近年、税理士業界では再編が進んでいます。
会計事務所・税理士事務所の代表者の中には、M&Aを活用して事業の譲渡または譲受を検討している方もいるのではないでしょうか。
会計事務所・税理士事務所のM&Aは、一般的な企業とは異なる特徴があるため、成功させるためには事前にメリットや注意点などを把握しておくことが大切です。
本記事では、会計事務所・税理士事務所の業界の特徴やM&A動向、具体的な手法(スキーム)、活用のメリットなど、M&Aを検討する際に役立つ重要なポイントを詳しく解説します。
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
目次
会計事務所・税理士事務所とは
会計事務所と税理士事務所は、税務や会計全般の業務を行っている事務所のことです。両者の業務内容にはほとんど違いがなく、主な違いは法律によって定義されているかどうかです。
| ・会計事務所:法律による定義はない ・税理士事務所:法律によって定義されている |
一般的に税理士事務所は、税務を中心とした業務を行いますが、会計事務所は税務の他に会計やコンサルティングなどの業務を行っていることが多いとされています。
なお、2名以上の税理士が社員として在籍している法人のことを税理士法人と呼びます。
会計事務所・税理士事務所の動向
日本税理士会連合会の調査によると、全国の税理士の数は81,280人(2023年度)に上り、その数は年々増加傾向にあります。
その一方で、2014年時点で税理士のうち60代以上が半数以上を占めており、事務所の代表の高齢化と後継者不足に直面しています。また、会計事務所・税理士事務所の主な顧客である中小企業の企業数は、2014年から2021年までに約44万社減っており、年々減少しています。

会計事務所・税理士事務所の業界は今、戦略的に行動を起こさなければ生き残れない熾烈な競争時代に突入しています。そこで、世代交代をスムーズに行い、生き残りをかけた一手として、会計事務所・税理士事務所のM&Aが活発に行われています。
▷関連記事:「M&Aとは?意味・流れ・手法・費用などゼロからわかる完全ガイド【2026年最新】」
会計事務所・税理士事務所のM&A動向
M&Aは、業界の特徴や社会情勢によって交渉の仕方も変わってきます。ここでは、会計事務所・税理士事務所業界におけるM&Aの動向について紹介します。
安定経営が裏目に
会計事務所・税理士事務所では、顧問先と長期契約を結ぶことが多く、安定した経営が見込まれてきました。
しかし、長年勤めてきた代表が高齢となり、いざ引退しようと考えても後継者が見つからず、廃業の危機にさらされるケースが非常に多くなっています。
実際、日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査」の結果によると、税理士全体のうち60歳以上が過半数を占める結果となりました。

近年、中小企業の経営者の高齢化が問題となっていますが、会計事務所・税理士事務所でも税理士の高齢化とそれに伴う人材不足が喫緊の課題です。
そのため、比較的小規模な会計事務所・税理士事務所が、積極的に事業拡大を行う税理士法人の傘下に入ったり、小規模事務所同士が統合して法人として規模を拡大したりするM&Aの形態が目立っています。
独自に事業を承継できるケースはそれほど多くない
会計事務所・税理士事務所の事業承継で後継者がいるのは、恵まれたケースです。例えば、士業の世界では、適任の後継者に恵まれることはあまりありません。
そのため、会計事務所・税理士事務所の事業承継では、M&Aによる第三者への承継を早い段階で検討し、譲渡企業の経営者は対応が遅れないよう注意することが重要です。
会計事務所・税理士事務所でM&Aが検討される理由
会計事務所・税理士事務所を取り巻く環境の変化に伴い、多くの事務所で経営戦略の一手段としてM&Aの活用が検討されています。以下では、M&Aを検討する理由を、譲渡側と譲受側の視点から具体的に解説します。
譲渡側がM&Aを検討する理由
譲渡側がM&Aを検討する理由の1つは、後継者不在に伴う様々な問題を解消するためです。後継者問題を抱えたまま経営者が引退すると、その事務所は廃業に追い込まれます。従業員の雇用が失われてしまうだけでなく、顧客である顧問先への影響を与えかねません。
