昨今の中小企業において、経営者の高齢化や後継者の不足が顕著に問題として現れており、やむを得ず廃業を余儀なくされるケースが増えています。それまで築き上げてきた事業をトラブルなく引き継ぐためには、できるだけ早く事業承継対策に取りかかることが必要です。
本記事では、事業承継についての基本的な知識や事業継承との違い、進めるうえでの全体の流れや注意点、中小企業向けのポイントなどを解説していきます。
事業承継を検討されている方は、ぜひご一読ください。
▷関連記事:事業承継が問題になっている背景と解決策としてのM&A
企業価値100億円の企業の条件とは
・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件
自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
目次
事業承継とは
事業承継とは、現在行っている事業を別の人に引き継ぐことを指します。事業承継には、大きく分けて以下の3つの承継方法があります。3つの主な違いは、後継者の属性です。
事業承継において引き継ぐものとしては、事業に関連する株式や資産、特許権や商標権といった権利、借入金、従業員、経営理念、技術やノウハウなど様々な要素が含まれます。
承継方法 | 後継者 |
---|---|
親族内承継 | 親族 |
親族外承継 | 親族以外の役員および従業員 |
M&A活用 | 社内以外の第三者 |
事業承継と事業継承の違い
事業承継と似ている用語として、「事業継承」があります。
事業の「承継」では、「前代の精神・事業等を受け継ぐ」ことを指し、もう一方の「継承」では、「前代の権利・財産等を受け継ぐ」ことを指します。
すなわち、抽象的なものを引き継ぐときは「承継」、具体的なものを引き継ぐときは「継承」といった使い分けが可能です。
事業の引き継ぎにおいては、会社の経営権や資産だけでなく、企業理念や事業への想い、解決すべき課題など多岐に渡る内容を引き継ぐため、「承継」の方を使うことが一般的です。また、「中小企業経営承継円滑法」のように法律用語としても、「承継」が使用されています。
事業継承については以下の記事でも紹介しているため、ぜひご参照ください。
▷関連記事:事業承継と事業継承はどう違う?最新の動向や成功させるためのポイント
事業承継の現状
事業承継の現状を以下の2つの側面から見ていきます。
=================================
・事業承継が必要とされている背景
・親族外承継の増加
=================================
それぞれ解説します。
▷事業承継が必要とされている背景
事業承継が必要とされている背景として挙げられるのは”後継者の不在”です。
現在中小企業を中心に、多くの会社で後継者の不足が問題となっています。
中小企業庁の発表によると、後継者不在の経営者は60代では約4割、70代では約3割、80代以上では約2割に及びます。(帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2023年)」)
60代以上の世代では、後継者が不在のまま経営をしている経営者が2割以上も存在しているため、事業承継は社会の大きな課題と言えます。
また業種別でも後継者不在率に違いが見られます。
製造業や運輸・通信業では50%弱と比較的低い一方、建設業やサービス業では60%前後と高くなっています。
▷親族外承継の増加
親族外承継の増加も着目しておきたいポイントです。
中小企業庁の発表によると、親族内での事業承継は減少しており、従業員や社外の第三者への事業承継が6割を超えています。
親族外承継が増加した主な理由は、親族への事業承継の難易度の高さが挙げられます。
事業承継をする場合、事業における負債や事業主の個人保証も引き継ぐことになります。さらに事業承継は、後継者に対して経営者としての資質や能力も求められるため、親族に後継者の適任者がいない場合も想定されます。
親族内の事業承継が減少した理由は、以下の記事で詳しくまとめています。
▷関連記事:減少する親族承継、多様化する事業承継
▷事業承継に対する意識の実態
fundbookが実施した40代以上の経営者向けの調査では、後継者候補が不在な企業の割合が約半数にものぼることがわかりました。
