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2025年6月12日

M&Aの意向表明書とは?基本合意書との違いや記載内容、注意点を解説

M&Aの意向表明書とは?基本合意書との違いや記載内容、注意点を解説

M&Aでは、譲受企業が譲渡企業に対して買収の意向を示すために意向表明書という書面を提出します。本記事では、意向表明書の記載内容や基本合意書との違い、法的拘束力の有無について解説します。

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M&Aの意向表明書とは

意向表明書(LOI : Letter of Intent)とは、譲受企業が譲渡企業に対して、買収の意向を示すために提出する書面です。意向表明書の提出は必須ではありませんが、譲受企業の意向を書面にして譲渡企業に伝えることで、より円滑なM&Aの成約につながります。

M&Aの意向表明書を提出するタイミングは?

意向表明書はトップ面談を終えたタイミングで提出されます。意向表明書には譲受企業の企業概要・想定されるシナジー効果・現時点でのM&Aのスケジュールなどが記載されており、意向表明書の提出によってM&Aの具体的な交渉がスタートします。

その後、譲渡額・M&A成約後の運営方針などの諸条件について合意した段階で基本合意書を取り交わし、デューディリジェンスを実施します。その後、デューディリジェンスの結果を踏まえて最終合意書を作成・締結します。

M&Aの意向表明書に法的拘束力はあるか?

一般的に、意向表明書は法的拘束力を持ちません。デューディリジェンスが完了していない段階での意向表明は、あくまでも「譲受する意思」を伝える手段であり、最終的な判断は、デューディリジェンスの結果を考慮して決定します。ただし、法的拘束力を持たないとしても意向表明書の内容はM&Aの交渉に活用される重要な書類であることには違いないため、譲受企業が合理的な理由もなく一方的に記載内容を撤回するケースは稀です。

M&Aの「意向表明書」と「基本合意書」の違い

M&Aにおける基本合意書とは、譲渡企業と譲受企業の間でM&Aに関する基本的な諸条件が合意された後、最終契約に先立って取り交わす合意書のことを指します。

この段階ではまだ最終合意が成立するわけではありませんが、M&Aを行う際は、最終契約締結の前に譲受企業が想定する基本的な取引条件を取り決める性質があります。

一方、意向表明書は、譲受企業側が単に意思表示するための書面であり、その内容は似て非なるものです。

▷関連記事:M&A契約における「基本合意書」とは?

M&Aの意向表明書に記載する内容

M&Aの意向表明書とは?基本合意書との違いや記載内容、注意点を解説

意向表明書には、主に以下の内容が記載されます。また、以下の内容以外にも譲受希望価格の支払い方法・秘密保持に関する事項などを記載することもあります。

譲渡企業の概要
M&Aを実施する目的
想定するM&Aのスキーム
譲受希望価格
買収資金の調達方法
M&Aのスケジュール
M&A後の経営方針
M&A後の譲渡側従業員の処遇
独占交渉権

譲受企業の概要

譲受企業の企業概要を記載する項目です。例えば、商号・代表者・事業内容・沿革・資本金・グループ企業の概要・財務状況などを記載します。譲渡企業と譲受企業がお互いをよく知っている関係性の場合、省略することもあります。

M&Aを実施する目的

M&Aを実施する目的を記載する項目です。具体的には、シナジー効果の獲得・既存事業の強化・経営の多角化に伴う新規参入などが挙げられます。譲渡企業に対して、M&Aを実施する理由や実現後に期待できる効果をできるだけ具体的に伝えます。

▷関連記事:「M&Aの目的とは?譲受企業・譲渡企業のそれぞれの目的を解説

想定するM&Aのスキーム

M&Aを実施する際に行う、想定のスキームを記載する項目です。M&Aのスキームには、株式譲渡・事業譲渡・合併・資本業務提携など多くの手法があるため、複数あるスキームの中から今回採用するものを決定したうえで記載します。

▷関連記事:「M&Aのスキームとは?手法ごとのメリット・デメリットや流れを紹介

譲受希望価格

デューディリジェンス実施前の段階で、譲受企業が検討している譲受希望価格を記載します。ただし、この段階で提示する金額はデューディリジェンスを行った結果、最終合意の際に調整される場合があります。また、譲受希望価格に退職金を合算するケースもあります。

買収資金の調達方法

譲受企業が自社の資金力を明示・アピールするために、買収資金の調達方法を記載します。例えば、自己資金による調達・金融機関や投資ファンドを利用した外部からの調達などです。資金調達方法の明示は、譲渡企業が譲受先を選定する際に特に重要な検討材料となる項目です。

