業界毎の事例

2023/09/26

【2020年】食品業界の動向とM&A事例10選

【2020年】食品業界の動向とM&A事例10選

近年、消費者の健康志向やニーズの多様化に対応するために、食品業界ではさまざまな商品の開発が進んでいます。また、将来的な人口減少による国内市場の縮小が予測される中で、企業はその対応に迫られています。

これらの課題に対応する手段として、食品業界ではM&Aが盛んに行われています。M&Aを活用して新たな商品ブランドを獲得したり、海外への販路拡大を行っていたりします。

本記事では、近年の食品業界の動向や市場規模、M&Aの特徴や実際の事例についてご紹介します。なお、本記事で扱う食品業界は食品製造業のことを指します。

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食品業界の動向

総務省の日本標準産業分類によると、「食料品製造業」に含まれる業種は、1)畜産食料品や水産食料品などの製造、 2)野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品の製造、3)調味料、糖類、動植物油脂などの製造、4)精穀、製粉およびでんぷん、ふくらし粉、イースト、こうじ、麦芽などの製造、5)パン、菓子、めん類、豆腐、油揚げ、冷凍調理食品、惣菜などの製造となっています。

食品製造業は、これに清涼飲料や酒類の製造業を合わせることが一般的です。

また、農林水産省の「平成30年度 食品産業動態調査」によると、2016年度の食品製造業の製造品出荷額等は34兆7,000億円となっており、前年より4%増となっています。2008年以降の世界的な不況により消費が落ち込みましたが、2012年末より始まったアベノミクスの影響もあり国内景気が回復し、近年は出荷額は微増傾向にあります。

しかし、他社との価格競争の激化や原材料価格の高騰などにより、中小企業にとっては厳しい状況が続いています。また、将来的にも少子高齢化や人口減少を背景に国内市場は縮小する見通しであり、大手企業は新たな市場を開拓するために海外への進出を図っています。

食品業界の動向

食品業界のM&A

食品業界では、上述したように競争激化や原料価格の高騰、また後継者不足を背景に業界再編が進んでいます。

食品業界の会社は、小麦や油、砂糖といった原料の供給を行う「素材型」の会社と、原料を加工してパン、調味料、冷凍食品といった「加工型」の会社に大別することができます。

素材型の会社は原材料費の高騰を受け、コストの削減やスケールメリットの享受を目的として再編が行われています。また、素材型の会社は他社との製品差別が難しいため、原料を使った加工品を新しく製造するなどの多角化を目指してM&Aを実施するケースも多いです。

加工型の会社は、素材型の会社と同様に事業の多角化を進めているほか、大手企業は海外に進出するために、クロスボーダーM&Aを行うことも多く見られます。

さらに、近年では経営者の高齢化や後継者不足の解決策としてのM&Aや、M&Aを活用した異業種からの食品業界への参入事例も増加しています。特に、健康志向の高まりを受けて、健康食品を扱う会社や部門の譲り受けニーズが高まっています。

このように、食品業界では、さまざまな目的で多くのM&Aが実施されています。以下では、実際に食品業界で行われたM&Aの事例について解説していきます。

最新の2019年の食品業界のM&A事例3選

1.亀田製菓株式会社による株式会社マイセンの子会社化

1.亀田製菓株式会社による株式会社マイセンの子会社化
引用元:https://www.kamedaseika.co.jp/cs/

2019年2月、亀田製菓株式会社は株式会社マイセンの株式のうち90%を取得して子会社化しました。

亀田製菓は「柿の種」や「ハッピーターン」などの米菓を製造、販売している会社です。一方のマイセンは、玄米パンやベジタリアンミートなどのグルテンフリー食品の製造販売を主に行う会社です。

近年は、アレルギー対応を含む健康志向の食品の需要は高まっており、亀田製菓は米菓以外の食品事業の強化を目的として子会社化を行いました。
具体的には玄米などを使った新商品の開発を進めるほか、販路や製造ノウハウなども両社で共有するとしています。

