業界毎の事例

2023/10/02

介護業界におけるM&Aとは?動向やメリット、事例をわかりやすく紹介

介護業界におけるM&Aとは?動向やメリット、事例をわかりやすく紹介

老人保健施設やグループホームなどの施設・居住系介護サービス、デイサービスなどの通所系介護サービス、訪問介護などの在宅系介護サービスなど、近年では多くの介護サービスが提供されています。

介護サービスを必要とする高齢者の増加を背景に、介護業界は成長産業として期待されています。異業種からの新規参入も多く、M&Aが実施される件数も増加傾向にある業界です。

本記事では介護業界における事業の譲渡・譲受を考えている方へ向け、介護業界の概要、介護業界におけるM&Aの現状と動向、介護業界でM&Aを行うメリットと事例を解説します。

\資料を無料公開中/
企業価値100億円の企業の条件とは
資料
・100億円程度の譲渡価額がついたM&A事例
・企業価値10億円と100億円の算出ロジックの違い
・業種ごとのEBITDA倍率の参考例
・企業価値100億円に到達するための条件

自社の成長を加速させたい方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

介護業界とは

高齢者など、日々の生活でサポートが必要な方を支える介護業界。介護業界は高齢化の進展を背景に需要が高まっている業界ですが、人材不足など難しい問題も抱えています。

介護業界におけるM&Aを理解するには、介護業界の現状や事業特性の把握が重要です。以下で項目ごとに見ていきましょう。

▷高齢化の進展を受け市場は拡大の見込み

介護業界は高齢化の進展を受け、今後さらなるニーズの増加や市場の拡大が見込まれる業界です。令和3年(2021年)版高齢社会白書によると、2020年10月1日現在の65歳以上人口は3,619万人にのぼり、高齢化率は28.8%となっています。2000年の高齢化率17.4%と比較すると、10%以上の伸び率です。

特に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2022年以降、介護を必要とする介護サービス利用者数、要介護認定者数はさらに増加すると想定されています。後期高齢者数の増加傾向は2054年頃まで続くと予想されており、介護業界に対するニーズは今後も継続するものとみられています。

▷介護サービスの人材不足は深刻化している

介護業界に対するニーズが増加する一方、介護サービスの担い手となる人材の不足は深刻な状態です。少子化が進みそもそもの労働者人口が減少する状況にくわえ、介護職の給与や待遇は恵まれているとは言えず、各介護サービスでは人材の採用に困難を抱えています。

厚生労働省が発表している一般職業紹介状況によると、2021年3月の介護サービスの有効求人倍率は3.82倍となっており、全職種平均(1.14倍)と比較すると非常に高い水準です。さらに、介護職は離職率が高いことも人材不足の深刻化に拍車をかけています。

▷規制産業と設備産業としての側面がある

介護業界の事業特性としては、規制産業と設備産業の側面があげられます。介護事業を開始するには、都道府県あるいは市区町村に指定申請をする必要があります。民間企業が参入できる介護サービスは限られており、いくつかの規制をクリアしなければなりません。

また、設備産業の側面も介護業界の特性です。訪問介護や通所介護など非施設型の介護事業では簡易的な施設で事業を実施できますが、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など施設型の介護事業では、利用者が生活するための施設が必要です。そのため、初期の設備投資が大きくなる傾向があります。

介護業界のM&Aの現状

介護市場の拡大を受け、介護を成長分野ととらえる企業や施設を中心に、介護業界のM&Aは増加傾向にあります。M&Aにより事業を拡大することで、既存の介護ビジネスの収益性をより向上させることが狙いです。

M&Aの譲受企業は、介護業界の企業や施設だけではありません。介護業界の成長を見込み、他業種からの新規参入・経営の多角化によるM&Aも実施されています。例えば、2018年の野村不動産ホールディングスによるJAPANライフデザインへの資本参加などの例があります。その他、証券業の大和証券グループや運輸・倉庫業のセンコーなど、異業種からの参入は増加傾向です。

また、介護業界のM&Aの特徴として、人材確保を目的としたM&Aもあげられるでしょう。前述のように、介護業界の人材不足は深刻な問題です。M&Aで介護人材やケアのノウハウを譲受することにより、人材不足の問題を軽減できます。

