よくわかるM&A

2023/09/27

大型M&Aの実情とは?日本における取引金額別の成功・失敗事例とともに紹介

大型M&Aの実情とは?日本における取引金額別の成功・失敗事例とともに紹介

日本におけるM&A件数は右肩上がりに増加しています。M&A件数の増加と比例するように、取引金額100億円や1,000億円、なかには1兆円を超えるような大型のM&A案件も増加傾向にあります。

本記事では、日本における大型M&Aの歩みを解説し、取引金額別に大型M&Aの成功事例と失敗事例を紹介します。

世界の大型M&Aの動向や大型M&Aの事例から学べることも説明していますので、M&Aにより自社譲渡や他社譲受を検討している方はぜひ参考にしてください。

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日本における大型M&A

日本における大型M&Aは、1986年から1991年まで続いたバブル景気の時代に端を発します。株価や不動産価格の高騰、そして円高を背景に、取引金額1,000億円を超える大型M&Aが相次ぎました。ブリヂストンによる米ファイアストン社の買収、松下電器産業(現 パナソニック)による米MCAの買収はその代表的な例でしょう。

2000年代に入ると、取引金額1兆円を超える大型M&Aも見られるようになります。武田薬品工業によるアイルランド・シャイアーの買収は取引金額6.2兆円にのぼり、世界的にも有数のディールが実施されるようになりました。

近年も、大型M&Aは数多く行われています。M&Aオンラインの調べによると、2021年に国内で行われた取引金額100億円超の大型M&Aは74件となり、新型コロナウイルス感染症の影響で減少に転じた2020年の約1.5倍を記録しています。

【取引金額別】日本企業がかかわる大型M&Aの成功事例

ここからは、日本企業が過去にかかわった大型M&Aの具体的な事例を取引金額別に紹介します。まず紹介するのは、M&Aの結果業績が好転あるいは事業に好影響を与えたとみられる3つの事例です。

●【取引金額1兆円超】JTによる英ギャラハー社の買収事例

2007年、日本たばこ産業(JT)は英ギャラハー社を取引金額約1兆7,800億円(純有利子負債を含めると約2兆2,500億円)で買収しました。

背景には、2000年前後に実施されたJTの事業の選択と集中の戦略があります。それまで多角的な経営戦略を実施していたJTは、このころに戦略を転換し、多くの事業から撤退をしていました。

一方、主要事業であるたばこ事業は拡大路線へと進みます。1999年の米RJRナビスコ社からのたばこ事業取得と英ギャラハー社の買収により、JTは海外市場で大きなシェアを獲得しました。

その後も数多くのクロスボーダーM&Aを実施したJTは、売上収益の約6割を海外たばこ事業から得るグローバル企業へと成長を果たしています。

●【取引金額1,000億円超】ソフトバンクによる日本テレコムの買収事例

大型案件のM&Aといえば、ソフトバンクがかかわるM&Aを忘れることはできません。ソフトバンクは多くの大型M&Aを実施して成長したグループで、日本テレコムの買収はその走りともいえる事例です。

2004年、ソフトバンクは日本テレコムを取引金額約3,400億円で買収しました。日本テレコムの買収により、ソフトバンクは固定通信事業への参入に成功します。続く2006年には英ボーダフォン日本法人を買収して移動通信事業へも参入し、大手通信事業会社へと発展しました。

●【取引金額100億円超】楽天によるマイトリップ・ネットの買収事例

2003年、楽天は日立造船が保有するマイトリップ・ネットの全株式を323億円で取得し子会社化しました。

マイトリップ・ネットは、国内大手のインターネット宿泊予約サイト「旅の窓口」を運営する会社です。楽天はマイトリップ・ネットの買収により、自社が運営する「楽天トラベル」の強化につなげています。

楽天はその後もDLJディレクトSFG証券(現 楽天証券)、国内信販(現 楽天カード)、イーバンク銀行(現 楽天銀行)などへのM&Aを実施し、現在では「楽天経済圏」とも呼ばれる経済ブロックを形成しています。

【取引金額別】日本の大型企業M&Aで赤字・分離となった事例

次に、日本企業が過去に関わった大型M&Aの事例のなかから、当初の期待通りの結果が得られなかった、損失を計上することとなったなどの事例を取引金額別に3つ紹介します。

●【取引金額1兆円超】ソフトバンクによる米スプリント社の買収事例

2013年、ソフトバンクは米国のスプリント・ネクステル・コーポレーションの事業に対し、約216億ドル(約1.8兆円)の投資を行ったことを発表しました。

スプリント買収の背景にあるのは、アメリカ携帯市場への参入です。買収時にスプリントは米携帯電話業界で第3位に位置しており、ソフトバンクはスプリントの事業を足掛かりに海外でのシェア拡大を意図していました。

