中小企業経営者の高齢化が進展
日本でも少子高齢化、特に高齢化の問題が叫ばれて久しくなっています。2015年の国際連合の調査では、日本における60歳以上の人口比率は33.1%となっており、ドイツの27.6%、アメリカの23.0%と比較しても高齢化が進んでおります。この33.1%という数値は2050年には42.5%にまで上昇し、日本人口の半数が60歳以上ということになる日もそう遠くありません。
そのような環境の中で、日本の企業の中心である中小企業の経営者の年齢も上昇を続けています。帝国データバンクの調査によると、1978年に53歳だった中小企業経営者の平均年齢は徐々に上昇を続け、2000年には57歳となり、2010年には59歳となっています。更には、2012年から団塊の世代が65歳を迎え始め、これから一気に高齢化が進展してくると考えられています。
その要因としては、経営者が引退をして後継者へ交代する割合、つまり経営者交代率が減少していることが挙げられます。この経営者交代率は、1975年から1985年までの平均値は4.97%で推移をしていましたが、バブル崩壊以降で減少傾向となり、2000年から2011年の平均値は3.48%にまで減少をしています。後継者の子息が一流の企業や士業に努めていて会社を継がないケースが増えているためです。これらの影響から、中小企業経営者の平均年齢は上昇を続けています。
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経営者のボリュームゾーンは66歳
それに伴って経営者の年齢のボリュームゾーンも上昇を続けています。『中小企業白書2016年版』によれば、経営者の年齢のボリュームゾーンは1995年に47歳であったものが、2000年代に入って2000年52歳となり、2015年には66歳となっています。
業態別で見てみると、製造業で65歳以上の経営者の割合は40%、非製造業が35%となっており、業種に限らず年齢の上昇が起きていることがわかります。製造業の方が日本の伝統的な製造技術・ノウハウを持っている町工場などが多い印象ですが、非製造業にも小売店や飲食店などが含まれており、経営者の年齢としては大きな違いがないということになります。
規模別では、従業員301人以上の会社が65歳以上が最も低く(25%)、20人以下が最も高い(35%)というように、規模によって65歳以上比率に10%の差があることが分かっています。『中小企業白書2016年版』によれば、1995年度時点では20人以下の企業が65以上の比率が15%と最も低く、規模が大きくなるほど65歳以上の比率が上がっていったことから、ここ20年間における小規模企業の新陳代謝が進んでいない点が要因であるとしています。
都道府県別でみると、まず首都圏については東京都は17%と低い水準となっていますが、埼玉県や千葉県、神奈川県には23%以上と高くなっています。その他の地域では北海道や九州エリアでは低くなっています。
経営者の引退年齢は68歳
経営者の平均年齢が上昇している一方で、経営者の引退年齢についてはどのようになっているのでしょうか。
中小企業庁が野村総合研究所に委託して実施した調査によると、規模や業種によって異なるが、67歳〜70歳の間、つまり68歳の前後で訪れるということになります。規模別でみてみると、小規模事業者の場合の引退年齢が70.5歳であり、中規模事業者の場合は67.7歳となっており、先程の統計にもあったように比較的規模が大きな企業の方が、より事業承継が進んでいるようです。
時系列で引退年齢の変化を見てみると、30年以上前は小規模事業者が62.6歳、中規模事業者が61.3歳であったので、ここ30年あまりで平均の引退年齢が7歳ほど上昇したと考えられます。ところが、この引退年齢は直近の10年間でほとんど変化がなく、引退年齢は70歳で高止まりするということが指摘できます。
これから5年間で引退ラッシュが訪れる
これまでの数字を振り返ると、経営者のボリュームゾーンは66歳であり、経営者の引退年齢は高くても70歳であることが分かりました。すなわち、これから日本企業の多くの経営者は引退ラッシュを迎える時代であるということが言えます。
実際に企業の休・廃業数は27,000件にまで10年間で20%程度増加をしており、これは倒産数の3倍に当たると言われています。業種としては、今後の先行き不安や人材難が叫ばれている建設業が6,856件と最多となっており、飲食店や旅館・ホテルを含むサービス業が6,726件、小売業が3,918件となっています。
引退の方法は事業承継か廃業かM&Aか
最後に以上のような現状を踏まえて、経営者が経営から引退する方法とメリット・デメリットについてを説明していきます。その方法は3つあり、事業承継、廃業、M&Aとなっています。
まず事業承継は自身の親族内もしくは役員・従業員に会社の株式を譲渡して会社のオーナーとなってもらって引退をするやり方です。この場合には経営権だけを最初に譲渡し、随時経営の現場から引退していくという方法もあります。メリットとしては、経営者の関係者であるため、引き継ぎなどがスムーズになりやすく、会社のメンバーにも受け入れられやすいという点があります。一方で、会社の株式を譲渡する際に、多額の資金が必要であることと、会社の借入金を承継者が引き継ぐ必要があるため、承継者に発生するデメリットは多大なものとなります。またそもそもの引き継ぎを銀行などの融資機関が認めないケースもあります。
廃業については、会社の解散決算を行って会社を閉じる方法となります。廃業は27,000件と多く見受けられる方法であり、承継相手がいない方によく採られている方法です。デメリットとしては、解散決算の際に在庫や資産を簿価の2〜3割で販売しなければならなくなるため、解散決算によって債務超過となり赤字となる場合があること、解散決算後に利益が出ている場合でも、先に法人税を納めた後で経営者個人への配当課税が発生するために二重課税となるというデメリットがあります。
M&Aは第三者に株式を譲渡し、経営権も従業員も承継する方法です。M&Aのメリットとしては、経営者が個人保証を外れてハッピーリタイアが実現できる点、従業員や会社のブランドが残る点などメリットが多くあります。一方デメリットとしては、M&Aの実行までに時間と労力がかかることと、多額の借入金や赤字がある企業ではM&Aがしづらいことが上げられます。
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