後継者候補がいないと回答した企業の中で、後継者がいない理由に「自分の代で廃業予定」を挙げた割合が約3割を占めており、自社存続の意識が低いことがうかがえます。
さらに、後継者候補がいないと回答した企業においては、後継者候補がいない状況であっても、事業承継について「誰かに相談しようと思っていない」と考えている割合が約半数を占め、事業承継への意識が低いこともうかがえます。
後継者候補がいない企業の割合が高く、さらに事業承継への意識が低い状況が続くと、後継者不在による企業の廃業が相次ぎ、技術や雇用の喪失といった経済成長への悪影響にも繋がります。これを防ぐために、経営者の事業承継に対する意識を高める取り組みが必要となります。
その一方で、後継者候補がいない企業で、事業承継について「誰かに相談したいが、相談相手が見つからない」と回答した割合も約2割を占めており、事業承継について気軽に相談できる窓口を拡充していくことも課題であると考えられます。
事業承継で引き継ぐ3つの対象
構成要素 | 引き継ぐもの |
---|---|
事業 | 経営権 |
財産 | 株式・非事業用資産 |
無形財産 | 特許・ブランド・ノウハウ |
事業承継は、遺産だけを引き継ぐ遺産相続とは異なり、引き継ぐ対象が多岐にわたります。そのため、対応を完了させるまでに多くのリソースを必要とします。
ここでは、上記で挙げた3つの構成要素について解説していきます。
▷事業
事業承継では、事業の経営権を引き継ぎます。
後継者に経営権を渡すことになるため、後継者の考えによって元の事業主の経営方針から逸脱した経営が行われる可能性があります。
そのため、後継者を選ぶ際は、後継者候補に「事業承継後の経営方針をどのように考えているのか?」を確認してすり合わせておくことが重要です。
▷財産
事業承継では、様々な種類の財産を引き継ぎます。
事業に関連する株式や機械装置、器具備品といった有形固定資産などに加えて、現金預金や保険積立金、貸付金などの非事業資産も同時に引き継ぎます。
また、事業承継では、借金や連帯保証などの負債も併せて引き継ぎの対象となります。
▷無形財産
無形財産も引き継ぎの対象となります。
例えば、譲渡企業が所有している特許・ブランド・ノウハウを譲受企業は引き継ぐことが可能です。
そのため、譲受企業に資金力や販売経路があった場合、譲渡企業が持っていた特許、ブランド、ノウハウを使ってシナジーを生み出し、譲受企業を飛躍的に成長させることも可能です。
事業承継の方法とメリット・デメリット
事業承継には主に4つの方法があります。
=================================
・親族への事業承継
・役員や従業員への事業承継(社内承継)
・第三者への事業承継(M&A)
・上場
=================================
それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。
▷親族への事業承継
親族への事業承継をする場合のメリットとデメリットは、以下の通りです。
●親族へ事業承継するメリット
・複数の承継方法を選択できる
・早期から経営者として育成する時間的な余裕がある
・血縁の繋がりがあるため従業員や取引先の理解を得られやすい
親族へ事業承継をするメリットは、「生前贈与」「株式売却」「相続」など複数の承継方法を選択できる点にあります。特に生前贈与を上手く活用すれば、相続税対策にも繋がります。
親族への事業承継の場合、後継者候補が明確であり、早期から育成を開始しやすいため、他の事業承継の方法に比べて経営者の育成に時間をかけやすいといえます。
例えば、子供に事業を継がせる場合、子供が自分の企業に入社してから数年かけて経営者として育成できます。
加えて、親族は社長と血縁があるため、従業員や取引先も「社長の親族が次の社長になるのか」と納得してくれやすいです。
●親族への事業承継をするデメリット
・親族に後継者の資質があるとは限らない
・後継者以外の親族の反対にあう可能性がある
・個人保証を親族内で引き継ぐことになる
ただし、親族に後継者の資質がある人がいるとは限りません。後継者候補の親族が複数存在する場合、後継者候補に選んだ親族以外の反対にあうこともあります。
