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2023/09/27

会社が買収されるとどうなる?組織に起こる変化や従業員の待遇を解説

会社が買収されるとどうなる?組織に起こる変化や従業員の待遇を解説

会社の買収には、敵対的買収と友好的買収の2種類があり、日本の中小企業で行われる買収は友好的買収となることが大半です。

友好的買収では、買収する側と買収される側で事前に条件の交渉が行われます。そのため、買収される会社の社風や労働環境などは、買収後もそこまで大きく変化しないケースがあります。しかし、買収に伴う組織面や人事面の変化は少なからず発生するため、経営者の方は、会社の売却が従業員や役員に及ぼす影響を知っておく必要があります。

本記事では、会社が買収されるとどうなるのかを、組織面と人事・人材開発面に焦点をあてて解説します。

M&Aで会社の譲渡を考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】

▷関連記事:【リストラの可能性は?】譲渡企業の従業員のその後はどうなる

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買収された会社への影響を決める3つの要素

買収された会社への影響を決める要素は、主に以下の3つがあります。

・譲受企業の方針・考え方
・買収に用いられたスキーム
・買収時の条件・合意内容

会社を買収された後、譲渡企業(買収される側)は譲受企業(買収する側)の経営方針や考え方に大きな影響を受けるのが一般的ですが、買収に用いられるスキームや買収時の条件・合意内容も関係します。

会社の買収では、主に株式譲渡や事業譲渡のスキームが用いられ、譲渡企業の目的によって採用するスキームが決まります。例えば、後継者不在による廃業の回避や、経営者による売却益の獲得を目的とする場合は、株式譲渡が用いられ、主力事業への集中を目的とする場合は事業譲渡が用いられます。

株式譲渡と事業譲渡では、経営権の移行や雇用契約の引き継ぎなどが異なるため、当然ながら買収後に組織に与える影響も異なります。

また、M&Aでは最終契約の締結を行ってからクロージングをする流れとなりますが、最終契約に含まれる条件・合意内容も、買収された後の会社へ大きく影響を与えます。譲れない条件がある場合は、最終契約までに交渉する余地があります。
▷関連記事:事業譲渡による従業員の影響とは?退職金や転籍時の注意点を徹底解説

買収された会社の組織・経営に起こる主な変化

ここからは、買収された会社への影響・変化を紹介します。

一般的に譲渡企業は、買収されると譲受企業の経営方針や考え方に従う形となるため、組織・経営に関して多かれ少なかれ変化が生じます。会社が買収された後の組織・経営に関する主な変化を、株式譲渡と事業譲渡の場合で紹介します。

会社の組織構造・ガバナンス体制

株式譲渡では、譲渡企業の株式の過半数を譲受企業に譲渡することで、経営権を譲ります。経営権が移動するため、譲受企業側から新しい経営陣が派遣され、譲渡企業の経営陣と交代するのが一般的です。そのため、経営方針やガバナンス体制が大きく変化する可能性があります。

一方事業譲渡は、事業の一部または全部を譲受企業に譲渡するため、経営権の移動は行われません。譲渡企業の経営陣は変わらないため、会社そのものに大きな変化はありませんが、譲渡される事業に関しては、譲受企業の方針に従うことになります。

会社の風土や社風

株式譲渡と事業譲渡どちらの場合においても、会社の風土や社風は譲受企業に合わせるケースが多く、買収後に大きく変化する場合があります。

会社の風土や社風が譲渡企業と譲受企業で大きく異なる場合、譲渡企業の従業員は今までと異なる文化を受け入れなくてはいけないため、M&A後に人材が流出してしまう可能性もあるでしょう。

人材が流出してしまうと、譲受企業にとっては大きなマイナスになってしまいます。そのため、譲渡企業の経営者は事前に従業員への説明をしっかりと行う必要があります。

取引先との関係

株式譲渡の場合は、経営権が移動するだけなので、買収後は譲受企業が取引先との契約をそのまま引き継ぎます。

ただし、譲渡企業と取引先とでチェンジオブコントロール条項が定められた契約を締結している場合は、注意が必要です。チェンジオブコントロール条項がある場合、買収された後の経営に大きな影響を与えることになるため、譲受企業へは事前に伝えておく必要があります。

▷関連記事:「チェンジオブコントロール条項(COC )」とは?目的や注意点を徹底解説

一方、事業譲渡では取引先との契約関係が引き継がれません。買収後の取引先との契約継続は譲受企業次第なので、契約を継続する場合、譲渡企業がサポートする必要があるでしょう。

買収された会社の人事・人材開発面の変化

譲受企業の方針や買収のスキームによっては、買収された後に従業員への影響が出る場合もあります。そのため、譲渡企業の経営者は、買収による従業員への影響を理解しておく必要があるでしょう。

