株主総会は、会社法に基づき定められた厳格な手続きの下、実施されるべき重要な法定行為です。本記事では、株主総会の目的や開催手続き、決議要件など、実務担当者が知っておくべき知識を体系的に解説します。
オンライン株主総会のメリットや注意点についても解説するため、法務部やIR担当の方など、株主総会の実務に携わる方はぜひ参考にしてください。
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株主総会とは?
株主総会は、会社法(以下「法」)に基づき、株式会社の組織や経営に関する重要な事項を決議する最高意思決定機関であり、株主の権利行使の場でもあります。
株式会社は、株主がその出資額に応じて所有権を有するものであり、取締役は株主総会の決議に基づき選任されます。株主は、経営の専門家である取締役に経営を委ねることにより、自ら経営またはその監督をする能力がなくても投資できる仕組みです。
株主は大きく分けて「自益権」と「共益権」の2つの権利を有しています。自益権には、配当金を受け取ることのできる「利益配当請求権」や、企業が解散する際の「残余財産分配請求権」などがあります。共益権には、株主総会での議決権など一単元株でも保有していれば認められる「単独株主権」や、株主総会招集権や解散請求権など一定数の株式の保有が必要な「少数株主権」があります。
株主総会を開催する目的
株主総会は、株主が会社経営に参加し、経営陣を監督する場です。経営状況の透明性を高め、投資家の信頼を確保するうえで重要な役割を果たしています。株主総会を開催する目的は、以下の2つです。
・経営の監視
・情報収集
経営の監視
株主総会では、経営陣が事業計画や財務状況などに関する報告を行い、株主は質問や意見を述べられます。このプロセスにより、経営の透明性を高め、適正な運営が行われているかを確認できます。
適正な運営は、企業の収益性を高め、株価の安定に貢献することが可能です。株主は安定した配当収入や株価上昇によるキャピタルゲインを得られます。
情報収集
株主総会は、株主が投資判断を行ううえで不可欠な情報源です。経営状況を把握し、経営陣の能力を評価することで、より適切な投資判断を行えます。
株主総会と取締役会の違い
株主総会と取締役会の違いを表にまとめると、以下のとおりです。
区分 | 株主総会 | 取締役会 |
定義 | 株式会社の最高意思決定機関 会社の重要な事項を決定する | 株主総会の決議に基づき、会社の日常業務を執行する |
決議参加者 | 全ての株主 | 取締役 |
決議事項 | 定款の変更、取締役の選任・解任、 配当の決定、合併・分割などの会社形態の変更、その他、会社にとって重要な事項の決定 | 経営計画の策定、予算の執行、新規事業の立案、その他、日常的な業務執行 |
決議要件 | 株主の議決権に基づき、多数決で決定 | 取締役の過半数の賛成で決定 |
開催頻度 | 年1回(定時株主総会)の開催が義務付けられている(法第296条第1項)必要に応じて臨時株主総会を開催 | 年4回以上開催しなければならない(法第363条第2項) |
株主総会は、定款の変更や取締役の選任・解任、配当の決定など、会社にとって重要な事項を決議する機関です。全ての株主は、総会において議決権を行使し、会社の経営に直接関与できます。
取締役会は、株主総会の決議に基づき、会社の日常的な業務執行を行う機関です。経営計画の策定や予算の執行、新規事業の立案など、会社の経営に関するあらゆる事項を決定します。「公開会社」では、取締役会の設置が義務付けられており、「非公開会社」では取締役会の設置が任意となっています。
株主総会が会社の大きな方向性を決めるのに対し、取締役会は、その方向性を実現するための具体的な行動を決定します。両者が連携することで、会社は健全に成長できます。
取締役会を設置する場合
取締役会を設置する場合、日常的な経営に関する意思決定は取締役会が行い、株主総会は、定款の変更や取締役の選任・解任など、会社にとって特に重要な事項を決定する場となります。迅速な経営判断が可能となり、会社の経営効率が向上する点がメリットです。