介護業界のM&Aの動向

介護業界のM&A動向として注目されるのは、介護施設における経営者の高齢化に伴う事業承継の問題です。介護保険制度が開始した2000年から20年以上が経過した現在、介護施設の経営者もまた高齢化が進んでいます。介護施設は中小規模の事業所も多く、後継者の不在に悩む経営者は多数存在します。

従来、中小規模の事業所での事業承継は、親族内あるいは社内での事業承継が一般的でした。しかし、少子化による後継者不足のため、近年ではM&Aでの社外承継が増加しています。このような後継者不足を解消したいという譲渡側のニーズによるM&Aは、今後さらに増加すると想定されています。

なお、政府は介護事業所の統合・再編、経営の大規模化や資源集約化に向けた方針を示しています。これは、介護事業所の統合により経営の安定化を図り、利用者へのサービス向上や介護職への待遇改善を目指したものです。政府のこのような方針から、介護事業所の大規模化、それに伴うM&Aの実施は今後一層増えると考えられます。

介護業界のM&Aのメリット

介護業界のM&Aのメリット

それでは、介護業界でM&Aを実施するとどのようなメリットがあるのでしょうか。譲渡側と譲受側の両方の視点から、介護業界でM&Aを行うメリットを解説します。

▷介護業界のM&A<譲渡側のメリット>

介護業界でM&Aを実施した際の、譲渡側のメリットには下記のようなものがあります。

=========================

①不安定な経営状況の解消

②従業員の雇用確保・キャリアアップ

③後継者問題の解決

=========================

それぞれ項目ごとに詳細を見ていきましょう。

介護業界のM&A譲渡側のメリット①:不安定な経営状況の解消

譲受側がM&Aを実施するメリットには、不安定な経営状況を解消できる点があります。介護事業の収入の多くは介護保険を財源とする介護報酬に依存していますが、介護報酬は3年に1度改定され、場合によってはマイナス改定となる場合もあります。

そのため、経営状況が不安定となったり、経営難に陥ったりする事業所も少なくありません。特に経営規模の小さい中小の事業所の場合は、廃業に至るケースも存在します。

M&Aにより経営体力のある大手企業、あるいは経営状況の安定した施設に事業が譲渡されると、不安定な経営状況からの脱却が期待できるかもしれません。介護サービスの利用者にとっても、経営の安定性が確保されることにより安心してサービスを利用できる点は大きなメリットです。

介護業界のM&A譲渡側のメリット②:従業員の雇用確保・キャリアアップ

事業を譲渡し、事業を継続可能な状態にできれば、従業員の雇用も継続して確保できます。

また、譲渡先が大規模な事業所である場合、従業員の働き方にも幅ができ、キャリアアップにつながる可能性があります。通所介護や訪問介護などこれまで経験してこなかったサービスへの従事、大規模事業所ならではのケアのノウハウの学習など、新しい職場での経験は従業員のキャリアアップにもつながります。

介護業界のM&A譲渡側のメリット③:後継者問題の解決

M&Aによる事業承継は、後継者問題の解決策となるメリットがあります。前述のように、介護業界の経営者も高齢化が進んでおり、後継者の不在は経営の存続にかかわる重要な問題です。M&Aにより事業継続が達成できれば、事業の廃業に至る事態を回避できます。

なお、経営者本人にとっても、譲渡による創業者利益の獲得、事業所経営のための借入金の個人保証契約の解消など、多くのメリットがあります。

ただ、介護事業の売却後の現実として、利用者への一方的な契約変更でそれまで受けられていたサービスを受けられなくなってしまうケースなどが存在するので、道義的側面を考慮するのであれば、変わらないサービスの提供を続けることも重要かもしれません。

▷介護業界のM&A<譲受側のメリット>

次に、介護業界でM&Aを実施した際の、譲受側のメリットを紹介します。譲受側の主なメリットは下記の通りです。

=========================

①サービス拠点にかかる費用や労力を軽減

②人材の確保と利用者の受け継ぎ

③介護事業における許認可の引き継ぎ

=========================

以下で項目ごとに解説します。

介護業界のM&A譲受側のメリット①:サービス拠点にかかる費用や労力を軽減

介護業界で譲受側がM&Aを実施する大きなメリットは、施設建設などの初期費用や入手にかかる労力を大幅に削減できる点です。事業所を新規開設する場合は、サービス拠点の土地の入手、施設の建設などさまざまな費用や労力が必要となります。サービスを開始するまでに、一定の資金と期間を確保しなければなりません。

