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2023/10/03

事業承継税制による相続税対策とは?具体的な税負担や税制を活用するための要件も解説

事業承継税制による相続税対策とは?具体的な税負担や税制を活用するための要件も解説

事業承継を考えた際に、経営者と後継者に重くのしかかるのが、多額の税金ではないでしょうか。

「税金の支払いさえなければ…」と考える方にとって魅力的な、税金をゼロにできる制度が「事業承継税制」です。2018年の税制改正により、10年間に限り大きく拡大されました。
そこで今回は、相続のための事業承継税制が適用される要件について解説をします。
期間が限定されている中で、円滑に事業承継税制の活用をするために、本記事を参考にしてみてください。

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事業承継に伴う税金

事業承継の相続には、どれくらいの相続税がかかるのでしょうか

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円以上55%7,200万円

上記の図は、国税庁が公表している「相続税の速算表」を引用しています。
この速算表により、法定相続人ごとの税額を足したものが、相続税の総額となります。
世界的にも「日本の相続税は高い」と言われている通り、最大55%の税率が課せられるため、事業承継には多額な税金がかかることがわかります。

事業承継税制とは?

事業承継税制とは、事業承継を受けた後継者が会社の事業を継続させることを条件に、本来かかる相続税や贈与税を全額免除する特例の制度です。
ただしこの制度は、相続か贈与のみに適用され、後継者に売却をして株式を渡す場合には適用になりません。
その他にも、事業承継税制の適用においては、いくつかのポイントがあります。

▷後継者が親族以外でも適用される

後継者が親族以外であっても、事業承継税制は適用となります。

しかし、前述の通り売却では適用されません。
この場合には役員退職金を多めに取り、創業者利益を確定させ、株式は役員に事業承継税制を使って贈与する方法もあります。

税金が免除になるためのステップとは?

税金が免除になるためのステップとは?

制度の正式名称は「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予・免除の特例」です。
気を付けておきたいポイントは、事業承継後、すぐに税金が免除になるわけではない点が挙げられます。
後継者が事業を継続させ、さらに次の後継者へバトンをつないだのちに、初めて免除になるのです。そのため免除になる前の期間は、税金の支払いが「免除」されている状態となります。

そこで疑問となるのが、後継者を見つけたのに次の後継者の決定までしなければならないのかという点です。
こちらについては事業承継税制を使う際に後継者が決まっていれば、次の後継者まで決める必要はありません。4つのうちの「特例措置」として設けられた“経営環境の変化に応じた差額の免除”に該当するためです。
最初から低い株価で贈与・相続を受けたものと考え、低い株価に対応する贈与税・相続税だけを納税すれば良いので、ご安心ください。

▷仕組みを理解した上で事業承継税制活用の検討をすべき

事業承継税制の基礎知識やポイントをふまえた上で、自社にとって事業承継税制を使うかどうかを判断しましょう。
前提として、売却ではなく相続・贈与であること、そして前述した特例措置を受けるための「特例承継計画」を都道府県に提出し、株式等の承継をすることとなります。

事業承継税制による相続税対策とは?

事業承継を行う上で、できることなら会社の運営資金を少しでも多く残したいと思うのが、経営者の考えではないでしょうか。
相続税の節税対策として、以下の6つを参考にしてください。

▷株価引き下げ

会社の価値を評価する方法の中で、株価を参考にするものがあります。
自社株の評価額における計算方法は3つあり、「類似業種比準方式」はよく使われる方法です。ここで評価額を下げることで、相続税を減らすことが可能となります。
計算式で登場する純資産額・利益額・配当といった観点も、知っておくようにしておきましょう。

▷株式移転

株価引き下げの次に効果的だといわれているのが、株式移転です。
相続時の株式にかかる相続税は時価計算となるため、株価を下げてから後継者に移転することで、節税効果が期待できます。
しかし、生前の株式移転となると、経営者が会社の筆頭株主ではなくなる点に留意してください。

▷相続時精算課税制度

節税に役立つ方法として、相続時精算課税制度の活用もおすすめです。
これは60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に対し財産を贈与した際に使える制度を指します。
累計贈与額が2,500万円までの贈与財産に対して非課税とし、相続時にその分を計算します。注意したいのは、贈与税に関する特例のため、経営者の死亡前に事業承継を行わなければならない点です。累計2,500万円を超える部分は、通常の贈与税と同じ扱いになります。

▷遺産分割

相続財産を引き受ける後継者が相続税の控除を受けられる場合に限り、この方法が適用となります。
ただし、節税のために遺産分割を優先するあまり、不公平にならないよう注意をしてください。相続後のトラブルを防ぐためにも、節税と遺産分割の割合に公平感を持つよう留意しましょう。