ただし、株主が会社の経営に関与できる機会が減り、経営の透明性が低下する可能性も指摘されています。
取締役会を設置しない場合
取締役会を設置しない場合、会社の全ての重要な意思決定を株主総会で行うことになります。株主が会社の経営に直接関与する機会が増え、より民主的な経営が可能です。
しかし、全ての事項を株主総会で決議するため、意思決定に時間がかかり、迅速な経営判断が難しくなるというデメリットもあります。
株主総会の種類と開催時期
株主総会は、「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類に分類されます。
定時株主総会
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会です(法第296条第1項)。当期事業年度の決算報告や事業報告、役員報酬の金額、剰余金の配当などを報告します。
具体的な期限は決められていませんが、基準日と権利行使日の間が3ヶ月を超えることはできないため(法第124条第2項)、決算日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する必要があります。定款に「事業年度末日の翌日から3ヶ月以内に開催する」と定められている場合、定款の期限が開催時期の制限となります。
多くの株式会社は、事業年度末の翌日から2ヶ月以内に定時株主総会を開催しています。その理由は、法人税の申告時期が、各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内が原則だからです。
法人税の申告には、株主総会で承認された決算書が必要となります(法人税法第74条)。税務申告期限までに決算内容を株主全員に報告し、承認を得るための株主総会を開催する必要があるのです。ただし、一定の事由により法人税の申告を1ヶ月延長することも可能です。
臨時株主総会
臨時株主総会は、会社法で定められた定時株主総会とは別に、必要に応じて随時開催される株主総会です(会社法第296条第2項)。例えば、補充取締役の選任・解任や、大規模な事業計画の変更、新株予約権の発行、M&Aなど経営上の緊急事項が生じた場合に招集されます。
株主総会の開催場所
株主総会の開催場所は、取締役会が招集の都度決定し、毎回異なる場所で開催しても問題ありません(法第298条第1項1号)。
ただし、株主の参加が著しく困難となるような場所での開催は、株主総会決議の取消事由となる可能性があります(法第831条第1項1号)。
会社法施行規則63条により、株主総会の開催場所が従来と著しく異なる場合には、その選定理由の開示が求められます。
バーチャル株主総会とは?
株主総会は、開催方式によって、以下の3パターンに大別されます。バーチャル株主総会とは、インターネットなどの手段を使ってオンラインで出席する形式の株主総会のことです。
リアル株主総会 | 取締役や監査役、株主が、物理的な会場で一堂に会する形式 |
ハイブリッド(参加・出席)型バーチャル株主総会 | リアル株主総会を開催しながら、オンラインでの参加(出席)も併せて認める形 |
バーチャルオンリー株主総会 | 物理的な会場を設けず、株主はインターネットなどの手段で出席する形式 |
ハイブリッド(参加・出席)型バーチャル株主総会とは?
区分 | 参加型 | 出席型 |
議決権 | 行使できない | 行使できる |
質問 | 不可 | 可能 |
目的 | 多くの株主に気軽に視聴してもらい、会社の状況を広く知ってもらうことを目的とする | 株主の意見を積極的に取り入れ、より民主的な株主総会を実現することを目的とする |
ハイブリッド(参加・出席)型バーチャル株主総会は、従来のリアルな会場で行われる株主総会と、オンラインでの参加を組み合わせた株主総会です。一部の株主は会場に集まり、他の株主はインターネットを通じてオンラインで参加します。
参加型は、オンラインで株主総会に参加できますが、議決権の行使や質問はできません。一方、出席型は、オンラインで株主総会に出席し、議決権の行使や質問が可能です(会社法上の出席が認められる)。
バーチャルオンリー株主総会とは?
