「クロスセル」とは、顧客単価向上や売上アップを目的とした営業手法の一つ。効果的に使えば売上向上を期待できますが、クロスセルを多用して営業活動をすると顧客離れにつながる可能性もあります。
今回は、クロスセルのメリット・デメリットや、成功させるためのポイントを解説します。
クロスセル成功の具体事例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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クロスセルとは?
クロスセルとは、商品の購入を検討している顧客に「その商品に関連する別の商品」も合わせて購入をすすめる手法です。家電量販店で懐中電灯を販売する場合は、乾電池も一緒に購入を促すなどが例としてあげられます。
商品の不足を補う関連商品や付属品を一緒に購入してもらえれば、1人当たりの顧客単価向上が期待できるでしょう。新規顧客獲得には多くの手間とコストがかかりますが、クロスセルは既存顧客にアプローチするため効果が出やすい特徴があります。
アップセルとの違いは?
クロスセル同様、顧客単価向上を目的とする営業手法に「アップセル」があります。
クロスセルとアップセルは類似する営業手法ですが、おすすめする商品やサービスが大きく異なるのです。
「クロスセル」・・・顧客が購入する商品を補うモノをすすめる
「アップセル」・・・顧客がすでに購入または購入予定の商品より、さらに質のよいものをすすめる
アップセルとは、顧客が購入予定の商品よりも、さらに上位の商品購入を促す手法で、年会費無料のクレジットカード利用者に対し、サービスが充実する年会費制をすすめるなどが例として挙げられます。
おすすめする上位商品は、前回購入の商品よりも高スペック・高価格であるため、成功すれば顧客単価をアップできます。
一方で、クロスセルは、上位商品ではなく「関連商品の購入を促す」という点で違いがあります。
クロスセルのメリット
クロスセルを導入する企業は、3つの大きなメリットを得られます。
【クロスセルのメリット】
・顧客単価を上げられる
・顧客がリピーターになりやすい
・効率的に売上を上げられる
ここでは上記のメリットを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
メリット①顧客単価を上げられる
1人当たりの顧客単価を上げられるのが、クロスセルの大きなメリットの一つです。
顧客単価向上により利益を確保できるため、事業の安定に繋がります。クロスセルが多くの企業で導入されている理由は、LTV(生涯顧客単価)の向上を期待できるからです。
LTVとは
1人の顧客から、生涯にわたって得られる利益のことです。
「購入単価×購入回数×継続時間」で、LTVを算出できます。
クロスセルを用いた商売は、単に顧客単価が向上するだけでなく、長い目で見ればLTVや売上の向上に直結するのです。
メリット②顧客がリピーターになりやすい
商品やサービスを顧客が気に入った場合、次回も同じ店舗やサイトで購入するといったファン化につながります。ファンを獲得できれば、店の新商品や関連商品の購入もおすすめできるでしょう。
クロスセルのサービスは、他店から自社に乗り換えるキッカケ作りもできるので、リピート顧客を獲得しやすいといえます。
メリット③効率的に売上を上げられる
クロスセルのメリットに、営業の効率化もあります。
商品1つひとつを個別で宣伝・広告するには、多額のコストがかかるだけでなく、手間もかかるでしょう。
一度の営業機会で、複数の関連商品を顧客に購入してもらえれば、営業の効率化につながります。一方、一度の営業で商品の購入に至らなくても、焦る必要はありません。クロスセルは商品宣伝の機会とも考えられるので、顧客が「必要だな…」と感じたタイミングで購入に至るケースもあるでしょう。
クロスセルのデメリット
クロスセルのデメリットも理解したうえで、営業活動に取り入れるか判断しましょう。
【クロスセルのデメリット】
押し売りに感じられることがある
顧客離れが起きる可能性がある
ここでは、上記のデメリットを解説しますのでぜひ参考にしてみてください。
デメリット①押し売りに感じられることがある
関連商品の購入を無理にすすめると、顧客は「押し売りされている」と感じます。
押し売りと感じた顧客は、不信感や不快感を抱くため、他社商品への乗り換える可能性が高まるでしょう。
クロスセルを行うときは、目先の売上目標だけではなく、顧客のニーズを満たすことが大切。
それぞれの顧客によって「商品の必要性」の観点が違うので、見極める目を養いましょう。
デメリット②顧客離れが起きる可能性がある
