M&Aは成約後のPMI(経営統合)が重要であり、PMIはM&Aの成否を握っていると言っても過言ではありません。M&Aの100日プランはクロージング後のDay1から実施され、PMIで重要な役割を占めています。
本記事では、M&Aの100日プランの意味や取り組む内容、進め方やプランニングのポイントを解説します。M&A後に必要なランディングプランの内容を知り、M&Aの成功に役立ててください。
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
M&Aの100日プランとは
M&Aの100日プランとは、成約直後から100日間に行う作業の計画やスケジュールのことです。M&Aは成約がゴールではなく、成約後の速やかな経営統合(PMI)が必要とされます。100日プランは、PMIの中でも初期段階に集中的に行われるプロセスを指しています。
100日プランで実施されるのは、PMIを推進するための体制づくりや現状の分析と課題の把握、それにもとづく経営統合などです。PMIの早期達成はM&Aによるシナジー獲得や事業成長にもつながるため、100日プランは重要な施策となります。
なお、PMIは下記の記事で詳しくまとめています。興味のある方はあわせてご確認ください。
▷関連記事:M&AにおけるPMIとは?重要性や実施のタイミング、手順を解説
なぜ「100日」なのか
M&A後のランディングプランで「100日」が重視される理由は諸説あります。
1つは、マネジメントの観点から初めの四半期(3ヶ月、約100日)で結果を出すことが重要であるからです。企業の経営陣が刷新された際、同時に「100日プラン」を公表するケースがありますが、これはその一例でしょう。
また、M&A後に時間が経ちすぎてしまうと、従業員が不安や不信感を抱いてしまう場合があります。M&Aで会社が統合されたにもかかわらず、業務フローや人事制度、給与体系がそのままであれば、従業員は今後どのような組織形態となるのか把握できなくなってしまいます。
M&Aだけでなく、組織の変革をするときに「100日」は目安となる期間です。ただし、あくまでマイルストーンにすぎないため、実態に合わせて期間を変えることは可能です。
M&Aの100日プランで取り組む内容
100日プランでは、重要度や優先度が高い課題をピックアップして取り組みます。取り組むべき内容は企業によりさまざまですが、一般的な課題は以下のとおりです。
・シナジー創出、最大化の施策検討
・ガバナンス体制、内部統制の構築
・人事制度の統合、または再構築
・従業員や関係者との信頼関係の構築
・業務プロセスの統合
・情報システムの統合
M&Aによるシナジー獲得を重視する企業であれば、「シナジー創出、最大化の施策検討」は最優先課題でしょう。また、譲渡企業と譲受企業双方の経営者や従業員、関係者との相互理解と信頼関係の構築も大切です。
M&Aの100日プランの進め方
100日プランは、一般的に以下の流れで進められます。
1. プロジェクトチームや担当者の決定
2. 現状の分析と課題の抽出
3. プランの策定と実行
4.効果の検証
各項目の詳細を解説します。
1.プロジェクトチームや担当者の決定
はじめに、100日プラン実施の中心となるプロジェクトチームや担当者を決定します。担当者は、譲渡企業と譲受企業の双方から適切な人材を選ぶとよいでしょう。譲受企業の人材のみでチームを構成してしまうと、「譲渡企業の実態がわからない」「譲渡企業の意向が反映されない」などのトラブルの原因となる場合があります。
また、100日プランの検討課題は多岐にわたることから、各プロジェクトチームの他に全体を取りまとめる部署を設置すると効率的です。
その他、中小企業では社内の人材だけで対応できないケースも考えられます。専門家や支援機関に相談するなど、必要に応じて外部リソースも活用しましょう。
2.現状の分析と課題の抽出
100日プランの策定には、現状分析と課題抽出が欠かせません。プロジェクトチームを中心に譲渡企業と譲受企業の現状を分析し、経営統合の課題となる点を洗い出しましょう。
なお、M&A交渉時の面談やデューデリジェンスで得られた情報は、現状分析の指針をとなるので、有効的に活用してください。
3.プランの策定と実行
洗い出した課題をもとに、100日プランを策定します。「重要度」「緊急性」「実行可能性」から総合的に判断して課題ごとに優先順位をつけ、具体的な施策を作成してください。
施策の中には、短期的に成果が上がり比較的簡単に実施できる「クイック・ヒット」を盛り込むことも重要です。例えば、「従業員の処遇改善を行う」「パソコンなどを新しく購入する」など、即効性のある施策を行うと、従業員はM&Aのメリットを実感でき、PMIへのモチベーションを期待できます。
4.効果の検証
100日プランを実施する際は、逐次効果検証を行いましょう。検証した結果から再度方針を練り直し、計画に反映してPDCAをまわしていくと、100日プランをより実効的なものにすることができます。
プランニングのポイント
100日プランをプランニングするときの主なポイントは、以下のとおりです。
・できるだけ早い段階で100日プランを策定する
・プロジェクトチームに現場の当事者を入れる
・短期的な目標と中長期的な目標を明確にする
・プランニングの方向性や優先順位について専門家のアドバイスを仰ぐ
それぞれのポイントの具体的な内容を解説します。
できるだけ早い段階で100日プランを策定する
100日プランの目的は、M&A後のPMIを速やかに進めることにあります。そのため、M&Aの検討段階から統合後のあり方をイメージし、プラン策定に必要な課題を検討しておくことはとても重要です。
経営統合後のイメージが明確であれば、デューデリジェンスの際にも100日プラン策定に有用な情報を得られやすくなります。
プロジェクトチームに現場の当事者を入れる
プロジェクトチームには、実際に100日プランを実行する当事者を入れておきましょう。当事者の意見をヒアリングしてプランに織り込むことで、より実現可能性の高いプランを策定できます。
短期的な目標と中長期的な目標を明確にする
100日プランは、PMIの中でも優先度の高い課題を集中的に対策する期間です。100日プランに多くの課題を詰め込みすぎる必要はありません。短期的な目標と中長期的な目標を明確にし、100日プランに含めるものとそれ以降継続して実施するものは分けておきましょう。
プランニングの方向性や優先順位について専門家のアドバイスを仰ぐ
PMIの課題は数多く、特に中小企業では人員や人材を自社だけではまかなえないケースも想定されます。特に、プランニングの方向性や優先順位の決定は、M&Aの経験が少ない企業では困難な場合もあるでしょう。100日プランで不明な点がある場合は、M&Aの専門会社や支援機関など、専門家への相談も検討してみましょう。
まとめ
M&Aの成功には成約後のPMIが欠かせません。100日プランはPMIの基礎をかためる施策です。企業の統合で生じる課題は企業ごとに違いがあるので、現状分析と課題抽出を実施し、プランニングを行いましょう。
100日プランの策定は、M&Aの早い段階から取り掛かることがポイントです。fundbookでは数多くのM&Aをサポートしてきた経験と、法務・財務・税務の専門的な知見から、M&Aを総合的に支援します。M&Aに関してお困りの方は、ぜひfundbookまでご相談ください。