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2026年2月9日

事業承継ファンドとは?メリット・デメリットや活用方法と事例、種類を解説!

事業承継ファンドとは?メリット・デメリットや活用方法と事例、種類を解説!

事業承継ファンドは、株式譲渡などのM&Aスキームを用いて事業承継を支援する手段の1つです。中小企業において後継者不足が課題となる中、この問題の解決手段の1つとして事業承継ファンドが注目されています。

本記事では、事業承継ファンドとはどのようなファンドなのか、種類や活用方法、メリット・デメリットを解説します。一般的なファンドやM&Aとの違い、事業承継ファンドを選ぶ際のポイント、実際の活用事例も紹介するので、事業承継を考えている経営者の方はぜひ参考にしてください。

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事業承継ファンドとは?

事業承継ファンドとは、後継者不足や経営状況の悪化等の課題を抱える中小企業を対象に、事業承継のサポートを行う投資ファンドです。

事業承継ファンドでは、投資家から集めた資金で事業承継を行いたい企業の株式を取得します。その後、経営支援による事業のてこ入れを行い、企業価値を高めたうえで数年後に売却し、売却によって得た売却益を投資家に再分配するというビジネスモデルです。

元々、事業承継ファンドは、公的機関である「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)」が筆頭となって設立されたファンドですが、現在では民間の投資会社も運営しています。

事業承継ファンドには様々な種類があり、特徴も異なるので、自社が希望する事業承継の条件・目標に合せて選択すると良いでしょう。

事業承継ファンドと一般的なファンドの違い

事業承継ファンドと一般的なファンドの主な違いは「投資先」と「投資目的」の2つです。一般的なファンドでは国内外の上場株式や債券などに投資しますが、事業承継ファンドでは「後継者が不在で悩む中小企業」に投資します。

また、一般的なファンドでは分散投資が基本であり会社の経営権の獲得には至りません。一方で事業承継ファンドでは、経営権の獲得を目的に経営者から株式を買い取ります。

事業承継ファンドとM&Aの違い

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字を組み合わせた言葉です。事業承継ファンドによる株式の取得も買収にあたるため、事業承継ファンドはM&Aの1つに分類されます。

事業承継ファンドと他のM&Aの手法との主な違いは、対象企業の株式を取得する目的です。事業承継ファンドによる買収では、後継者不足の問題を解決して経営を再建し、事業承継を実現して企業価値を高めることで投資家に利益を分配します。

一方で事業承継ファンド以外のM&Aの場合は、M&Aを実施する目的はケースによって様々です。事業承継を通じた企業価値向上だけでなく、人材やノウハウの獲得、新規事業への参入など、幅広い目的でM&Aが行われます。
▷関連記事:M&Aとは?意味・流れ・手法・費用などゼロからわかる完全ガイド【2026年最新】

事業承継ファンドが注目されている理由

近年、経営者の高齢化とともに後継者不在の企業が増加していることから、自社を承継する先の選択肢の1つとして事業承継ファンドが注目されています。

帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」によると、全国・全業種約27万社への調査において、後継者不在率は50.1%でした。また、先代経営者との関係性(就任経緯別)のデータを見ると、同族承継は2021年以降、直近まで減少傾向が続いています。他方、従業員・役員を後継者とする「内部昇格」や、買収・出向を中心とする「M&Aほか」の割合は増加傾向にあります。

2025年に代表者交代があった企業では、「内部昇格」が36.1%、「同族承継」が32.3%、「M&Aほか」が20.6%でした。事業承継ファンドもまた、このデータに比例するように存在感を増しています。

後継者不在に悩む経営者からすると、株式を買い取り、その後の経営支援までしてくれる事業承継ファンドは、頼もしい存在といえます。

※出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)

事業承継ファンドが有効な場合とは?

事業承継ファンドは次のような会社で活用できます。

・身内や社内に後継者候補がいない場合
・身内に後継者はいるがまだ経験が浅い場合
・社内で後継者にしたい人材がいる場合
・経営陣が引き続き経営に携わる意思を持っている場合

