業界毎の事例

2025/05/29

土木工事業界のM&A動向!譲渡・譲受のメリットや相場、注意点を解説【事例あり】

土木工事業界のM&A動向!譲渡・譲受のメリットや相場、注意点を解説【事例あり】

土木工事業界は、道路や上下水道などをコンクリートや鋼材で施工する事業を営む業界です。政府や自治体による公共投資も多く、市場規模は長期的に拡大しています。近年では、土木工事における人手不足や人材の高齢化、公共事業の受注増加などに対応するため、M&Aが選択されるケースも多い業界です。

本記事では土木工事業界の特徴や現状、M&Aの動向を解説します。土木工事業界でM&Aを実施するメリットや相場、注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

\資料を無料公開中/
企業価値100億円の企業の条件とは
資料
・100億円程度の譲渡価額がついたM&A事例
・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件

自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

土木工事業とは

土木工事業界とは、道路や橋の敷設、港湾や堤防の整備など、建物以外の土木工事全般に携わる業界です。貯水池や下水道の設置、宅地造成、干拓工事や開墾工事なども土木工事に含まれます。

土木工事を含む建設業は、29の業種があります。大きくは、「一式工事」(土木一式工事・建築一式工事)と27の「専門工事」に分けられます。土木工事は業種別許可制を採用しており、工事を行う際は種類ごとの建設業許可の取得が必要です。

土木工事業の現状

土木工事業は、生活に関わるインフラを整備する重要な業種です。土木工事業界の市場規模や課題などをはじめ、土木工事業界の現状を解説します。

市場規模は拡大している

※出典:国土交通省総合政策局情報政策課建設経済統計調査室「令和6年度(2024年度)建設投資見通し概要

国土交通省が公表した「令和6年度(2024年度)建設投資見通し概要」によると、2024年度の建設投資額の見通しは73兆200億円です。前年度比で2.7%増となる見込みで、2014年度以降拡大を続けています

国内の建設投資額を過去5年間の推移で見ると、2020年度は約63兆円であった投資額は、2024年度(見通し)では約73兆円に増加する予測です。金額ベースで約10兆円、割合では約15%も増加しています。
その中で、土木工事業に関しても、2024年度の投資額は約25兆8,000億円であり、前年度比4.1%の増加を見せています。2020年度の約25兆2,000億円と比較すると、金額ベースで約6,000億円、割合で約2.3%増の状況です。度重なる自然災害の復旧工事、老朽化したインフラの整備などを受け、建設市場全体で需要が拡大しています。

人手不足・高齢化が進んでいる

※1出典:一般社団法人日本建設業連合会「建設業就業者数の推移


市場が堅調な伸びを見せる一方、土木工事業界では「人手不足」が課題です。一般社団法人日本建設業連合会がまとめた資料によると、2004年に約580万人であった建設業就業者数は、2023年には約480万人に減少しました※1。土木工事を含む建設業を担う人材が、20年間で約100万人減少した状況です。

※2出典:一般社団法人日本建設業連合会「建設業就業者の高齢化の進行

また、土木工事業界では「人材の高齢化」問題も抱えています。2023年時点で、建設業就業者の約36%が55歳以上であり、29歳以下の割合(約12%)と比較すると55歳以上の割合が圧倒的に多いことがわかります※2。なお、全産業の平均(55歳以上が約32%、29歳以下が約17%)と比較しても、建設業界は高齢化が著しく進んでいます。

現在、日本は超高齢化社会に突入しており「2025年問題(国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、日本社会に深刻な影響を及ぼすこと)」が注目され、労働力人口の減少が課題です。高齢化が著しく進む土木工事業界も例外ではなく、人材の高齢化と人手不足は今後さらに深刻化する流れが予想されます。

土木工事業のM&A動向

土木工事業界では、直面する課題を解決する手段の1つとして、M&Aが活発です。ここからは、土木工事業界のM&A動向を解説します。

人手不足・後継者問題解消のための売却が増加

土木工事業界では、前述のように人手不足や人材の高齢化が課題です。高齢化は経営層でも進んでおり、同時に事業を承継する後継者不在の問題を抱えています。

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」によると、建設業の後継者不在率は59.3%と全産業の中で最も高い数値が報告されました。過去と比較すると後継者不在率は低下しているものの、後継者不在に起因する廃業も多く見られる状況です。

土木工事業界では、上記の問題の解決策として、M&Aで会社を売却し事業継続や従業員の雇用維持を図るケースが増えています。

※出典:帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)

事業拡大のためのM&Aが増加

土木工事業界は老朽化したインフラへの対応をはじめ、安定した需要が見込まれます。そのため、大手企業による地方密着型の中小企業を対象としたM&Aや、事業の多角化を目的とした近い業種間でのM&Aなど、事業拡大のためのM&Aが増加しています。

土木工事業のM&Aのメリット

土木工事業界のM&A動向!譲渡・譲受のメリットや相場、注意点を解説【事例あり】

M&Aは資本の移動を伴う企業間の合併・買収であり、実施によっていくつかのメリットをもたらします。譲渡企業側と譲受企業側に分け、土木工事業界でM&Aを実施するメリットを解説します。

【譲渡企業側】M&Aのメリット

土木工事業界でM&Aを行う、譲渡企業側の主なメリットは次のとおりです。

・従業員の雇用を守れる
・後継者問題を解消できる
・創業者利益を得られる
・経営コストを削減できることがある

人手不足や後継者不在で廃業に追い込まれると、従業員の雇用やこれまで培ってきた技術・ノウハウが失われてしまいます。M&Aによって事業を他企業へ引き継ぐことができれば、従業員の雇用維持や後継者問題の解決に役立ちます。また、創業者には株式の売却による創業者利益がもたらされる点もメリットです。

