
これまで日本の経済発展を支えてきた中小企業の多くは、経営者の世代交代の時を迎えています。いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる年齢の経営者が2025年には全員75歳以上になることで、事業承継を課題に掲げる企業が多いのが現状です。
親族内承継だけではなく、従業員承継や第三者承継という形のM&Aを選択する企業も増加しており、様々な事業承継の形に対応できる専門家のニーズは高まっています。
本記事では、多様化する事業承継の課題解決に適した人材を養成する事業承継・M&Aエキスパート認定制度について解説します。認定資格の概要や認定試験の流れ、難易度や資格を有するメリットなどを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
企業価値100億円の企業の条件とは

・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件
自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
目次
事業承継・M&Aエキスパートとは
事業承継・M&Aエキスパートとは、「一般社団法人金融財政事情研究会」が認定する民間の資格制度です。事業承継やM&Aの分野に造詣の深い人材を養成し、日本経済の発展に寄与することを目的としています。
知識を身につけて試験に合格することで、「事業承継・M&Aエキスパート」の資格保有者としてコンサルティングなどの場で重宝される傾向にあります。
一般社団法人金融財政事情研究会について
「一般社団法人金融財政事情研究会」は、東京都の新宿区に本社を構える社団法人です。
1950年に設立し、金融機関の経営や金融財政政策にまつわる情報の収集と発信、調査研究の他、経済金融知識を世に広く普及させるために活動しています。もともとは大蔵省所管の社団法人として創立された経緯がありますが、2011年4月以降は一般社団法人に移行しています。
前述のとおり、金融にまつわるあらゆる事業を推進しており、「事業承継・M&Aエキスパート」の資格検定なども実施しています。
事業承継・M&Aエキスパート認定制度が生まれた背景

日本経済の中枢を担ってきた中小企業の多くが、現在、経営層の高齢化に伴い世代交代を迫られています。2025年には「団塊の世代」の高齢者が全員75歳以上に達するため、事業承継の流れにますます拍車がかかっています。
中小企業庁は、円滑な事業承継を行うために、事業承継の指針として「事業承継ガイドライン」を策定しました。さらに、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)を制定し、中小企業の事業継続に向けた支援策を講じています。
このように、国を挙げて事業承継対策に取り組む背景を受け、一般社団法人金融財政事情研究会は「事業承継・M&A 資格認定・支援制度」の実施を開始しました。
具体的には、以下のような人材の養成を目標としています。
・中小企業や零細企業における、適切で円滑な事業承継とビジネスマッチングを支援する人材
・事業承継対策の重要な選択肢の1つであるM&A(合併・買収)に精通した人材
一般社団法人金融財政事情研究会は「M&Aエキスパート認定制度」を通じて、中小・零細企業経営の安定・成長と経営者や従業員の生活基盤安定を目指し、ひいては日本経済の持続的な発展・成長を目標としています。
M&Aエキスパート資格の種類と概要

「事業承継・M&A 資格認定・支援制度※1」は、以下4つの区分に分かれており、それぞれレベルが異なります。
制度 | レベル | 内容 | 料金(税込) |
事業承継・M&Aベーシック | ベーシック | 事業承継とM&Aに関する基本的な知識の習得 | 受験手数料:5,500円 |
事業承継・M&Aエキスパート | スタンダード | 事業承継とM&Aに関する一般的な知識を習得 | 受験手数料:7,700円 |
事業承継シニアエキスパート | アドバンス | 事業承継実務に関する最難関資格 | Web講義受講料:132,000円CBT方式試験受験料:11,000円 |
M&Aシニアエキスパート | プロフェッショナル | 中小企業M&A実務に関する難関資格 | Web講義受講料:132,000円CBT方式試験受験料:11,000円 |
入門編に適したベーシック・スタンダードレベルの他に、事前にWeb講義の受講が必須となるアドバンス・プロフェッショナルレベルが用意されています。
試験は、全国各地にあるテストセンターで受験でき、テストセンターの申し込み状況に空きがあれば、通年受験することができます。
M&Aエキスパート認定資格を取得するメリット

資産運用の相談についてファイナンシャル・プランナーが活躍する機会が多くあるように、M&Aエキスパート認定資格を取得すれば、事業承継やM&Aを検討する企業の相談役としてより専門的なコンサルティング支援が可能となります。
事業承継やM&Aに関する知識を網羅的に身に着けることができ、事業承継やM&Aの専門家として企業の頼もしい相談役になることができるでしょう。
資格を保有することで事業承継に関する相談をより受けやすくなるため、会計事務所や金融機関にお勤めの方にとっても有益な資格です。中でも、特にレベルの高いシニアエキスパートの資格を取得できれば、即戦力として活躍できるでしょう。
【難易度別】事業承継・M&Aエキスパート認定試験の特徴

