経営・ビジネス

2023/09/15

優先株とは?企業側と投資家側にとってのメリット・デメリットを解説

優先株とは?企業側と投資家側にとってのメリット・デメリットを解説

株の購入を検討した際に「優先株」の銘柄を見たことがある方は、「一体何が優先されるのか?」と疑問を抱いたことはないでしょうか。

株といえば、一般的にいうと「普通株」を指しますが、ここでは「優先株」の概要や種類、活用方法について解説します。メリットだけでなくデメリットも潜んでいるため、正しい知識を身につけ、購入を検討しましょう。

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優先株とは?

優先株(英語:Preferred Stock、またはPreferred Shares)は、普通株と比べると優先的な地位が得られる種類株式のことです。優先される権利の内容は、発行元によってやや異なりますが、一般的には以下のような特徴があります。

・投資家が多くの配当を受け取れる
・企業が解散したときに、優先的のその企業の資産を受け取れる
・議決権に一定の制限が設けられている
・普通株よりも株価が高めに設定されている

また、普通株よりも権利が劣る株式は「劣後株」と呼ばれ「劣後株<普通株<優先株」と、順により恩恵を受けられる内容が異なります。基本知識として併せて押さえておきましょう。

優先株の種類

優先株は種類株式は、以下の4つに種別されます。

①参加型優先株式(完全参加型優先株式)

株主が優先配当金を授受した後に、普通株分の配当金を追加でもらうことができる株式です。株を取得するコストが高めであることがデメリットではあるものの、二重で配当金を受け取れるのは魅力です。優先株の種類の中で最も多くの分配が得られることから、インカムゲインの獲得を狙う投資家に人気が高く、日本ではこの方式が多いと言われています。

②非参加型優先株式

非参加型優先株式は、優先配当金は受け取れますが、普通株分の追加配当金は受け取ることができません。二重の配当金を得られる参加型優先株式に比べて得られる分配は少ないですが、その分、取得コストも安価になるため予算面では選びやすいでしょう。

③制限参加型優先株式

参加型優先株式であっても、一部に制限が設けられているタイプを制限参加型といいます。
優先配当金を受け取った後に、普通株分の追加配当金を受け取ることはできます。しかし、これはあくまで「一部」であり、普通配当の額に対して一定の比率設定、もしくは上限額が決められているのです。
そのため、参加型に比べると授受できる配当金は少なくなっています。参加型と非参加型の中間といえる方式です。

④累積型・非累積型

ここまでは優先株の種類を説明しましたが、その他にも「様式」として覚えておきたいのが、この二つの型です。
累積型とは、ある事業年度における所定の優先配当金が全額支払われなかった場合に、その不足分について翌期以降に繰り越して累積させていく方式です。上記に対して、非累積型とは当該不足分の繰越しが行われない方式であり、アメリカで多く採用されていると言われています。

以上のことから、優先株式の株主からすると、非累積型と比較して累積型の方が投資の魅力度向上や投資のインセンティブ向上につながるといえます。

【企業側】優先株のメリット・デメリット

投資家にとってメリットが多くみえる優先株ですが、実は発行する企業側もメリットがあります。ただし、同時にデメリットが存在するということも認知しておきましょう。ここではメリット・デメリットについて解説していきます。

企業側にとってのメリット

資金調達手段として活用しやすい
株式会社の資金調達の手段には、株式の発行があります。株式は企業として返済する必要のない資金であるため、経営状況に左右されることなく、買収される可能性を低減することもできるでしょう。

議決権を分散せずに資金調達ができる
普通株の場合、議決権が分散し経営に干渉されやすくなるのがデメリットです。それにより思うような経営ができなくなり、買収の可能性が高まります。しかし、優先株であれば議決権を制限することで、株式の発行による資金調達をしたとしても、議決権を分散させることなく資金調達することが叶います。

自己資本比率の向上が期待できる
優先株の対価として得た資金は資本金となるため、自己資本比率の向上が図れることもメリットの一つです。「融資を受けたい」といった、資本金の向上が必要とされる場面を想定した際に、優先株の発行を一つの手段として把握しておきましょう。

企業側にとってのデメリット

発行に手間がかかる
特別な手続きや、定款の変更が必要になるなど、手間のかかることがデメリットです。また、株主総会とは別に種類株主総会の開催も必須となるため、普通株に比べると面倒に感じるでしょう。

企業としてのイメージダウンのリスクが伴う
資金調達の手段として、会社内部としては魅力的な優先株の発行ですが、外部から見た印象はどうでしょうか。「資金繰りが厳しい状況にある」と、悪いイメージを持たれてしまう可能性は否めません。アメリカやヨーロッパでは、投資方法の一つとして認知されているものの、日本ではまだ浸透していないのが実情です。

売買には不向きである
国内市場での浸透がされていないがゆえに、価格の変動もあまりありません。これは投資家からみて、デメリットであるのは確かです。一般投資家に向けて発行をしたとしても、なかなか買い手が見つからない恐れがあります。

【投資家側】優先株のメリット・デメリット

株式を発行する企業側のメリット・デメリットを紹介しましたが、投資家側にも同じようにメリット・デメリットが存在します。

投資家側にとってのメリット

配当を二重に受け取れる
参加型優先株の場合、配当金を二重に受け取れることが最大のメリットです。これは普通株を保有している場合と比べて、大きくリターンを増やすことに繋がるでしょう。