また、事業主の個人保証を親族内で引き継ぐことになる点もデメリットです。
▷役員や従業員への事業承継(社内承継)
役員や従業員への事業承継(社内承継)をする場合のメリットとデメリットは、以下の通りです。
●役員や従業員への事業承継(社内承継)をするメリット
・後継者以外の従業員の理解を得やすい
・事業への理解が深い
社内で事業に関わっていた役員や従業員が後継者となるため、後継者以外の従業員の理解を得やすいです。また、社内の人間なので、経営方針や事業への理解が深いのもメリットです。
●役員や従業員への事業承継(社内承継)をするデメリット
・まとまった資金を準備する必要がある
・債務の引き継ぎが困難な場合がある
・経営者としての能力が不足している場合がある
この場合、後継者が株式を買い取る必要があるため、まとまった資金を役員や従業員が準備する必要があります。役員や従業員であっても、経営者としての能力が不足している場合もあります。
また、経営者が個人的に会社の債務を保証している場合、後継者への債務の引き継ぎが困難になることがあります。
▷第三者への事業承継(M&A)
第三者への事業承継(M&A)をする場合のメリットとデメリットは、以下の通りです。
●第三者へ事業承継(M&A)するメリット
・親族間の後継者問題を解消できる
・早ければ3カ月で成立する
・譲渡企業が飛躍的な成長をする可能性がある
第三者への事業承継(M&A)においては、親族や社内に後継者がいない場合でも、譲受企業が後継者となるため、特に親族同士の後継者問題を解消できます。
また、第三者への事業承継(M&A)は早ければ3カ月で成立するため、時間をかけられない高齢の事業主にとっても相性の良い手法です。譲受企業の資本力によって、譲渡企業の飛躍的な成長が期待できます。
なお、事業主としても、M&Aによってまとまった資金を得られる上、個人保証からも解放されるため、ハッピーリタイアを実現しやすい方法といえます。
●第三者へ事業承継(M&A)するデメリット
・完璧な相手が見つかる訳ではない
・当初のビジョンから逸脱した経営が行われる可能性がある
事業承継において、必ずしも完璧な相手が見つかるとは限りません。また、譲受企業の経営方針によっては、当初描いていたビジョンから経営方針が逸脱する可能性もあります。
▷上場
上場も事業承継の方法の一つです。上場をする場合のメリットとデメリットは、以下の通りです。
●上場をするメリット
・会社としての信用力が大幅に増す
・幅広い資金調達が可能
上場に向けては、厳しい上場審査を通過する必要があります。無事に上場が成功すれば、会社の社会的信用が大幅に向上します。また株式が公開されるため、幅広い資金調達が可能となります。さらに、上場することによって、事業主は個人保証から解放されます。
●上場をするデメリット
・上場審査の要件が厳しい
・幅広い株主の期待に応える必要がある
・投資家へ向けて情報開示する必要がある
上場するためには、厳しい審査を通過する必要があります。また上場後は一般投資家など幅広い株主からの期待に応える必要があり、経営者は様々な要求やプレッシャーを受けることになります。
さらに上場後は投資家向けの情報開示が必要となるため、事業に関する重要事項を公開することになります。企業秘密を公開したくない経営者からすると大きな悩みの種です。
事業承継の方法別の注意点
事業承継の方法別の注意点をお伝えします。
=================================
・親族への事業承継での注意点
・役員や従業員への事業承継(社内承継)での注意点
・第三者への事業承継(M&A)での注意点
=================================
実際に手続きを行う前に覚えておきましょう。
▷親族への事業承継での注意点
親族への事業承継の注意点は、以下の2点です。
=================================
・経営者としての育成
・他の親族の理解を得ておく
=================================
事業承継を成功させるためには、経営者としての育成を早い時期に着手することが重要です。
