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2025/01/22

TOBの手続きを行う手順とは?公開買付けの実施方法や株主側の対応・手数料も解説

TOBの手続きを行う手順とは?公開買付けの実施方法や株主側の対応・手数料も解説

上場企業によるTOBは日々活発に行われています。例えば、2018年の事例ではソフトバンクグループ株式会社によるヤフー株式会社へのTOBや、TSUTAYAなどを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社による株式会社キタムラへのTOBなどは、多くのメディアで取り上げられました。上場企業同士でM&Aを行う場合、TOBは手段の1つになり得ます。

TOBを実際に行ううえでは、法律により定められたプロセスに沿って正しく行う必要があります。

本記事では、TOBの概要や買付けを行う会社(以下、買主)側の手続きの流れや、既存株主側の対応・手数料も紹介します。

M&Aの概要を知りたい方は下記の記事をご参照ください。
▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】

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TOBとは

TOB(Take-Over Bid)は「(株式)公開買付け」という制度です。これは期間や価格、買取り株数を公告※1したうえで、不特定かつ多数の既存株主から証券取引所を通さずに株式を買付ける行為のことを指します。

※1.公告:国や公共団体が一般の人にとある事項を広く知らせること。

▷関連記事:TOBとは?TOBのメリットとデメリット、友好的・敵対的TOBの意味や防衛策まで解説

TOBの応募を行う目的

TOBを行う主な目的は、経営権の取得です。株式の保有率は、以下のように経営の意思決定を行う重要な要因となります。

・33.34%超の保有:重要な決定事項を拒否できる
・50%超の保有:社長などの役員を選任できる
・66%超の保有:会社の合併や解散などの意思決定を行うことができる

また、大規模な株式の買付けは、会社の支配権などに影響を与えるため、透明性・公平性を確保するためにTOBで実施する旨が定められています(金融商品取引法第27条の2)。

・多数の株主(60日間で10名超)からの買付け、その後の所有割合が5%を超える場合
・著しく少数の株主(60日間で10名以内)からの買付け、その後の所有割合が3分の1を超える場合

TOBが必要となる上記の条件は、「5%ルール」「1/3ルール」とも呼ばれています。

5%ルール、1/3ルールについて詳しく知りたい方は下記関連記事もご覧ください。

▷関連記事:TOB(株式公開買付け)の際に知っておきたい5%ルールと1/3ルール、アメリカや英国・EUのルールを紹介

TOB(株式公開買付け)の手続き

この項目ではTOBの手続きの流れを解説していきます。手続きの流れは以下になります。

1.公開買付開始公告と内閣総理大臣への公開買付届出書の提出

公開買付けを開始するにあたって、買主は以下のような内容を公告しなければなりません(金融商品取引法第27条の3第2項他)。

・社名
・代表者名
・会社の所在地
・株の買付けを行う旨や目的
・価格
・買付予定株式の数
・買付期間
・買付後における買主の株券等の所有割合や対象の会社

政令※2によって、公告の方法はWeb上(EDINET)での公告もしくは日刊新聞紙掲載のいずれかの方法によるものとされています。

公開買付けでは不特定多数の株主から確実に買付けるため、目標の持ち株率まで取得するために売主や既存株主にとって魅力的な価格を設定する必要があります。証券取引所を通した買付けと比べて、開始時点の市場株価の20~50%割増し、平均して約30%割増しの株価で取り引きされることが一般的です。これを「プレミアム価格」といいます。

また、買主は公開買付けを行った日に内閣総理大臣へ公開買付届出書と添付書類を提出しなければなりません。公開買付届出書には買付価格、買付予定の株券などの数、公開買付けの目的などに加えて、その他内閣府令※3で定める事項を記載します。

公開買付届出書の提出をもって、売主や既存株主による売付け申込みの勧誘などが可能になり、公開買付期間が開始します。公開買付期間は、20~60営業日と定められています。これは既存株主が株式を売却するか、保有し続けるか検討するために必要な期間として設けられています。

※2.政令:法律の規定を実行するために法律等の委任に基づき内閣が出した命令のこと。
※3.内閣府令:法律を実施するために法律等の委任に基づき内閣総理大臣が発した命令のこと。

2.売主の意見表明報告書の提出と回答

売主は、公開買付けの公告が行われてから10営業日以内に、公開買付けに関する意見表明報告書を内閣総理大臣に提出しなければなりません。また、提出後は意見表明報告書の写しを直ちに買主および金融商品取引所等に送付しなければなりません。

この意見表明報告書には、売主からの公開買付けに関する意見の他、質問などを記載することができます。そして、報告書に質問が記載されている場合は、買主は5営業日以内に回答を質問回答報告書に記し、内閣総理大臣へ提出しなければなりません。また、質問回答報告書の写しを提出後、直ちに売主および金融商品取引所等に送付する必要があります。

なお、意見表明は義務となっています。これは買主・売主双方の主張・反論を明確に示すものであり、株主や他の投資家が投資判断を行ううえで非常に重要な資料となるためです(金融商品取引法第27条の10第1項他)。

3.公開買付説明書の交付

買主は、公開買付届出書と同じ内容に加え、公益または投資家保護のために必要かつ適当とされる事項を記載した公開買付説明書を作成し、売付けを行おうとする株主に対し、あらかじめまたは同時に交付します。