M&Aで事務所を他の事務所や税理士法人に譲渡できれば、従業員を譲渡先で継続雇用することが可能です。顧問契約の維持により顧客への影響を避けやすくなり、経営者は引退に伴う不安を軽減できます。
さらに、M&Aは将来的な経営不安の解消につながる点も利点です。例えば、大手税理士法人へ事務所を譲渡できれば、後継者問題を解決できるとともに、事業規模の拡大によって経営基盤の安定化が期待できます。
譲受側がM&Aを検討する理由
譲受側がM&Aを検討する主な理由には、経験豊富な人材の確保や新たな分野への参入が挙げられます。
業界では慢性的な人材不足の課題を抱えていますが、事務所を譲受できれば、経験豊富な人材や税理士などの有資格者を一括で確保できる場合があります。即戦力となる実務経験者の承継により、新人教育にかかる時間や労力を抑えられる点もメリットです。
また、自社とは別分野の顧問先を持つ事務所の譲受は、新たな分野への参入を検討している際に役立ちます。新規エリアへの進出の際にも、その地域に基盤を持つ事務所の譲受により、スムーズな拠点展開が可能となります。
会計事務所・税理士事務所のM&Aのスキーム
会計事務所・税理士事務所を個人事業として運営している場合、株式会社ではないため、株式譲渡の手法は用いることができません。そのため、一般的にこれらのM&Aでは「事業譲渡」が選択されます。
株式譲渡と事業譲渡では、必要な手続きや発生する税金の種類が異なるため、事前に特徴を把握しておきましょう。
例えば、事業譲渡には譲渡側が有している事業の一部のみを譲渡する「一部譲渡」と、全ての事業を譲渡する「全部譲渡」があり、どちらを選択するかで承継する対象が異なります。
また、事業譲渡は設備や不動産などの有形資産から、営業ノウハウや顧客基盤といった無形資産までが対象となりますが、これらは「個別承継」となります。
譲渡対象を精査して個別に契約を切り替える必要があるため、手続きが煩雑になりやすく、課税関係やリスク面でも株式譲渡とは異なる注意が必要です。
▷関連記事:「株式譲渡とは?メリット・デメリットや手続きの流れ、注意点や税金について徹底解説」
▷関連記事:「事業譲渡とは?メリット・デメリットや流れ、具体的な手続き、税金について徹底解説」
会計事務所・税理士事務所におけるM&A活用のメリット
会計事務所・税理士事務所がM&Aを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、会計事務所・税理士事務所がM&Aを行うメリットを譲渡企業と譲受企業別に紹介します。
譲渡企業のメリット
譲渡企業の主なメリットは、以下のとおりです。
| ・後継者不足の解消 ・既存の従業員・顧客を守ることができる ・創業者利益を得ることができる |
会計事務所・税理士事務所では、代表者の高齢化と後継者不足が深刻な問題になっており、後継者不足で廃業するケースがあります。
M&Aを活用して第三者に事業を譲ることで、廃業することなく事務所を存続できるため、既存の従業員や顧客を守ることが可能です。
また、譲渡企業の代表者は、M&Aによって創業者利益を得ることができるため、引退後の資金や新規事業の立ち上げ資金などに活用することもできるでしょう。
譲受企業のメリット
譲受企業の主なメリットは、以下のとおりです。
| ・新規顧客の獲得・事業の拡大ができる ・人材を確保できる ・スキル・ノウハウを受け継ぐことができる |
譲受企業は、譲渡企業の顧客やブランドをそのまま引き継ぐことが可能です。そのため、新規顧客の獲得や事業の拡大につながる可能性があります。
また、M&Aによって譲渡企業の従業員を継続雇用できれば、スキルやノウハウを持った優秀な人材を確保できる可能性があるため、人材不足の解消や年々複雑化する業務への対応がしやすくなることも期待できます。
M&A実施時の注意点
会計事務所・税理士事務所のM&Aは、一般的な企業のM&Aとは特徴が異なるため、いくつかの注意点があります。以下では、譲渡企業と譲受企業に分けてM&Aを実施する際の注意点を紹介します。
譲渡企業の注意点
税理士業は、一定の顧問先と長期契約を結ぶ業態が多く、独自のスタイルや社風を持つ事務所が多いです。そのため、会計事務所・税理士事務所のM&Aでは、譲渡企業と譲受企業の双方が互いに理解を示すことが大切です。
また、会計事務所・税理士事務所のM&Aは売り手優位になりやすい傾向があると言われていますが、沈静化する可能性もあります。
