自社譲渡や他社譲受のためにM&Aを検討されている方の中には、「ティーザー」という用語を目にした方もいるのではないでしょうか。
ティーザーとは、譲渡企業が譲受企業とマッチングする過程において、重要な役割を果たす資料のことです。
ただし、作成するにはいくつかの注意が必要となります。
本記事ではティーザーの概要や記載する内容、作成方法や作成時の注意点を解説します。
ティーザーの用語の意味を理解したい方や作成の方法を知りたい方はぜひご一読ください。
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M&Aのティーザーとは
M&Aのティーザーとは、企業が特定されない範囲で企業の業種やあらましなどを記載した、匿名の企業概要書のことです。
英語のtease(じらす)に由来しており、広告におけるティーザー広告(広告主名や商品名、ブランド名を明らかにせず、注意をひこうとする広告)と同様になります。
M&Aの初期段階では、譲渡企業はM&Aアドバイザーを介し、匿名で譲受企業に打診します。譲渡企業にとって、ティーザーは譲受企業の初期的な関心・興味の有無を確認できる大切な書類です。
一方、譲受企業は、ティーザーによりどのようなM&Aの候補先があるか概要を知ることができます。
ティーザーとノンネームシートの違い
企業概要書として「ノンネームシート」という資料を扱う場合もあります。ティーザーとノンネームシートを区別する場合、ティーザーはノンネームシートに比べ、より多くの情報を持つ書類とされる傾向にあります。具体的には、ノンネームシートはA4用紙1枚程度の分量、ティーザーは3~10枚程度の分量という形です。
この場合、ノンネームシートは同業他社にM&Aを提案するような最低限の情報が必要なケースで用いて、ティーザーは同業以外、つまり多くの情報量が必要なケースで用いるなどの使い分けがなされます。
ただし、多くのM&Aサービスでは、ティーザーとノンネームシートを同様に扱っており、A4用紙1枚程度の情報量となるのが一般的です。
M&Aのティーザーに記載する内容と作成方法
M&Aのティーザーには、事業内容やエリア、従業員数や売上高などの定量的な情報と、譲渡を希望する理由や企業の特徴・強みなどの定性的な情報を記載します。
以下では、一般的なティーザーに記載される内容とその作成方法を解説します。
▷事業内容
事業内容の欄は、企業を特定されない範囲で自社の事業を記載する項目です。詳細な事業内容を記載する必要はなく、大分類、中分類までを記載します。
例えば、AIソリューションや業務改善パッケージなどを取り扱うIT企業の場合、大分類では情報サービス業、中分類ではシステム開発事業などと記載する方法があります。
▷エリア
エリアの欄は、企業の所在地を記載する項目です。多くのM&Aサービスのティーザーでは、エリアの欄には関東や関西など、地域までをおおまかに記載します。
これは都道府県や市区町村など詳細な所在地を記載することにより、企業が特定されるのを防ぐための措置です。
なお、エリアと事業内容などの組み合わせにより企業が特定されやすくなるケースもあるため、対象が絞られ過ぎないか注意を払う必要があります。
▷従業員数と売上高
従業員数と売上高の欄は、譲受企業へ自社の事業規模がどのくらいかを伝える項目です。一般的に、従業員数は「約〇〇名」、売上高は「約〇〇千円」というように、規模感がわかる範囲で記載します。
より具体的な数字は、秘密保持契約(NDA)を結び、ネームクリア(企業名の開示)の段階となった際に開示します。あくまで譲受企業がおおまかな事業規模をイメージできる範囲が適切です。
▷譲渡を希望する理由
譲渡を希望する理由の欄は、「なぜ譲渡をしたいのか」を記載する項目です。従業員数や売上高などの定量的な情報と異なり、定性的な情報を記載することになります。
記載のポイントは「簡潔に」表現することです。例えば、「事業発展のため」や「事業継承のため」、「後継者不足のため」などのように、理由が端的に判断できる様式で記載してください。
▷想定譲渡スキーム
想定譲渡スキームとは、どのように企業を譲渡するかのM&Aの手法のことです。スキームには、株式譲渡や事業譲渡、会社分割や株式交換などがあります。