ここでは、買収された会社の人事・人材開発面の変化について紹介します。

労働条件・退職金

労働条件や退職金に関しては、会社の買収が株式譲渡か事業譲渡かによって対応が異なります。

株式譲渡の場合は包括承継となるため、雇用契約はそのまま引き継がれます。また、退職金制度もそのまま引き継がれるのが特徴です。

一方、事業譲渡の場合は特定承継となるため、再度雇用契約を結び直す必要があり、定年退職の年齢や給与などの労働条件の他、退職金に関しても変更される可能性があります。

なお、事業譲渡の際の退職金の扱いについては、基本的に以下のどちらかで対応するのが一般的です。

・譲渡前に一度退職金を精算し、譲渡後は譲受企業の基準に沿った退職金規程に従う
・譲受企業がそのまま退職金を引き継ぎ、退職時に同額を支払う

福利厚生制度

福利厚生は譲受企業が決めるケースがほとんどのため、待遇が良くなる場合もあれば悪くなる場合も考えられます。住宅手当の有無や金額、各施設の割引サービス、育児・介護休暇の日数などに、何かしらの変化が生じる可能性が高いでしょう。

人事評価制度

買収後は、譲受企業によって評価制度などを含めた人事制度の統合が行われます。基本的には、譲渡企業の従業員のモチベーションが下がらないように配慮して行われますが、場合によっては評価制度が大幅に変更され、待遇が変わる可能性もあるでしょう。

例えば、買収後、貢献度が相対的に十分でない従業員や、賃金が生産性を上回っている高齢の従業員の待遇が悪くなってしまう可能性も考えられます。

また、事業譲渡の場合は雇用契約を結び直すため、譲受企業との条件によっては買収前と買収後で賃金などが変わることもあります。

キャリア開発・研修制度

買収は、基本的に譲渡企業より規模の大きい会社が譲受企業となるため、譲渡企業の社員にとっては買収前より仕事の内容やキャリアの幅が広がる可能性があります。

例えば、譲受企業が異業種であれば、全く新しい仕事に取り組める可能性がある他、同業種でも異なる業務内容を経験できるといったことが考えられるでしょう。

また、買収先が研修制度の充実している企業であればスキルアップができ、今までと違う人脈もできるため、スキルや経験、知識を深める機会にもなります。

買収されても従業員が解雇されることはない

会社が買収されるとどうなる?組織に起こる変化や従業員の待遇を解説

労働基準法や労働契約法により、労働者の権利を守るために、吸収合併に伴うリストラはできないことになっています。そのため、会社の買収によって従業員が解雇されることはありません。

しかし、法律で守られているのはあくまで最低限の範囲なので、労働環境や労働条件、福利厚生、退職金などが変わる可能性はあります。従業員の待遇に関して事前に交渉しておくことで、従業員にとって働きやすい環境を維持することができるでしょう。

なお、M&Aによる各種変化が原因で退職したい場合の退職金や退職理由については、スキームやM&A後の状況によって取り扱いが異なります。

M&A後の退職金や退職理由などについては、こちらの記事で解説しています。
▷関連記事:M&A後の退職金、給与、従業員の処遇はどうなる?株式譲渡と事業譲渡の退職金についても解説

事業譲渡における労働条件は会社の買収前に協議することもできる

事業譲渡では雇用契約を結び直す必要があります。その際、承継予定労働者であれば、労働組合法上の団体交渉権により、労働条件について申し入れをすることができます。

そもそも譲渡企業は、譲渡前の労働契約を譲受企業に承継させる場合、承継予定労働者から民法第 625 条第1項の規定に基づく承諾を得る必要があります。そのため、譲渡企業は事前に承継予定労働者へ十分な説明を行い、承諾に向けた協議を行うのが適当です。

承継予定労働者へは、以下のような内容を説明します。

・事業譲渡に関する全体の状況(譲渡会社等及び譲受会社等の債務の履行の見込みに関する事項を含む)
・承継予定労働者が勤務することとなる譲受会社等の概要および労働条件(従事することを予定する業務の内容および就業場所その他の就業形態等を含む)

上記は、国が規定する「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」で紹介されている一例です。当然ながら、事業譲渡に伴い他に説明しておく事項があれば、譲渡企業は事前に承継予定者へ説明しなければいけません。

このようにM&Aには法律が関係し、専門的な知識が必要になります。そのため、スムーズにM&Aを実施するには、専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。

まとめ

会社が買収されるとどうなるかは、基本的に譲受企業の経営方針や考え方によりますが、その他に譲渡スキームや契約時の条件・合意内容も影響を与えます。

株式譲渡では経営権の移動が行われるため、経営陣の入れ替えが生じる可能性が高いものの、取引先や従業員への影響は比較的小さいと考えられます。一方、事業譲渡ではさまざまな契約が一度リセットされるため、取引先や従業員への影響は大きくなるのが特徴です。

買収では契約時の条件や合意の段階で譲渡企業の経営者がしっかりと内容を確認し、既存の取引先や従業員への影響がでないように話し合う必要があるでしょう。

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