「事業承継対策をしたほうが良い企業の特徴は何だろう?」
「事業承継対策のポイントや流れが知りたい」
このような疑問やお悩みはありませんか?
少子高齢化や都市部への人口集中なども影響し、後継者問題に悩む企業が増えています。
帝国データバンクが2020年に行った調査では、約26万6,000社中、約17万社(約65.1%)が後継者不在という結果が出ました。
参考:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)|帝国データバンク
事業承継を成功させるためには、しっかりと準備をした上で計画的に進めることが重要です。
この記事では、事業承継対策をした方が良い企業の特徴や対策の流れ、成功させるためのポイントなどを現役のM&Aアドバイザーが解説しています。
事業承継の成功事例も紹介していますので、ぜひ最後までご一読ください。
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事業承継を対策する必要性
事業承継を進める中で、問題やトラブルが発生してしまうことがあります。
そのため、予想される問題やトラブルを回避できるよう、事前に対策を講じることが重要です。
ここでは事業承継を対策する必要性について、以下3点を解説します。
・企業の存続
・相続トラブルの事前予防
・節税対策
1つずつ見ていきましょう。
▷企業の存続
事業承継の対策を講じないと、企業の存続に支障が出る可能性があります。たとえば、ワンマン経営の体制を取っている企業があるとしましょう。
事業承継の準備をしないまま経営者が高齢化し、判断能力が低下したり、亡くなったりしまうと、企業の存続すら危ぶまれる事態に陥ってしまいます。
企業の存続に向けて、早めに事業承継対策を講じることが重要です。
▷相続トラブルの事前予防
事業承継を対策する必要性の2つ目は、相続トラブルの事前予防です。企業が承継するものには、株式や不動産なども含まれます。
十分な対策を講じていないと相続トラブルが発生し、円滑に事業承継できなくなる可能性もあるため、注意が必要です。
また、相続トラブルが起きると社外にも影響を及ぼすことがある点に注意しましょう。例えば、銀行から信用されなくなれば、融資が途絶える恐れもあります。
相続トラブルの事前予防には、事業承継の対策を講じることが大切です。
▷節税対策
事業承継を対策する必要性の3つ目は、節税対策です。
事業承継時は相続税や贈与税が課せられますが、正しく手続きを踏むことで事業承継税制の適用となり、節税対策ができます。
後継者にとって、事業継承後に課せられる税負担は大きな悩みの1つです。
計画的に事業継承の対策を講じることで、後継者の負担を少なくできるように努めましょう。
すぐに事業承継対策をした方が良い企業の特徴
すぐに事業承継対策をした方が良い企業の特徴は、以下の3つです。
・後継者がいない企業
・複数の相続人が存在する企業
・経営者だけが決裁権を持っている企業
1つずつ解説していきます。
▷後継者がいない企業
1つ目は、後継者がいない企業です。
事業承継の形の1つに親族内承継がありますが、少子高齢化の影響で親族内に後継者がいない企業が増えています。
いくら積み上げてきた実績や保有する技術があったとしても、後継者がいない企業はいずれ廃業せざるを得ません。
廃業を回避するためにも、後継者問題に悩む企業は事業承継対策を図る必要があります。
▷複数の相続人が存在する企業
2つ目は、複数の相続人が存在する企業でも、事業承継対策が求められます。
相続人が複数いると相続トラブルも発生しやすいため、相続時に不公平が生まれないよう対策が必要です。
また、相続トラブルを起こしていると取引先に今後の経営を不安視されてしまうこともあります。
そのため、複数の相続人が存在する企業では事前にしっかり事業承継対策を進めておくことが大切です。
▷経営者だけが決裁権を持っている企業
3つ目は、経営者だけが決裁権を持っている企業です。