バーチャルオンリー株主総会とは、物理的な会場を設けず、完全オンラインで行う株主総会です。会社法の原則どおり、株主の質問権と議決権が保障されています。
2021年6月16日、産業競争力強化法における会社法の特例として、場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度が創設されました。
上場企業は、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けた場合に限り、定款に株主総会を「場所を定めない株主総会」として開催できる旨を記載することが可能です。定款を設けた上場企業では、バーチャルオンリー株主総会の開催が認められます。
2024年3月31日時点で、バーチャルオンリー株主総会を開催した会社は64社あり、開催回数は延べ108回に達しています。同時点までにバーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする定款変更議案を総会で決議した会社は439社に上ります。
バーチャル株主総会のメリット
バーチャル株主総会の、株主側・会社側のメリットは以下のとおりです。
株主側のメリット | ・遠隔地の株主も参加できる ・移動の手間や費用を省ける ・リアルタイムで議事進行を視聴できる |
会社側のメリット | ・物理的な会場が不要なので、会場費や人件費を下げられる ・時間や場所の制約がなくなる ・感染症のリスクを低減できる ・株主重視の姿勢や、先進的な会社イメージの向上 |
バーチャル株主総会のデメリット
バーチャル株主総会の、株主側・会社側のデメリットは以下のとおりです。
株主側のデメリット | ・インターネット環境や操作に不慣れな株主にとっては参加が難しい ・質疑応答は可能だが、リアルなコミュニケーションは難しい |
会社側のデメリット | ・専用システムの導入や維持管理に、負担や費用がかかる ・通信環境や回線トラブルのリスクがあり、円滑な開催が阻害される可能性がある ・情報漏洩や不正アクセスのリスクがある |
システム構築を万全に整えたうえで、当日のトラブルに対応できるエンジニアの確保が必要です。
株主総会の決議事項
株主総会の決議事項は、以下のとおりです。
決議事項 | 具体例 |
会社の経営上、基本的な重用事項 | 定款の変更(法第466条)、合併・会社分割・株式交換・株式移転(法第783条第1項、法第795条第1項、法第804第条1項)、事業譲渡・譲受、子会社株式の譲渡(法第467条第1項)、資本・準備金の減少(法第447条第1項、法第448条第1項)、解散(法第471条第3号)、会社継続(法第473条)、組織変更(法第776条第1項)など |
役員などの関する事項 | 取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選解任(法第329条第1項、法第339条第1項)、報酬などの決定(法第361条、法第379条、法第387条)、責任の免除(法第425条第1項)など |
株主の利害に関わる事項 | 株式の併合(法第180条第2項)、剰余金の配当(法第454条第1項)、自己株式の取得(法第156条)、全部取得条項付株式の取得(法171第条1第項)、募集株式・新株予約権の募集(法第199条第2項、法第238条第2項。ただし、公開会社の場合は有利発行となる場合のみ。法第199条第3項、法第201条第1項、法第238条第3項、法第240条)など |
計算関係事項 | 計算書類の承認(法第438条第2項)、剰余金についてのその他の処分(法第452条)など |
会社法以外の法律が定める決議事項 | 解散後の株式会社による会社法制手続き開始の申立て(会社更生法第19条)、保険会社の合併(保険業法第165条の3)など |
取締役会非設置会社では、株主総会は会社に関する一切の事項について決議できます(法第295条第1項)。取締役会設置会社では、会社法及び定款に規定されている事項のみを決定できます(法第295条第2項)。
株主総会の決議方法・要件