それぞれのケースについて以下で解説します。

①身内や社内に後継者候補がいない場合

身内や社内に後継者候補がいない場合は、「廃業にする」「M&Aによって譲渡する」などの方法がありますが、事業承継ファンドを活用するのも有効です。

事業承継ファンドに自社株式を売却することで、後継者の確保や育成に道筋を付けながら事業を継続することが可能になります。

特に、企業理念や経営方針を尊重しながら事業拡大・経営再建を行いたい場合は、事業承継ファンドの利用をおすすめします。

②身内に後継者はいるがまだ経験が浅い場合

親族に後継者候補がいるものの、経験が浅く事業を引き継ぐには不安がある場合も、事業承継ファンドの活用は有効です。

事業承継ファンドの中には、後継者の成長を支援してくれるファンドもあるため、後継者が実務経験を積みながら経営権を引き継ぐことが可能になります。後継者の成長を待ってから事業を引き継ぐこともできるため、現経営者は安心して勇退後の生活を送ることができるでしょう。

③社内で後継者にしたい人材がいる場合

事業承継ファンドは、社内に後継者候補がいる場合も有効な手段になります。

社内に後継者候補がいる場合、後継者候補自身が会社の株式を買い取る必要があり、資金確保が課題になるケースがあります。その場合は、事業承継ファンドを活用して一度事業承継ファンドに株式を売却します。その後、後継者は支援を受けながら資金を貯め、資金が貯まった際に事業承継ファンドから株式を買い取ることが可能です。

現経営者から社長の座を後継者が引き継いで事業経営に携わりつつ、資金が貯まったところで株式を事業承継ファンドから買い取る形にすることで、後継者が資金を貯めるまで社長交代を待つ必要がなくなり、事業承継をスムーズに実施できます。

④経営陣が引き続き経営に携わる意思を持っている場合

事業承継ファンドでは、経営陣メンバーが株式の一部を保有することで引き続き経営に携われます。

そのため、経営陣が引き続き経営に携わる意思を持っている場合も、事業承継ファンドは有効です。会社のことを理解していて経営者としての経験や知識がある現経営者が引き続き関わることで、スムーズな事業承継が可能になります。

経営再建のサポートを受けることで、経営陣はそのままの形で自社の価値を向上させられる可能性が高まるでしょう。

事業承継ファンドによる事業承継の流れ

事業承継ファンドを活用した事業承継の一般的な流れは以下のとおりです。

1.ファンド運営会社(投資会社)が投資家から資金を集めて事業承継ファンドを設立
2.譲渡側(事業承継を実施する会社経営者)が事業承継ファンドに問い合わせ
3.秘密保持契約締結、財務情報等を開示
4.基本合意書を締結する
5.双方の条件のすり合わせ
6.弁護士や税理士等の専門家によるデューディリジェンス(買収監査)
7.最終の譲渡契約を締結
8.譲渡対価の支払い等のクロージング手続き
9.事業承継ファンドが経営支援
10.事業承継ファンドは数年後に株式を売却して売却益を得る

まずは、ファンド運営会社が投資家から資金を集めて、事業承継ファンドを設立します。事業承継の実施を検討している経営者は、設立された事業承継ファンドに問い合わせを行い、秘密保持契約締結後に自社の財務情報等を開示します。

その後、基本合意書の締結と双方による条件のすり合わせが行われ、事業承継ファンド側によって投資対象の企業の価値やリスクを詳しく把握するためのデューディリジェンスが実施されます。

問題がなければ最終契約の締結となり、クロージングの手続きに入ります。クロージング後は、事業承継ファンドは経営支援を行いながら企業価値を高め、数年後に株式を売却して売却益を得ます。

上記のように、基本的な流れは一般的なM&Aと比べてそれほど違いはありませんが、「ファンド運営会社が投資家から出資を受けて事業承継ファンドを作る」「譲渡側の会社が問い合わせを行う」という点が一般的なM&Aとは異なります。

▷関連記事:M&Aで重要なデューディリジェンス(DD)とは?目的や種類別の費用・特徴を解説
▷関連記事:M&Aのクロージングとは?前提となる条件や流れ、手続きをわかりやすく解説

事業承継ファンドの種類

事業承継ファンドは、運営主体によっていくつかのタイプに分けられます。ここでは、事業承継ファンドを運営している代表的な組織を紹介します。

・中小機構の事業承継ファンド
・日本投資ファンド
・PE(プライベートエクイティ)ファンド
・SBI地域事業承継ファンド

①中小機構の事業承継ファンド

中小機構のファンドとは、「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)」が出資して設立されているファンドです。

公的機関となる中小機構は、事業承継を検討している中小企業の相談先として最も代表的な機関と言え、以下のような中小企業が抱える様々な課題に対応した幅広い支援を行っています。

