2020年東京オリンピックの開幕が刻々と迫っています。「観戦に行きたいけど、安全なの?」と思う人もいるかもしれません。東京都で行われる過去最大規模のイベントに伴い、東京オリンピックではなんと約1万4,000人もの民間警備員が従事するうえ、その他にも警察官やボランティアなどを含めて警備体制に5万人以上が動員される予定になっています。開催期間中には世界中から多数の観戦客が東京を訪れることが見込まれており、人々の安全を確保するためには多くの警備員の従事が不可欠です。東京オリンピック開催に向け、生活の安全・安心への関心が高まりつつある昨今、警備会社の需要が高まっています。

実際に2011年の東日本大震災以降、消費者の安全・安心を求めるニーズが増加したことで、警備業界のニーズは防犯から防災・救急へと移っています。そのニーズの増加に伴い、警備業界の企業の事業拡大が活発化しています。本記事では、事業拡大を図るための手段のひとつであるM&Aに焦点を当てて、警備業界の最新の動向や事例を紹介していきます。

参考URL:五輪の警備員が足りない! 非常事態に14社が結束
参考URL:警備業界(業界動向サーチ)

~目次~
警備業界とは?最新の業界動向を紹介
業界大手によるM&A事例5選(直近5年間)
2018年の警備業界のM&A事例2選
注目のM&A事例3選
まとめ

警備業界とは?最新の業界動向を紹介

警備業法によると、警備業とは「依頼者の需要に応じて生命や身体、財産への侵害を警戒・防止する業務を営業として行うこと」を指します。一般的には依頼者と警備会社が契約を結び、施設や人、物品、道路などの警備サービスを提供します。2017年末に一般財団法人全国警備業協会が8,733業者を対象に行った調査によると、警備業界の売上高の総額は3兆4,761億2,117万円となっています。この売上高の総額は、2016年末の3兆4,236億9,480万円から、524億2,637万円の増加となります。

日本の警備業の始まりは、1962年に日本警備保障株式会社(現・セコム株式会社)が日本で初めての警備保障会社を創業したことが始まりです。当時は「水と安全はタダ」と言われていたほど、警備に対する関心がまだほとんどなかった時代でした。しかし、1964年に開催された前回の東京オリンピックの競技施設で行った警備の様子が後にテレビドラマ化されました。このことをきっかけに東京オリンピックでの警備員の活躍と警備業の重要性が日本中に知られ、警備業界は急速に成長しました。

2008年のリーマン・ショック以降、売上高の減少傾向が続きましたが、家庭における防犯意識の高まりや東京オリンピックなどを背景に、警備需要は増加しています。近年では、空港や原子力発電所などの重要施設の警備や、刑務所管理などの公的な業務の領域が拡大しています。警備業界のニーズが防犯から防災・救急へと移っていることからも、災害地での治安維持活動やAEDの設置・管理など、業務の多角化が見受けられます。

参考URL:平成29年における警備業の概況 – 警察庁
参考URL:一目でわかる警備業とALSOK

業界大手によるM&A事例5選(直近5年間)

1.セコム上信越株式会社によるセコム佐渡株式会社の完全子会社化

引用元:http://www.secom-joshinetsu.co.jp/index.shtml

上信越の警備サービス業を手掛けるセコム上信越株式会社は、2017年7月、連結子会社であるセコム佐渡株式会社を完全子会社化しました。

セコム佐渡は、新潟県佐渡市おいてセキュリティーサービスを提供しており、1992年にセコム上信越の第三者割当増資によって、連結子会社となりました。その後、旧社名の株式会社エスピーアラーム佐渡からセコム佐渡へと名称を変更しています。

今回のセコム上信越によるセコム佐渡の完全子会社化は、近年のセキュリティに対するニーズの多様化、高度化がより加速していくことを見据えた決定となりました。

▷関連記事:M&Aの手法としても活用される「第三者割当増資」とは?メリット・デメリットや手順について細かく解説
▷関連記事:株式交換のメリット・デメリットは?株式移転との比較、かかる税率についても紹介
 
参考URL:簡易株式交換による連結子会社(セコム佐渡株式会社)の完全子会社化に関するお知らせ

2.セントラル警備保障株式会社による株式会社特別警備保障の子会社化

引用元:https://www.we-are-csp.co.jp/

セントラル警備保障株式会社は、2016年9月、人員を置かず機械で警備をする機械警備などの受託や装置販売を行う、株式会社特別警備保障を子会社化しました。

セントラル警備保障は1966年に設立された、警備業界売上第3位の企業です(2018年11月現在)。1997年に東日本旅客鉄道(JR東日本)との業務提携を経て、現在は同社の持分法適用会社となっています。一方、特別警備保障は神奈川県内を中心に機械警備、警備輸送、施設警備などを展開し、神奈川県に強い基盤を持っています。