株主総会の決議は、定足数と決議要件を満たした場合に有効となります。株主総会の決議方法は、性質や重要性によって以下の3種類に分けられます。
・普通決議
・特別決議
・特殊決議
普通決議(会社法第309条第1項)
会社法の普通決議で決定できる事項は多岐にわたりますが、一般的に会社経営の日常的な事項が中心となります。
普通決議の概要 | 株主総会の決議は、原則的に普通決議で行われる(法第309条第1項) 役員の選任や解任、役員報酬など |
定足数 | 行使できる議決権を持つ株主の過半数が出席(定款の定めによって、自由に引き下げられる) 役員の選解任については、定款の定めによっても、定足数を株主の議決権の3分1未満にできない |
決議要件 | 株主総会に出席した株主の議決権総数のうち、過半数以上の賛成 |
特別決議(会社法第309条第2項)
特別決議は、会社にとって特に重要な事項を決定するための株主総会での決議のことです。
特別決議の概要 | 会社の形態や事業内容を大きく変更する決議 株式併合や減資、事業譲渡、定款の変更、合併、会社分割、解散、監査役の解任、株式交換 |
定足数 | 行使できる議決権を持つ株主の過半数が出席(定款の定めによって、行使可能議決権の3分の1まで緩和可能) |
決議要件 | 株主総会に出席した株主の議決権総数のうち、3分の2以上(定款で引き上げが可能)の賛成 |
特殊決議(会社法第309条第3項・第4項 )
特殊決議では、特別決議よりもさらに重要度が高い事項を決議します。
パターン①:定款変更や組織再編により、株式に譲渡制限が付される場合
定足数 | 議決権を行使できる株主の半数以上(頭数、定款で引き上げ可能) |
決議要件 | 株主総会に出席した株主の議決権総数のうち、3分の2以上(定款で引き上げ可能)以上の賛成 |
パターン②:非公開会社において、剰余金の配当や議決権など、株主の権利について、株主ごとに異なる取り決めを定める定款変更を行う場合
定足数 | 総株主の半数以上(頭数、定款で引き上げ可能) |
決議要件 | 株主総会に出席した株主の議決権総数のうち、4分の3(定款で引き上げ可能)以上の賛成 |
議決権の不統一行使
議決権の不統一行使とは、株主が複数の議決権を持っている場合に、1つの議案に対して賛成と反対の両方の票を投じることができる制度のことです。
ただし、全ての株主にこの権利を認めるのではなく、事務処理の負担軽減や議決の厳格化を図るため、一定の条件下で不統一行使を拒否できるとしています(法第313条第3項)。
また、株主は代理人によってその議決権を行使することができます(法310条1項)。
株主総会の決議などの省略(書面決議)
株主総会の決議は書面決議によることもできます(法第319条)。
取締役または株主が、株主総会の目的事項につき提案した場合に、議決権を有する全株主が書面または電磁的方法により同意した場合、当該提案を可決した旨の株主総会決議があったものと見なされます(法第319条第1項)。
特別決議や特殊決議事項についても、書面決議が可能です。報告事項においても、取締役が株主全員に対して報告事項を通知し、総会に報告しないことにつき株主の全員が書面などで同意した場合には、報告があったものと見なされます(法第320条)。
なお、書面決議および報告事項の書面同意の場合にも、議事録を作成する必要があります(会社法施行規則第72条第4項)。
採決方法
株主総会決議では、議長が議事をスムーズに進めるために、採決の方法を状況に応じて柔軟に決められます。例えば、出席している株主全員が賛成していることが明らかであれば、わざわざ一人ひとりの賛否を数える必要はありません。
行使期限までになされた議決権行使書による議決権行使の結果により、総会当日の会場での議決権行使にかかわらず可決に必要な議決権数が確保されている場合や、会場での大株主の賛否を確認するだけで決議の成立・不成立を判断できる場合もあります。
状況に応じて、拍手での採決や、投票用紙を用いた投票による採決などの方法も可能です。
株主総会開催までの流れ
以下では、取締役会設置会社の定時株主総会が開催されるまでの手続きの流れを解説します。
1. 招集に必要な書類作成と招集の議決