2.エア・ウォーター株式会社による株式会社元気の子会社化

2.エア・ウォーター株式会社による株式会社元気の子会社化
引用元:https://www.awi.co.jp/

2019年2月、エア・ウォーター株式会社が「熟成黒にんにく」を製造する株式会社元気の株式のうち63%を取得して子会社化しました。

エア・ウォーターは農業・食品事業のみならず、産業ガス事業や医療関連事業、エネルギー事業など幅広く事業を展開している会社です。農業・食品事業では、農産物の栽培、調達から食品の製造、販売に至るまで自社で一貫して展開しています。

元気は、国内で初めて「黒にんにく」を製造した会社であり、現在は青森産のにんにくを原料として、独自の製法により「熟成黒にんにく」を製造、販売しています。

エア・ウォーターは元気を子会社化することで、エアウォーターが持つ成果物の仲卸、小売事業とのシナジー効果が見込める他、青森産のにんにくの調達力を高め健康食品分野の商品を新たに持つことができるということで、M&Aを実施しました。

また、エア・ウォーターは2018年12月に調理冷凍食品を全国のレストランやホテルに販売する株式会社見方を子会社化しており、M&Aを活用した食品事業の強化を図っています。

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3.フジッコ株式会社による株式会社フーズパレットの子会社化

3.フジッコ株式会社による株式会社フーズパレットの子会社化
引用元:https://www.fujicco.co.jp/

2019年8月、フジッコ株式会社が株式会社フーズパレットの全株式を取得して子会社化しました。

フジッコは、塩こんぶの「ふじっ子」や煮豆の「おまめさん」で有名ですが、ヨーグルト製品や健康食品の素材も販売しています。フーズパレットは百貨店を中心に、「四陸(フォールー)」や「チャイナチューボー」といったブランドで中華惣菜を販売しています。

フジッコは惣菜製品が全売上の3割を占めていて、主力事業のひとつと位置づけています。フーズパレットが持つブランド力や商品力と、フジッコが持つマーケティング力や販売力が合わさることで、事業拡大に繋げるとしています。

異業種によるM&A事例3選

1.小林製薬株式会社による株式会社梅丹本舗の買収

1.小林製薬株式会社による株式会社梅丹本舗の買収
引用元:https://www.kobayashi.co.jp/

2019年5月、小林製薬株式会社が株式会社梅丹本舗の全株式を取得して子会社化しました。

小林製薬は、「熱さまシート」や「のどぬ~るスプレー」といった商品で有名な、医薬品や医薬部外品を製造、販売する会社です。一方の梅丹本舗は、創業94年の老舗メーカーであり、「梅丹UG」や「古式梅肉エキス」といった健康食品を販売しています。

小林製薬は健康食品事業にも力を入れていて、食物繊維を簡単に摂取できる「イージーファイバー」や健康茶の「杜仲茶」をこれまでも譲り受けてきました。今回の子会社化も健康食品事業の強化の一環であり、小林製薬が保有するマーケティング力や販売力、研究開発力を活かして売上の拡大を目指すとしています。

2.塩野義製薬株式会社による宝ホールディングスの宝ヘルスケア株式会社の吸収合併と、タカラバイオ株式会社の健康食品事業の承継

2.塩野義製薬株式会社による宝ホールディングスの宝ヘルスケア株式会社の吸収合併と、タカラバイオ株式会社の健康食品事業の承継
引用元:http://www.shionogi.co.jp/

2019年1月、塩野義製薬株式会社の子会社であるシオノギヘルスケア株式会社は、宝ヘルスケア株式会社の全株式を取得して吸収合併し、またタカラバイオ株式会社の健康食品事業を吸収分割によって承継しました。

