現代では「子供が家業を継ぐのが当たり前」という考えを持っている方は、それほど多くはないかもしれません。当事者であれば、「自分のしたい仕事をしながら生きたい」と思うことでしょう。
それでも、中小企業庁の発表によると、2016年時点で親族に事業を承継させる予定の事業主は全体の66.6%に及び、そのうちの81.5%が「後継者は子供」と答えています。
そこで、もし親の会社を継ぐことになった場合の注意点とクリアしておくべきポイント、事業を継ぐためのプロセスについてまとめてみました。
上場企業に負けない 「高成長型企業」をつくる資金調達メソッド
本資料では自社をさらに成長させるために必要な資金力をアップする方法や、M&Aの最適なタイミングを解説しています。
・縮小する日本経済市場を生き抜くために必要な戦略とは?
・まず必要な資金力を増強させる仕組み
・成長企業のM&A事例4選
M&Aをご検討の方はもちろん、自社をもっと成長させたい方やIPOをご検討の方にもお役立ていただける資料ですので、ぜひご一読ください。
親の会社を継ぐメリットとデメリット
まずは、子供が親の会社を継ぐ際のメリットとデメリットについて考えてみましょう。「継ぐつもりはない」と今のところ考えている方も、メリットを改めて理解しておいて損にはなりませんし、反対に「継ぎたい」という強い意思がある場合は、デメリットを把握したうえでどのように進めていくのかについて意識しておかなければいけません。
親の会社を継ぐメリット
経営者の子供であれば、親の仕事を一番近くで見ることができ、忌憚のない意見をやりとりできるものです。事業内容や実際の経営状況について十分把握した上で、事業承継を進められるという点は、大きなメリットになるでしょう。
また、現経営者の子供ということで、従業員や取引先からも後継者として認められやすく、信用を得やすい立場にあります。そのため、次期経営者として采配を振るようになっても反発が起こりにくく、スムーズな事業承継が可能となるでしょう。
その他にも、どこかの会社に就職して働く場合、自分の一存で思いどおりの仕事ができないことも多々あります。しかし、親の会社を継ぐ場合は、会社の経営者の裁量で、比較的自由な判断や働き方ができるというメリットがあります。
また、自分で事業をゼロから立ち上げたりするよりも、すでにある事業や従業員をそのまま活かせるというアドバンテージもあります。自分のスキルや努力が結果に直結しやすいという点で、仕事へのやりがいが感じられるでしょう。
親の会社を継ぐデメリット
日本では正社員として企業に雇われていれば、ある程度は身分が保障される立場にあります。例えば、万が一会社が倒産してしまっても、被雇用者であれば失業保険を受け取ることができます。一方、経営者は社員を雇う側ですから、このような補償を受けることはできません。経営する企業にもしものことがあれば、むしろ自分が責任を取る立場になります。
そのため、重い責任を背負わずに安定した生活を求める方にとっては、自分が経営者になるのではなく、被雇用者として仕事をしていくほうが向いている場合もあるでしょう。
また、被雇用者であれば、その会社の仕事や職場と合わないと感じたときには、転職することができます。しかし、自分自身が経営者である場合は、退職や転職をするわけにはいきません。
加えて、親の会社を継ぐ場合、「相続税」や「贈与税」を納める必要があります。さらに、会社が融資を受ける際には、経営者が連帯保証人になるケースもあります。後継者は、現在の経営者が連帯保証人となっている融資があるかないかを確認した上で、それを引き継ぐ覚悟があるのかについても検討しなければなりません。
後継者に求められる3つの能力
企業の後継者に求められる能力としては、主に次の3点が挙げられます。子供が親の会社を継ぐ場合も、この能力を備えている必要があるでしょう。
①経営力
企業のリーダーとして、財務や経理、法務などの知識や、時流を読む力を身に付けなければいけません。目先の仕事だけでなく、将来を見据えた経営を行うための経営力は、後継者として必須のスキルです。
②実務能力
経営者は、必ずしも会社の実務をこなさなければならないとは限りません。むしろ、経営だけに徹する場合も少なくありません。しかし、企業を束ねることになるわけですから、事業内容を深く理解し、営業や実務にも携わり、スムーズに遂行できる能力は必要となります。そのためには、実際の実務を経験したり理解したりしていることは重要なポイントとなります。
③リーダーシップ
経営力があり、実務も滞りなく遂行できる後継者であったとしても、人としての素養が芳しくなかったりと、社員の心が離れてしまうようでは、良い経営者とはいえません。企業のトップとして、社員や取引先の気持ちを惹き付けることができるリーダーシップを備えた人物である必要があります。
親の会社を継ぐための具体策
最後に、親の会社を継ぐために意識しておきたいポイントや資金面での優遇措置、補助金制度などについてご紹介します。
・経営状態の改善(事業計画の策定)
経営状態の良くない会社を子供に継がせようとする親は少ないでしょう。また、事業を承継する子供としても、軌道に乗っていない事業を進んで継ぎたいとはなかなか思えないはずです。
そこで、まずは現経営者と後継者が現在の経営状態を把握して、望ましくないのであれば承継前に事業の改善や今後の方向性を検討しなければなりません。事業を継ぐための事業承継計画とともに、将来を見据えた事業計画について策定する必要があります。
・相続税・贈与税などの資金対策(事業承継税制の活用)
子供が親の事業を継ぐ場合、事業承継税制を利用することで、非常に多くのメリットを得ることができます。
例えば、2018年4月1日から2023年3月31日までに各都道府県庁に特例承継計画を提出することで、10年以内の株式の贈与・相続の際の税金が、全株式を対象に100%納税猶予されるという特例措置の制度があります。2018年〜2028年の10年間の時限措置で、このときに猶予された税金は、後継者が死亡した場合や5年経過後に別の後継者に事業を譲った場合、倒産した場合などは免除されることになります。
・株式の移転対策
株式をどのように親から子供に譲るのかという計画を立てます。生前贈与や譲渡、ホールディングス化といった選択肢があるため、自社にとってメリットの大きい方法を選びましょう。ご不明点があれば、専門家に相談することをおすすめします。
・事業承継補助金の活用
事業承継を機に新しい取り組みを行う経営者に対し、事業承継補助金が交付される制度があります。例えば、小規模事業者が事業承継のタイミングで新しい事業・取り組みなどを行う場合、200万円を上限として、補助対象経費の3分の2以内の補助を受けることができます。
自分の意思に正直に承継を進めよう
「親の会社を継ぐか否か」という問題に直面したとき、一番重要なのは自分がどのような生き方を選びたいかということです。その上で「継ぐ」という生き方を選択したのであれば、できるだけスムーズに承継ができるよう、早めに準備を整えておきましょう。
なお、社内に在籍しているものの親の会社を継ぐ気がない場合や、後継者として力不足であるという場合は、第三者への承継であるM&Aを行うこともできます。M&Aによる事業承継後もそのまま働き続ける方法はありますから、親の会社をどう承継するのかお悩みの方は、M&Aの専門家に相談するといいでしょう。