セントラル警備保障は、特別警備保障を子会社化することで、同社が営業圏としている関東エリアにおいての事業展開を強化していく見込みです。

参考URL:株式会社特別警備保障の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

3.株式会社トスネットによる株式会社アーバン警備保障の子会社化

引用元:https://www.tosnet.co.jp/

株式会社トスネットは、2017年10月、株式会社アーバン警備保障を子会社化しました。

トスネットは、交通誘導*1警備を主力とした警備事業を展開しています。一方、アーバン警備保障は北海道内において建築関係の警備を中心に、各種工事現場における警備事業を展開しています。

トスネットは、アーバン警備保障を子会社化することで北海道における警備事業の展開を見込んでいます。またトスネットでは、地震などの際に電源供給車による施設の電源確保が可能です。札幌市に本社を置き、電源供給事業を行っているトスネットの連結子会社のI・C・Cインターナショナル株式会社とのシナジー効果を図る狙いがあります。

*1交通誘導:交通に支障のある場所で自動車や歩行者の誘導行うこと

▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは
 
参考URL:株式会社アーバン警備保障の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

4.東洋テック株式会社による株式会社大阪ビルサービスの子会社化

引用元:https://www.toyo-tec.co.jp/

東洋テック株式会社は2015年7月、株式会社大阪ビルサービスを子会社化しました。

東洋テックは、1966年に関西で最初に設立された、大阪府大阪市に本社を置く警備会社です。一方、大阪ビルサービスは1973年から長年にわたり、大阪府において清掃業務を展開しています。

東洋テックは、大阪ビルサービスの学校法人に対する清掃などのノウハウを活かして、警備業務、ビル管理業務の強化を図ります。

参考URL:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

5.株式会社アール・エス・シーによる株式会社アール・エス・シー中部と日本船舶警備株式会社の合併

引用元:http://www.trsc.co.jp/

株式会社アール・エス・シーは、2016年7月、100%子会社である株式会社アール・エス・シー中部(以下、RSC中部)と、RSC中部の100%子会社である日本船舶警備株式会社の合併を行いました。

アール・エス・シーは連結子会社と孫会社を合併することにより、グループの経営効率化と事業拡大を図ります。

この合併は、日本船舶警備を存続会社、RSC中部を消滅会社とする吸収合併でした。合併後、存続会社の商号を「アール・エス・シー中部」と変更しました。

▷関連記事:M&Aにおける吸収合併とは?手続きやメリット、登記方法を解説
 
参考URL:当社連結子会社・孫会社間の合併及び商号変更に関するお知らせ

2018年の警備業界のM&A事例2選

6.セコム株式会社による東芝セキュリティ株式会社の子会社化

引用元:https://www.secom.co.jp/

警備業界最大手のセコム株式会社は2018年8月、株式会社東芝の連結子会社である東芝セキュリティ株式会社を子会社化しました。

一方で、東芝セキュリティは東芝グループ各社の工場やオフィスを中心に、施設警備、動力監視、消防・防災設備の保守点検、受付業務などを手掛けています。

セコムは東芝セキュリティの子会社化により、工場などの大型施設における警備のノウハウを活かしてサービスの向上を図る見込みです。

参考URL:東芝セキュリティ株式会社の株式譲渡について
参考URL:東芝セキュリティ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

7.綜合警備保障株式会社による株式会社ケアプラスの子会社化

引用元:https://www.alsok.co.jp/

綜合警備保障株式会社は、2018年6月、株式会社ケアプラスを子会社化しました。

「ALSOK」のブランド名で知られる綜合警備保障は、セキュリティ事業に特化する警備業界2位の企業です(2018年11月現在)。一方、株式会社ケアプラスは「まごころベルサービス」ブランドで在宅療養者向けに訪問医療サービスを提供しています。

綜合警備保障はケアプラスの子会社化により、介護事業だけではなく、個人・法人の顧客の満足度を向上させ、高齢者向けサービスの強化をしていく見込みです。 グループで展開する訪問介護の利用者向けに医療マッサージサービスを導入し、さらに運営する介護施設の入居者にも提供することで、収益拡大を目指します。