2. 招集通知の発送
3. 株主総会開催の準備
4. 株主総会当日
招集に必要な書類作成と招集の議決
定時株主総会は、一般に事業年度末から3ヶ月以内に開催されています。事業年度末から定時株主総会開催までのスケジュールにおける主な流れに関する内容を、以下で解説します。
1)基準日
株主が絶えず変動することが想定される公開会社では、株主総会で議決権を行使できる株主をあらかじめ定めるため、基準日(法第124条)を定める必要があります。実務では、議決権を行使できる株主を定めるための基準日は、事業年度の終了日と一致させています。
これは、剰余金の配当を受ける株主を定めるための基準日を、事業年度の終了日と一致させていることから、定時株主総会の決議により剰余金の配当を行う場合を想定すると、配当を受ける株主が定時株主総会の議決権も有するべきであると考えられているためです。
基準日を定めた時は、当該基準日の2週間前までに所定の事項を公告しなければなりませんが、定款で公告すべき事項を規定している場合は、当該公告は不要です(法第124条第3項)。
2)計算書類、事業報告の作成、監査と取締役会の承認
定時株主総会の目的は、主として計算書類の承認(報告)、事業報告の内容の報告および剰余金の配当の決定であり、定時株主総会の招集通知に際しては、所定の監査を受けて取締役会が承認した計算書類および事業報告を提供しなければなりません(法第437条)。
決算と監査に相当の時間を要することを踏まえれば、事業年度末から3ヶ月内の期限間際、つまり3月決算会社であれば6月下旬に定時株主総会が集中してしまう要因の1つといえます。
なお、計算書類および事業報告並びにそれぞれの付属明細書は、定時株主総会の日の1週間前(取締役会設置会社の場合は2週間前)から5年間本店に、写しを3年間支店に備え置いて、株主・債権者の閲覧に供し、請求がある場合は謄本もしくは抄本を交付などしなければなりません(法第442条)。
3)定時株主総会招集の取締役会
取締役会設置会社の株主総会は、取締役会の決議により所定の招集事項を決定して招集されます(法第298条第1項・第4項)。
取締役会で決議すべき具体的な招集事項は、株主総会の日時および場所、株主総会の目的事項、書面投票制度または電子投票制度を採用する場合はその旨などです(法第298条第1項、施行規則第63条)。
招集通知の発送
会社は、総会日の2週間前まで(非公開会社の場合は書面または電磁的方法による議決権行使が可能とされている場合を除き1週間前まで)に各株主に対し招集通知を発送しなければなりません(法第299条第1項)。
「2週間前までに」とは、発信日と総会日の間に中2週間あることを意味します。
例えば、3月決算の会社で6月28日に総会を行おうとした場合、27日を起算日とした2週間前の日、つまり6月14日の前日である6月13日までに招集通知を発送しなければなりません。
株主総会開催の準備
株主総会、特に定時株主総会は、1年に1度、会社のトップを含めた全役員と株主が一堂に会し、報告事項の報告、決議事項の決議並びに報告事項・決議事項に関する質疑応答を行う場です。
法的な瑕疵があれば決議取り消し事由や過料の対象になることから、会社にとって非常に重要な会議体であり、入念な事前準備が必要になります。
1)運営方針の決定とスケジュールの作成
株主総会の運営方針の決定に当たっては、株主総会の開催目標をどのように考えるかが重要であり、「適法な総会」に軸足を置き、簡素な運営とするのか、もしくはIR・PR型総会を検討し、来場株主の満足度を高めることに軸足を置くのか、ということがあります。
2)決算期日(事業年度末日)までの事前準備
決算期日までに行う事前準備は以下のとおりです。
1. 前年の定時総会での課題整理
2. 総会準備に影響を及ぼす法令・制度改正の有無の確認
3. 付議予定議案とその票読み
4. 関係者のスケジュール調整と総会場の予約
5. 議決権を行使できる株主の確定
6. 議題の選別
7. 計算書類など、連結計算書類の確定手続き
8. 想定問答の準備
本年の定時総会の検討課題を整理するには、まず前年の定時総会の課題を整理することが重要です。
