第三者割当増資 非公開

第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に対して株式を割り当てることにより、資金調達を行う方法をいいます。そして、この第三者割当増資は、新株の引受人が発行会社の一定割合の株式を取得するため、M&Aや事業承継の手段としても用いられています。

例えば、オーナー社長の相続によって会社の株式が分散してしまうことは、将来にわたる経営の安定を考えると好ましいことではありません。そこで、次世代への円滑な承継を念頭に、後継者候補の持ち株比率を高める方法のひとつとして第三者割当増資が用いられることがあります。

本記事では、日本の会社の大多数を占める非上場会社を主として、第三者割当増資の手続きや留意点について解説します。

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この記事を執筆した専門家
第三者割当増資 非上場
弁護士 神田 輝生

愛知県出身。慶應義塾大学法科大学院修了。
平成30年1月より神田法律事務所を開設。事務所開設後は企業法務を中心に一般民事まで幅広く担当し、M&Aや事業承継に積極的に取り組んでいる。JMAA認定M&Aアドバイザーの資格を有する。

非上場会社の第三者割当増資の基礎知識

では、まず非上場会社による第三者割当増資の基礎知識について解説します。

第三者割当増資とは?

新株発行には、会社法上、既存の株主に対して持株数に比例して株式を割り当てる株主割当と、既存の持株比率とは無関係に新株を割り当てる第三者割当があります。なお、新株発行は、資本金の増加を伴うため、一般的に「増資」とよばれます。

第三者割当の一次的な目的は、会社の資金調達ですが、多くの場合、公募増資や株主割当による資金調達が困難であるなど、第三者割当を行う特別な事情があります。

また、株式の引受人との関係強化(引受人による経営参加、引受人との業務提携)を目的とする場合や、会社の業績が不振なため、特定の大株主以外の者による株式の引受けが期待できない場合、あるいは事業再生の場面において第三者割当がたびたび用いられています。

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第三者割当増資と株式譲渡との比較

第三者割当増資は、M&Aの手段としても用いられていると先述しましたが、M&Aにおいて最も使用されるスキームが株式譲渡です。この点、株式譲渡を行う場合、対価はその第三者が受け取りますが、第三者割当増資の場合は会社が対価を受け取ります。

また、株式譲渡による取得の場合、譲受側は対象会社の株式を全て取得し完全子会社化することも可能ですが、第三者割当増資の場合は、既存株主の株式は残ったままであるため、第三者割当増資によって完全子会社化することはできません。

加えて、第三者割当増資を行う場合、発行済株式総数が増加し、既存株主の持株比率が低下することになるため、このような「持株比率の希釈化」によって既存株主は実質的な不利益を被ることとなります。

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第三者割当増資 非公開

非上場会社の第三者割当増資の手続きの流れ

非上場会社においては、株式譲渡について取締役会の承認を要する旨を定款に設けているのが通常です。定款において全ての株式について、譲渡制限が付けられている会社のことを非公開会社といいますが、このような会社の第三者割当増資の手続きの流れは次のようになります。

基本的な第三者割当増資の手続きの流れ

第三者割当増資を行うためには、「募集株式数」「払込金額又はその算定方法」「払込期日又は期間」「増加資本金・資本準備金」などの「募集事項」を決めることから始まります(会社法(以下、法)199条1項)。そして、非公開会社では、募集事項の決定は株主総会の特別決議によるものとされています(法199条2項)。

募集事項を決定した後は(1)引受けの申込みをしようとする者に対して通知を行い、引受者は、会社に対して引受の申込みをします(法203条)。

次いで、会社は(2)申込者の中から誰に株式を割り当てるのかを取締役会決議で決定し、結果を申込者に通知します(法204条)。
割当てを受けた者は、募集事項に決められた払込期日(又は払込期間中)に払込みを実施します。これを怠ると、自動的に株主となる権利を失います(法208条1項、5項)。

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総数引受契約

ただ、実際に第三者割当増資を行う場合には、引受人が予め決まっているのが通常です。その場合、上記の(1)、(2)の手続きを踏むことは煩わしいため、「総数引受契約」を利用すると便利です。総数引受契約とは、引受人が、募集株式の全てを引き受ける契約をいいます。

この場合、対象となる株式が譲渡制限株式の場合(非上場会社では通常これに該当します)、契約に際して株主総会(取締役会が設置されている会社では取締役会)の承認決議が必要となりますが、その反面、上記の(1)、(2)の手続きは不要となります(法205条)。

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公開会社の場合

なお、公開会社の第三者割当増資の場合、株式の割当を決定する機関が、原則として取締役会となります(法201条1項)。また、違法な新株発行を差し止める機会を株主に与えるため、募集事項の決定に際し、払込期日または期間初日の前日の2週間前までに、株主への通知または公告が必要となります(法201条3項、4項)。

また、平成26年の会社法改正により、支配株主の異動を伴うような場合(引受者が過半数株主となる場合)には、一定数以上の株主(議決権10%以上)の反対通知があったときは、株主総会の特別決議が必要となるという規定が新設されました(法206条の2)。

第三者割当増資 非公開

第三者割当増資の留意点・取引上の規制~有利発行とは~

第三者割当増資を行う場合、その払込金額が募集株式を引き受ける者に「特に有利な金額」であるときには、いわゆる「有利発行」として、取締役は、有利発行を必要とする理由を株主総会において説明しなければならないとされています(法199条3項)。

必要な説明を怠ると、事後に取締役の責任が問われる可能性があります。したがって、特に第三者割当の場合、有利発行に該当するか否かの判定は重要となります。

一般に、公正な払込金額(通常はその株式の時価)を基準として、1割程度低い金額までは、「特に有利な金額」に該当しないものとされています(東京高裁昭和46年1月28日判決)。

もっとも、この1割基準が適用されるのは、対象株式が上場されていて、客観的な時価が存在する場合です。非公開会社の場合や、公開会社でも株式を上場していない会社の場合には、別途、判断基準が必要となります。

この点については、「非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。」と判断する最高裁判決があります(最高裁平成27年2月19日判決)。

この判決によれば、非上場株式の場合、公認会計士などの信頼できる専門家に株価算定を依頼し、適切な払込金額とする限りにおいては、会社側の判断が尊重されやすいという結論になりそうです。

まとめ

第三者割当増資の手続きは非公開会社と公開会社によって異なる部分もあるため、進め方をしっかり理解しておく必要があります。非公開会社の場合は、払込金額の多寡にかかわらず、募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要となります。また、有利発行に該当するときは、その理由を株主総会で説明することが求められます。

このように第三者割当増資には株主総会が必要なケースや、有利発行かの判断が必要な場合など専門的な知識が欠かせないことがあるため、不明な点があれば早めに専門家に相談してみることが大切です。