最終的なスキームは実際に譲受企業と交渉し、M&Aアドバイザーと相談の上決定するため、現時点で想定する譲渡スキームを記載してください。スキームについて不明な点がある場合は、担当のアドバイザーに相談してみましょう。
また、こちらの記事で手法を含むM&Aについて分かりやすく解説しているため、興味のある方はぜひ参考にしてください。
▷企業の特徴や強み
企業の特徴や強みは、譲受企業へ大きなアピールができる大切な項目です。特定されない範囲で、自社の持つ強みを具体的に記載します。
ただし、記載に関しては難しい点もあります。企業の特徴や強みをアピールするには、具体的な情報を記載し、他企業と差別化を図る必要があるためです。
漠然とした内容を記載した場合、譲受企業は企業に対して明確なイメージを持てず、強い興味・関心を抱くことができません。一方、具体的すぎる情報は、企業を特定されるリスクがあります。
したがって、企業を特定されない範囲で魅力を伝えるバランスが重要です。例えば、立地が売り上げに繋がる飲食業であれば「都内一等地の好立地」、土木工事業であれば「官公庁や民間企業からの受注実績多数」と記載するなど、特定されない範囲で譲受企業側が興味を抱くような工夫が必要となります。
▷その他の記載項目
場合によっては、希望譲渡金額や従業員の平均年齢などをティーザーに記載するケースがあります。その他、EBITDA(財務分析上の1指標)や損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)を記載する欄のあるティーザーもあります。
記載項目は利用するM&Aサービスによって異なるため、各サービスの様式に従いながら記載してください。
M&Aのティーザー作成時に注意すること
最後に、M&Aのティーザーを作成する際に注意したいポイントを解説します。
ティーザーは、譲受企業が譲渡企業のことを最初に知るきっかけとなる場合も多い資料です。ティーザーの役割を考慮し、より良い内容のティーザーを作成しましょう。
▷企業を特定する情報がないか確認する
M&Aの初期段階でティーザーが用いられるのは、秘密保持契約(NDA)を締結する前の段階で情報漏洩が生じるリスクを防ぐためです。打診の段階でM&Aを検討している情報が漏れてしまっては、付き合いのある取引先や金融機関から不信感を抱かれる危険性があります。
したがって、ティーザーを作成する際には、企業が特定される情報がないかしっかりと確認しましょう。
例えば、エリアの欄に「渋谷駅から徒歩1分内のドラッグストア」と記載するなど、該当する企業が極端に絞り込まれる表現は避けるほうが無難です。
▷必要に応じて具体性を加える
ティーザーは、譲受企業の初期的な関心を得る役割を持っています。
譲渡企業の魅力が伝わるティーザーを作成できれば、譲受企業は譲渡企業の価値をよく理解した上で交渉に臨むことができ、M&Aが成功する可能性を高められるかもしれません。
そのためティーザーには、必要に応じて具体性のある情報を加え、譲渡企業の魅力を伝える工夫が大切です。
例えば企業の特徴や強みを記載する場合に、「顧客から高評価を得ている」などアバウト過ぎる表現にすると、譲受企業は具体的なイメージができません。企業が特定されない範囲で魅力的なアピールを記載するようにしましょう。
まとめ
M&Aのティーザーとは、企業が特定できない範囲で企業の事業内容や企業情報の概算値などを記載する、匿名の企業概要書のことです。
M&Aのティーザーには、事業内容やエリア、従業員数や売上高などを記載します。情報漏洩のリスクに配慮しつつ、譲渡企業の魅力をアピールできる内容とすることが大切です。
ティーザーの作成に難しさを感じているなら、fundbookまでご相談ください。fundbookでは、アドバイザーが従業員数や売上高など譲渡企業からいただいた定量的な情報をもとに基礎的な項目を記載し、特定されない範囲で譲渡企業の魅力を伝えるティーザー(ノンネームシート)を作成します。
また、fundbookは厳重な情報セキュリティ体制を整えており、財務情報をお預かりする場合は秘密保持契約を結びます。
記載された情報を閲覧されたくない企業がある場合には、事前に閲覧できないよう指定することも可能です。
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