塩野義製薬は医薬品業界では国内9位の売上であり、子会社であるシオノギヘルスケアは一般用医薬品を中心としたヘルスケア事業を展開しています。タカラバイオと宝ヘルスケアは宝ホールディングスの子会社であり、健康成分であるフコイダンを含む商品を開発、販売しています。

シオノギヘルスケアは、将来的に更に加速すると見込まれる超高齢化社会に向けて、シニア層の健康増進に貢献する事業の強化を行なっています。宝ヘルスケアが販売するフコイダンを含む健康商品は、シニア層に支持されていて、今回のM&Aにより高齢者向けの健康食品事業を強化できるとしています。

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▷関連記事:吸収分割とは?吸収分割の基礎と人的分割・物的分割の違いを図解で説明

3.株式会社ユーグレナによる株式会社フックの子会社化

3.株式会社ユーグレナによる株式会社フックの子会社化
引用元:https://www.euglena.jp/

2018年4月、株式会社ユーグレナは、健康食品を販売する株式会社フックの全株式を約18億円で取得して完全子会社化しました。

子会社化の際、ユーグレナはフックの発行済株式の一部を取得し、その後ユーグレナを株式交換完全親会社、フックを株式交換完全子会社とする簡易株式交換により完全子会社化しました。

ユーグレナは、社名にもなっているユーグレナなどの微細藻類の研究開発やユーグレナを活用した食品、化粧品の製造、販売を行っています。フックは自社ECサイトを通じて、天然・自然由来の素材を使った健康食品やサプリメントを販売しています。

ユーグレナは、近年M&Aによる事業拡大に注力しており、2016年12月には機能性食品を販売する株式会社クロレラサプライを子会社化し、2019年6月には健康食品、化粧品などをオンライン専門で販売する株式会社MEJを子会社化しています。

この子会社化により、ユーグレナは、フックの主力顧客層である20~30代の女性にも販路を拡大します。また、ユーグレナが持つマーケティング力や商品開発力、資金力とフックが持つブランド力を組み合わせることで、更なるヘルスケア事業の拡大が可能になるということでM&Aを実施しまし
た。

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クロスボーダーM&A事例4選

1.味の素株式会社による、アメリカの液体調味料会社モア・ザン・グルメ・ホールディングス社の株式取得

1.味の素株式会社による、アメリカの液体調味料会社モア・ザン・グルメ・ホールディングス社の株式取得
引用元:https://www.ajinomoto.com/jp/

2019年8月、味の素株式会社は、子会社である味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ社を通して、アメリカのモア・ザン・グルメ・ホールディングス社(以下MTG社)の株式のうち50.1%を約38億円で取得しました。

味の素は国内最大手の調味料メーカーであり、うま味調味料の「味の素」をはじめ、幅広い調味料や加工食品を販売しています。一方MTG社は肉や野菜を煮込んだだし汁であるブロス・ソースなどの液体調味料事業を展開しており、アメリカの生活者の嗜好や食生活に合わせた高価格帯の調味料
に強みを持っています。

味の素は、自社が持つ素材や調味料を組み合わせながら、MTG社が持つ加工食品メーカーや外食企業とのつながりを活用して、北米市場において販路を拡大していくとしています。

2.不二製油株式会社によるアメリカのBLOMMER CHOCOLATE COMPANY社の子会社化

2.不二製油株式会社によるアメリカのBlommer Chocolate Company社の子会社化
引用元:https://www.fujioil.co.jp/

2019年1月、不二製油株式会社がアメリカの業務用チョコレート製造会社であるBlommer Chocolate Company社(以下Blommer社)の全株式を約848億円で取得して子会社化しました。

不二製油は植物用油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4事業を展開しており、業務用チョコレート業界では世界第4位となっています。Blommer社は業務用チョコレート業界では世界第3位であり、北米を中心に世界の菓子会社に対してチョコレートやココア豆を販売しています。