「そのうちできるようになるだろう」「身内だから大目に見よう」と考えていると、いざ事業承継を実行する際に、経営者としての能力が不足している場合があります。
そうすると、従業員や取引先が離れて行ってしまう可能性があります。
また、後継者候補に選ばれなかった他の親族からの理解を得ておくことも重要です。「後継者に選んだ理由」「遺産相続の割合」を他の親族に説明して理解を得ておきましょう。
▷役員や従業員への事業承継(社内承継)での注意点
役員や従業員への事業承継の注意点は、以下の3つです。
=================================
・経営者とのしての育成
・周囲の理解を得ておく
・株式を買い取る資金を用意する
=================================
長年事業に携わって来ていたとしても、役員や従業員と経営者の仕事は同じではありません。求められるスキルが異なるため、事業承継をする前に、経営者として後継者の育成を行いましょう。
また、従業員・取引先・経営者の親族の理解を得ておきましょう。周囲の理解を得ておくことで、事業承継後に「あなたを社長とは認めない」というトラブルを避けられます。なお、経営者の個人保証を役員や従業員に引き継ぐためには、金融機関の了承が必要です。
さらに、役員や従業員へ事業承継をする場合は、株式を買い取るためのまとまった資金を用意する必要があります。実務的には役員報酬を上げて対応することもあります。しかし、業務実態に見合わない過度な引き上げを行った場合、過大役員報酬として損金性を否認される可能性もあります。
▷第三者への事業承継(M&A)での注意点
第三者の事業承継(M&A)の注意点は、主に以下の2点です。
=================================
・事業承継後のビジョンや経営方針のすり合わせを行う
・売却のタイミングを逃さない
=================================
第三者への事業承継(M&A)を行う場合、企業の売買価格に注意が行きがちです。しかし、譲受企業によっては、これまで描いていたビジョンから経営方針が逸脱する可能性があります。
そのため、事業承継後のビジョンや経営方針のすり合わせを行いましょう。
また、企業の売却のタイミングを逃さないことも重要です。企業が廃業寸前になってから第三者への事業承継(M&A)を行っても、企業価値は高く評価されないため、高額な売買価格は付きません。
そのため、企業の業績が好調のうちに第三者への事業承継(M&A)を進めた方が高い売買価格でM&Aが成立する可能性があります。
第三者への事業承継(M&A)による事業承継を成功させるポイントについて、以下の記事をあわせてご覧ください。
・関連記事:M&Aで経営者が事業承継を成功させる方法と第二の人生について
事業承継の流れ
ここでは、中小企業庁がまとめた「事業承継ガイドライン」に基づき、事業承継の流れを紹介します。
=================================
1)事前準備
2)経営状況・経営課題等の「見える化」
3)磨き上げ(経営改善)
4)事業承継計画の策定とマッチング
5)事業承継・M&Aの実⾏
=================================
実際に事業承継をする時の参考にしてください。
▷ステップ1 事前準備
まずは事業承継に向けて準備すべきことを整理しましょう。
これは準備するものが不明確のなままだと、事業承継の計画を立てることが難しくなるためです。
なお、後継者への引き継ぎ準備には5年~10年かかると言われているため、経営者の年齢が60歳を過ぎたら事業承継の準備を進めましょう。
▷ステップ2 経営状況・経営課題等の「見える化」
続いて、経営状況・経営課題等の「見える化」をします。
経営状況や経営課題について、現実から目を背けたくなることもあるかもしれません。
しかし、次のステップで経営改善を行うための大切な準備となるため、目を背けずにここで「見える化」しておきましょう。
▷ステップ3 磨き上げ(経営改善)
次に行うのが、磨き上げ(経営改善)です。
業績が悪い企業や経営に問題がある企業では、事業承継したいとは思いません。
魅力的な企業で「この企業の後継者になりたい」と思えるように磨き上げ(経営改善)を行いましょう。