参考URL:株式会社ケアプラスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

注目のM&A事例3選

近年、日本では人口減少や少子高齢化が進み、さまざな業界で人材不足が騒がれている中、警視庁が民間の警備業者を対象に人材確保についての調査を行いました。その結果、日本の警備会社の9割が人材不足ということがわかり、業界の深刻な問題が浮き彫りになりました。

そのため、このような問題の解決や事業を拡大を見込んで海外に進出する企業も増えています。ここでは海外に進出し、事業拡大を見込むM&A事例を紹介します。

参考URL:警備業9割超で人手不足 東京五輪控え「ネット養成」も検討|産経新聞

8.綜合警備保障株式会社によるベトナムの提携警備会社の連結子会社化

引用元:https://www.alsok.co.jp/

綜合警備保障株式会社は、2016年12月、ベトナムにおける提携警備会社のRoyal Haiphong Security Service Joint Stock Company(以下、RHSS社)を連結子会社化しました。

RHSS社は、2009年にベトナムの商業都市ホーチミンに警備コンサルティング会社として設立され、2011年に首都ハノイにも事務所を開設しています。

綜合警備保障はRHSS社の譲受けを機に、RHSS社の社名を「ALSOK Vietnam Security Services Joint Stock Company(ALSOKベトナムセキュリティ)」とし、日本式の高品質な警備サービスを提供する見込みです。

参考URL:ベトナムにおける提携警備会社の株式取得による連結子会社化のお知らせ
参考URL:海外展開企業向け安全安心ソリューション

9.セコム株式会社によるスキャンアラームLtd.の譲受け

引用元:https://www.secom.co.jp/

セコム株式会社は、2017年3月、北アイルランドに本社を持つセキュリティ会社、スキャンアラームLtd.(以下、スキャンAL社)を完全子会社化しました。

スキャンAL社は、北アイルランドにおいてセキュリティシステムの販売・設置・保守を行うセキュリティ会社です。

セコムは1991年4月に英国のキャロルセキュリティグループを譲受け、英国におけるセキュリティ市場に参入しています。1995年6月には英国警備会社のアンバサダーセキュリティサービスを譲受け、翌年の1996年1月に両社を合併し「セコムPLC」を設立しました。セコムはスキャンAL社の譲受けを機に、英国全土でより高品質なセキュリティサービスの提供に取り組み、業容を拡大していく見込みです。

参考URL:セコムが北アイルランドの「スキャンアラーム」を買収 英国のセキュリティサービス提供体制を強化
参考URL:英国・セコムPLCが同国の「最優秀顧客サービス賞」受賞 ヒースロー国際空港やユーロスター新駅2駅でセキュリティシステム受注

10.株式会社穴吹ハウジングサービスによる東海保全の子会社化

引用元:https://www.anabuki-housing.co.jp/

株式会社穴吹ハウジングサービスは2015年3月、台湾の警備会社である東海保全(現・穴吹東海保全)を子会社化しました。

穴吹ハウジングサービスは、穴吹興産を中核企業とする「あなぶきグループ」の中で、マンション管理を手掛けています。一方、東海安全は台湾で主にマンションの警備管理業を行っていました。

穴吹ハウジングサービスは、2012年に同社初となる海外拠点を台湾に設立し、同地域でマンション管理の実績がありました。穴吹ハウジングサービスは、東海保全社の子会社化により、マンション管理の運営を効率化し、同地域での事業を拡大する狙いです。

参考URL:海外事業サービス | 事業・サービスのご案内 | あなぶきハウジングサービス

まとめ

東京オリンピックの警備では、セコム株式会社と綜合警備保障株式会社の業界最大手2社がオフィシャルパートナーとなり、複数の民間警備会社から構成される「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体」が設立されました。(2018年4月3日付)東京オリンピックの開催は、警備業の存在を定着させ、消費者の警備需要がさらに拡大すると予測されています。

しかしながら昨今、警備需要の高まる影で人材不足が大きな問題となっています。機械警備が主流になっている中、警備業界では経営不振や後継者不足などの問題から多くの中小企業が廃業を余儀なくされています。

近年、これらの問題を解決するために多くの企業がM&Aを活用した経営を行っています。M&Aを行うことは、単に人手不足の解消だけではなく、経験豊かな優秀な人材や事業の確保にもつながります。今後、事業承継や事業展開、海外進出を検討するならば、M&Aを視野に入れてみてはいかがでしょうか。