総会関係書類の作成から、想定問答・シナリオの作成、リハーサル、議決権行使集計、総会場の設営、総会当日の運営、総会終了後の手続きまで、一連の作業で改善すべき点を確認し、本年の定時総会に活かしましょう。
次に、総会関係書類作成などに直接的もしくは間接的に影響を及ぼす法令・制度改正の有無を確認し、影響があればその整理とその対応方針を決定します。方針が決まったら、定時総会で付議が予定される議案に対し、前年までの各株主の投票行動を踏まえて、票読みを行います。
総会リハーサルやレクチャーは、役員のみならず社外関係者のスケジュールを早めに調整・確保し、総会場が借り会場である場合は忘れずに予約してください。
計算関係書類の作成や監査日程も早めに調整する必要があります。
議決権を行使できる株主は、基準日制度により確定させます。
定時株主総会では、報告事項として「事業報告、計算書類の内容報告と連結計算書類に関する監査結果の報告」が必要ですが、これ以外にも必要に応じ、株主総会で決議すべき議案を付議することができます。
各社において、定時株主総会で付議が必要な議案、付議の可能性がある議案を確認し、付議漏れがないようにするなど、事前に確認・準備する必要があります。
なお、株式会社では、定時株主総会の招集の通知に際して、計算書類など(計算書類、事業報告、連結計算書類)を株主に提供することが義務づけられています(法第437条、法第444条)。そのため、各書類については招集通知の作成に間に合うよう、必要な手続きを経て内容を確定することが必要です。
また、株主総会では説明義務を尽くした回答ができるよう、あらかじめ想定問答を用意しておくのが通例です。
株主総会当日
以下では、株主総会当日の主な流れを紹介します。
1. 受付
2. 議事
3. 採決
4. 議事録の作成と保存
1)受付
株主総会に出席し、議決権を行使することができる株主は、基準日現在で議決権を有する株主として株主名簿に登録された者のみです。
株主総会への出席権のない者の入場を認めたり、逆に出席権のある株主の入場を拒否したりしてしまうと、株主総会の招集手続きに瑕疵があるとされ、決議取消事由となる場合があります。そのため、来場者の出席資格の有無並びに出席者の氏名・議決権数を確認・集計することが必要です。
2)議事
株主総会は、報告事項を報告し、決議事項を決議します。
株主総会の議事の役割は、株主総会の目的事項について審議することであり、報告事項についてはそれを理解し、決議事項についてはそれを通じて各人が賛否の意思を決定し、採決をして総会としての意思を決定します。そのための意見の表明や質問と説明を行うのが質疑です。
その議事の進行を円滑に行うために、シナリオを作成し、議長の議事整理権と秩序維持権を確認・理解したうえで、進めることが重要です。
3)採決
決議事項については、採決を行い、総会としての意思決定を行います。
4)議事録の作成と保存
株主総会の議事については、法務省令で定めるところに従って、議事録の作成が必要です(法第318条第1項)。
作成された議事録は、株主総会の日から10年間本店に、その写しを5年間支店に備え置くことが義務づけられています(法第318条第2項、第3項)。
株主および会社債権者は、営業時間内いつでも、閲覧または謄写を請求でき(法第318条第4項)、親会社の社員も権利行使に必要があるときに裁判所の許可を得て、閲覧または謄写をすることができます(法第318条第5項)。
まとめ
株主総会の目的から決議事項・方法や開催時期・場所までわかりやすく解説しました。
株主総会は、会社経営の舵取りを行う重要な場であり、その意思決定手続きには法的な要件が厳格に定められています。手続きに不備があると、決議が無効になる可能性があり、会社に大きな損害を与える恐れもあります。
そのため、株主総会を円滑かつ合法的に実施するためには、事前に十分な準備と法的な知識を備えることが不可欠です。
複雑な案件や大規模な会社においては、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。