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2025/03/04

株式交換と株式移転の違いとは?メリット・デメリットや事例、手続き【図解付き】

株式交換と株式移転の違いとは?メリット・デメリットや事例、手続き【図解付き】

事業拡大や新規事業への参入、共同経営などの経営戦略を立てるうえで、株式交換・株式移転は候補になる手法の1つです。株式交換と株式移転はどちらも最終的に親会社・子会社の関係になる点は共通していますが、その手法は異なります。

本記事では、対価を株式とすることを前提に、よく混同されてしまう株式交換と株式移転の違いや、株式交換・株式移転のメリット・デメリットを解説します。

なお、本記事での会社は株式会社を指し、株式移転は複数の会社が子会社になる共同株式移転とします。

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株式交換・株式移転とは

「株式交換」は、ある会社が子会社となり、全ての発行済株式をすでに存在する他の会社に取得させ、完全親子会社関係を創設するものです。経営統合や子会社の完全子会社化による経営効率の向上など、グループ再編において効果を発揮する目的で用いられます。

一方、「株式移転」は、子会社となる会社の株主が保有する全ての発行済株式を新設する会社に取得させ、自社を完全子会社化することです。一般的には、ホールディングスなどの持株会社を設立する際の組織再編で用いられます。

「株式交換」と「株式移転」の最も大きな違いは、既存の会社に株式を取得させるか、新設する会社に株式を取得させるかという点です。

株式交換の図解

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株式移転の図解

▷関連記事:株式移転とは?手続きからメリット、株式交換との違いまで基礎知識を解説

株式交換・株式移転のメリット

M&Aにおける株式交換・株式移転には以下のようなメリットがあります。

・買収資金を用意する必要がない
・速やかに経営統合を進められる
・少数株主を排除できる

買収資金を用意する必要がない

子会社になる会社を買収する際、親会社になる会社が新株か自己株式で対価を渡す場合は、買収資金を用意する必要はありません。新たに親会社になる会社に充分な資金がなくても株式交換・株式移転を実施できます。

速やかに経営統合を進められる

合併で2つ以上の会社が1つになる場合と比べて、PMI(Post Merger Integration)の負担が軽減されます。複数の会社が1つの会社になる際は、人事評価の方法や経理処理などの制度が異なる2つの会社が1つになるため、制度を一本化するための作業が必要になります。さらに、この作業を合併の日までに終了させる必要があります。

一方、株式交換・株式移転の場合、完全親会社と完全子会社はそれぞれ別会社として存在するため、上述のように社内ルールなどを一本化する必要は必ずしもなく、速やかに経営統合を進められます。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて実施期間や期待できる効果を解説

少数株主を排除できる

株式交換・株式移転の場合、少数株主が反対している場合でも、株主総会の特別決議で3分の2以上の賛成があれば株式交換・株式移転を実行できます。このとき、反対した株主の株式も含めて買い手企業に移すことができます。

親会社になる会社が全ての株式を取得して完全子会社化すれば、少数株主を排除でき、スムーズな事業運営や意思決定が可能になります。

株式交換・株式移転のデメリット

M&Aにおける株式交換・株式移転にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットがあります。

・買い手企業の株価が下落するリスクがある
・買い手企業の株主構成が変わる場合がある
・様々な手続きが必要で手間がかかる

買い手企業の株価が下落するリスクがある

子会社にする会社の株式を取得する際、親会社になる会社が新株を発行すると、株数が増えて1株あたりの利益が下がり、株式の価値が低下して株価が下落するリスクがあります。

また、新会社を子会社として取り込むとシナジー効果が期待されて株価上昇要因になるケースがある一方で、子会社化に伴い費用がかかる点や買収で事業規模が大きくなると管理コストが増大する点などが株価にマイナスの影響を与え、株価の下落につながる可能性があります。

買い手企業の株主構成が変わる場合がある

株式交換・株式移転に伴って買収する側の企業が自社の株式を交付すると、株主構成が従来と変わるため、事業経営に影響が出る場合があります。

前述のとおり、子会社化する会社の少数株主は株式交換・株式移転によって排除できますが、買収企業の株主構成が変われば株主総会の運営がスムーズにいかなくなる可能性がある点は注意が必要です。

様々な手続きが必要で手間がかかる

子会社になる会社の全株式を取得することなどから、手続きは多岐に渡ります。具体的には、株主総会での決議や、株式交換・株式移転に反対する株主からの株式買取請求への対応などが必要となります。