中小企業は経営者の発言で経営が左右される傾向も強く、経営者だけが決裁権を持っていることがあります。
また、経営者個人の繋がりで取引先との関係性を保っているケースでは、経営者に突然不幸があった際に取引先との関係が崩れてしまうこともあるでしょう。
さらに、経営者だけが決裁権を持っている企業では、周りが事業承継について意見を出しづらい側面もあります。
なぜなら、事業承継対策をすすめることは、経営者の引退を迫っていると思わせてしまうからです。
そのため、経営者が決裁権を持っている企業においては、経営者自身が積極的に事業承継対策を講じることが求められます。
事業承継対策の流れ
事業承継対策の基本的な流れを紹介します。
・事業承継に必要な情報を集める
・後継者候補を決める
・事業承継計画書を作成する
正しい流れを理解して、自社での取り組みに活かしてください。
▷事業承継に必要な情報を集める
はじめに、事業承継に必要な情報を集めましょう。
後継者として相応しい人物は誰か、今の経営状態はどうかなど、まずは自社の置かれた状況を適切に把握することが重要です。
事業承継に必要な情報には「会社の資産」も含まれます。
器具備品や建物などの有形固定資産、商標権やソフトウェアといった無形固定資産など、保有する資産の全てを調査しましょう。
また、従業員も会社の資産であることから、従業員数や雇用種別を把握しておく必要があります。
なぜ会社の資産を知る必要があるかというと、事業承継時は企業価値に応じた相続税・贈与税が課せられるからです。
事業承継後、税負担の大きさから経営状態を悪化させることがないように、必要な情報を集めて計画的に対策を講じましょう。
さらに、おおよその個人財産も把握しておく必要がありますので、自社株式の保有状況や個人保証の現状などを整理してください。
後継者へなるべく負担をかけないように、財務状況はできるだけ正常な状態で事業承継するのが望ましいです。
▷後継者候補を決める
必要な情報を集めた後は、後継者候補を決める作業に移ります。
事業承継の主な形は、親族内承継・従業員承継・M&Aの3パターンです。
親族内や社内に後継者候補はいるのか、候補がいた場合、能力や適正はどうかなど、しっかり見定める必要があります。
また、どの形で事業承継するにしても、関係者から理解を得ることが大切です。
各承継方法の特徴は、以下の通りです。
・親族内承継
親族内承継では、関係者から後継者を受け入れてもらいやすいという特徴があります。
また、事業承継時期を柔軟に設定しやすいことから、準備期間を長く確保できる点もメリットと言えるでしょう。
一方で、いくら家業であっても後継者本人に引き継ぐ準備ができていないと、スムーズな事業承継はできません。
そのため、後継者候補とは早めに意思疎通を図ることが重要です。
・従業員承継
従業員は業務に精通しているため、事業継承を進めやすいという特徴があります。また、従業員承継は他の従業員からの理解も得られやすいでしょう。
従業員へ事業継承する際には、経営者の個人債務をできるだけ減らしておくことをおすすめします。
なぜなら、経営者の個人債務がある場合、抵抗感を示されて事業継承自体がスムーズに進まないケースも考えられるからです。
ただし、従業員承継の場合、後継者候補に株式を買い取る資金力がないと事業承継できない点に気を付けましょう。
・M&A
親族内や従業員内に後継者候補がいないために、M&Aでの事業承継を選択する企業も増えています。
M&Aでは、後継者を外部へ広く求めることができるだけでなく、会社売却による利益を獲得できる点も大きなメリットです。
一方で、売れる企業になるためには会社の魅力を磨き上げることが欠かせません。業績改善に取り組みながら、会社の強みを見える化することが重要です。
M&Aをより確実に成功させたいのであれば、M&Aの専門家へ依頼するのもおすすめです。
事業承継M&Aについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:事業承継M&Aの基礎知識とメリット・デメリット、ポイントについて解説!