投資のリスクを回避する効果がある
全ての投資先の事業がうまくいくとは限らない中で、投資回収において優先権の確保ができ、比較的安全に投資を進めることができます。普通株であれば、投資先の経営状況の悪化などが生じた場合に、資金が戻ってこず損をすることも十分にあり得るのです。一定の優先配当額の保証がされているのは、投資をする上でも非常に大事な点ではないでしょうか。

投資家側にとってのデメリット

売買による利益を生み出すことが難しい
一般市場で売買される銘柄が少なく、全体として流動性は低い傾向にあるため、売買の利益を生み出すのは難しいといえます。経営状況が安定しているとしても、大幅に株価が上がる見込みはあまりありません。売りたいタイミングにすぐ売ることができないため、短期間で売買を繰り返すタイプの投資家には不向きです。

議決権が制限される
議決権に制限があると、投資先の経営が困難になってしまった場合にでも、経営に介入することができません。これを避けるためには、あらかじめどのような制限が設けられているか確認をしたり、議決権が保護されている株式を検討したほうが良いでしょう。

日本の優先株の例

個人の投資家が購入できる優先株を発行しているのは、日本だと清涼飲料水メーカーでおなじみの「伊藤園」のみとなります。同社では原則として議決権はありませんが、この点は特に大きな心配をするような点ではないでしょう。その理由は通常の株主優待の付与に加え、優先株の普通配当額が1.25倍であり、配当額の下限の設定がなされているというところにあります。

上記はあくまで例の一つとなり、取得条件や配当額は発行元により異なります。
株価は比較的安値ではありますが、出来高の数字や利回りをよく見た上で検討しましょう。

企業が優先株を発行する際の注意点

優先株を発行する前に必要なことは、企業・株主共に良い条件を決定した上で、その条件について株主と話し合うことです。その際に留意したい点を、以下にまとめました。

年間配当率の取り決め
普通株に比べて優先的に配当が得られる優先株ですが、この配当率は一年毎に決めておきます。一般的には、普通株の3〜10%の設定となることが多いようです。
配当率を決定していないことで、株主とのトラブルを招かないよう、しっかりと取り決めておきましょう。

議決権の範囲
優先株を持つ株主が参加できる「種類株主総会」ですが、議決範囲をどのようにするかが大事なポイントとなります。
決議事項を広げれば広げるほど、経営においてのスピーディーな意思決定の妨げになる恐れがあります。
決議事項を制限しすぎると、経営への積極的な介入を希望する株主の不満が増えるため、議決権の範囲については折り合いをつけながら話し合うべきです。

翌年度以降の資金調達
優先株による資金調達を一度でも行った際には、普通株での投資を受けることが難しくなります。
投資家の視点で見ても、回収が可能な優先株主がいる状態で普通株主になってしまうことは、投資の対象として魅力的とは言えないからです。
企業の経営・創業・出資者が保有する株式を売却し、投資した資金を回収することを念頭に置き、今後どのように資金調達を行うべきかも慎重に考えていきましょう。

優先株以外の資金調達

資金調達の方法は数多くあり、現代ならではの方法も増えてきています。ここでは、優先株以外の資金調達方法を解説しましょう。

融資を受ける

金融機関から資金を借り入れる方法です。
銀行との良好な関係を築く上で、将来を見据えた融資を受けるケースも度々見られます。
借り入れ前の審査を経て、完済までの間は利息を伴う返済義務が生じます。
慎重に計画を進めていくことにより、倒産のリスクなく融資を受けることが可能です。

出資を受ける

企業やエンジェル投資家からの出資の場合には、返済義務がないことが大きなメリットであるため、創業初期の段階であるほど前向きに考えたい資金調達方法です。
また、相手との信頼関係の構築により、良きビジネスパートナーとなることもあるでしょう。ただし、出資の比率によっては自身の経営の自由度が下がる恐れもあります。
出資元として手を挙げてくれるかという点でもハードルは高く、出資を希望するのであれば、綿密かつ慎重にプランを練るべきでしょう。

クラウドファンディングを実施する

近年で最も注目度の高い資金調達方法である、クラウドファンディング。
自社で取り組みたい事業を、会社の魅力を交えながらインターネット上に掲載し、不特定の投資家から「支援金」として集めていくものです。
融資のような返済義務はなく、投資家へのリターンの出費といった項目以外で、キャッシュフローが圧迫されることもほとんどありません。
今や多くのクラウドファンディングのサイトが存在するため、それぞれのサービス内容や仕組みをしっかりと理解した上で、情報収集をしていく必要があります。

専門家に相談する

効果的な解決方法が見出せない場合には、専門家に相談することをおすすめします。
弁護士や税理士など、お金に関わるコンサルティング会社などが一般的な相談先でしょう。
無料相談や、契約後の書類作成・申請代行を行っているところも多いため、特に中小企業であれば早めの相談を検討しましょう。

まとめ

本記事では、経営に干渉されずに出資を募れる優先株は、資金調達をする上での有効な方法であることを解説しました。

発行企業、投資家ともにメリットもあれば、デメリットもあります。
安易な考えで多額の資金調達をしてしまうことは、どのような手段であってもリスクが高く、会社の信用問題に発展する可能性が高いです。専門的知識が必要となるため、専門家やその道のプロからの助言を元に、安全に優先株の購入を進めていきましょう。

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