M&A 人材派遣

厚生労働省が発表した労働派遣事業報告書によると、2016年度の人材派遣業界の年間売上高は6兆5,798億円となっており、リーマンショック以降では最高の数値となりました。その背景には会社の人手不足があり、2016年度12月の有効求人倍率は1.43倍と、バブル期のピークである1990年7月の1.46倍に近づく高い倍率となっています。

また、2020年の東京オリンピックによる建設需要の増加やIT人材の需要の増加により、今後も人材不足が加速し、より人材派遣や人材紹介業界が成長していくと予測されています。

本記事では、人材派遣業界の定義や動向を簡単に紹介した上で、人材派遣業界で行われたM&Aの事例について、業界大手の事例や2018年度に実施された事例、注目の事例などをご紹介したいと思います。

▷参考記事:【2018年最新版】IT業界のM&A事例11選!

参考URL:「派遣の現状」| 一般社団法人 日本人材派遣協会
参考URL:人材派遣業界(業界動向サーチ)
参考URL:一般職業紹介状況(平成28年度12月分及び平成28年分について) | 厚生労働省
参考URL:正社員の求人倍率 初の1倍超え 6月1.01倍 | 日本経済新聞

~目次~
人材派遣業界とは?最新の業界動向を紹介
人材派遣業界の大手企業による5年以内のM&A事例3選
2018年の人材派遣業界のM&A事例3選
人材派遣会社による異業種のM&A事例3選
専門家によるコメント
まとめ
業界再編による激しい競争を勝ち残るために

今回話を聞いたM&Aアドバイザー


FUNDBOOK M&A 北村 隆史

北村 隆史

株式会社FUNDBOOK
営業戦略本部 エグゼキューション部
ヴァイスプレジデント

関西大学経済学部卒。2008年大和証券株式会社へ入社し、主に富裕層及び法人顧客に対する資産運用コンサルティングに従事。社長賞を複数回受賞し、2009 年度には賞与考課最高ランク取得。2013年株式会社ストライクへ入社し、M&Aアドバイザーとして業種問わず様々な案件の成約実績を有する。2017年度に売上実績3位の成績を収め社長賞受賞。大型案件により歴代feeランキングを塗り替える。2018年7月より当社参画。

人材派遣業界の定義と業界動向とは?

人材派遣業とは、厚生労働省の許可を受けて求職者(派遣社員)を求人者(派遣先企業)に派遣する業態のことを指します。

類似の業界として人材紹介業が挙げられます。違いとしては、求職者の雇用契約先が異なります。人材紹介業では求職者は就業先の会社と雇用契約を結びますが、人材派遣業では派遣する会社との間で雇用契約を結び、給与も派遣する会社から支払われるという点で違いがあります。

人材派遣業界の動向として、2008年までは規制緩和や少子化、若年女性の人材不足などを背景に需要が増大し、急成長を遂げました。2008年度の人材派遣市場全体の売上は過去最大の7兆7,892億円となっており、2003年度の売上の3倍以上になっています。しかし、2008年秋のリーマンショックを皮切りに景気が後退し、雇用環境が悪化して大きく売上が落ち込んだ他、派遣先企業が契約満了前に一方的に派遣契約を打ち切る問題、いわゆる「派遣切り」が社会問題となりました。

2013年頃からアベノミクス等の影響による国内景気の回復によって、徐々に市場は堅調さを取り戻してきました。また、近年は国内の労働人口の減少や企業の事業拡大により様々な業界で慢性的な人材不足となっており、人材派遣業界の需要は高まっていくと考えられます。

参考URL:人材派遣業界(業界動向サーチ)
参考URL:【2017年版】人材派遣業界の市場規模と、派遣業界の今後の動向について

人材派遣業界の大手企業による5年以内のM&A事例3選

1.株式会社リクルートホールディングスによる米Glassdoor社のM&A

引用元:https://www.recruit.co.jp/

2018年6月、株式会社リクルートホールディングスは、求人関連の口コミサイトを運営するアメリカのGlassdoor社を12億米ドル(約1,360億円,2018年11月時点のレートで換算)でM&Aを行いました。

2012年に買収したIndeed社の求人サービス「Indeed」と組み合わせることで、より充実したHRサービスの提供を目指すとしています。具体的には、従来の求人サイトの情報に求職者の口コミ情報を加えていくことにより、オンラインHR領域におけるポジションをより確固たるものにすることが目的です。

参考URL:米国Indeed Inc.の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ
参考URL:Glassdoor, Inc.の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

2.テンプホールディングス株式会社(現パーソルホールディングス株式会社)による株式会社インテリジェンスホールディングスの子会社化

引用元:https://www.persol-group.co.jp/

2013年4月、総合人材サービスを提供するテンプホールディングス株式会社は、同じく幅広い人材サービスを手がける株式会社インテリジェンスホールディングスを約510億円で子会社化しました。

テンプホールディングスは、自社が持つ豊富な求職者情報とインテリジェンスの持つ人材紹介サービスの「DODA」や求人情報サービス「an」といった強いブランドが結びつくことで、多様化する会社や求職者のニーズに応えることが可能になるとしてM&Aを行いました。