M&Aで既存の施設や土地を引き継ぐと、上記の費用や時間、労力を軽減可能です。また、施設にかかる土地や建物を一括取得でき、未進出エリアへの展開も比較的容易となります。異業種から新規参入する場合にも有用です。

介護業界のM&A譲受側のメリット②:人材の確保と利用者の受け継ぎ

M&Aで事業を承継できれば、施設に従事する従業員も受け継ぐことができます。人材不足が深刻化する介護業界において、人材を確保できる点は見逃せない利点です。当該施設での介護サービスに熟練した従業員を確保でき、人材育成にかかる期間や費用も削減できます。

また、施設の利用者もあわせて引き継げるため、利用者を初めから新規開拓する必要もありません。施設の運営当初から利用者がいる状態でサービスを開始でき、運営開始当初から一定の売り上げを確保できるメリットもあります。

介護業界のM&A譲受側のメリット③:介護事業における許認可の引き継ぎ

M&Aが株式譲渡で実施された場合、株式の所有者が変わるだけなので、介護事業における許認可も引き継ぐことができます。土地や施設、人材や利用者に加え、許認可も引き継ぐことでスムーズな事業展開が可能です。

ただし、事業譲渡や会社分割などの場合はこの限りではありません。介護事業指定申請など申請を行う必要があるため、覚えておきましょう。

介護業界のM&A事例

▷SOMPOケアによる東京建物シニアライフサポートのM&A事例

2020年12月、SOMPOケア株式会社が東京建物シニアライフサポート株式会社の発行済株式を全て取得して完全子会社化し、翌年の2021年3月に同社を吸収合併の形で併合しました。

SOMPOケアはSOMPOグループの介護事業を担う介護サービスの大手であり、在宅介護サービスから施設介護サービスまで総合的な介護サービスを提供しています。東京建物シニアライフサポートは、東京都・神奈川県・埼玉県でサービス付き高齢者向け住宅や介護付き有料老人ホームなど19ヵ所を運営する会社です。

SOMPOケアは首都圏における介護事業の強化を考えており、東京建物シニアライフサポートを傘下におくことで、事業の拡大と既存事業とのシナジー効果を狙っています。

▷ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A事例

2021年7月、株式会社ニチイ学館は株式会社LeTechの完全子会社である株式会社西日本ヘルスケアの全株式を取得し、完全子会社としました。

ニチイ学館は介護事業をはじめ、医療関連事業や保育事業、ヘルスケア事業などを展開する会社です。西日本ヘルスケアは有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の運営など、LeTechの介護事業を担っていました。

LeTechは本業の不動産テック事業や不動産コンサルティング事業に経営資源を最適化するため、介護事業のノウハウを持ち、経営基盤が安定するニチイ学館へ西日本ヘルスケアを譲渡しています。

▷ソニー・ライフケアによるゆうあいホールディングスのM&A事例

2017年7月、ソニー・ライフケア株式会社は株式会社ゆうあいホールディングスの転換社債型新株予約券付社債の新株予約権の行使と同時に、同社の発行済株式を全て取得し、完全子会社としました。

ソニー・ライフケアは2014年に設立されたソニーフィナンシャルグループの傘下企業です。ゆうあいホールディングスは「はなことば」ブランドの名称で介護付き有料老人ホームを運営する子会社を有しています。

ソニー・ライフケアは介護業界の中では後発グループに属するため、M&Aによるスピーディな事業拡大を企図しています。ゆうあいホールディングスの子会社化はその一環です。

まとめ

介護業界は高齢者の増加といった人口構造の変化を受け、今後も多くの需要が見込まれる業界です。異業種からの新規参入も多く、近年、多数のM&Aが実行されています。介護サービスの後継者不足問題も、M&Aが増加傾向にある一因です。

介護業界でM&Aを行う場合、譲渡側には不安定な経営状況の解消や従業員の雇用確保などのメリットがあります。また、譲受側も事業拡大・参入にかかるコストや期間を大幅に短縮でき、人材や利用者を引き継いだ状態でのサービス開始が可能です。

fundbookにはヘルスケア業界のM&Aに特化したヘルスケアチームが御座います。着手金などは無く、無料でご相談可能ですので、お気軽にご相談ください。

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談