先述のように顧客のニーズを満たさない商品を勧める営業は「企業のイメージダウン」に直結します。
万が一、勧めた商品の質が悪ければ不信感につながり、顧客離れとなる可能性もあります。
社員を教育する際は、クロスセルの手法だけを教えるのではなく「必要性」も伝えましょう。
企業理念を理解できる社員が増えるほど、クロスセル手法の成功率も上がるはずです。
「クロスセル」3つの事例
多くの企業がクロスセルを実施していますが、ここでは有名企業の成功事例を3つ挙げます。
【成功事例】
・Amazon
・マクドナルド
・大塚商会
上記の事例を詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
Amazon
ネット通販サイト大手のAmazonは、顧客ニーズを満たしながらクロスセルに成功しています。
ネット上で商品を選択すると、「この商品を買った人は、こんな商品も検討しています」と関連商品が表示されるのを見たことはないでしょうか。補完的な商品を一緒に購入することで顧客ニーズを満たし、売上も向上できるクロスセルの好事例です。
また、関連商品だけでなくアップグレード商品も掲載されており、顧客は購入を検討していた商品よりも高性能の商品を選択することもあります。Amazonはクロスセル、アップセルともに成功している企業といえるでしょう。
マクドナルド
私たちの身近なファーストフード店であるマクドナルドでは、日常的にクロスセルが行われています。
ハンバーガー単品を注文した際に、ポテトやドリンクを提案されることがクロスセルの一つです。
また、セットメニューも広義のクロスセルといえるでしょう。セットメニューは顧客にとってはお得感があり、企業にとっては顧客単価の向上を期待できます。
大塚商会
オフィス用品の通販サイト「たのめーる」で周知されている大塚商会は通販サイト以外にも、複写機やセキュリティ対策などさまざまな事業を展開しています。
2016年に身代金要求型ウイルスの脅威拡大により、社会ではセキュリティ対策が急がれました。
大塚商会はセキュリティ対策実施を機に、顧客ニーズを丁寧に汲み取りクロスセルで売上目標を達成しています。
セキュリティ対策を突破口として、他の自社製品を提案するという柔軟な発想力で成功を収めました。
クロスセルで成功するためのポイント
顧客離れを防ぐためにも、クロスセル実施の際に押さえておきたいポイントがあります。
【クロスセルで成功するためのポイント】
・顧客情報を収集する
・クロスセルのタイミングを見極める
・無理な営業をしない
・顧客のベネフィットを提示する
顧客情報を収集する
クロスセル成功のポイントは、以下の2つです。
・顧客情報の蓄積
・顧客情報の共有
顧客の「商品購入履歴」や「問い合わせ履歴」などからニーズを分析し、どの商品を勧めるべきかの検討が大切です。さらに、営業部全体で顧客情報を管理することで、担当者不在による販売機会の損失防止にもつながるでしょう。
クロスセルのタイミングを見極める
クロスセルの実施は、効果的なタイミングでなければ売上にはつながりません。
顧客がまだ商品購入するか迷っている早期段階でクロスセルを仕掛けると、不信感につながる可能性があります。クロスセル成功のために、顧客の購買意欲を見極めましょう。見極めには、前回の購入商品や購入時期など、顧客情報の収集が役に立ちます。
無理な営業はしない
営業活動の目的は、目先の売上ではなく「長期的に商品を購入するリピーター」になってもらうことです。短期的な売上向上を優先して無理にクロスセルを行うと、顧客は「押し付けられている」と感じ、購入意欲を失います。
強引な押し売りで不信感を抱かせては、後に商品キャンセルやクレームにもなりかねません。企業のファンになってもらうためにも顧客のニーズを優先し、気持ちよく購入してもらう必要があります。
顧客のベネフィットを提示する
クロスセルを行う際は、関連商品の価値を理解してもらう必要があります。関連商品を一緒に買うことで「生活がどのように変化するのか」「どの手間が省けるのか」など、具体的なベネフィットを提示しましょう。
顧客が便益をイメージできないまま購入をすすめても「不要な商品だ」と思われかねません。関連商品の機能ではなく、いかにベネフィットを伝えられるかが購入のカギとなります。
まとめ
今回は、クロスセルのメリット・デメリットや、成功させるためのポイントを解説しました。
クロスセルによって、新規顧客獲得の労力よりも、効率的に売上向上を期待できます。
セット販売できる商品は、お得感を出しつつ積極的に実施するとよいでしょう。
クロスセルによって、顧客満足度を高め、リピーター獲得も可能です。
メリット、デメリットを理解したうえで効果的に実践すれば、売上向上に貢献できるでしょう。