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2024/11/18

期待収益率とは?計算方法・求め方やM&Aで活用する方法を解説

期待収益率とは?計算方法・求め方やM&Aで活用する方法を解説

株式や不動産の投資において欠かせない概念の1つに、期待収益率があります。

この期待収益率は、資金調達や企業価値の算出にも密接に関わります。

本記事では、期待収益率の計算方法から、期待収益率を使って求められる資本コストや企業価値評価まで解説します。

▷関連記事:M&Aとは?意味・流れ・手法・費用など基本をわかりやすく解説

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期待収益率とは?意味と定義

期待収益率とは、投資家が投資・運用している資産に対して、将来的に期待できる収益の平均値のことを指します。「期待リターン」や「要求収益率」とも呼ばれます。

投資家からすると、株式などへの投資は利率が決まっている国債などと比べ、将来の収益率が不確実です。そのため、値動きのある将来の収益性をリスクの程度も踏まえて推計し、求めることになります。

期待収益率を求めるには、ヒストリカルデータ方式、ビルディングブロック方式、シナリオアプローチ方式といった計算方法を用います。

期待収益率の計算方法・求め方

期待収益率の計算方法は、基準とするデータやアプローチの仕方で異なります。以下では、期待収益率の計算方法・求め方として代表的な3つの方式を解説します。

ヒストリカルデータ方式

ヒストリカルデータ方式は言葉どおり、過去のデータの平均値などで資産の期待収益率を求める推計方法です。過去に起きたことがそのまま将来に起きるわけではありませんが、過去の長期間のデータから将来の見通しを立てることができる、という考え方に基づいています。

ヒストリカルデータ方式の利点は、過去のデータにのみ基づいていることから恣意的な要素を排除できるため、より客観的な数字を出せるという点です。

一方、注意すべき点として、計算のために選んだサンプルの期間の長さや時期によって結果が大きく異なる点があります。

ビルディングブロック方式

ビルディングブロック方式は、資産の収益をいくつかの構成要素に分解し、個々の要素について予測値を置き、それらの積み上げを行って将来の収益率を予測する推計方法です。

具体的には、収益を実質経済成長率やインフレ率といった各資産に共通する市場の部分と、リスクのある資産の収益率から国債などの安全資産の収益率を引いた差によって求められるリスクプレミアムとに分解し、収益の構造を明らかにします。

ただし、リスクプレミアム部分については先述したヒストリカルデータ方式で計算することが一般的です。

シナリオアプローチ方式

シナリオアプローチ方式は、過去データに加え、マクロ経済予測や企業収益予測などを活用して収益率を予測する推計方法です。

将来の経済に基本、好循環、悪循環、衰退といったシナリオを立て、その発生確率を想定したうえで、シナリオごとに資産の収益率を推計します。経済状況に応じて想定される収益率と発生確率の一例は以下のとおりです。

経済状況想定される収益率想定される発生確率
基本20%50%
好循環30%20%
悪循環10%20%
衰退5%10%

経済状況ごとの収益率と発生確率を、以下の計算式に当てはめて期待収益率を計算します。

期待収益率=Σ{想定される収益率×想定される発生確率}

上表の一例をもとに算出すると、今回のシナリオで見込まれる期待収益率は18.5%です。

期待収益率=20%×50%+30%×20%+10%×20%+5%×10%=18.5%

ビルディングブロック方式と異なり、経済成長率やインフレ率といった市場の変動要因を仮定して推計する点が特徴です。

ただし、シナリオアプローチ方式は、想定した収益率や発生確率に基づいて計算します。算出された期待収益率はあくまで目安である点に注意が必要です。

ポートフォリオにおける期待収益率の計算方法

ポートフォリオとは、複数の資産の組み合わせのことです。資産をポートフォリオで形成する場合、まずは各資産の期待収益率を計算し、それに基づいてポートフォリオ全体の期待収益率を算出します。

ポートフォリオの期待収益率の計算方法は2つあります。1つは加重平均を用いる方法、もう1つは前述のシナリオアプローチ方式です。

加重平均を用いる方法では、各資産の収益率と保有割合を基に加重平均を計算し、ポートフォリオ全体の期待収益率を求めます。この方法は、各資産の大まかな期待収益率が把握できている場合、比較的容易に計算できる点がメリットです。

一方、加重平均を用いた方法は資産間のリスク(標準偏差や共分散)を考慮していないため、リスク評価には限界があります。その点、シナリオアプローチ方式では、将来の経済状況の複数のシナリオを想定するため、リスクを考慮した期待収益率の算出が可能です。

資金調達における資本コスト(WACC)の考え方

シナリオアプローチ方式

ここまで解説した期待収益率は、資金調達における資本コストを計算する際に重要です。

資本コストの算出に欠かせない「WACC(Weighted Average Cost of Capital、ワック)」は、資金提供者から平均的にどの程度のリターンを期待されているかの比率です。1円の資金をいくらで調達できているかを知ることができます。
多くの企業はこのWACCを投資家から期待されている収益のハードルレートとして使っており、WACCは、事業のための負債と株主資本を加重平均して算出することができます。

資本コスト(WACC)の計算式

WACCは以下の式で求められます。

WACC=株主資本コスト×株主資本/(有利子負債+株主資本)+負債コスト×(1-実効税率)×有利子負債/(有利子負債+株主資本)

先述した方法で求めた期待収益率は、株主資本コストと負債コストに該当します。

株主資本コストは、株主にとっての期待収益率であり、企業においては資本コストになります。同様に負債コストについても、債権者にとっての期待収益率であり、企業においては負債コストになります。

このように期待収益率とコストの関係の理解はWACCを求めるうえで重要です。

M&Aにおける期待収益率

M&Aの重要なステップの1つに企業価値評価があります。企業価値評価には様々な算出方法があり、そのうちの1つに、インカムアプローチと呼ばれる、企業の将来の収益獲得能力を評価する方法があります。

このインカムアプローチに分類される方法の中に、現在価値に割り引いて事業価値を算出する「DCF(Discounted Cash Flow)法」があります。

DCF法は、評価対象企業の将来のフリーキャッシュフローにリスクを反映させた割引率を適用して事業価値を算出し、株式価値を算定する手法です。その際の割引率には上記で求めたWACCを用います。

DCF法の詳細を知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
▷関連記事:【企業価値評価】インカムアプローチとは?DCF法の計算方法

まとめ

期待収益率は、投資の知識がある方にとっては耳馴染みのある言葉であり、ファイナンスの知識の1つという考え方が一般的です。しかし、M&Aにおける企業価値評価の1つであるDCF法にも大きく関係してきます。

期待収益率の理解が進むと、自社の企業価値の理解にも繋がるため、把握しておくべきポイントともいえるでしょう。

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