▷事業承継計画書を作成する
後継者候補が決まったら、事業承継計画書を作成します。事業承継計画書は、事業承継の計画を書面化したものです。
計画書には、中長期の事業計画や後継者への教育内容などを具体的に記載していきます。
計画書を作ることで、後継者や周囲と事業承継に関する共通認識が持てるだけでなく、事業承継税制の適用を受けやすくなる等のメリットがあります。
事業承継計画書の書き方は、次の記事を参考にしてください。
関連記事:事業承継を円滑に進めるための「事業承継計画書」の書き方
事業承継の成功事例
ここでは、事業承継の成功事例を3つ紹介します。
・千房株式会社の親族内承継
・メイツ出版株式会社の従業員承継
・有限会社ワークハウスによる株式会社恵比須堂の買収
事例を参考に、自社での取り組みに活かしてください。
▷【事例1】千房株式会社の親族内承継
1つ目は、父と三男の間で行われた親族内承継です。
千房株式会社は、1973年に中井政嗣氏が創業したお好み焼きチェーン店を運営する企業です。
2018年、中井政嗣氏は代表取締役会長へ、三男の中井貫二氏は代表取締役社長に就任して事業承継が行われました。
元々は政嗣氏の長男が後継者として働いていましたが、病に倒れた長男の代わりに三男の貫二氏が事業承継を決意します。
貫二氏の社長就任後、千房は2019年に新業態「おでん すみ吉 心斎橋」を開業。
コロナ禍の2020年には初の郊外型店舗を岐阜県でオープンさせ、「世界一従業員が幸せな会社を作る」という目標のもと経営に取り組んでいます。
▷【事例2】メイツ出版株式会社の従業員承継
2つ目は、共同創業者への従業員承継です。
書籍出版事業を営んでいたメイツ出版株式会社では、2016年に前田信二氏から三渡治氏へ事業承継が行われました。
メイツ出版株式会社は、1999年に大手書店の丸善グループから営業譲渡する形で創業します。
創業時は、丸善グループ時代からの同僚であった前社長の前田氏、現社長の三渡氏を含む役員3名体制でのスタートでした。
その後、前田氏が三渡氏へ事業承継を相談し、後継者決定から5年の年月をかけて代表者交代が行われます。
2016年の代表者交代後も前社長の前田氏は三渡氏をサポートし、2018年に前田氏は会長職を退任しました。
創立20周年にあたる2019年には、株式会社メイツユニバーサルコンテンツへ社名を変更、メイツはすでに、次の承継を見据えた後進の育成にも力を入れています。
▷【事例3】有限会社ワークハウスによる株式会社恵比須堂の買収
3つ目は、M&Aによる事業承継です。
2018年、就労継続支援サービスを提供する有限会社ワークハウスは、老舗和菓子屋である株式会社恵比須堂を買収します。
新分野への進出を考えていたワークハウスは、福井県事業引継ぎ支援センターに相談、福祉×和菓子製造の新たな取り組みを目指し、恵比須堂の事業を引継ぎました。
一方の恵比須堂は、親族や従業員の中に後継者候補が見つからず、事業承継に悩んでいました。
そこで、2017年に福井県事業引継ぎ支援センターを紹介され、ワークハウスとのM&Aを決断。
事業承継後のワークハウスは、新商品開発や福祉会社・カフェのM&Aなどを実施します。
ワークハウスは、福祉事業を中心にレストラン事業や不動産事業など幅広く事業展開しています。
事業承継対策を成功させるためのポイント
事業承継対策を成功させるためのポイントは、以下の4点です。
・計画的に行う
・後継者を育成する
・株数対策を行う
・株価対策を行う
それぞれ解説していきます。
▷計画的に行う
事業承継対策を成功させるための最も重要なポイントは、計画的に行うことです。
事業承継は経営者一人だけで行えるものではありません。後継者や周囲の理解を得ることが必要であるため、事業承継計画書を作成して計画的に進めることが大切です。
▷後継者を育成する
一般的に、後継者の育成には数年単位の年月を要します。また、後継者自身も経営者として働くための準備と覚悟が必要です。
そのため、スムーズに事業承継できるよう、後継者候補とは早くから意思疎通を図りましょう。
なお、後継者を育成する際は「後継者視点で物事を考えること」も重要です。事業を引き継ぐにあたり、後継者は様々な不安を抱えています。後継者の不安を少しでも和らげるよう、献身的なサポートに努めましょう。
▷株数対策を行う
事業承継対策を成功させる三つ目のポイントは、株数対策を行うことです。
株数対策とは、経営権を失わない範囲で自社株を移転させる対策を指します。自社株の移転先としては、従業員持株会や会社に好意的な株主などが挙げられます。
株数対策を行うことで後継者の持分比率が下がり、税負担を少なくすることが可能です。
▷株価対策を行う
事業承継対策を成功させるためには、株価対策も重要です。
従業員持株会や役員退職金などの活用によって株価を引き下げ、譲渡・相続時の税負担を少なくしましょう。中小企業の株式は換金性が低く、納税資金の確保に困るケースも少なくありません。
そのため、株価対策を行うことは、事業承継をスムーズに行う上での大切なポイントになります。
まとめ
後継者問題に悩む企業が増える中、事業承継対策を成功させるためには計画性を持った取り組みが求められます。
後継者にも承継に向けた準備や覚悟が必要ですので、後継者候補とは早めに意思疎通を図っておきましょう。
また、経営者が突然の体調不良に陥って事業の存続が危ぶまれるケースも存在します。
すぐに事業承継対策をした方が良い企業は、今回解説した内容をもとに早めの行動を心掛けてください。
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