昨今は、事業規模の拡大や新規事業の参入などでM&Aを検討する企業が増えています。
M&Aと聞くと大規模案件というイメージを持つ人が多いと思いますが、少額でできるM&Aもあることをご存じでしょうか。
本記事では、少額でできるM&A案件のメリットや探し方、M&Aを行う際の注意点などについてわかりやすく解説していきます。
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
目次
M&Aは少額でも可能?
M&Aとは、企業の合併や買収のことをいいますが、具体的には企業のもととなる株式や事業そのものを譲渡することを指します。M&Aは、譲渡側と譲受側の交渉によって譲渡価額を決定するため、双方の合意があれば少額でのM&Aが可能です。
特に譲渡価額が1,000万円以下のM&Aは「マイクロM&A」と呼ばれ、後継者問題に悩む個人経営の店舗や中小企業の中には、事業承継の1つとして検討されるケースも多くなっています。
また、M&Aは企業だけではなく、個人でも行うことが可能です。中小企業庁によれば、M&Aを希望する中小規模法人の46.4%、小規模法人の57.0%、個人事業者の63.0%が事業の譲渡先に希望する条件として「規模は問わない」と回答しています。
M&Aを少額で行う5つのメリット
M&Aにはさまざまなメリットがありますが、ここでは少額でM&Aを行うメリットを5つ紹介します。
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・起業や新規事業を始める際の手間が軽減される
・譲渡企業のノウハウや信頼を引き継げる
・個人資産の増加になる
・M&Aによりシナジー効果が期待できる
・後継者問題や事業承継問題の解決の役に立てる
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▷起業や新規事業を始める際の手間が軽減される
起業したり新規事業を一から立ち上げる場合は、人材の確保などに多額のコストがかかったり、手続きの手間が必要だったりして重い負担になります。
M&Aなら、既存の会社や事業をそのまま承継できるため、必要なコストの削減や手続きの手間を軽減することが可能です。
▷譲渡企業のノウハウや信頼を引き継げる
先述した内容に関連しますが、M&Aによる他社の譲受は譲渡企業が今まで培ってきたノウハウや技術、その地域での信頼などを引き継ぐことができます。
また、会社や事業を引き継ぐことによって、譲渡企業の既存客を獲得できる可能性があるため、経営リスクの軽減にも繋がるでしょう。
▷個人資産の増加になる
個人がM&Aを行う場合、すでに利益を生んでいる会社を承継できれば収益を得られるため、個人資産の増加に繋がります。
また、将来的に譲受した会社を譲渡することにより、売却益を得られる可能性もあります。
▷M&Aによりシナジー効果が期待できる
企業がM&Aを行う場合は、M&Aによって自社と譲渡企業の双方の強みを活かしたり、弱点を補ったりできるため、シナジー効果(相乗効果)が期待できます。
適切なプロセスでM&Aを進めることができれば、想定以上のシナジー効果が生まれ、会社として大きな成長を見込めるケースがあります。
関連記事:シナジー効果とは?M&Aを成功させるシナジーの種類や事例と評価方法
▷後継者問題や事業承継問題の解決の役に立てる
少額のM&A案件は、譲渡価額が比較的少額であり譲受する企業の負担も少ないため、個人事業主や中小企業の後継者問題や事業承継問題の解決策になると期待されています。
事実、中小企業庁によれば50歳以上の経営者において、中小規模法人では約28%、個人事業者では約32%が「後継者が決まっていない」と回答しています。少額のM&Aによって会社や事業の譲渡を行うことで、こうした社会問題の解決にも一役買うことができます。
少額でM&Aができる案件とは
一般的に少額でM&Aができる案件は以下のようなケースが多いです。
・後継者不足により事業承継を行えない個人経営の店舗や中小企業
・売上高や利益の規模が小さい傾向にある中小企業
前者の案件は、長期間事業を継続させていれば一定の利益が出ている事業をしていると考えられます。
そのため、M&A後もその事業を引き継いで、これまで同様の経営を行えば安定的に収益を得られる可能性が高くなります。
一方、後者の案件は利益が出ているどころか赤字経営に陥っているケースも考えられます。その場合は、利益規模が小さい原因や問題点を改善する必要があります。
ただし、このような原因や問題点をきちんと分析して改善できれば事業を波に乗せられる可能性があり、想定以上の収益を得るチャンスがあるでしょう。
少額でM&Aができる案件の探し方
M&Aはさまざまな目的によって行われており、M&Aを検討しているのが企業なのか個人なのか、探している案件の規模などによって探し方が異なります。
ここでは、少額でM&Aができる案件の探し方を紹介します。
▷M&A仲介会社を利用する
M&A仲介会社は、譲渡を希望する側と譲受を希望する側の両方のサポートを行っているため、M&A仲介会社を利用することによって、希望条件に一致した譲渡案件を紹介してもらえる可能性が高くなります。また、M&Aの交渉においても、M&Aアドバイザーが譲渡側と譲受側の間に入ってくれるため、スムーズな契約ができる可能性があります。
ただし、M&A仲介会社によっては小規模の譲渡案件の提示が少ないケースもあり、このようなケースでは案件の比較検証が難しくなります。そのため、M&A仲介会社を利用する際は、M&Aのマッチングが可能なプラットフォームを有した会社に依頼するのがよいでしょう。
▷事業承継・引継ぎ支援センターを利用する
事業承継・引継ぎ支援センターは2011年に、国によって設置された公的相談窓口です。
