経営・ビジネス

2024/02/09

企業の収益性を測るEBITDAとは?M&AでEBITDAが使われる理由

企業の収益性を測るEBITDAとは?M&AでEBITDAが使われる理由

M&Aでは、企業価値をできるだけ正確に評価することが必要となります。正確な評価を行うために、さまざまな客観的な指標が使われますが、そのひとつに「EBITDA」があります。
この指標は、日本企業のみならず、会計基準の異なるグローバル企業の評価においても有益とされています。この記事では、EBITDAについて詳しくご紹介します。

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そもそもEBITDAとは?

EBITDAとは、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の略語です。日本語にすると、「金利と税、有形・無形の固定資産の償却費を差し引く前の利益」という意味になります。

E=earning(利益)
B=before(前)
I=interest(金利)
T=tax(税)
D=depreciation(建物や設備など、有形固定資産の償却費)
A=amortization(ソフトウェアや“のれん”など、無形固定資産の償却費)

EBITDAは、一般的には「イービットディーエー」や「イービッター」などと呼ばれています。M&Aでは、企業の価値を測るためにさまざまな指標が用いられますが、EBITDAもそのひとつです。

企業の価値や業績を表す指標としては、本業での儲けを示す営業利益がよく使われます。しかし、営業利益は、企業が持つ有形・無形の固定資産の減価償却費を差し引いた数値です。ですから、その企業が稼いだキャッシュの額とは一致しません。そこで使われるのが、このEBITDAなのです。

このEBITDAという指標は、企業価値評価(バリュエーション)の際、アプローチ手法の1つである「マーケットアプローチ」で活用されます。

▷関連記事:企業価値評価の一つ、マーケットアプローチとは?よく使われる計算方法やシミュレーションも解説

EBITDAは、キャッシュの流出入のみで計算した利益

「EBITDA」はキャッシュの出入りのみに注目し、設備投資の額の大小やタイミングに左右されずに「会社が利益を上げているか」を正確に測ることができる指標です。

利益の上下を測るための類似の指標として「営業利益」が挙げられますが、これには指標として使うにはデメリットがあります。会計上、設備投資した額は一定期間に償却されていき、その額は年次を追うごとに少なくなっていきます。そのため、売上が上昇していなくとも相対的に営業利益は上昇するため、利益が上がっているかのように錯覚してしまいます。
例えば、通信や鉄道などの社会的なインフラを担っている企業や製造業などでは、多額の設備投資が必要であり、その償却費によって営業利益が相殺されてしまうことが多々あります。これでは、企業の収益状況を正確に測ることはできません。

そのため、償却費に左右されない「キャッシュの出入り」のみに着目して算出したEBITDAが、企業評価の指標として使われるのです。

EBITDAの計算方法

EBITDAを算出する上では複数の計算方法があります。

EBITDAの算出式1


EBITDA=経常利益+利息(支払利息-受取利息)+減価償却費

特にまだ起業して間もないスタートアップ企業や、事業拡大に積極的な企業での新規事業部などでは、資金調達のための借入金が大きくなりがちで、その利息の支払いが会社の利益を目減りさせることになります。そのため、そういった利息を差し引きした計算式になります。
減価償却費には建物や設備機械はもちろん、ソフトウェアやいわゆる「のれん代」のような、無形資産も含まれます。

▷関連記事:M&Aで必ず知っておくべき「のれん代」を徹底解説

また、営業外の損益や特別損益などがない場合は、次のようなシンプルな式で計算することもできます。

EBITDAの算出式2


EBITDA=営業利益+減価償却費
営業利益は、税や利息を差し引く前の額ですから、これに有形・無形の固定資産の減価償却費を加算して、簡単にEBITDAが計算できる場合もあります。
このようにEBITDAは、どのような数値を用いて計算するのか、ケースバイケースであるため、注意が必要です。

なお、実務的には、営業外損益・特別損益に一時的な損益や事業外の損益が含まれることが多いため、便宜的に営業利益+減価償却費で計算されることが多くなっています。

EBITDAとEBITはどう違う?

EBITDAとよく似た言葉に「EBIT」があります。こちらは、減価償却費を加えずに計算します。

EBITの算出式


EBIT=経常利益+利息(支払利息ー受取利息)

EBITはEBITDAの代わりとして、会社が継続的な投資をしている場合や、貸借対照表を基準として業績を見るにあたって活用されます。前者の場合、減価償却費を加えると正しい数値がでない(ミスリーディングが生じてしまう)ため。後者の場合、減価償却費を加えないと精緻な値が出ないため必要です。

また、会社の業績を表す指標として賞与の算定に応用されたり、「今期はこれだけ利益を上げた」というように、従業員への意識付けに使われたりすることもあります。

EBITDAを指標に使うメリットは?

EBITもEBITDAも似たような指標のように思われますが、M&A関連ではEBITDAのほうがよく使われています。もちろんそれには明確な理由があります。M&Aにおいて、EBITDAを指標に使うメリットとは何なのでしょうか?