▷不動産投資

土地の評価額は、公示価格の80%程度で計算されるため、不動産投資を行うのも節税として効果的です。
ただし、現金化が難しくなることから、節税のために不動産の建築をすることは避けたほうが良いでしょう。最初から不動産があることで、より節税ができるという認識を持っておくべきです。

▷法人保険

法人保険の保険料は損金計上できるため、利益を圧縮して自社株の評価額を下げられることから、節税の効果もあります。利益の圧縮前より税金の支払い額は少なくなるので、法人保険に加入していない場合は、ぜひ加入を検討してみてください。
ただし、解約金の返戻率が低すぎると、手元から減る金額が多くなってしまうことから、節税対策にならないケースも。法人保険の加入による節税を考えている方は、上記の点にも留意しておきましょう。

事業承継税制を活用するための要件

事業承継税制を活用するための要件

ここでは、事業承継税制を使うためにクリアすべき要件をまとめています。
細かいところまで要件が及んでいるので、しっかりとチェックしていきましょう。

▷先代経営者が満たすべき要件

先代経営者が満たすべき要件については、2パターンに分けられます。
「相続税」の納税猶予を受ける場合には、以下をご確認ください。

①会社の代表者であったこと
②先代の経営者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること
③ 先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であること

つづいて「相続税」の納税猶予の場合についても①〜③の要件と同様になりますが、①の内容に加えて「贈与までに代表権を返上する必要があること」が追加されます。
相続直前で代表取締役を退任していたり、相談役・会長になっていたりしても、過去に代表取締役の経験があれば問題ありません。

▷後継者が満たすべき要件

後継者が満たすべき要件は、以下となります。

① 会社の代表者であること
② 20歳以上で、贈与の直前において「3年以上役員」であること
③ 後継者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること
④ 後継者が同族関係者の中で筆頭株主であること
⑤ 相続により取得した株式を1株も譲渡せず、継続して保有すること

相続発生時に後継者が役員であることが、最も重要なポイントです。
そのため、将来的に事業承継税制の利用を考えているのであれば、後継者候補を役員として登記させておくことを対策として考えるのが良いでしょう。

▷会社が満たすべき要件

対象となるのは中小企業であり、かつ下記の要件にあてはまるものとなります。

① 上場会社でないこと
② 風俗営業会社でないこと
③ 資産管理会社でないこと(一定の要件を満たすものはのぞきます)
④ 従業員が1名以上いること

従業員数のカウントは、社会保険加入者の人数により決められます。
中小企業の定義は「中小企業基本法」で定められており、資本金もしくは従業員基準のいずれかを満たすことで、該当となります。
条件を満たしていない場合、従業員数はコントロールできませんが、資本金の減額をすることは可能です。申請においては、その会社が所在する都道府県から認定を受ける必要があります。

▷事業承継から5年間守るべき要件

①後継者が会社の代表者、かつ筆頭株主である
②後継者が猶予対象株式を継続保有している
③雇用の8割以上を5年間平均で維持する

事業承継税制を利用するためには、5年の期間中に守るべき要件があります。
万が一、その途中で要件を満たしていないと判断された場合、猶予されていた税金の納税が課せられてしまうので注意しましょう。

特に留意しておきたいのは「雇用の8割以上を5年間平均で維持する」という項目です。中小企業で10人の従業員数が7人まで減ってしまうことは、可能性として十分に考えられます。
しかし、やむを得ない理由がある場合には特例措置が適用となり、一定の猶予税額が免除されるケースもあります。

▷事業承継から5年後の要件

後継者が猶予対象株式を継続保有していることが、事業承継から5年後の要件となります。
事業承継は、納税が猶予されてからが最も気を付けていかなくてはなりません。後継者が代表者として退任をしたり、総収入金額がゼロになったり、納税猶予対象株式を譲渡してしまったりすることはよくあるケースです。
事業承継税制が打ち切りとなる項目は20以上ありますので、くれぐれも該当しないよう注意してください。

まとめ

本記事では、事業承継税制による相続税対策と、税制を活用するための要件や注意事項について解説をしました。
事業承継税制は複雑な制度であり、税額の影響も大きいことから、制度の利用を断念する経営者もいるでしょう。しかし、制度の適用期間は2018年から2027年12月31日までとなっているため、事業承継を考えだした際にはぜひ活用したいものです。
そのためには、専門機関や支援機関に相談をし、ニーズを叶えてくれる専門家に出会うことが事業承継成功の第一歩となるでしょう。

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