経営・ビジネス

2025年12月4日

戦略と戦術の違いとは?意味と具体例やビジネスシーンの活用ポイントをわかりやすく解説

戦略と戦術の違いとは?意味と具体例やビジネスシーンの活用ポイントをわかりやすく解説

事業戦略や営業戦術など、「戦略」や「戦術」はビジネスでよく使われる言葉です。戦略と戦術の意味の違いを理解し、目的に応じて使い分けることで、マーケティングや実際のビジネスシーンで役立ちます。

本記事では、戦略と戦術それぞれの意味や違い、使い方をわかりやすく解説するとともに、企業が実際に戦略や戦術を立てて事業経営に活かした事例を紹介します。

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戦略と戦術の違いとは

「戦略」と「戦術」はそれぞれ別の意味をもちます。ビジネスにおいて戦略と戦術は上下関係にあり、その特徴や違いを理解して使い分けることで効果を発揮します。戦略と戦術の違いを以下で解説します。

戦略とは

戦略とは、企業が成長するために「進むべき方向性」を打ち出すことです。

・他社との差別化を図りたい
・コスト削減をしたい
・ターゲットを絞りたい など

戦略を立てる際は、1〜5年のように中長期間で達成できる目標を掲げるのが一般的です。「開店したばかりの飲食店」を例に挙げると、以下の戦略を打ち出せるでしょう。

・店舗を知ってもらう
・健康志向の層をターゲットにして差別化を図る

事前に戦略を立てることで、後続の戦術へと上手くバトンタッチができます。

戦術とは

戦術とは「戦略で掲げた目標を実現するための具体的な手段や方法」を指します。戦術の実施期間は中長期的な戦略とは違い、数ヶ月ごとに練り直すのが一般的です。

先程挙げた飲食店の例を用いると、店舗の宣伝や他店との差別化という戦略を実現するために、以下のような戦術を打ち出せるでしょう。

・SNSで店舗情報を発信する
・オーガニックの食材を使う

店舗の周知方法には、XやInstagramなどのSNSを活用する方法があります。健康志向の層をターゲットにする場合、オーガニックにこだわった食材を使う手もあるでしょう。戦術は、事前に立てた戦略があるからこそ成り立つ作戦です。

ビジネスシーン別|戦略と戦術の違い

「戦略」が大きな方向性や方針であるのに対して、「戦術」は戦略を達成するための手段であり、違う意味を持つことを紹介しました。

この違いを踏まえたうえで、企業経営やマーケティングにおいて戦略と戦術がどのように使われるのか、以下では具体例を交えながら解説します。

1 経営における戦略と戦術の違い

企業として存続するためには、長期的な目線で経営戦略を考えるとともに、その経営戦略を達成するための経営戦術を検討して実行することが重要です。

経営戦略とは、経営目的を持続的に達成していくための方策全般を指し、企業が大局的視野や長期目線に立って検討するものです。具体的には、企業理念や経営理念、経営ビジョン、行動指針などが該当します。

経営戦略を打ち出した後に、その経営戦略を成功させるための具体的な方法として検討するものが経営戦術です。人材や資金などの経営資源の調達方法を考え、経営戦略を達成するための方法について、検討・決定する過程をイメージするとわかりやすいでしょう。

2 マーケティングにおける戦略と戦術の違い

戦略と戦術は、マーケティングに多く取り入れられます。マーケティング市場で企業が顧客を満足させるには、戦略と戦術が必要不可欠です。マーケティング戦略とは、市場での自社の立ち位置を把握したうえで、顧客へのアプローチ方法を策定することです。

・誰に提供するか
・価格設定はどうするか
・販売する場所をどこにするか

マーケティング戦略では「コストを15%抑えよう」というように、具体的な数字を掲げることが一般的です。マーケティング市場での戦略策定は「見込み客の獲得」や「販売実績の向上」といった成果のために重要な行程といえます。

マーケティング戦略を立てた後に、実行方法を具体的に打ち出す作業がマーケティング戦術です。コスト削減のためには「商品製造から販売までを自社のみで担う」といった具体的な戦術が必要でしょう。

