企業経営に関わるファンドの中にも、いろいろな種類があります。
その中でも「バイアウトファンド」とは、どのようなファンドなのでしょうか。
本記事では、バイアウトファンドを利用するメリット・デメリットや、仕組みなどをわかりやすく解説します。
また、他のファンドとの違いや、バイアウトファンドの事例も紹介しています。
バイアウトファンドを活用する際の参考にしてみてください。
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バイアウトファンドとは?
バイアウトファンドとは、投資家から資金を集めて対象企業の価値向上に努め、後に企業を売却し利益獲得を目指すファンドを指します。
投資金額が大きく、投資期間が短期間という点が特徴です。
高いリターンを獲得し、投資家へ利益を還元することを目標としています。
バイアウトファンドの仕組み
バイアウトファンドの仕組みは、以下の通りです。
①投資家から資金を預かる
②投資対象企業に出資、および経営に関与する
③企業価値を向上させる
④企業価値が上がった際に株式や事業を売却する
⑤高い利益を実現させる
バイアウトファンドが「ハゲタカ」と呼ばれる理由
バイアウトファンドは、ある程度成熟した企業を中心に投資が行われます。
しかし、時に投資手法として、経営状況の悪い会社を安値で買収することから「ハゲタカ」と呼ばれることもあります。
以前、ドラマや映画で「ハゲタカ」という言葉が使われたこともあり、一般的に知られるようになりました。
ベンチャーキャピタルとの違いは?
ベンチャーキャピタルとバイアウトファンドは、よく混同されがちですが違いがあります。
ベンチャーキャピタルの投資対象は、これから上場を目指すベンチャー企業です。
一方、バイアウトファンドは、ある程度成熟した企業が投資対象となります。
また、ベンチャーキャピタルは経営に携わることなく出資のみのため、出資金の投資額も低く抑えることができます。
それに比べてバイアウトファンドは、経営の中に入り込み企業価値を向上させることが狙いで、企業への出資というよりは、”企業の買収”です。
企業買収に近い形となるため、ベンチャーキャピタルより大きな投資額が必要となります。
PEファンドとの違いは?
PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)とは、株式市場に上場していない未公開株、あるいはそれらの企業への投資を行うファンドを指します。
PEファンドの中には、「バイアウトファンド」「ベンチャーキャピタル」「事業再生ファンド」などが含まれ、広い意味で使われています。
バイアウトファンドは、PEファンドの中における、一つの投資タイプといえます。
ヘッジファンドとの違いは?
ヘッジファンドとは、株式だけでなく「債券」「先物」「オプション」「商品」など、世界中の金融商品を幅広く投資対象とするファンドです。
公開市場においてさまざまな投資方法を駆使し、利益を生み出しています。
バイアウトファンドと異なり、企業の経営に携わることはありません。
バイアウトファンドの特徴
ここでは、バイアウトファンドの主な特徴を解説しましょう。
経営権を取得する
バイアウトファンドは株式を過半数以上取得し、経営権を確保することが大きな特徴です。
経営権を取得することで企業に入り込み、新たな経営方針で事業を進めることができます。
対象となる企業側としては、専門家による経営支援を行ってもらうことで、短期間での業績改善が可能となります。
企業価値を向上させる
バイアウトファンドのリターンは、買収時よりも企業価値を向上させ、売却時に利益を得ることで成り立ちます。
経営権の獲得によってあらゆる経営戦略の提案を行い、企業価値が向上するように進めていきます。
投資期間は限定的
バイアウトファンドの投資期間は、5年前後に設定するのが一般的で、長くても10年程度です。
短期間で利益を確定して投資家へ分配するため、投資期間が限定的となっています。
企業価値の向上を生み出しやすい施策を計画実行し、バイアウトを進めていきます。
バイアウトファンドを利用するメリット
バイアウトファンドを利用すると、多くのメリットがあります。
どのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
事業承継できる
後継者がいないオーナー企業の場合、会社の継ぎ手として活用されるのがバイアウトファンドです。
バイアウトファンドにおける事業承継は、ファンドに企業を預け、ファンドの支援によって企業価値を向上させた上で、後継者や事業会社へ譲渡する戦略となります。