・後継者候補の育成
・販路拡大
・経営相談
・事業承継等

中小機構のファンドは、官民ファンドとなるため、民間の事業承継ファンドに比べて公的な視点からのアドバイスを受けられるのが特徴です。

②日本投資ファンド

日本投資ファンドとは、株式会社日本投資ファンドが設立し、「中堅・中小企業の成長基盤の社会インフラの役割を果たす」ことを目的としたファンドです。

株式会社日本投資ファンドは、株式会社日本M&Aセンターと株式会社日本政策投資銀行が共同で設立したファンド運営会社です。

豊富なM&A実績で培ったM&Aセンターの経験や知識、ネットワーク力と日本政策投資銀行の幅広い投融資ノウハウを共有させることで、投資対象会社の発展を第一に、幅広い経営支援を行っています。

中小機構のファンドと同様に、公的な要素を持った投資ファンドであるため、経営への過度な関与を避けられるのが特徴です。

③PE(プライベートエクイティ)ファンド

PEファンドには事業承継ファンドの他、ベンチャーファンドや事業再生ファンド等、いくつか種類があります。

また、PEファンドでは単に出資するだけではなく、事業を引き継ぐと同時に以下のような企業価値を高める経営支援を行っているのも特徴です。

・経営上の問題の洗い出しや解決
・取引先や販路の拡大
・新規事業への参入等

PEファンドを運営するファンド運営会社は多数ありますが、代表的な会社には「株式会社日本プライベートエクイティ」があります。後述する「事業承継ファンドの活用事例」では、株式会社日本プライベートエクイティの事例も紹介しているので、参考にしてください。

④SBI地域事業承継ファンド

SBI地域事業承継ファンドとは、SBIホールディングスのグループ子会社「SBI地域事業承継投資株式会社」が設立したファンドです。

2019年10月に設立された比較的新しい事業承継ファンドであり、中小企業の事業承継によって企業を存続させて地域を活性化することを目的として設立されました。

SBI地域事業承継ファンドの特徴は、一般的な事業承継ファンドが投資対象としていなかった「小規模な企業にも投資を行う」と公表している点です。

中小企業では後継者問題が深刻化していますが、特に小規模な企業は後継者問題を抱えている割合が高くなっています。

「小規模な企業にも投資を行う」と公表しているSBI地域事業承継ファンドは、後継者問題に悩む小規模な企業も活用できる可能性が高いため、今後の事業承継への活用に期待されています。

事業承継ファンドを選ぶ際のポイント

事業承継ファンドを選ぶ際には、注目すべきポイントがいくつかあります。ポイントを押さえておくと自社に適したファンドを選べるため、ここでは、事業承継ファンドを選ぶときのポイントを解説します。

①過去の実績を確認する

事業承継ファンドを選ぶ際には、過去の実績を把握しておくことが大切です。
特に、自社と類似しているケースの支援実績を確認しておくと、選ぶ際の参考になるでしょう。

②支援内容など特徴を把握する

事前に、事業承継ファンドの支援内容を確認しておくことも大切です。その際に自社の基本情報や相談内容を伝え、具体的な支援内容を確認しておきましょう。どのようなサポートを受けられるのか相談前の段階で明確に把握しておくと、その後の進行をよりスムーズに行うことができます。

③長期的な期間・視点を持っているか確認する

長期的な視点で、事業の存続や成長を考えているかを見極めることも重要です。

なぜなら、短期的視点で利益を求める事業承継ファンドでは、自社の存続や十分な成長を期待できないからです。利益が出るまでに時間がかかる場合でも、しっかりと支援してもらえるかを過去の実績などから確認しておきましょう。

④担当者との相性を見極める

事業承継ファンドを選ぶ際には、担当者の人間性にも注目しましょう。相談時に違和感を覚えた場合には、すぐに話を進めず担当者や事業承継ファンドの変更も検討した方が良いかもしれません。事業承継は自社や従業員にとって非常に重要なイベントです。相性の良い担当者に相談できれば、安心して事業承継を進められます。

事業承継ファンドのメリット

事業承継ファンドには、様々なメリットがあります。
メリットを理解しておくと、事業承継ファンドを最大限活用できるでしょう。ここでは、事業承継ファンドのメリットを経営者と後継者、従業員、出資者とそれぞれの立場から解説します。

経営者のメリット

まず、経営者が事業承継ファンドを利用するメリットとしては、次の点が挙げられます。

1. 経営者の意図に沿った事業承継ができる
2. 売却利益を得られる
3. 経営に関してのアドバイス・サポートが受けられる
4. 会社の理念・文化を風化させずに支援を受けられる

