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2023/09/27

会社法・商法の違いと会社法改正 M&Aで経営者が気を付けるべきこと

会社法・商法の違いと会社法改正 M&Aで経営者が気を付けるべきこと

会社法は、商法や有限会社法など細分化されていた会社に関する法律を1本にまとめて2006年に施行された法律であり、会社の設立、組織、運営および管理について定めた法律です(会社法(以下、法)1条)。これに対し商法は商人の営業、商行為その他商事について定めた法律です(商法1条1項)。

商法の総則部分についても、会社に適用されるものは、会社法の総則として規定されたため、商法総則は原則として会社以外の商人に適用されます。ただし、会社も商人ではあります(商法4条1項・最高裁平成20年2月22日判決)。

本記事では、会社法と商法の概要と、M&Aにおいて注意すべき規定、特に今回の会社法改正案にかかる株式交付制度について解説します。

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髙田 光洋
この記事を執筆した専門家
弁護士 髙田 光洋
東京都出身。名古屋大学法科大学院卒。 明治大学政治経済学部から名古屋大学法学部へ編入学し、経済学と法学を学ぶ。企業法務・企業再生を多数取り扱う中島成総合法律事務所を経て、あかつき総合法律事務所にて執務。一般企業法務、事業譲渡、民事再生等の企業再生事件等を中心に取り扱う。
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会社法制の見直し概要

会社法は、2019年1月に「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」(以下「要綱案」)がとりまとめられ、2019年秋の臨時国会に提出される予定で、早ければ2020年にも施行となる可能性があります。

要綱案の主題のひとつは、企業統治の弱さが企業の収益力向上を妨げているという批判に答えるため、コーポレートガバナンスの一層の強化を目指す点にあります。要綱案は、大きく分けて以下に分類されます。

1.株主総会に関する規律の見直し
2.取締役等に関する規律の見直し
3.その他の事項

主な点の概要をみていきます。

株主総会に関する規律の見直し

株主総会資料の電子提供制度

現行法では、株主総会参考書類などの株主総会資料は原則として書面で提供しなければならず、電子提供(ウェブサイトの掲載、電子メールでの送信など)を行うためには、株主の個別同意を必要としていました。

要綱案では、定款に電子提供措置をとる旨を定款で定めることで、株主の個別同意を必要とすることなく、株主総会資料の電子提供が可能になります。

株主提案権の制限

現行法では株主の議題提案権(法303条)、議場における議案提出権(法304条)、議案事項の通知請求権(法305条)について、議案数や提案内容に関する制限は法定されていませんでした。

しかし、近年1人の株主により膨大な数の議案が提案されたり、株式会社を困惑させる目的で議案が提案されるなど、株主提案権が濫用的に行使される事例があり、審議の時間などが不必要に割かれたり、株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり、会社にかかるコストが増加することが弊害として指摘されてきました。

そこで、要綱案では、このような株主提案権の濫用的な行使を制限するため、株主が同一の株主総会において提案することが可能な議案の数を制限するとともに、不当な目的などによる議案の提案を制限することが認められるとしています。

株主総会に関する規律の見直し

取締役等に関する規律の見直し

取締役等への適切なインセンティブの付与

取締役の報酬に関する現行法の規定は、取締役によるいわゆる「お手盛り」を防止する目的で定められています。他方で、取締役に対して職務を適切に執行するインセンティブを付与する機能を活用するべきであるとの指摘もありました。そこで要綱案では、次のようにしています。

1.上場会社等の取締役会は、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を決定しなければならないものとすること
2.報酬等に関する議案について、その報酬等が相当であることの取締役の説明義務の範囲を拡大すること
3.報酬等として自社の株式または新株予約権を付与する場合における株主総会の決議事項を見直すこと
4.募集株式と引き換えにする出資の履行及び新株予約権の行使に際してする出資を要しないものとすること
5.会社役員の報酬等に関する事項について、公開会社における事業報告による情報開示に関する規程の充実を図ること

社外取締役の活用等

要綱案では親子会社間の取引や、マネジメント・バイアウト(MBO)の場合など、会社と取締役との利益が相反する状況にある場合、その他取締役が当該会社の業務を執行することにより、株主の利益を損なうおそれがあるときは、会社はその都度、取締役会の決議によって、当該会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるものとしました。

なお、委託された業務の執行をすることによって、社外取締役の要件を満たさなくなることもないとしています。

これにより、マネジメント・バイアウトの場合など、利益相反が生じるケースで、社外取締役が積極的に活用されることが期待されます。

▷関連記事:MBO(マネジメント・バイアウト)とは?目的やメリット、導入の流れなどをわかりやすく解説

社外取締役を置くことの義務付け

現行法では、金融商品取引法が適用される上場会社など(公開会社・大会社)においては、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社である場合には社外取締役の設置が義務づけられていたものの、監査役会設置会社の場合には、社外取締役の設置は義務づけられておらず、定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当で無い理由」を説明し、事業報告の内容とすることが義務づけられているにとどまっていました。
要綱案では、この監査役会設置会社であっても、有価証券報告書を提出する義務を負う会社(金融商品取引法24条1項)は、社外取締役を設置することが義務づけられることになります。