前項で紹介した4つの事業承継・M&Aエキスパート認定試験の特徴をそれぞれ紹介します。
▷【ベーシック】事業承継・M&Aエキスパート
「事業承継・M&Aベーシック認定資格」は関連試験の中で最も難易度が低く、事業承継・M&Aエキスパート認定試験を初めて受験する方におすすめの資格です。
対象者は金融機関の若手から中堅の渉外・融資担当者、公認会計士・税理士などとされていますが、受験資格は特にありません。
試験範囲 | 事業承継の事前準備等 親族内・従業員承継の実務 社外承継(M&A)の実務 コンサルティングの実務 |
試験時間 | 100分 |
出題形式 | 四答択一式50問 |
合格基準 | 100点満点中60点以上 |
▷【スタンダード】事業承継・M&Aエキスパート
「事業承継・M&Aエキスパート認定資格」は事業承継および中小企業M&Aに関する基本的な知識の確認を目的としており、難易度は基本レベルです。
対象者は金融機関の渉外・融資担当者、公認会計士・税理士などとされていますが、ベーシックと同じく受験資格は特にありません。
試験範囲 | 事業承継関連税制等 事業承継関連法制等 M&A基礎知識・関連会計 M&A関連法制等 総合問題 |
試験時間 | 120分 |
出題形式 | 四答択一式30問、総合問題10題 |
合格基準 | 100点満点で70点以上 |
合格すれば、次のステップとして「事業承継シニアエキスパート」の受験に必要な、認定講座の受講資格を得られます。
▷【アドバンス】事業承継シニアエキスパート
「事業承継シニアエキスパート認定資格」は2017年に創設された資格で、事業承継に関する実務的なノウハウを問われる事業承継分野での最難関資格です。
基礎編にあたる事業承継・M&Aエキスパートと比べると、試験の難易度はより発展的なレベルとなります。受験資格を得るためには、養成スクールの認定講座受講が必要です。
試験範囲 | 相続税・贈与税の仕組み 財産評価 事業承継対策の手法 税制 |
試験時間 | 120分 |
出題形式 | CBT四答択一式50問 |
合格基準 | 100点満点中60点以上 |
Web講義の受講後に認定試験を受ける「CBT方式」と呼ばれる受験スタイルが採用されており、試験のみでは申し込めません。Web講義の申し込みは随時行っており、試験はテストセンターに空きがあれば通年受験可能です。
▷【プロフェッショナル】M&Aシニアエキスパート
「M&Aシニアエキスパート認定資格」は2012年に創設された資格で、「中小企業M&A実務に関する難関資格」と称されています。
受験資格を得るためには、事業承継シニアエキスパートと同じく養成スクールの認定講座受講が必要です。
試験範囲 | M&Aや企業評価の実務 M&Aの法務・会計・税務 |
試験時間 | 120分 |
出題形式 | CBT四答択一式50問 |
合格基準 | 100点満点中60点以上 |
受験方式はWeb講義の受講後に認定試験を受ける「CBT方式」で、試験のみの申し込みはできません。申し込みは随時行われており、テストセンターに空きがあればいつでも受験可能です。
実務ノウハウに特化した試験内容のため、資格を取得すれば、M&A分野のプロフェッショナルとして十分な知識を有しているという証明になります。
受験合格に向けた勉強時間の目安

合格のために必要な勉強時間は、試験勉強を始める段階で、どの程度M&Aや事業承継に関する専門知識を身につけているかによって異なります。
あくまで目安ですが、最もスタンダードなレベルの資格である「事業承継・M&Aエキスパート」の試験を受験するには、3ヶ月程度の勉強時間が必要です。対応教材である通信教育講座は、2ヶ月コース・3ヶ月コースで設定されています。現状のレベルをふまえて、適切な準備を行いましょう。
より専門性の高い「事業承継シニアエキスパート」や「M&Aシニアエキスパート」の資格獲得を目指す場合は、受験前に養成講座を受講する必要があります。養成講座はWebで受講でき、申込後におよそ500ページに及ぶ紙ベースの講義資料が送付されます。
Web講義の内容を閲覧できるのは、利用開始日から13週間(91日間)に設定されているため、期間内に学習を終えられるようスケジュールを立ててください。
まとめ
事業承継・M&Aエキスパート認定試験には4つのレベルが用意されており、それぞれ難易度が異なります。
認定資格を獲得すると、事業承継やM&Aの専門家として企業の相談窓口になれるため、コンサルティングなど経営に携わる職種に就いている方には特に重宝される資格です。本記事を参考にして、事業承継・M&Aエキスパート認定試験の合格を目指しましょう。
また、早急にM&Aの課題を解決したい方は、信頼できるプロの仲介業者に相談するのも1つの手段です。
fundbookは、M&Aの専門家集団として、各業界に精通したアドバイザーや有資格者と連携しながら最適な解決方法を提案します。M&Aを検討している方は、ぜひ一度fundbookにご相談ください。