株式交換・株式移転の活用方法と事例

株式交換と株式移転には以下のような違いがあります。

株式交換株式移転
親会社既存会社新設会社
反対株主の買取請求ありあり
企業譲受などでの活用可能原則不可

※共同株式移転の場合は、新設会社株主が得る株式の比率によっては企業譲受けの手段として活用することもできます。

株式交換と株式移転のいずれを活用するのかは、両者の違いを踏まえて決める必要があります。

株式交換が活用されるケース

・グループ再編において、既存の100%子会社でない会社の株式を100%保有する子会社にするケース

上記の事例としては、日産自動車株式会社が愛知機械工業株式会社を2012年に株式交換にて子会社化した例があります。株式交換前は、日産自動車は愛知機械工業の株式の41.4%を保有していましたが、100%子会社とすることで、グループ連携を強化する目的で株式交換を実施しました。

株式移転が活用されるケース

・グループ再編において、持株会社を設立し、その傘下にグループ内企業を子会社として置くケース
・複数の会社で共同持株会社を設立し、共同経営を行うケース

株式移転の事例としては、株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴが2014年に株式移転により株式会社KADOKAWA・DWANGOを設立し、翌年に社名をカドカワ株式会社に変更した事例があります。共通の親会社を持つグループ企業になることで新規サービスを迅速に提供することを目的とした株式移転の事例です。

株式交換・株式移転の手続き

株式交換・株式移転の基本的な手続きの流れは以下のとおりです。

1. 株式交換契約・株式移転計画の作成
2. 株式交換契約・株式移転計画の備置・開示
3. 株式交換契約・株式移転計画の承認決議
4. 反対株主の株式買取請求への対応
5. 対価の交付
6. 株式交換・株式移転の効力発生
7. 事後開示書類の備置・開示

株式交換と株式移転の基本的な流れに違いはなく、以下で解説する手順に沿って対応することになります。

1. 株式交換契約・株式移転計画の作成

会社法の規定に基づき「株式交換契約」「株式移転計画」を作成します。株式交換契約・株式移転計画は親会社になる会社と子会社になる会社で作成します。

株式移転計画を作成する場合、株式移転により設立する株式会社(株式移転設立完全親会社)に関して計画書に盛り込む項目として、会社法で定められている主なものは以下のとおりです。

・株式移転設立完全親会社の目的・商号・本店所在地・発行可能株式総数
・株式移転設立完全親会社の定款で定める事項
・株式移転設立完全親会社の設立時の取締役の氏名
・株式移転設立完全親会社の資本金と準備金

株式交換契約・株式移転計画の内容決定後に内容を開示し、その際に併せて株主への通知・広告も行います。

2. 株式交換契約・株式移転計画の備置・開示

株式交換・株式移転をするためには、会社法で定められた一定の事項を記載した書面または電磁的記録をその本店に備え置かなければいけません。備置・開示の期間は、株主総会の2週間前・株主への通知日・公告日のいずれか早い日から6ヶ月間です。

開示が必要な事項としては、株式交換契約・株式移転計画の内容や最終事業年度の末日後に生じた重要な事象の内容などが挙げられます。

3. 株式交換契約・株式移転計画の承認決議

株式交換契約・株式移転計画は、原則として株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。特別決議では、議決権の過半数を占める株主の出席と3分の2以上の賛成が必要です。

4. 反対株主の株式買取請求への対応

株式交換・株式移転に反対する株主は、原則として株式の買取請求を行うことができます。株式の買取請求がある場合、買取の対応を行います。

5. 対価の交付

子会社になる会社の株主へ対価となる株式の交付を行います。

6. 株式交換・株式移転の効力発生

株式交換では株式交換契約で定めた日から効力が発生します。対して、株式移転では新設した親会社になる会社が登記された日に効力が生じます。

7. 後開示書類の備置・開示

株式交換・株式移転を実施したら、会社法で定められた一定の事項を記載した書面または電磁的記録をその本店に備え置かなければいけません。備置・開示の期間は、効力発生日から6ヶ月間です。

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株式交換・株式移転の税務上の取り扱い

株式交換・株式移転において、対価が株式のみで行われて適格要件を満たした場合、基本的に親会社になる会社、子会社になる会社ともに課税は発生しません。
ただし、対価が金銭で支払われた場合には、株式交換・株式移転前の子会社の株主は原則として課税されます。株式交換・株式移転の税務上の取り扱いは単純なものではないため、株式交換・株式移転を検討する際、最終的な税務上の扱いは会計士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

株式交換・株式移転において株式を対価とする場合は、買収資金を必要としないため事業拡大や共同経営に比較的活用しやすい方法です。また、グループ再編の際にも活用できます。ただし、M&Aでよく行われる株式譲渡と比較して手続きが多く、税務上の扱いも複雑なため経営者自身で簡単に対応できるものではありません。

実際に企業の譲渡・買収を検討する際は、株式交換・株式移転をはじめとした各手法の特徴や違いを踏まえて最適な方法を選択する必要があるので、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

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