マーケティング戦略と戦術を使いこなせば、他社との差別化を図りながら企業成長を図れます。

戦略と戦術の必要性・重要性

戦略と戦術は、いずれも企業経営において必要であり重要なものです。以下では、経営で戦略・戦術の両方が必要な理由と重要性を解説します。

戦略のみで戦術がない場合

戦略を立て、方向性が定まっていても、実行方法や具体策など戦術がなければ円滑に目標達成ができません。

組織としての戦略や方向性を定めたにも関わらず、達成するための手段や方法が定まっていなければ、組織員はどのように行動すればよいのかわからず、組織目標の達成に向けて組織として連携を取って行動することができなくなります。

そのため、目標を実現するためには具体的な手段や方法(戦術)が重要です。

戦術のみで戦略がない場合

戦術は「目標を実現するための具体的な手段や方法」であるため、進むべき方向性(戦略)が決まっていなければ成り立ちません。

組織として何を目標としているのか、個々の手段や方法を講じている目的や意味を理解せずに行動すると、行動に一貫性がなくなる可能性があります。

そのため、戦術の前に戦略を立てることが重要です。

戦略と戦術の関係性は「ピラミッド構造の上下関係」

戦略によって方向性が定まっていなければ、戦術という具体策を決定できません。つまり、戦略と戦術はピラミッド構造における上下関係にあるということです。

戦略は長期的に求めるべき内容であるのに対し、戦術は短期的に策定や実施・振り返りを行い、より良いものに更新し続ける必要があります。戦略で定めた方向性に適した戦術を複数設定し、ピラミッド構造における土台を頑丈にすることが成功へのカギになります。

大企業と中小企業での戦略/戦術の違い

戦略と戦術はいずれの企業にとっても必要であり重要ですが、どちらがより重要なのかは企業によって異なります。以下では、大企業と中小企業における戦略と戦術の違いを解説します。

大企業:戦略重視

大企業は組織が大きく社員も多いため、最初に全体の方向性を合わせることがより重要になります。方向性が定まらず、組織員が別々の行動を取ると、組織員の数が多いだけに混乱が大きくなり、収拾がつかなくなって軌道修正が難しくなる可能性があるからです。

そのため、大企業では戦術よりも戦略を重視する傾向にあります。組織員の数が多い大企業では、戦略は経営者や幹部が担い、戦術は社員が担当することが一般的です。

また、企業規模が大きい企業は中小企業に比べると小回りが利きにくい分、市場環境の変化など外部環境に左右されやすくなります。影響を抑えるためには、外部環境にどのように対応するのか、大局的な視点に立って戦略を組むことが重要です。

中小企業:戦術重視

大企業では事業規模の拡大や多角化により、戦略を立てて方向性を示すことが重要ですが、中小企業の場合は、1つの事業のみを行っているケースも多く、その事業で新規顧客開拓や新商品開発などを目指すことが主な戦略になります。

中小企業では主な戦略は決まっていることが多いため、どのような戦術を立てるのかがより重要です。大企業に比べて規模が小さく、小回りが利きやすいため、外部環境に変化があっても戦術を駆使することで柔軟に対応できる可能性があります。戦術を効率的に駆使することが重要です。

また大企業とは違い、中小企業では人員などリソースが限られるため、経営者や幹部が戦略・戦術の両方を担当するケースが多く見られます。

戦略と戦術を検討するときのポイント

戦略と戦術を検討するときは、その順序が重要です。戦略という大まかな方針が決まっていてこそ、具体策である戦術を検討することができます。まずは戦略を立てて、その後に戦術を考えましょう。

戦略と戦術は、前述のとおりピラミッドの上下関係にあり、つながっています。そのため、両者を関連付けて策定することがポイントです。

戦略策定によって、ビジネスやマーケティングにおけるゴールやターゲットを明確に定めることで、はじめて具体的な戦術を検討できるようになります。

ビジネスにおいて効果的な戦略を立てる方法

ビジネスにおける戦略とは、企業理念やコンセプトを踏まえて、総合的かつ長期的な計画を立てることです。効果的な戦略を定めるためには、詳細なデータから自社の課題を把握することが重要です。