不二製油は、これまでもブラジルやマレーシア、オーストラリアの業務用チョコレートメーカーとのM&Aを行って、業務用チョコレート事業を拡大しています。子会社により、不二製油は世界第3位の業務用チョコレートメーカーとなり、チョコレートの売上高も約800億円から約1,800億円となる見込みです。

不二製油は、自社が持つ油脂技術をBlommer社に導入するほか、原料調達を一本化してチョコレート事業を強化するとしています。また、不二製油の油脂などの他の商品もBlommer 社が持つ販売網を活用して、北米での販売拡大に繋げる見込みです。

3.山崎製パン株式会社によるアメリカのBAKEWISE BRANDES社の子会社化

3.山崎製パン株式会社によるアメリカのBakewise Brandes社の子会社化
引用元:https://www.yamazakipan.co.jp/

2016年7月、山崎製パン株式会社はアメリカのBakewise Brandes社の全株式を取得して子会社化しました。

山崎製パンは、国内のパン業界において売上ベースのシェアのうち7割以上を占めていて、食パンや菓子パン、和菓子なども販売しています。また2006年7月には菓子メーカーの株式会社東ハトを172億円で子会社化しており、製菓事業も展開しています。

Bakewise Brandes社は、ニューヨーク州に拠点を構え、ベーグルを製造してニューヨークなどアメリカ東部を中心に量販店で販売しています。また、手作りに近い食感のパンを製造し、ホテルやレストラン向けに販売するTom Cat Bakery社を子会社として保有しています。

山崎製パンは、Bakewise Brandes社のベーグル事業とTom Cat Bakery社のパン事業を子会社化することで、アメリカでの事業規模の拡大を目指しています。また、両社がもつ製パン技術を日本での商品開発に生かすとしています。

4.アサヒグループホールディングス株式会社によるイギリスのFULLER, SMITH & TURNER P.L.C.社のビール・サイダー事業取得

4.アサヒグループホールディングス株式会社によるイギリスのFuller, Smith & Turner P.L.C.社のビール・サイダー事業取得
引用元:https://www.asahigroup-holdings.com/

2019年4月、アサヒグループホールディングス株式会社は、子会社のAsahi Europe Ltd.社を通して、イギリスのFuller, Smith & Turner P.L.C.社(以下Fuller’s 社)のビール・サイダー事業を約370億円で取得しました。

アサヒグループホールディングスは、ビール業界において国内トップの市場シェアを占めていて、「スーパードライ」などのブランドで知られています。Fuller’s社は、ロンドンを中心に高い認知度を誇るビールブランドの「London Pride」や「Frontier」、サイダーのブランドである「Cornish gold cider」などを保有しています。

アサヒグループホールディングスは、2016年にイタリアの「Peroni」やオランダの「Grolsch」といったビールブランド、イギリスの酒類販売会社を譲り受けていて、2017年には中東の5ヶ国のビール事業会社を譲り受けるなど、積極的に海外M&Aを行っています。

今回のM&AにおいてもFuller’s 社が持つ海外ブランドを獲得しており、高級ビールのブランドを軸として欧州事業を強化するとしています。また、Fuller’s 社はロンドンを中心として380軒以上のパブやホテルを有しており、元よりアサヒグループが保有している「スーパードライ」などのブランドの販路を拡大する予定です。

さらに、2019年7月には、Anheuser-Busch InBev SA/NV グループのオーストラリア事業であるCUB事業を約1兆2,096億円で譲り受けることを発表しており、今後もクロスボーダーM&Aを積極的に行っていくとみられます。

▷参考:成約事例 | fundbook(ファンドブック )M&A仲介サービス

まとめ

食品業界では、事業強化や事業の多角化、海外進出やブランド獲得など、さまざまな目的で多くのM&Aが実施されています。また、異業種の企業が日本国内の高齢化に備えて、健康食品部門の会社を譲り受けるケースもみられます。

現在の収益を伸ばしたい、または将来的な市場規模縮小に対応したいと考えている企業にとって、M&Aは有力な選択肢といえるのではないでしょうか。

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