具体的には、本業の競争力を強化するための経営課題の整理や、改善に向けたアクションプランの策定等により、マニュアルを改善したりして売上や利益率の成長につなげていきましょう。
▷ステップ4 事業承継計画の策定とマッチング
続いては、事業承継計画の策定とマッチングを行いましょう。
いつまでにどのような形で事業承継をするのかをまとめた「事業承継計画」を策定します。
そして、事業承継計画に従ってマッチングを行います。なお、マッチングについては、M&Aの仲介会社を活用するとスムーズに譲受企業候補を見つけやすいです。
▷ステップ5 事業承継・M&Aの実⾏
経営課題を改善しながら譲受企業候補との交渉がまとまったら、事業承継・M&Aの実行に入りましょう。
なお、事業承継・M&Aの手続きは法務や財務などの幅広い知識が求められるため、事業承継やM&Aに対して豊富な実績を持つM&Aアドバイザーを活用するのがおすすめです。
事業承継はわからないことが多く複雑に感じるかもしれません。しかし、経営活動を長期的に持続させるためにも着実に進めていくことが求められます。
事業承継のポイント(中小企業向け)
中小企業が事業承継を進めるためのポイントをお伝えします。
=================================
・税制や補助金の活用
・事業承継税制
・自治体などの事業承継の支援・補助金
=================================
順番に説明してきます。
▷税制や補助金の活用
国としても、企業が事業承継をせずに廃業する場合、従業員の働き口がなくなり失業者が増え、国の経済力の低下にもつながるため、事業承継を後押ししています。
「事業承継税制」「補助金」などの優遇措置に関する制度が整備されているため、事業承継の際は積極的に活用しましょう。
▷事業承継税制
事業承継税制は、一定の要件を満たした場合、事業承継に関する相続税や贈与税などの支払いが猶予・免除される税制度です。
事業承継では、多額の相続税や贈与税がかかる可能性がありますが、その猶予・免除を通じて、事業承継を行いやすくする優遇措置が設けられています。他にも、事業承継税制によって登録免許税や不動産取得税等の負担も軽減されます。
時限措置であるため、この制度を使えるのは、2027年12月31日までの事業承継が対象です。また、2026年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出することも要件となっています。なお、この制度を利用できるのは非上場企業のみです。
▷自治体などの事業承継の支援・補助金
自治体でも、M&Aによる事業承継を後押しするために、各地に「事業承継・引継ぎ支援センター」を設置してM&A当事者のマッチングを支援しています。
事業承継補助金では、事業承継で発生するコストの一部を補助しており、事業承継をきっかけに新しい経営体制になる企業を対象にしています。
事業承継には多くの経費がかかるため、その一部を負担することで、事業承継を行いやすくする環境を整えています。
ただし、事業承継補助金を利用するためには一定の要件を満たす必要があり、毎年要件が変わります。利用したい場合は、事業承継補助金の最新情報を自治体等のホームページなどで確認しましょう。
事業承継に必要な資金と税金対策
ここでは、事業承継で必要な資金・税金対策について解説します。
実際に必要な資金は事業規模によって異なるため、「○○万円を用意しておけばいい」と一概に説明することは困難です。
事業承継では、専門家への報酬と、相続税や贈与税などの税金がかかります。これらを把握しておくことで、必要となる資金の用途や金額の規模感をイメージをしやすくなります。
▷専門家への報酬の目安
・M&Aアドバイザー:月額無料(成果報酬型)、月額数百万円など
・弁護士:月額30万円、承継財産の1%など
・税理士/会計士:事業承継の現象分析から実行までで30万円
・相続税:10~55%
・贈与税:10~55%
・法人税:事業承継では0%、事業譲渡の場合、譲渡対象の資産と負債の差額に15~23.3%
税金対策としては、「相続時精算課税制度」や上で紹介した「事業承継税制」を活用して税金の負担を減らしましょう。
より詳しい内容は、以下の記事でまとめています。
・関連記事:事業承継にはどれくらいの費用がかかる?