それぞれのメリットを解説します。

①経営者の意図に沿った事業承継ができる

事業承継ファンドの最大のメリットは、経営者の意図に沿った事業承継が可能な点です。

事業承継ファンドでは、後継者の育成も行っています。後継者育成の段階で、企業理念やコンセプトを根付かせて育成するため、経営者の意図に沿った事業承継が可能です。

また、社内に後継者候補がいない場合は、ふさわしい人材を後継者に選定してくれます。

②売却利益を得られる

廃業する際は、不動産売却や機械設備廃棄など多額のコストが必要になりますが、事業承継ファンドを活用すると株式を買い取ってもらえるため、経営者は売却益を得ることができ廃業に関するコストもかかりません。

得たお金を別の事業資金に充てたり、勇退後の生活資金に活用したりできます。事業承継ファンドは、経営者にとって大きなメリットがある制度です。

③経営に関してのアドバイス・サポートが受けられる

事業承継ファンドを活用すると、経営に関するアドバイス・サポートが受けられる点もメリットの1つです。

事業承継ファンドはまず株式を買い取り、経営支援によって会社を成長させます。そして数年後に、株式を売却し運用益を出すビジネスです。

ファンドは経営支援のノウハウを持っているため、事業承継ファンドを活用すれば、事業を成長させ、より良い形で会社を存続させられる可能性が高くなります。

④会社の理念・文化を風化させずに支援を受けられる

事業承継ファンドでは会社の理念・文化を風化させることなく経営支援を受けられる点もメリットです。
会社の理念や文化を維持できれば、経営者は愛着のある会社をできるだけ変えずに存続でき、経営者交代による従業員への影響も最小限に抑えられます。

後継者のメリット

後継者にとっては、資金負担が軽減される点がメリットといえます。

企業を買い取って引き継ぐ場合は、多額の費用が必要になりますが、事業承継ファンドを利用できる場合は、自己負担額なしで企業を引き継げる可能性もあります。

また、事業承継ファンドを利用する際に、経営アドバイスを得られるケースがあります。経営者として実績が豊富なアドバイザーから具体的なアドバイスを受けることができれば、すぐに活用できる現実的な経営スキルを身に付けられるでしょう。

従業員のメリット

従業員のメリットとしては、雇用契約の継続が挙げられます。

事業承継ファンドは中小企業の事業承継をサポートするファンドであるため、通常は従業員の雇用契約も引き継がれ、失職するケースは少ないです。また、経営基盤が強化されることで、長期的な雇用も期待できます。業績が向上すれば、待遇改善の可能性もあるでしょう。

出資者のメリット

事業承継ファンドによって成長が見込まれる中小企業に投資すれば、出資者は将来的に売却益の獲得が期待できます。中小企業の将来性だけでなく、ファンドの経営支援の実績にも注目して出資先を選びましょう。

また、事業承継ファンドは社会貢献にもつながるファンドです。地域経済の発展や雇用創出など社会的意義のある投資を実現できます。

事業承継ファンドのデメリット

事業承継ファンドには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、事業承継ファンドから支援を受ける経営者にとってのデメリットを解説します。

①必ずしも支援を受けられるわけではない

事業承継ファンドは、あくまでも利益を出すことを目的としているため、会社の経営状況によってはファンドから支援を断られる可能性がある点がデメリットです。「財政状況が悪化しすぎている」「改善が見込めない」と判断される場合は、そもそも支援を受けることができない可能性もあります。

②ファンド選びが難しい

事業承継ファンドには多くの種類があり、それぞれ今までの経験値やノウハウが異なります。

そのため、自社が求める支援内容に対応できないファンドを選んでしまうと、事業承継が失敗してしまう可能性もあります。自社に合った実績があり、ノウハウを十分に発揮できる事業承継ファンドを選ぶには時間がかかります。

自社に適しているかどうか、しっかりと見極めることが大切です。

③ファンドの運営方針が変わることがある

吟味して支援を受ける事業承継ファンドを選んでも、途中でファンドの運営方針が変わる可能性もあります。その場合、最初に期待したような効果が得られないというリスクがあります。

基本的に事業承継ファンドでは支援先企業の理念や文化を尊重しますが、その一方、投資によるリターンも重視します。ファンドによりリターンがあまり得られないと判断されたときは、経営方針を大きく揺るがすようなテコ入れが入ることもあります。

ファンドの運営方針が突然変わることがないよう、経営者はファンドと契約を締結する前に自社の理念や長期的なビジョンを伝えておくことが必要です。また、運営方針の変更についてもあらかじめファンド側と話し合い、急激な変更をできるだけ回避できるようにしておきましょう。

