ビジネスにおいて、事業戦略や営業戦術など「戦略」と「戦術」という言葉が多用されています。戦略と戦術はひとつのプロジェクトにおいて指す内容が異なり、目的に応じた使い分けることでビジネスは円滑になるでしょう。
上手く使い分けるには、戦略と戦術の違いを理解しなければなりません。そこで本記事では「戦略」と「戦術」それぞれの意味や使い方を解説します。
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戦略と戦術の違いとは
結論からお伝えすると「戦略」と「戦術」は違うものです。
ビジネスにおいて戦略と戦術は上下関係にあり、それぞれの特徴を把握し、使い分けることで効果を発揮します。本章では、以下の項目を解説しますので参考にしてみてください。
・戦略と戦術の特徴
・マーケティングにおける戦略と戦術の違い
・ピラミッド構造における役割
戦略とは
戦略とは、企業が成長するために「進むべき方向性」を打ち出すことです。
・他社との差別化を図りたい
・コスト削減をしたい
・ターゲットを絞りたい など
戦略を立てる際は、1〜5年のように中長期間で達成できる目標を掲げるのが通例です。
わかりやすく「開店したばかりの飲食店」を例に挙げると、以下の戦略を打ち出せるでしょう。
・店舗を知ってもらう
・健康志向の層をターゲットにして、差別化を図る
事前に戦略を立てることで、後続の戦術へと上手くバトンタッチができます。
戦術とは
戦術とは「戦略で掲げた目標を実現するための具体的な手段や方法」を指します。
戦術の実施期間は中長期的な戦略とは違い、数か月ごとに練り直すのが一般的です。
前述で挙げた飲食店の例を用いると、戦術は以下のとおりです。
・SNSで店舗情報を発信する
・オーガニックの食材を使う
店舗の周知方法には、TwitterやInstagramのようにSNSを活用できます。健康志向の層をターゲットにする場合、オーガニックにこだわった食材を使う手もあるでしょう。戦術は、事前に立てた戦略があるからこそ成り立つ作戦です。
マーケティング戦略とマーケティング戦術の違い
「戦略」と「戦術」は、マーケティングに多く取り入れられます。マーケティング市場で企業が顧客を満足させるには、戦略や戦術が必要不可欠だからです。マーケティング戦略とは、市場での自社の立ち位置を把握したうえで、顧客へアプローチ方法を策定することです。
・誰に提供するか
・価格設定はどうするか
・販売する場所をどこにするか
マーケティング戦略では「コストを15%抑えよう」というように、具体的な数字を掲げることが一般的です。マーケティング市場での戦略策定は「見込み客の獲得」や「販売実績の向上」といった成果のために重要な行程といえます。
マーケティング戦略を立てた後に、実行方法を具体的に打ち出す作業がマーケティング戦術。コスト削減のためには「商品製造から販売までを自社のみで担う」といった具体的な戦術が必要でしょう。
マーケティング戦略と戦術を使いこなせば、他社との差別化を図りながら企業成長を図れます。
戦略と戦術はピラミッド構造の上下関係にある
戦略と戦術には、上下関係があります。戦略によって方向性が定まっていなければ、戦術という具体策を決定できません。つまり、戦略と戦術はピラミッド構造における上下関係にあるということ。
戦略は長期的に求めるべき内容であるのに対し、戦術は短期的に策定や実施・振り返りを行い、よりよいものへ更新し続ける必要があります。戦略で定めた方向性に適した戦術を複数設置し、ピラミッド構造における土台を頑丈にすることが成功へのカギとなるでしょう。
ビジネスにおいて効果的な戦略を立てる方法
ビジネスにおける戦略とは、企業理念やコンセプトを踏まえて、総合的かつ長期的な計画を立てることです。効果的な戦略を定めるためには、詳細なデータから自社の課題を把握しておくことが重要です。
ここからは、ビジネスにおける効果的な戦略を立てるための4ステップをご紹介します。
1.目標・目的を明確に定義する
2.データやリサーチから課題を洗い出す
3.基本方針を決める
4.基本方針に沿った行動内容と手順を設定する
1.目標・目的を明確に定義する
戦略を立てるためには、目標や目的を明確に定義しましょう。目標や目的が定まっていなければ、長期的な戦略を立てるうえで方向性を見失う可能性があるためです。
ビジネスにおける戦略を立てる場合は、企業理念や会社のコンセプトを参考にしましょう。
ただ、企業理念やコンセプトをそのまま目標に設定するのは好ましくありません。目標は、数値として出した方が達成に向けた取り組みを可視化しやすくなります。
具体的な目標設定に難航する場合、競合を参考にする手もあるでしょう。
・売上金額
・市場でのシェア率
目標数値を定めたら、その数値を達成するために越えなければならない課題を把握します。
2.データやリサーチから課題を洗い出す
課題の把握は、過去や業界内の売上データを参考にします。ここで大切なのは、自社のデータに限定するのではなく、業界全体や関連する事柄のリサーチも実施することです。
理由としては、販売する環境や流行・景気など自社でコントロールできない項目が影響する可能性があるためです。
課題を分析したうえで、それぞれの対策を考えます。ひとつの課題だけに絞らず、複数の課題をさまざまな角度から検討することが大切です。