事業承継の成功と失敗
続いて、事業承継を成功させるためのポイントおよび失敗してしまうポイントについて、事例を交えて解説します。
▷事業承継の成功のために
事業承継を成功させるために大事なポイントは以下3点になります。
=================================
・必要資金の確保と税金対策
・相続トラブルの対策
・早い時期からの取り組み
=================================
●事業承継 成功のポイント1)必要資金の確保と税金対策
事業承継を行うためには各種税金や仲介業者への報酬といった様々なコストが発生します。
親族内で事業承継を行う場合には贈与税や相続税が、親族外に承継する場合は法人税や所得税などが発生します。
事業承継を行うにあたって、後継者に対する補助金制度なども整っているため、事前に税金や必要資金について調べ、手続きや申請などに向けた対応を進めることで、事業承継の成功につながるでしょう。
●事業承継 成功のポイント2)相続トラブルの対策
事業承継を進める中で、相続トラブルには注意を払う必要があります。
事業承継の準備が不十分な中で経営者が死亡した場合、親族が後継者となるケースがあります。特に相続人が複数いる場合には、各関係者の要望を事前に整理しておく必要があります。
早期に準備を進めておくことで、相続トラブルの防止にもつながるため、あらかじめ入念な準備を行いましょう。
●事業承継 成功のポイント3)早い時期からの取り組み
事業承継の完了までには多くの時間が必要となります。
これは、後継者の選定や育成、業務の引き継ぎから始まり、税金対策や相続対策など対応すべき事項が膨大にあるためです。
「いつ・だれに・どうやって」事業承継を行うか、事前に方針を明確化し、後継者確保の準備を早期から行うことで各種トラブルを防ぎ、円滑な事業承継が実現しやすくなります。
また事業承継の重要性を認識していたとしても、誰に相談してよいかわからず、円滑に準備を進められないケースも見受けられます。
M&A仲介会社や取引先の金融機関、弁護士や公認会計士などの専門家、公的な支援機関など相談を行う先は多数あるため、事業承継について悩んだ際は、積極的に相談しましょう。
▷事業承継が失敗するケース
事業承継が失敗する主なケースは、以下の3点が挙げられます。
=================================
・情報周知の方法やタイミングの誤り
・後継者の選定/育成の失敗
・親族内の相続争い
=================================
●情報周知の方法やタイミングの誤り
事業承継を行う場合、適切なタイミングで社内に周知する必要がありますが、いつ・どの様に周知を行うかは熟慮する必要があります。
周知が不十分だと従業員の理解が得られず、離職者の増加や売上の低下につながってしまいます。また上場企業の場合、周知のタイミングを誤ると、情報が社外に流出してしまう可能性もあります。そうなると、事業承継自体がなくなってしまう恐れもあるため注意が必要です。
●後継者の選定/育成の失敗
親族内で事業承継を行う場合、後継者の選定は近年の少子高齢化の問題などもあり、難しい課題となっています。仮に子供がいたとしても、後継者としての能力不足、または同じ経営者としての苦労をさせたくないなどの事情から、後継者に指名できないまたは指名しないケースも想定されます。
また親族外に事業承継を行う場合でも、後継者の選定や育成は重要です。優秀な人材だとしても経営方針や風土にマッチするのかどうかの見極めは重要なポイントです。
経営方針などを含め、これまでの経営を上手く引き継げない場合、業績や企業価値が低下してしまう可能性が高くなると考えられます。
●親族内の相続争い
事業承継では、親族内の争いが発生しやすい傾向にあります。親族内での対立によって本業にも悪影響を及ぼす場合、経営状態の悪化は避けられません。
事業承継においては経営状態が良好という点も成功のための重要なポイントです。そのため、相続争い原因となって事業承継が失敗に終わることのないよう、各関係者の意見をまとめる必要があります。
まとめ:M&Aによる事業承継も早めの検討を
事業承継は企業の存続に関わる重大な問題です。似た用語で「事業継承」もありますが、これは具体的な「権利・財産等」を受け継ぐことを指すのに対し、「事業承継」では「精神・事業等」も含まれた、より広い概念となります。
事業承継は余裕を持って準備や検討を開始することで、より多くの選択肢から後悔のない方法を選ぶことができます。また、従業員が事業承継に不安を持つことがないよう、丁寧に説明するように心掛けることが大切です。
いざ事業承継が必要になったタイミングで行動しても、手遅れになってしまう可能性があります。事業承継が手遅れになってしまうと、廃業しか選択肢が残らないこともあります。
事業承継やM&Aを選択肢のひとつとして検討している方は、まずはお気軽にお問合せください。経験豊富なM&Aアドバイザーが事業承継について対応させていただきますが、相談の初期費用は無料です。(成果報酬制)
歴史のある企業が廃業してしまうと、従業員や取引先、ひいては国にとっても大きな損失となります。
企業を存続させるため、事業承継のお手伝いをさせて頂ければと思います。まずはお気軽にお問合せください。