中小企業の事業承継に関するあらゆる相談に対応しており、全国の都道府県に設置されています。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、中小企業診断士や金融機関のOBなどの専門家がM&Aの相談から成約に至るまでサポートしてくれます。また、譲渡を希望する企業の約7割が小規模事業者となっているため、個人でM&Aを検討している方にもおすすめの相談先です。
▷銀行や証券会社などの金融機関を利用する
M&Aは、M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターだけではなく、銀行や証券会社などの金融機関も行っています。
金融機関によってはM&A専門の部署を設けてサポートまで行っているケースもあるため、譲渡案件の紹介だけではなく、資金繰りや税務・法務上の処理なども含めたサポートを受けられるところもあります。
ただし、一般的に金融機関を利用する場合は、他の方法より仲介手数料が高めになる傾向があるので、覚えておきましょう。
▷M&Aマッチングサイトを利用する
昨今は、インターネットの普及によりM&Aのマッチングを行うサイトも多数登場しているので、少額のM&A案件を探す方法としては、M&Aマッチングサイトを利用するのも1つの手段です。
M&Aマッチングサイトを利用するメリットは、比較的安価に案件を探すことができる点です。
ただし、サイトによっては案件の紹介のみで、M&Aの具体的なサポートを行っていないケースもあるため、自身でM&Aの交渉を進めなければいけない可能性があります。そのため、M&Aをスムーズに進めたいのであれば、専門家に相談できる方法をおすすめします。
関連記事:M&Aはマッチングサイトがおすすめ?種類やメリット、料金、選び方までまとめて解説
少額でM&Aを成功させるためポイント
ここでは、少額でM&Aを成功させるためのポイントを紹介します。
▷M&Aを行う目的や動機を明確にしておく
会社の譲渡を希望する側と譲受を希望する側の双方に該当することですが、M&Aを行う際は、目的や動機を明確にしておくことが重要です。
例えば、譲渡側は具体的に何を譲りたいのか、どういった理由で譲りたいのかといった明確な内容です。
また、M&Aが成約するまでには、やらなくてはいけないことが多くあるため、譲受側はどのような理由で会社や事業を譲り受けるのか、M&Aの目的を見失ってしまうことがないようにしましょう。
▷M&Aを行う前に綿密な準備をしておく
M&Aは、成約までに希望条件の整理、譲渡側と譲受側のマッチング、契約面の交渉と調整の3ステップが基本的な流れになります。
譲渡側と譲受側の双方でやらなくてはいけないことが多く、少額のM&A案件であっても成約までは数ヶ月必要になる場合もあります。そのため、いつまでに成約させたいのか、スケジュール感も念頭に置いておくようにしましょう。
▷少額のM&Aに強い相談先を見つけておく
先述しているように、M&Aを行なう際の相談先はいくつかありますが、少額のM&Aに強い相談先を見つけておくのが重要です。例えば、M&Aアドバイザーによっても大規模なM&A案件は得意としているが、小規模のM&A案件は不得意といったケースがあります。
専門家によって得意分野が異なるため、いくつかの相談先に話をしてみて、最適な相談先を見つけるようにしましょう。
少額でM&Aを行う際の注意点
ここでは、少額でM&Aを行う際の注意点を紹介します。
▷契約書の内容や必要な書類を確認しておく
M&Aでは、成約までの流れの中で譲渡側と譲受側だけでなく、M&A仲介会社などの相談先ともさまざまな契約を締結する必要があります。
また、M&Aには専門的な知識が必要になり、準備しておかなければいけないことが多数あります。そのため、スムーズなM&Aを実現させるためには、M&Aの成約までのプロセスに精通した専門家に相談して、契約書の内容や必要な書類などを確認しておくようにしましょう。
▷M&A成約後のリスク回避を考えておく
少額のM&Aはほとんどが小規模案件です。そのため、大規模案件に比べて事前に事業リスクを判断するための情報が少ない傾向があります。
中には、表面上に現れない債務(簿外債務)を抱えている場合や譲渡企業が他社の連帯保証人(保証債務)をしている場合もあり、思いがけない債務を抱えてしまうことがあるため、注意が必要です。
このようなM&Aの成約後のリスクを軽減するためにも、M&Aを行なう際はM&Aアドバイザーのような専門家に相談したほうがよいでしょう。
▷M&A成約後も人事制度などを見直す
企業がM&Aを行うメリットの1つには、M&Aによるシナジー効果(相乗効果)が期待できる点が挙げられます。
シナジー効果を得るためには、M&A成約後も人事制度や会社の将来の見通しなどを見直し、従業員が意欲的に仕事に取り組める環境を整える必要があります。
少額のM&Aだからといって、こうした見直しを疎かにしてしまうと、M&A成約後に譲渡企業の従業員から理解が得られず、優秀な人材の流出や従業員のモチベーション低下によって、想定していたシナジー効果が生まれない可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
M&Aは大規模案件のイメージを持つ方が多いですが、昨今は少額のM&A案件も多くなってきています。
少額のM&A案件としては、主に後継者問題に悩む個人経営の店舗や中小企業あるいは、売上高や利益の規模が小さい傾向にある中小企業の譲渡となりますが、企業だけでなく、個人でも譲受可能な案件が多数あります。
少額のM&A案件を検討している方は、記事内で紹介した内容を参考にして、自身に最適な案件を探してみてはいかがでしょうか。