3.基本方針を決める
戦略の実施期間は、1〜5年に渡ることが一般的。企業の軸となる効果的な戦略を立てるには、具体的な行動内容ではなく基本方針を定めることが重要です。
基本方針とは、経営理念や企業のコンセプトに基づいて、顧客や競合企業との関係性・自社のあり方を明確にする指針のことです。基本方針は、顧客へ提供できる価値や競合と差別化できる項目を落とし込めば、ある程度絞れるはずです。
4.基本方針に沿った行動内容と手順を設定する
基本方針の決定後は、方針に沿った行動内容や手順を確認しましょう。
大まかな行動内容や手順を把握することで、トラブル時の軌道修正方法をあらかじめ考えられます。トラブルが起こった際の対策=「コンティンジェンシープラン」と呼びます。
コンティンジェンシープランが定まれば、トラブル時の対策を企業全体で把握できるため、プロジェクトの頓挫を防げるでしょう。戦略には、成功するためだけでなく、トラブルへの対策も必要です。
具体的な戦術を立てる方法
戦術は戦略と異なり、具体的な方法を絞ります。
ここでは、戦術の立て方について順を追って解説するので参考にしてみてください。
1.戦略を達成するための作戦を立てる
2.短期目標を設定する
3.実現可能なアクションを計画する
4.戦術の締め切りを設定する
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.戦略を達成するための作戦を立てる
前述した戦略と戦術のピラミッド構造において、両者の間には「作戦」という項目があります。
効果的な戦術を定めるためには、戦略に沿った複数の作戦を立てることが大切です。
ここで述べる作戦とは、戦略を達成するための方法をカテゴリ分けした項目のことです。たとえば、レストラン経営の戦略として「売上を30%上げる」と仮定しましょう。
売上アップにつながる戦術の考案として、以下の項目を予測できます。
・メニュー開発
・食材の選定
・集客方法
方向性に応じた作戦を立て、その作戦を成功させるための具体的な方法が「戦術」。
効果的な作戦を複数設定するためにも、戦略の分析や課題の把握を十分にしましょう。
2.短期目標を設定する
戦略と異なり、戦術は1ヶ月〜1年の短いスパンで目標の達成を目指します。そのため、戦術を定める際には、下記の2点を数値化して示すことが大切です。
・達成数値
・達成期限
短期間で成果を出せるように、達成可能な数値を分析して設定しましょう。
3.実現可能なアクションを計画する
短期目標を設定したら、目標を達成するための行動を計画します。行動した成果を把握するためにも、KPIの設定をするとよいでしょう。
KPIとは「重要業績評価指標」を指し、目標達成に向けての行動に対する定量的な指標です。たとえば、売上アップという戦略においては「顧客を増やすこと」が戦術のひとつになります。
顧客が増えたかを判断する指標として「受注率」や「成約数」をKPIに設定すると、数値として可視化できるでしょう。
4.戦術の締め切りを設定する
最後のステップとして、戦術の実施期間に「締め切り」を設けます。理由としては、戦術による成果が得られない場合に、次の行動に移る目安を把握するためです。
締め切りまでに目標の成果を挙げられない場合は、戦術そのものを変更するか、成果を上げるための行動内容を変更しましょう。PDCAを繰り返しながら、目標達成に向けて行動することが大切です。
企業の事例からみた戦略と戦術
戦略と戦術の具体的な使いこなし方は、企業の事例が参考になるでしょう。
ここでは、2社のビジネスにおける戦略と戦術を説明します。
・株式会社タスキ
・スズキ株式会社
株式会社タスキ
株式会社タスキは、不動産業界においてデジタル化やAI技術の導入を行い、不動産投資やコンサルタントを行う企業です。株式会社タスキの戦略と戦術は、以下のとおりです。
戦略:事業領域拡大による利益の増加
戦術:コンサル事業の新規展開
元々は不動産投資事業をメインに行っていましたが、2021年8月に「TASUKI DX CONSULTING」という法人のDX支援サービスを開始しました。
不動産投資事業で培った知識をコンサルティング業務に活かし、事業計画の策定から効果検証・人材育成までをサポートしています。事業で得た知識を商品として発売することで、新たな業界での需要を満たした事例といえるでしょう。
スズキ株式会社
スズキ株式会社は、日本の自動車メーカーのひとつです。スズキ株式会社は国内における自動車の市場競争に生き残るため、下記の戦略と戦術を定めました。
戦略:軽自動車とコンパクトカーの開発・販売に特化
戦術:低価格で開発するノウハウの構築
軽自動車とコンパクトカーを中心に販売することで、開発における専門性を高めました。また、販売車を限定したことで、ターゲットをより細かく絞ることが可能になり「軽自動車といえばスズキ」と呼ばれるほどの知名度を獲得しています。自社にしかない強みを活かし、特定分野で地位を確率した成功例といえるでしょう。
まとめ
今回は、ビジネスにおける戦略と戦術の違いについてご紹介しました。ビジネスにおいて、戦略と戦術は双方とも必要な存在です。
戦略を定めたうえで、細かな戦術を練ることが企業成長の秘訣となるでしょう。自社の立ち位置や競合の分析を行い、戦略と戦術を幾度となく繰り返せる企業が、市場で生き残るといっても過言ではありません。