事業承継ファンドが活用された3つの事例

最後に、事業承継ファンドが活用された事例を3つ紹介します。活用事例を知ることで、より事業承継ファンドについてのイメージを把握できるので、事業承継ファンドの活用を検討している経営者の方は、参考にしてください。

事例① 浜松米穀株式会社の売却

浜松米穀株式会社は、創立以来、静岡県西部地区を主な営業エリアとして、米・麦・小麦粉・雑穀の他、一般食品から飼料まで幅広い品目を取り扱う企業です。

米飯業界では、生産面において人手不足や高齢化、流通面においては過当競争に伴う低収益化、販売面においてはニーズの多様化と低価格化等多くの課題を抱えていると言われています。

このような背景の中、浜松米穀株式会社では、SBI地域事業承継投資株式会社が運営するSBI地域事業承継ファンドを活用し、事業承継問題の解決と業績改善に取り組んでいました。

2021年12月に、事業承継問題の解決と業績改善に目途がついたため、株式会社神明への売却が決まり、子会社化されました。

株式会社神明は、基幹事業である米穀事業に加えて、無菌包装米飯や炊飯米等の加工食品の製造販売、国内外での外食事業の展開等、食に関わる多種多様なビジネスを展開している企業です。

浜松米穀の子会社化により、神明と浜松米穀の調達力の強みを生かしながら、益々多様化する顧客のニーズに応えていきたいとしています。

※出典:株式会社神明「浜松米穀株式会社の株式取得に関するお知らせ

事例② 株式会社アソシエ・インターナショナルへの成長支援と事業承継

アソシエ・インターナショナルは、認可保育園や学童保育クラブ等の子育て支援施設を運営する会社です。

アソシエ・インターナショナルでは、2019年4月に、日本プライベートエクイティ株式会社が運営する事業承継ファンド(「TOKYOファンド」)を活用して事業承継を実施しています。

TOKYOファンドは、東京都が出資者となって東京都内の中小企業の「事業承継と成長の支援」を目的とするファンドです。

アソシエ・インターナショナルのオーナー経営者は、事業承継を実施するにあたり、後継者に社内の人材を登用することで会社の保育理念や運営方針が維持され、「経営の承継」は叶うと考えていました。

一方で、親族外での承継ゆえに、資本(株主)を誰が担うかによって、経営の確実な承継が必ずしも担保されなくなる点を懸念していたようです。

このような事業承継問題を抱えていた中、特定の事業会社の傘下に入るのではなく、TOKYOファンドが株主として関与する形で事業承継を実施することで、保護者や地域住民、社員に安心感を与えることができ、円滑な事業承継を実施しています。

また、「オーナー経営」から「組織経営」に移行し、事業基盤の強化・拡大も図ることが可能になりました。

※出典:日本プライベートエクイティ株式会社「株式会社アソシエ・インターナショナルへの成長支援投資 実行

事例③ 株式会社櫻製油所の事業承継と成長支援

株式会社櫻製油所は、大阪府に本社を置き、潤滑油の製造・販売を行う老舗企業です。自動車用や産業用潤滑油のほか、OEM製品の企画・製造も手がけ、高い技術力を強みとしています。

同社では、長年にわたり家族経営を続けてきた一方で、将来を見据え「会社の所有と経営を分離し、組織として持続的に成長できる体制を構築したい」という課題を抱えていました。経営者個人への依存度を下げ、事業承継と成長の両立を図る必要があったことから、外部資本の活用を検討します。

その結果、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が出資し、日本協創投資株式会社が運営する事業承継ファンドの支援を受けることになりました。特定の事業会社の傘下に入るのではなく、ファンドが株主として関与する形で、経営基盤の強化と事業承継を進めています。

ファンド活用後は、財務管理や労務管理の体制整備、設備投資などを通じて経営の安定化が図られました。その後、事業の成長と体制整備に一定の目途が立ち、次の成長ステージに向けた資本提携へとつながっています。

櫻製油所の事例は、事業承継ファンドを活用することで、承継と企業成長を同時に実現したケースとして参考になるでしょう。

※出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「株式会社 櫻製油所

まとめ

事業承継ファンドを活用すれば、後継者不在で悩む企業であっても、後継者の育成などによって事業承継を行える可能性があります。事業承継ファンドは一般的なファンドとは違い、事業承継を目的としている点が特徴です。

事業承継ファンドにはいくつかの種類があり、種類ごとに特徴が異なります。実際に事業承継ファンドを活用する場合には、メリット・デメリットを理解したうえで活用する必要があり、事業承継に関する専門的な知識も必要です。

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