なお、大手企業の子会社となった場合などは、親会社になる企業の経営資源を活用できます。販売拠点の統合や仕入れルートの共有化などによって経営コストの削減が見込めます。

【譲受企業側】M&Aのメリット

M&Aで企業を譲受する側の主なメリットは次のとおりです。

・人材を獲得できる
・エリア拡大につながる
・関連事業の獲得でシナジー効果を得られる
・スケールメリットを得られる
・コストやリスクを抑えて創業できる

労働力不足が課題の土木工事業界では、人材の獲得がM&Aを行う最大のメリットです。未進出エリアの企業をM&Aで取得できれば、自社のエリア拡大にも役立ちます。

また、土木工事業界には多くの関連事業があり、M&Aによるシナジー効果が生じやすい特徴があります。同業種の企業を取得すれば、資材の共同利用や市場シェアの拡大によってスケールメリットが得られます。

その他、M&Aは土木工事業界の分野で創業する際にも有効的です。設備や人材をゼロから準備するケースに比べ、コストやリスクを抑えて創業できます。

土木工事業M&Aの売却価格相場

土木工事業界のM&Aの売却価格には様々な算出方法があり、譲渡企業の収益性や将来性によって異なります。ただし、大まかな売却価格の目安は、年買法(年倍法)で算出できます。

年買法では、次の計算式で企業の売却価格を算出します。

売却価格=時価純資産額+営業利益×2年~5年分

年買法では、時価純資産額や営業利益をもとに簡単な計算式で売却価格の目安を算出できます。ただし、あくまでも目安であるため、譲渡企業の持つ資産や技術、ノウハウに高い価値を感じる場合などは、年買法で求めた金額よりも高い売却価格になるケースもあります。

なお、売却価格の基礎となる企業価値評価の方法には、次の3つのアプローチが存在します。

アプローチの名称内容
コストアプローチ・企業の現在の純資産に着目した方法
・年買法や時価純資産法などの種類がある
マーケットアプローチ・同業他社との比較をもとに算出する方法
・市場株価法や類似会社比較法などの種類がある
インカムアプローチ・企業が将来的に生み出す収益力に着目した方法
・DCF法や配当還元法などの種類がある

各アプローチにはそれぞれ特徴があります。M&Aの売却価格を決定する際は、各アプローチの中から、適した方法を採用します。

▷関連記事:「会社売却の相場とは?決め方や高く売るポイント、必要な諸経費について解説
▷関連記事:「M&Aの価格相場や算定方法とは?3つのアプローチと注意点

土木工事業のM&Aの注意点

土木工事業界でのM&Aは複数のメリットがある一方、注意点も存在します。実施に行う際は、次の点を事前に確認しましょう。

・従業員の引き継ぎ
・受注管理
・重機は自社所有かリースか
・過去の受注調整などの法的リスク
・情報漏洩リスク

土木工事業界は古くからの慣習が残存している場合があり、M&Aで経営者が代わると従業員も一緒に離職してしまうケースが見られます。重要な人材が流出しないよう、従業員の引き継ぎやケアは丁寧に行いましょう。

また、譲渡する企業の受注状況や設備の確認も重要です。工事台帳をもとにした受注管理、使用する重機の状況(自社所有かリースか)などを把握しましょう。その他にも、受注調整をはじめとした法的リスクや、M&Aの進行が外部に漏れる情報漏洩リスクに配慮して進めましょう。

土木工事業のM&A事例

土木工事業界では、エリア拡大や経営基盤の強化などを目的に多くのM&Aが実施されています。土木工事業界のM&A事例を紹介します。

株式会社バディネットによる株式会社リーバンの吸収合併

2024年12月、株式会社バディネットは、子会社である株式会社リーバンの吸収合併を取締役会で決議しました。

株式会社バディネットは、AKIBAホールディングスグループの中核である通信インフラ事業を担う企業です。

中国エリアで通信土木工事や電気通信工事を展開する株式会社リーバンの吸収合併により、大規模な案件を受注できる体制を構築します。

株式会社大盛工業による港シビル株式会社の子会社化

2021年3月、株式会社大盛工業は港シビル株式会社の株式を取得し、子会社化することを取締役会で決議しました。

株式会社大盛工業は、東京都内の下水道に関する土木工事業界を中心に事業を展開する企業です。

東京都や港区の土木工事を元請として受注実績のある港シビル株式会社の買収により、収益力のさらなる向上と経営基盤の拡大を狙います。

オリエンタル白石株式会社による山木工業ホールディングス株式会社の子会社化

2020年12月、オリエンタル白石株式会社は山木工業ホールディングス株式会社の株式を取得し、子会社化することを取締役会で決議しました。

オリエンタル白石株式会社はOSJBホールディングス株式会社の連結子会社であり、プレストレストコンクリートの建設工事などを手がける企業です。

山木工業ホールディングス株式会社の買収により、橋梁工事や港湾土木工事の受注拡大を目指します。

まとめ

インフラの老朽化や自然災害による影響などを受け、土木工事業界の市場規模は拡大を続けています。公共投資は今後も継続すると予想されることから、人材獲得や事業拡大を目的にM&Aが盛んな業界です。

M&Aは人手不足や後継者不在問題の解消につながる一方、法的リスクや情報漏洩リスクなどの注意点が存在します。M&Aを進めるためには、専門家の活用も有効です。

fundbookでは、M&Aにおいて業界に特化した専門チームのアドバイザーがサポートします。M&Aを検討する企業の方は、ぜひfundbookにご相談ください。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望する方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望する方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談