テンプホールディングスはこの他にも多くの買収を行っており、M&Aが成長戦略の一端を担っています。その結果、2008年創業にも関わらず、現在はリクルートホールディングスに続く業界2位の売上を誇っており、今後もM&Aを通じて事業基盤強化及びサービス領域の拡大を行っていくとしています。

参考URL:株式会社インテリジェンスホールディングスホールディングスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

3.株式会社パソナグループによるNTTグループ人材会社の子会社化

引用元:https://www.pasonagroup.co.jp/

人材派遣業界第3位の株式会社パソナグループは、2017年8月、NTTグループの人材サービス会社であるNTTヒューマンソリューションズ株式会社とテルウェル・ジョブサポート株式会社を子会社化しました。この他にも、NTTグループ4社の人材派遣事業を譲り受けており、買収価額は総額約54億円にものぼります。

今回の買収でパソナグループは、NTTグループ内の人材紹介会社と人材派遣事業が持つ、高い信頼と認知度を活用して地方圏での営業を強化することを図っています。また、NTTグループ内の企業に対する業務の委託や請負、教育、研修などのサービス提供の拡大を狙いとしています。

参考URL:当社子会社(株式会社パソナ)による NTTグループ人材サービス会社の株式取得及び事業譲受に関するお知らせ

人材派遣業界2018年最新のM&A事例3選

1.テクノプロ・ホールディングス株式会社による技術系人材サービスの英Orion Managed Services Limitedの子会社化

引用元:http://www.technoproholdings.com/

2018年10月、国内最大級の技術系人材サービスグループであるテクノプロ・ホールディングスがOrion Managed Services Limitedの株式のうち60%を取得して子会社化しました。

Orion Managed Services Limitedはイギリスを拠点に置く、技術者や技能者の人材派遣事業及び、人材紹介事業を展開する会社です。テクノプロ・ホールディングスは、2017年に発表した新中期経営計画の中で成長戦略の一環としてグローバル化の推進を掲げており、M&Aを通じた海外拠点と経営陣・コンサルタント・技術者のスピーディな獲得を狙っています。

今回の買収で欧州での拠点獲得を実現し、イギリスに拠点を構える日系企業への技術系サービスの提供や、インドのグループ会社との連携を目指しています。また、同年6月にはシンガポールの技術者派遣会社であるHelius Technologies社を買収しており、今年度に海外進出を目的としたM&Aを複数行っていくようです。

参考URL:当社によるOrion Managed Services Limitedの株式取得(当社の子会社化) に関するお知らせ

2.株式会社ウィルグループによる建設技術者派遣のC4株式会社の子会社化

引用元: https://willgroup.co.jp/

2018年6月、人材派遣・アウトソーシング事業を行う株式会社ウィルグループは、東日本大震災の復興支援を目的に立ち上げられ、建設技術者の派遣事業を行うC4株式会社を子会社化しました。

ウィルグループは新たな事業分野において一定規模の事業を創出することを重要戦略目標に掲げており、近年成長している建設業界に目をつけました。C4は建築土木の大型工事の技術者派遣において強みを持っており、ウィルグループは建設業界における人材サービスの経営資源及びノウハウの取得を目指しています。また、C4はウィルグループの全国的な拠点網を活用した新たな事業エリアの開拓が可能となります。

参考URL:C4株式会社の株式取得(子会社化)及び取得に伴う資金の借入れに関するお知らせ

3.株式会社アウトソーシングによる英ALLEN LANE TOPCO LIMITED社の子会社化

引用元:https://www.outsourcing.co.jp/

2018年9月、株式会社アウトソーシングは、政府向けの人材派遣を行うイギリスのALLEN LANE TOPCO LIMITED社の株式のうち82.5%を取得して子会社化しました。

ALLEN LANE TOPCO LIMITED社は中央政府及び地方政府への人材派遣サービスに強みを持つ、政府プロジェクトへの人材紹介エージェントとしての実績も豊富な会社です。株式会社アウトソーシングは、従来の製造系アウトソーシングのみならず、景気変動の影響を受けにくい公共系アウトソーシング事業への更なる注力を目的として今回のM&Aに踏み切っています。

また、今年度にオランダやオーストラリアの人材派遣会社の買収も行っており、海外における売上拡大を目指しています。

参考URL:英国 ALLEN LANE TOPCO LIMITED の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

人材派遣会社による異業種のM&A事例3選

近年、人材派遣業界のM&Aの中には異業種の会社を譲受する事例が見受けられます。ここでは、M&Aを用いた人材派遣業界の会社の異業種への参入事例を3つご紹介します。

1.株式会社フルキャストホールディングスによる家事代行サービスのミニメイド・サービス株式会社の子会社化

引用元:https://www.fullcastholdings.co.jp/

2018年8月、短期間での人材派遣を強みとしている株式会社フルキャストホールディングスは、日本初の家事代行サービスの認証を受けた事業者であるミニメイド・サービス株式会社を子会社化しました。

フルキャストホールディングスは軽作業におけるサービス提供を行う人材派遣領域を得意としており、家事代行サービスとの相関性が高く、シナジー効果が見込めると判断して子会社化に踏み切りました。

▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは
 
参考URL:ミニメイド・サービス株式会社の株式取得に関するお知らせ

2.株式会社エクストリームによる株式会社EPARKテクノロジーズの第三者割当増資引受 による子会社化

引用元:https://www.e-xtreme.co.jp/

2018年5月、WEBサービス事業者などへ向けた技術社員の派遣事業を行う株式会社エクストリームが、順番予約サイト「EPARK(イーパーク)」の運営などを手がける株式会社EPARKテクノロジーズを第三者割当増資引受によって子会社化しました。

株式会社エクストリームは、一般消費者に身近な順番予約サービスの開発業務に関わることで、技術人材採用において訴求力及び採用力の強化や、継続的に技術社員を採用することで人材ソリューションサービスの事業規模の拡大が期待できるとして子会社化を行いました。

▷関連記事:M&Aの手法としても活用される「第三者割当増資」とは?メリット・デメリットや手順について細かく解説
 
参考URL:株式会社EPARKテクノロジーズの第三者割当増資引受 (特定子会社化)に関するお知らせ

3.株式会社ワールドホールディングスによる西肥情報サービス株式会社の子会社化

引用元:https://world-hd.co.jp/

2018年2月、研究者の派遣を行う株式会社ワールドホールディングスが、子会社である株式会社ワールドインテックを通じて、路線バスの運行システムの開発、保守を長年手がけてきた西肥情報サービス株式会社を子会社化しました。

西肥情報サービスは特にシステム開発において高い技術力を持ち、官公庁や大学等の案件を数多く手掛けています。ワールドホールディングスは西肥情報サービスの高い技術力とワールドインテックの動員力を融合することで、大きな事業成長の可能性を有するとしています。

参考URL:西肥情報サービス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

専門家からのコメント

FUNDBOOK M&A 北村 隆史

人材派遣業は設備投資が不要であるため、資産の多くが現金という特徴があります。現金を内部留保するよりも投資をしたいと考える経営者や株主が多く、M&Aは投資先の1つとして活用されています。多くの場合、同業を子会社化して派遣先のエリア拡大と職種の補完を行うことが一般的ですが、異業種や派遣先企業を子会社化する事例も増えています。一方で、人材派遣業は資産が明確であることから譲受企業からの需要も高く、人材派遣業界は長年M&Aが活発に行われてきた業界です。
 
人材派遣業界の今後の課題としては①ロボットやAIの技術の進展による単純作業の代替、②海外からの人材の流入、③無期転換ルールへの対応、が挙げられます。
 
①については、将来的に事務作業や製造業の仕事など、単純作業や危険な作業はロボットやAIに代替されると予想されているため、これらの人材に特化した派遣会社は厳しい状況に置かれる可能性が高いです。一方でソフトウェアの開発業務や、アナウンサーといった専門26業種に代表される「人だけができる仕事」への需要がより高まってくると考えられます。専門職の人材を派遣する事業は今後も売上の確保が見込め、M&Aもより活発化していくことが予想されます。
 
②に関して、近年人材を確保することを目的として海外進出を図る企業も増えています。人件費が安い東南アジア、その中でも人口の多いインドネシアやベトナムなどが特に注目されており、効率的に人材を確保するために海外の専門学校や日本語学校などを子会社化する会社も出てきています。
 
最後に③についてですが、2018年から全ての業種において、派遣社員が同じ派遣先で働ける期間の上限を3年とする「3年ルール」や、同じ派遣元会社で働ける期間を5年に定めた「5年ルール」が適用されるようになりました。これらのルールにより定期的に新しい人材を確保する必要が出てくるため、優秀な人材の獲得競争の過熱が予想されます。
 
以上のような課題がある中、業界全体として業績好調という訳ではなく、事業所数が増えている一方で、業界全体の売上があまり変動していないという事実もあります。むしろ業界の景気が良くないからこそ、将来を見据えた投資としてM&Aが活発に行われており、今後もこの傾向は続いていくと考えられます。

まとめ

2018年現在、国内では多くの企業において人材不足が問題となっていることから、人材派遣に対する需要が伸びており、人材派遣業界は業績が上昇傾向にあります。派遣事業の拡大や、派遣業種の多様化を図る目的のM&Aだけでなく、海外進出を目的としたM&Aや、人材サービスとのシナジー効果に期待した異業種へのM&Aも見られます。このように今ある事業の拡大だけでなく、今後も見据えた事業展開を考え、目的に合ったM&Aを行っていくことが大切となるでしょう。

業界再編による激しい競争を勝ち残るために

近年、人材派遣業の倒産件数の増加など、様々な課題を抱えています。

  • ロボットやAIによる労働の代替
  • 無期転換ルールへの対応
  • 海外人材を確保する必要性

勝ち残るためにはこれらの課題に対応する必要があります。

M&Aはこれらの課題を解決するための有力な手段として注目されています。
しかし「M&Aをやったほうがいい」と言われても何から手をつければいいかわからない方も多くいらっしゃると思います。
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  • スムーズにM&Aを進めるために譲渡企業が用意すべき6つのポイント

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