取締役等に関する規律の見直し

その他

社債の管理

会社が社債を発行する場合、原則として社債管理者を設置するものの、例外的に設置しないことがありました。

このような社債が債務不履行となった場合に社債権者に混乱などが発生したことから、社債権者が自ら社債を管理することを期待することができ、社債管理者を定めることを要しないときに、会社が社債権者による社債の管理を補助するために、一定の事務を第三者に委託することができるようにすべきとの指摘がありました。

これを踏まえ、要綱案では会社が社債を発行する場合で、社債管理者を定めることを要しないときは、社債権者による社債の管理を補助することを、社債管理者よりも権限および裁量が限定された社債管理補助者に委託することができる社債管理補助者制度を新たに設けることとしました。

株式交付制度

この株式交付制度が、今回の会社法改正案の中で、最もM&Aに関係して注目度の高いものといえます。

株式交付制度導入の経緯・目的

M&Aにおいて、自社株を買収対価として用いた場合、譲受会社(買主)としては、金銭対価の場合と比較して資本調達にかかる負担が軽減されますから、大規模な買収やベンチャー企業など、手元資金に余裕のない企業による買収が促進されるという利点があります。

また、譲渡会社の株主など(売主)としても、譲受会社の株式を保有することで、譲受企業の成長や利益拡大などによって得られる利益を享受することができます。

このように、株式交付とは株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、その譲渡人に対して当該株式会社の株式を交付することをいいます。

しかし、現行法においては、自社株対価による買収を行うためには、株式交換、現物出資しか手段がありませんでした。

株式交換は、譲渡会社を完全子会社とすることまで予定していない場合には利用できず、現物出資については、現物出資規制として、原則として裁判所の選任する検査役の調査が必要で一定の時間と費用が掛かること(法207条)、募集株式の引受人である譲渡会社の株主および譲受会社の取締役などが財産価額補填責任を負う可能性があること(法212条・213条)、有利発行規制として株主総会の特別決議が必要となる可能性があること(法199条、201条、309条2項5号)などが障害として指摘されてきました。

そこで、このような指摘を踏まえて、要綱案では譲受会社がその株式を対価として、より円滑に譲渡会社を子会社とすることができるように株式交付制度を定めたのです。

▷関連記事:株式交換とは?メリットから株式交換比率、株価の変動と注意点までを徹底解説

株式交付の利用場面

上記のとおり、株式交付は株式を対価として親子会社関係を円滑に創設するための制度とすることが想定されていますから、株式交付により他の会社を子会社とする必要があり、すでに子会社である他の会社の株式を追加で取得する場合には株式交付を用いることはできません。

なお、要綱案の議論段階では、対象会社の範囲を日本法人にだけでなく外国法人にも拡げることで、外国法人を子会社化することもできるという議論もあったものの、今回の法改正では対象会社となり得るのは、日本法人に限られる見込みです。

その他

会社法~商法との違い~

冒頭で述べたとおり、会社法は会社の設立、組織、運営および管理について定めた法律であり、これに対し商法は、商人の営業、商行為その他商事について定めた法律です。

商法は明治時代に制定された法律であり、2005年に大改正が行われ、条文もひらがなの口語体になりました。

この2005年の商法改正の際、商法の第2編であった会社に関する内容と、有限会社法、株式会社の監査などに関する商法特例法などを統合再編してまとめたものが会社法です。つまり、会社法は、会社に関することを商法から切り離してまとめたものといえます。

M&Aにおいて知っておきたい会社法と商法の基礎知識

M&Aにおいては、ほとんど使用されるのは会社法です。これは、譲渡側も譲受側も会社であったり、会社の株式を譲渡する方法であったりするからです。一方で、商人の商売を譲渡するのであれば、商法の適用も考えられます。

大きな見方をするのであれば、会社に関することについては会社法、個人商人に関することであれば商法と考えることもできます。ただし、商法にも特定の商行為に関する規定があり、それらは会社にも適用されます。

会社法は会社の設立、組織、運営および管理に関する法律ですから、会社の事業の移転や経営権の移転、事業の切り離しなどについても会社法がその多くを規律します。したがって、会社に関係するM&Aはすべて会社法の手続きに則って行われなければなりません。

そのため、会社法の改正における株式交付制度が追加されることは、M&Aにおける新しい方法を提供するものであり、よりM&Aが活性化することが見込まれます。

まとめ

会社法と商法の違いは、会社に関する規程をまとめたものが会社法、商人の営業や商行為についてまとめたものが商法、という点です。

会社法はM&Aの手法も含めた改正案が審議される予定であり、また商法も2018年にその一部である運送・海商法制に関する改正がされました。会社法と商法はともに商売に関係する法律です。そのため、その時機に合った改正が必要とされます。

会社法などの改正は会社運営などに大きな影響を与えますから、不安な点については、専門家に確認してみるべきでしょう。

※この記事は執筆当時の法令等に基づいて記載しています。

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