ビジネスにおいて戦略を立てる際、以下の5つのステップを踏むと効果的な戦略を立てることができます。

1 目標・目的を明確に定義する
2 自社の強みや現状を把握する
3 データやリサーチから課題を洗い出す
4 基本方針を決める
5 基本方針に沿った行動内容と手順を設定する

以下では、効果的な戦略を立てるためのポイントをステップごとに解説します。またM&Aにおける戦略は以下の記事で解説しているので参考にしてください。

▷関連記事:M&A戦略とは?立案・策定のプロセス・ポイント・注意点をわかりやすく解説

1 目標・目的を明確に定義する

戦略を立てるためには、目標や目的を明確に定義しましょう。目標や目的が定まっていなければ、長期的な戦略を立てるうえで方向性を見失う可能性があります。

ビジネスにおける戦略を立てる場合は、企業理念や会社のコンセプトを参考にしましょう。

ただ、企業理念やコンセプトをそのまま目標に設定するのは好ましくありません。目標は数値として出した方が達成に向けた取り組みを可視化しやすくなります。

具体的な目標設定に難航した場合、競合を参考にする手もあるでしょう。

・売上金額
・市場でのシェア率

目標数値を定めたら、その数値を達成するために越えなければならない課題を把握します。

2 自社の強みや現状を把握する

自社の現状を正しく把握してこそ、戦略を立てることができて方向性や取るべき行動を決定できます。

そのため、戦略を立てる際には自社の現状や強み・弱みを分析して把握することが重要です。自社分析によって、現状のポジションから目標達成までの道のりやすべきことが見えてきます。

3 データやリサーチから課題を洗い出す

課題の把握は、過去や業界内の売上データを参考にして行います。ここで大切なのは、自社のデータに限定するのではなく、業界全体や関連する事柄のリサーチも実施することです。

理由としては、販売する環境や流行・景気など自社でコントロールできない項目が影響する可能性があるためです。

課題を分析したうえでそれぞれの対策を考えます。1つの課題だけに絞らず、複数の課題を様々な角度から検討することが大切です。

▷関連記事:事業戦略策定に効果的な7つのフレームワーク

4 基本方針を決める

一般的に戦略の実施期間は1〜5年に渡ります。企業の軸となる効果的な戦略を立てるには、具体的な行動内容ではなく基本方針を定めることが重要です。

基本方針とは、経営理念や企業のコンセプトに基づいて、顧客や競合企業との関係性・自社のあり方を明確にする指針のことです。基本方針は、自社が顧客へ提供できる価値や競合他社との違いを踏まえて差別化できる項目を落とし込めば、ある程度絞れるはずです。

5 基本方針に沿った行動内容と手順を設定する

基本方針の決定後は、方針に沿った行動内容や手順を確認しましょう。

大まかな行動内容や手順を把握することで、トラブル時の軌道修正方法をあらかじめ考えられます。トラブルが起こった際の対策を「コンティンジェンシープラン」と呼びます。

コンティンジェンシープランが定まれば、トラブル時の対策を企業全体で把握できるため、プロジェクトの頓挫を防げるでしょう。戦略には、成功するためだけでなく、トラブルへの対策も必要です。

具体的な戦術を立てる方法

戦術では戦略と違い、具体的な方法を絞ります。
ここでは、戦術の立て方について順を追って解説するので参考にしてみてください。

1 戦略を達成するための作戦を立てる
2 短期目標を設定する
3 実現可能なアクションを計画する
4 戦術の締め切りを設定する

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.戦略を達成するための作戦を立てる

ピラミッド構造における戦略と戦術の関係を整理すると、その中間に位置づけられる要素として「作戦」という段階があります。戦術を効果的に設計するには、まず戦略に基づいた複数の作戦を立てることが重要です。