M&Aのスケジュール

譲受企業と譲渡企業で共通のスケジュール認識を持ち、検討を進めていくためにM&A成約までの大枠のスケジュールも記載します。イレギュラーなスケジュールで進行する場合は、譲渡企業にスケジュール感が伝わっていないと、認識の違いによって契約破談になる可能性もあります。そのような事態を防ぐためにも、検討段階でスケジュールを共有しておくことが大切です。例えば、譲受の正式な決定には取締役会の決議が必要な場合もあるため、その場合のスケジュールを記載しておきます。

▷関連記事:「M&Aのスケジュールとは?全体の期間やスムーズに進める方法

M&A後の経営方針

M&A成立後、譲渡企業をどのように経営していくかを記載する項目です。M&A後の経営は、譲渡企業側にとって最も関心のある項目です。譲渡企業のM&Aに対する不安消につながるように、M&A後の組織再編・業務フローの変更などの経営統合(PMI)・M&A後の事業計画などを詳しく記載します。

▷関連記事:「PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて実施期間や期待できる効果を解説

M&A後の譲渡側従業員の処遇

M&A後の譲渡側従業員の処遇は、経営方針とあわせて譲渡企業が不安に感じる項目です。M&A後の従業員の雇用・人事評価・待遇の変化などを、譲渡企業側が具体的にイメージできるよう詳細に記載します。

▷関連記事:「譲渡企業の従業員のその後

独占交渉権

譲受企業から譲渡企業へ独占交渉を依頼する内容を記載します。譲受企業はデューディリジェンスの費用を負担するため、デューディリジェンス着手後に譲渡企業が他の譲受候補と先に成約することを禁止するために独占交渉権を記載します。

具体的には、意向表明書を作成した企業以外とは、M&Aの交渉を行わないと約束してほしい旨を記載します。なお、独占交渉権を記載する場合はあわせて期限を提示しますが、両社協議のうえ、延長できる旨を記載するケースが多いです。

▷関連記事:「独占交渉権とは?法的拘束力と優先交渉権との違い

M&Aの意向表明書提出を省略するケース

M&Aの交渉が進んでいる企業が1社のみである場合、譲受企業は意向表明書の提出を省略するケースが多いです。上述のように、意向表明書はあくまでも譲受企業の「譲り受けたい」という意思を表示するための手段であり、意思表示を前提として書かれた基本合意書を取り交わしておけば、意向表明書の役割も内包することができます。

一方、譲渡企業が複数社の譲受候補と交渉を行う場合は意向表明書を提出する場合がほとんどです。譲渡企業は各譲受候補から意向表明書を受け取り、内容を精査して自社の要望に沿う条件を提示する企業を絞り込み、具体的な交渉に進みます。

まとめると、意向表明書は譲受企業による最初の意思表示と条件提示であるのに対し、基本合意書は、より具体的な条件(譲渡手法・譲渡価格・契約解除など)が盛り込まれた内容で契約締結前の相互合意を確認する書類です。意向表明書はM&Aのプロセスにおいて必須の書類ではなく、双方の合意で省略される場合もあります。ただし、条件面で合意した内容を譲渡企業・譲受企業ともに共通認識を持つうえで重要な書類となるため、意向表明書の概要もよく理解しておきましょう。

【譲渡企業】M&Aの意向表明書を確認する際の注意点

譲渡企業が意向表明書を確認する際のポイントは以下のとおりです。

・譲れない条件を明確にする
・譲受企業が提示した金額が適正な価額であるか確認する
・譲渡後の従業員の待遇・運営方針を確認する

意向表明書には、譲受企業のM&Aの目的・希望条件・M&A後の経営方針などが記載されます。「従業員の雇用維持」や「会社のブランド存続」など、自社が譲れない条件を明確にしておき、その内容が意向表明書にも記載されているか確認しましょう。

【譲受企業】M&Aの意向表明書を作成する際の注意点

譲受企業が意向表明書を作成する際は、以下の注意点が挙げられます。

・M&Aを行う目的を明確に示す
・買収後の相乗効果を織り込んだ価格設定を行う
・譲受候補が複数存在する場合は、他企業よりも有利な条件を提示する
・買収に対する熱意をアピールする
・譲渡企業側の希望を確認する
・意向表明書をM&Aアドバイザーに確認してもらう

意向表明書は、譲渡企業にM&Aの意思や条件を伝える書類です。目的や適正な価格設定を明示し、M&Aの具体的な内容を譲渡企業に提示します。特に、譲受候補が複数存在する場合は自社を選んでもらう必要があるため、意向表明書に企業を譲受する想い・メッセージを記載する方法も有効的です。

まとめ

意向表明書はM&Aにおいて必須ではないものの、譲渡企業がM&Aの相手を選定する判断基準となる重要な書類です。また、譲受企業が譲り受ける意思を固めたことを表明するための書類であり、譲受企業が交渉条件やM&Aへの想いを伝えるための手段でもあります。

M&Aにおいて意向表明書の内容を理解し、譲受候補比較検討する場合は、弁護士・M&Aアドバイザーなどの専門家に相談するとよいでしょう。

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