の離職や取引先との取引停止などに繋がる可能性も考えられます。
スケジュールを短縮することで、外部への情報が漏れる可能性は軽減されますので、上記の様なリスクも減るといえます。
M&Aのスケジュールを短縮させる方法
M&Aの手続きは多岐にわたり、おおむねの期間として半年~1年は必要だとしましたが、その期間を短くする方法もあります。
1)期間を明確に決める
2)必要資料を事前に準備する
3)M&Aに関する知識を予めつけておく
まず、事前に自社をいつまでに譲渡したいのか仲介会社に伝え、譲渡までの期間に関して明確な条件を策定することがあります。
期間を決めずにM&Aを進めると、各手続きにかかる時間が長くなる傾向にあります。
ただし、期間の条件を厳しくしすぎた場合、十分な準備ができないといったことにもなりかねないこともあるので、ある程度はフレキシブルに、M&Aアドバイザーと手続きや交渉を進めるのが適切でしょう。
また、M&Aでは決算書類や契約書などさまざまな資料が必要になります。こうしたM&Aにおいて欠かせない資料を検討段階から準備することも、期間の短縮に繋がります。
資料が揃わない場合、企業価値の算出や企業概要書の作成、デューディリジェンスにおいて時間がかかってしまうため、M&Aの全体的な進行が遅れてしまう要因になります。
デューディリジェンスについては、期間を無理に短縮するとM&Aの失敗につながりかねないため、適切な期間で行うようにしましょう。譲渡企業の経営者はM&Aが初めてということも多く、M&Aに関する知見があまりない場合、M&Aにはより多くの時間を要するので必要になる期間は長くなります。
そのため、M&Aの検討段階からM&Aの流れなどの知識を知っておくことは、期間の短縮に有効といえます。
M&Aをスムーズに進めるために
M&Aをスムーズに成功させるためには、譲渡企業の経営者の方針やM&Aの目的がブレないことが重要です。
M&Aの目的が事業承継のためなのか、金銭の確保をしたいのかなど明確にしましょう。
そして、M&Aを進めるうえで情報開示を適切にすることも重要です。自社にとって不利になり得る情報を伝えていなかったために、デューディリジェンスで発覚し、譲渡価額の減額や破談になる可能性もあります。
まとめ
事前の準備や目的の明確化、日ごろの書類整理などを行いM&Aにかかる期間を短縮することで、情報漏えいのリスクの低減などを図ることができます。
また、信頼できるM&A仲介会社を見つけておくことも、有効な事前準備となります。長期にわたるM&Aをスムーズに進めるためにも、M&Aアドバイザーなどの専門家と進めることをお勧めします。