ここでいう作戦とは、戦略を達成するための方針を分類・体系化した中項目のようなもので、具体的な行動(戦術)を展開する前提となります。

例えば、レストラン経営において「売上を30%上げる」という戦略を掲げたとしましょう。この戦略を実現するための作戦としては、以下の項目が考えられます。

・メニュー開発
・食材の選定
・集客方法

方向性に応じた作戦を立て、その作戦を成功させるための具体的な方法が「戦術」です。効果的な作戦を複数設定するためにも、戦略の分析や課題の把握を十分にしましょう。

2 短期目標を設定する

戦略と異なり、戦術は1ヶ月〜1年程度の短期間で目標の達成を目指します。そのため、戦術を定める際には、下記の2点を数値化して示すことが大切です。

・達成数値
・達成期限

短期間で成果を出せるように、達成可能な数値を分析して設定しましょう。

3 実現可能なアクションを計画する

短期目標を設定したら、目標を達成するための行動を計画します。行動した成果を把握するためにも、KPIの設定をするとよいでしょう。

KPIとは「重要業績評価指標」を指し、目標達成に向けての行動に対する定量的な指標です。例えば、売上アップという戦略においては「顧客を増やすこと」が戦術の1つになります。

顧客が増えたかを判断する指標として「受注率」や「成約数」をKPIに設定すると、数値として可視化できるでしょう。

4 戦術の締め切りを設定する

最後のステップとして、戦術の実施期間に「締め切り」を設けます。理由としては、戦術による成果が得られない場合に、次の行動に移る目安を把握するためです。

締め切りまでに目標の成果を挙げられない場合は、戦術そのものを変更するか、成果を上げるための行動内容を変更しましょう。PDCAを繰り返しながら、目標達成に向けて行動することが大切です。

企業の具体例から学ぶ戦略と戦術

戦略と戦術の違いを踏まえたうえで、実際の使いこなし方は、企業の事例が参考になるでしょう。ここでは、2社のビジネスにおける戦略と戦術を説明します。

・株式会社タスキ
・スズキ株式会社

株式会社タスキ

株式会社タスキは、不動産業界においてデジタル化やAI技術の導入を行い、不動産投資やコンサルタントを行う企業です。株式会社タスキの戦略と戦術は、以下のとおりです。

戦略:事業領域拡大による利益の増加
戦術:コンサル事業の新規展開

元々は不動産投資事業をメインに行っていましたが、2021年8月に「TASUKI DX CONSULTING」という法人のDX支援サービスを開始しました。

不動産投資事業で培った知識をコンサルティング業務に活かし、事業計画の策定から効果検証・人材育成までをサポートしています。

事業で得た知識を商品として発売することで、新たな業界での需要を満たした事例といえるでしょう。

スズキ株式会社

スズキ株式会社は、日本の自動車メーカーの1つです。スズキ株式会社は国内における自動車の市場競争に生き残るため、下記の戦略と戦術を定めました。

戦略:軽自動車とコンパクトカーの開発・販売に特化
戦術:低価格で開発するノウハウの構築

軽自動車とコンパクトカーを中心に販売することで、開発における専門性を高めました。また、販売車を限定したことで、ターゲットをより細かく絞ることが可能になり「軽自動車といえばスズキ」と呼ばれるほどの知名度を獲得しています。

自社にしかない強みを活かし、他社との違い・差別化を明確にしたことで、特定分野で地位を確立した成功例といえるでしょう。

まとめ

今回は、ビジネスにおける戦略と戦術の違いについてご紹介しました。企業が成長するために「進むべき方向性」を打ち出すことが戦略であるのに対して、戦術は、戦略で掲げた目標を実現するための具体的な手段や方法のことです。

ビジネスにおいて戦略と戦術は双方とも必要かつ重要な存在ですが、大企業では戦略重視、中小企業では戦術重視になる傾向があります。戦略を定めたうえで、細かな戦術を練ることが企業成長の秘訣となるでしょう。自社の立ち位置や競合の分析を行い、戦略と戦術を幾度となく繰り返せる企業が、市場で生き残ることができます。

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