4.公開買付報告書の提出

買主は公開買付期間最終日の翌日に、公開買付けに係る応募株式等の数、その他内閣府令で定める事項を公告または公表したうえ、同日にこれらの事項を公開買付報告書に記載して内閣総理大臣へ提出しなければなりません。この公開買付報告書の提出によって、TOBの結果を報告する形になります。公告を行った日に公開買付報告書を内閣総理大臣に提出することで、公開買付けの手続きは終了します。

手続き終了時点で、買主が総議決権の過半数の株式を有していれば会社支配権を獲得したことになります。また、総議決権の3分の2以上の株式を有していれば、株主総会の特別決議事項において単独で可決することができます。

5.公開買付撤回届出書の提出(中止したい場合)

通常、公開買付開始公告後においては自由に公開買付けを撤回することはできません。

ただし、以下のケースでは、公開買付撤回届出書に理由を記載して提出することで、公開買付けの撤回が認められています。

・売主にとって業務または財産に関する重要な変更その他の公開買付けの目的の達成に重大な支障が生じ、かつ公開買付開始公告・公開買付届出書にこれらの事情が生じた場合にあらかじめ条件として示していた場合
・買主に政令で定める重要な事情の変更が生じた場合

なお、中止の理由を明確にするのは、既存株主等の保護のためです。

既存株主によるTOBへの応募と3つの選択肢

既存株主によるTOBへの応募

TOBが公表されるとともに、日刊新聞紙に公告が掲載されます。この公告には以下の5つの項目が記載されます。

・TOBによって株式の公開買付けを実施する目的
・買付価格
・買付予定の株数
・買付期間
・買付けの決済を行う金融商品取引業者等(多くの場合、買付会社の主幹事証券会社です)
(発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令10条)

これらの情報を元に、既存株主は下記3つの選択肢から選ぶことになります。

・TOBに応じて株式を売却する
・TOBに応じず、株式市場で株式を売却する
・TOBに応じず、そのまま保有する

TOBに応じて株式を売却する

公告で明らかにされた条件に既存株主が納得する場合、公告に記載されている証券会社などを通じて株式を売却します。

この時、売却を検討する株主が公開買付けを行う証券会社の口座をすでに持っており、株式をそこに預けていれば手続きは簡単に済みます。具体的には、所定の公開買付応募申込書に必要事項を記入し、期日までに証券会社に提出することで完了します。

一方、公開買付けを行う証券会社に口座を持っていない場合、口座を新規開設後、対象株式を移管してから上記の売却手続きを行うことになります。

証券口座の開設にはおおよそ1〜2週間程度かかるため、口座がある場合と比べて期間が長くなります(手続きは証券会社によって異なるので、詳しくは証券会社へ直接お問い合わせください)。

仮に公表された買付予定の株数が発行株数の100%に近いものだとします。TOBが完了した後に売主が上場廃止になる場合、既存株主はTOBに応じた方が無難であると考えられます。もし応じなかった場合、株式を売却・換金する機会が大幅に少なくなる恐れがあるためです。

TOBに応じず、株式市場で株式を売却する

買付予定の株数が発行株数の100%以下に定められている場合(割合は買主の目的によって変動します)では、既存株主がTOBに応じたとしても抽選に外れる可能性があります。そのため、TOBに応じず、株式市場で株式を売却する方も少なくありません。

TOBの発表後、買付期間中の市場株価は、買主によって定められた買付価格に近づくように急騰することが多く、証券取引所を通して売却してもTOBに申し込んだ場合と同様の価格になる可能性が高くなります。

そのため、既存株主はTOBに応じず株式市場で株式を売却する判断をすることも、十分検討の余地があります。

その後、TOBの買付期間が終了すると、TOBが発表される以前の価格水準まで市場株価が戻ることが一般的です。そこで、あえてTOBに応じずに株式市場で売却するという選択肢が挙げられます。

TOBに応じず、そのまま保有する

会社が上場廃止にならず、そのまま存続する場合、既存株主はTOBに応じず、そのまま株式を保有する選択肢を取り、次の売却の機会を待つこともできます。この場合、手続きは何も必要ありません。

ただし、TOBに応じず、そのまま保有する場合は、以下のようなリスクがあります。

・流動性や換金性の低下のリスクがある
・スクイーズアウトのリスクがある

スクイーズアウトとは、TOB成立後に買収する側の株主または企業が一定の割合を超えた場合、個人投資家が保有する少数株式を強制的に取得することです。スクイーズアウトが行使された場合、TOBに応じなかったとしても株を売却しなければなりません。

また、上場廃止後に売却する場合、他の株取引との損益通算ができないことや、確定申告が必要になることなど、デメリットもあります。もし、TOBに応じず、そのまま保有する場合は、リスクやデメリットを把握したうえで検討することが大切です。

既存株主がTOBに応募する際の手数料

既存株主がTOBに応募する場合またはスクイーズアウトが実施された場合、手数料や諸経費は発生しません。

一方、TOBに応じず、株式市場で売却する場合は、証券会社ごとに売却手数料が発生します。なお、株式の売却によって譲渡益が生じた場合は、売却のタイミングに関係なく、譲渡益に対して20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金がかかります。

まとめ

TOBを行う際は、法律によって定められたプロセスを正しく踏む必要があります。

提出する書類を正しく理解するのはもちろんのこと、TOBを成功させるうえでは、既存株主がどのような状況で、どのように判断をするのか買主も正しく理解しておく必要があります。手続きと株主の考えを理解したうえでTOB実施を検討しましょう。

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