設備投資の大小やタイミング計画に影響されず、企業の収益性を正確に見られる

製造業などでは大規模な設備投資が欠かせません。そのため、減価償却費を差し引いた営業利益だけに着目すると、「正確な利益」が見えにくくなります。
また継続した投資がない場合には、当初の投資に対する減価償却費は年々減少していくため、相対的に営業利益が増えていき、営業利益だけに着目すれば業績が伸びているように見えてしまいます。しかし、EBITDAを指標とすれば、そうした錯覚を防ぐことができます。

借入金や税の影響を排除して比較できる

成長期にある企業は、事業拡大のために借入金が大きくなることがあります。それによる偏差を除去できるEBITDAは、企業の実力をより正しく反映した指標であるといえます。また、税の影響を排除できることから、税制の異なる海外の企業と比較する場合にも有効です。他にも、借入で調達した場合と株式で調達した場合の収益差も排除できます。

投資の償却方法の違いを排除して比較できる

減価償却の計算法には「定額法」と「定率法」があります。定額法は毎年同じ金額を費用に計上して減価償却する方法で、定率法は残っている資産の価値に対して一定の割合で減価償却する方法です。どちらの方法を選ぶかによって、経理上の数値は変わってきます。
しかし、EBITDAを使えば、そうした企業ごとの計算法の違いを排除して企業の収益性を比較することが可能になります。

経年比較ができ、規模の異なる会社間で比較できる

EBITDAは企業の現時点での収益性を評価するほか、数年次にわたる過去からの経年比較や分析を行う際にも有益です。また、EBITDAは「キャッシュによる利益」を表す指標ですから、それを売上高で除することで、キャッシュによる収益率「EBITDAマージン」を求めることもできます。

EBITDAマージンの算出式


EBITDAマージン=EBITDA÷売上高

EBITDAマージンを使えば、規模の異なる企業の収益性の高低や事業でどれだけのキャッシュを生み出しているのかを比較することもできます。

EBITDAを活用する際の注意点

EBITDAを活用する際に注意すべき点について解説します。

過剰な設備投資による損失はマイナス要素として認識できない

EBITDAの算出式「営業利益+減価償却費」における「減価償却費」は、工場の新設などといった設備投資を数年間に分割し費用計上され、「将来生み出される未来の利益」と解釈することができます。

しかし、利益を生み出すために行った設備投資が結果的に過剰なものとなり、損失となってしまう場合があります。EBITDAではこれを認識することができません。

過剰な設備投資を行うと、基本的には売上に対する減価償却費の比率が高くなります。投資が一定期間後に必ずしも価値を生み出すとは限らない点は、EBITDAを活用するときに注意が必要です。

税金に注意

EBITDAは、算出するときに税制や税率の影響を排除できるというメリットがあります。しかし、裏を返すと、EBITDAには支払税金分が含まれているため、実際の利益はその分だけ小さくなるということにも注意しなければなりません。

EBITDAとフリーキャッシュフローの違いは?

企業の収益性を測るEBITDAとは?M&AでEBITDAが使われる理由

このように、企業の業績をより実際と近い数値で測る指標としては、EBITDAはとても使いやすく、しかも優秀なものです。しかし、注意するべきポイントもあります。それは、「EBITDAはフリーキャッシュフロー(FCF)とは違う」ということです。

EBITDAは、キャッシュだけの利益を表すとはいうものの、その利益を生むためには、運転資金を確保して、それを的確に投下したり、設備投資に現金を投入したりといった作業が不可欠です。また、収益が高まれば、当然のことながら税金を納めなくてはなりませんが、これも現金による支払いとなります。

EBITDAでは、これら企業存続のために欠かせないコストが考慮されておらず、その点で「フリーキャッシュフロー」とは異なるものです。EBITDAは、いわば「投資による効果」のうちの効果の部分だけを切り取ったものです。
それだけで「この会社にどれほどの『利益を生み出す力』があるか」を断定することはできません。EBITDAで収益性を測る際には、そうした前提を踏まえた上で評価することが大切です。

EBITDAを用いて回収までの時間を割り出すことも

事業あるいは企業そのものを譲渡・譲受するM&Aでは、その企業や事業なりの「稼ぐ力」の指標としてEBITDAがよく使われます。さらに、その企業の現在の価値とEBITDAとの比率を見ることで、「支払う譲受コストを何年で回収できるか」を示す指標としても用いることができます。これは、「EV/EBITDA倍率」と呼ばれ、次の式で割り出すことができます。

EV/EBITDA倍率の算出式

EV/EBITDA倍率=EV÷EBITDA

EVは、その企業の時価総額にネットデット(純有利子負債)を足した値であり企業価値と呼ばれます。EV/EBITDA倍率が小さければ小さいほど、その企業が割安だと評価されます。

M&AでEBITDAを有効に活用する

このように、EBITDAは企業の収益性を測るための有用な指標として用いることができます。規模の異なる企業同士を比較したり、税制をはじめとする法制度の異なる海外法人であったりしても、その実質的な力を測定することができます。グローバル化がいっそう進行している近年では、ますますその有用性は高まっているといえるかもしれません。

しかし、たとえEBITDAを使ったとしても、それだけで企業の実力を精緻に測定できるわけではありません。EBITDAが算出するのは、あくまでも過去から現在までの企業の力であって、今後その企業がどのような活動をし、業界内での地位をどのように上げていくのかまでは、予測することができないためです。

M&Aでは、譲渡企業は「高く譲渡したい」と考え、譲受企業は「安く譲受したい」と考えます。双方の思惑は相反しているように見えますが、将来的な展望を見極め、その上で適値でM&Aをしたいという点では違いはありません。そのために、現在の実力を推し量る指標として、EBITDAが使われているのです。

まだ見ぬ未来を寸分違わず予測することは誰にもできませんが、その業界を熟知し、数多くのM&Aを手掛けた経験を持つ専門家であれば、EBITDAをはじめとする多種多様な手法を用いて、現状を正しく把握し、より精緻な未来を予測することもできるはずです。M&Aを考えるならば、まずはそうしたプロフェッショナルに相談し、手を借りることです。それこそが、納得のいくM&Aを実現する、最も確実な近道といえるでしょう。

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