会計事務所・税理士事務所の譲渡を検討している場合は、売り手優位になりやすい傾向があるため、できる限り早めの準備を行いましょう。
譲受企業の注意点
会計事務所・税理士事務所の顧客は、事務所のブランドではなく、税理士本人を信頼して契約している傾向があります。
譲受企業にとっては、顧客や従業員を引き継げることがM&Aのメリットの1つですが、M&A後に職場環境や労働条件が変更になることで職員が離れてしまうと、一緒に顧客も離れてしまう可能性があるため、注意しましょう。
また、会計事務所・税理士事務所は、顧問先や時代のニーズに積極的に対応してきた事務所と、従来どおりのやり方を続けてきた事務所に二極化していると言われています。
譲受する会計事務所・税理士事務所によっては、経営者から思ったようにノウハウを引き継げない場合もあります。
会計事務所・税理士事務所のM&Aを成功させるポイント
会計事務所・税理士事務所のM&Aを成功させるには、以下のようなポイントがあります。ポイントをきちんと押さえてM&Aで失敗しないようにしましょう。
譲渡側の従業員や顧客への対応を考えておく
会計事務所・税理士事務所のM&Aでは、M&Aによって事務所の環境が変わり、譲渡側の従業員が離れてしまう可能性があります。従業員にはM&A後の待遇やM&Aに至った経緯、理由、そしてその後も働いてほしい旨を真摯に伝えましょう。
また、会計事務所・税理士事務所業界では、事務所の看板というより、公認会計士・税理士への信頼・つながりが重要となるため、M&Aによって顧客が離れてしまわないように譲渡側の代表に残ってもらうなどの対策を考えておく必要があります。
もしも、M&A成立と同時に譲渡側の代表が引退する場合は、あらかじめ顧客に説明、説得してもらうようにしましょう。それでも顧客が離れてしまうのを回避できない場合は、譲渡価額の変更なども検討しましょう。
信頼できるM&Aの相談先を見つけておく
M&Aでは幅広くかつ専門性の高い知識の他、豊富な経験が必要になります。さらに、会計事務所・税理士事務所のM&Aは、一般的な企業のM&Aとはスキームも異なるため、信頼できる機関、専門家に依頼しましょう。
知識のないまま進めてしまうと、M&Aが失敗してしまう可能性もあるため、M&Aが成功する可能性を高めるためにも、専門家への相談をおすすめします。
fundbookでは、豊富な経験と幅広い知識を持ったアドバイザーが多数在籍しています。会計事務所・税理士事務所のM&Aを検討している方は、ぜひfundbookにご相談ください。
成長戦略としての会計事務所・税理士事務所のM&A
近年、会計事務所・税理士事務所業界は大きな転換期を迎えています。クラウド会計ソフトを始めとしたITサービスの普及により、従来の記帳代行や税務申告といった定型業務の需要は減少してきました。
このようなビジネス環境の中で生き残るためには、M&Aを通じて専門性の高い事務所を承継するなど、新たな手法による付加価値の高いサービスの提供が不可欠です。
また、2001年の税理士法改正で創設された「税理士法人」制度は、開始から約25年が経過しました。歴史が浅い一方で、中規模の税理士法人では競争が激しくなっています。現在は、大手税理士法人による買収や地方税理士法人の統合が進み、業界の再編が進む最中です。
このような背景から、会計事務所・税理士事務所のさらなる成長や、後継者問題の解消として事業承継を考える経営者にとって、現在はM&Aを活用するための良い機会と言えるでしょう。
まとめ

税理士数の増加と業界内の競争激化が目覚ましい税理士業界では、税理士事務所同士が統合して法人化する動きが活発になっています。
ビジネス界のグローバル化によって複雑化する税務に対応するためにも、国際会計基準や多様な先端産業分野に精通した人材を確保できる組織力が求められます。
今後も税理士事務所はM&Aが繰り返されていくと見られています。税理士業界のM&Aが売り手優位になりやすい現状を踏まえ、いかに自社にとって最適な譲受企業を見つけることができるかが勝負といえるでしょう。
fundbookにはM&Aの専門的な知識と豊富な成約実績を持つアドバイザーが多数在籍しており、各企業の経営課題に真摯に向き合い、最適なマッチングを支援します。M&Aをご検討の際は、ぜひfundbookにご相談ください。
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