また、相続を見据えて企業の売却を選択するケースもあるでしょう。
後継者不足に悩む経営者が活用しています。
事業再生できる
企業の成長が停滞し、伸び悩んでいる場合にも、バイアウトファンドによる事業再生が期待できます。
バイアウトファンドは、資金だけでなく経営の専門知識をもった人材も派遣されるため、手厚いサポートを受けることができるのです。
ファンドからの多額な資金提供により、事業再生できる可能性が高まります。
また、積極的に経営に関わる専門家がいることで、有効な経営戦略の提案を行い、企業価値を向上できます。
バイアウトファンドはおおよその投資期間が決まっているので、短期間で企業価値を改善できる可能性が高いでしょう。
カーブアウトを行える
カーブアウトとは、「切り離す」や「切り出す」などの意味を持っています。
企業が事業の一部や子会社を切り離し、ベンチャー企業として独立させ、収益改善や事業成長を図る経営戦略です。
バイアウトファンドを活用したカーブアウトを行う場合、子会社が不採算事業だった際に他社に譲り渡すことで本事業へ注力できるようになります。
また、不採算事業だった子会社は、バイアウトファンドが買収することによって企業価値を向上させることも可能です。
バイアウトファンドを利用するデメリット
バイアウトファンドは多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
ここでデメリットについても確認しておきましょう。
経営の自由度が制限される
バイアウトファンドの目的は、企業価値を向上させて利益を上げることです。
あくまでも、ファンドと投資家の利益を確保するために企業価値を向上させるのです。
中には、ファンドと企業の間で方針がずれ、対立するケースもあります。
経営権はファンド側にあるため、企業はファンドに従わざるを得ない状況となり自由度が制限されるのが難点としてあります。
バイアウトファンドは企業を短期間で売却することを目標としているため、長期的な戦略を立てない傾向にあります。
自社の経営方針が変わる可能性があることを理解しておきましょう。
経営権を失うリスクがある
バイアウトファンドは、利益を得るためにM&Aによって企業を売却することにより、第三者が経営権を取得する可能性が出てきます。
つまり、元の経営者は「経営権を失う可能性がある」ということです。
今後も自分で経営を続けたい方には、あまりおすすめできません。
リスクを把握した上で、バイアウトファンドに依頼しましょう。
代表的なバイアウトファンドの例
日本および海外では、多数のバイアウトファンドが存在しています。
ここでは、代表的なバイアウトファンドの例を紹介しましょう。
カーライル・グループ
カーライル・グループは、世界規模で展開する投資ファンドです。
バイアウトファンド以外の分野でも投資ファンドを運営しており、合計3,760億ドルもの資産を運用しています。
全世界において投資先はさまざまですが、小売業に対する投資を専門的に行うことで知られています。
日本では、2000年にオフィスを開設しており、外資系にもかかわらず、スタッフ全員が日本人で、日本の投資スタイルを貫いていることが特徴です。
カーライル・グループの投資実績例は、以下の通りです。
・名水美人ファクトリー株式会社
・センクシア株式会社
・モンクレール
ベインキャピタル
ベインキャピタルは、世界で最大規模のプライベート・エクイティ・ファンドです。
世界14ヵ所(東京、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、ミュンヘン、香港、上海、シドニーなど)にオフィスを構え、日本オフィスは2005年に設立。
日本国内で活動するPEファンドとしては、最大級のファンドです。
2021年には、日本国内の中堅企業へ特化した”日本ファンド”を立ち上げ、さまざまな企業の成長ステージに応じた支援・投資を行っています。
ベインキャピタルの投資実績例は、以下の通りです。
・すかいらーくグループ
・株式会社マクロミル
・株式会社雪国まいたけ
・大江戸温泉物語株式会社
・株式会社ドミノ・ピザ ジャパン
まとめ
本記事では、バイアウトファンドを利用するメリット・デメリットや、仕組みなどを解説しました。
バイアウトファンドとは、企業買収後に経営権を握った状態で企業価値を向上させ、売却することを目的としたファンドです。
バイアウトファンドを活用する際には、自社の目的を見失わないよう、デメリットも理解した上で進めていきましょう。