しかし、スプリントの業績は振るわず、米携帯電話業界でもTモバイルUSに抜かれ4位に転落しました。その後、2020年にスプリントはTモバイルUSと合併し、ソフトバンクの連結子会社から外れています。

●【取引金額1,000億円超】丸紅による米ガビロン社の買収事例

2012年、丸紅は穀物事業や肥料事業などを手がける米ガビロン社を約2,860億円かけて買収しました。

ガビロンは主に北米を中心に、穀物・肥料・エネルギーなどの流通を支える巨大な流通網を有しています。丸紅は自社がもつ供給ソースとガビロンの流通網を組み合わせることにより、シナジー効果の発生を期待していました。

しかし、丸紅は貿易摩擦の影響を受け、ガビロンののれん代1,000億円のうち、500億円は減損損失に至る結果となります。丸紅は、2022年にガビロンの穀物事業は加バイテラ社へ売却することを発表しています。

●【取引金額100億円超】新生銀行によるアプラスとの全面提携の事例

2004年、新生銀行はアプラスに対し、350億円の第三者割当増資の引受とUFJ銀行が保有するアプラス優先株式(額面300億円)の全額譲受を決定し、アプラスの発行済普通株式の3分の2超を保有すると発表しました。

新生銀行はアプラスのカード事業獲得により、ノンバンクビジネスという新たな収益分野を開拓する狙いがありました。

しかし、相次ぐ過払い金返還請求の影響を受け、アプラスの業績は悪化していきます。これらの結果も含め、新生銀行は約1,100億円という多額の減損損失を計上しました。

世界の大型M&Aの動向

ここで、日本から世界の動向へ目を移してみましょう。PwCの分析結果によると、世界におけるM&A件数は、2020年上半期は新型コロナウイルス感染症の影響により減少傾向にありましたが、2020年下半期から増加傾向に転じています。

さらに、2021年上半期には、通信企業やハイテク企業を中心に複数の大型M&Aが実施されました。

BCGの分析も同様です。2020年上半期はM&A件数は減少傾向を示したものの、2020年下半期からはテクノロジー企業やヘルスケア企業における取引金額1,000億円を超える大型M&Aがなされたことにより、取引総額が上昇したと発表しています。

【取引金額別】世界の大型M&Aの成功事例

ここからは、世界の大型M&Aの具体的な事例を取引金額別に紹介します。

●【取引金額1兆円超】武田薬品工業によるシャイアーの子会社化

武田薬品工業は2018年、アイルランドの製薬会社シャイアーを6兆2,000億円で買収しました。
これにより、武田薬品工業は世界トップ10に入る製薬企業に名乗りを挙げました。

シャイアーは2017年の売上高が約150億ドル(約1兆6200億円)で、世界で20位前後の武田と同規模。免疫系疾患、血友病、神経系疾患の3領域が柱でした。武田は00年代から有望な新薬を生み出せず、主力薬の特許切れも相まって収益力の低下が課題とされていました。患者数は少ないものの、利益率が高い希少疾患の治療薬に強みを持つシャイアーの買収により、稼ぐ力の回復を狙いました。

●【取引金額1,000億円超】米ペイパルによるペイディの子会社化

2021年9月7日、カリフォルニア州サンノゼ/PRNewswire/– PayPal Holdings, Inc.(NASDAQ:PYPL)は、あと払いサービス「ペイディ」を提供している株式会社Paidyを3,000億円で買収することを発表しました。

ペイパルは、世界第3位のEコマース市場である日本での越境EC事業に加えて、今回の買収により、国内決済市場で機能やサービスを拡充することで存在感をさらに高めていきます。

Paidyは「3回あと払い」など革新的なサービスをスピーディに開発することで、アカウント数は600万を超え、主要なグローバルブランドやECモールとの戦略的パートナーシップを構築してきました。さらには、「どこでもペイディ」の提供開始によってペイパル、その他のデジタルウォレットやQR決済との連携を実現し、自社のプラットフォームを超えてオンラインおよび実店舗で利用できる加盟店を拡大しています。

買収当時、Paidyは赤字を計上していたとされていますが、3,300億円という、日本のスタートアップで最高価額の金額でM&Aが実現しました。

●【取引金額100億円超】FACEBOOKによるINSTAGRAMSの子会社化

2012年、交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックは写真共有アプリ「インスタグラム」の開発会社を約810億円で買収することを決めました。

インスタグラムはアプリの提供を始めて2年ほど、社員はわずか13人で、売上高も当時はほとんどゼロであったのですが、Facebookはモバイル市場でシェアを獲得するため、アプリのリリースから2カ月ほどで100万人のユーザーを獲得しているInstagramの驚異的な伸び率に注目し、買収に踏み切りました。

また、Instagramのアプリにおいて、Facebookのノウハウを生かした広告の掲載による収益化を得られると考えたことも、買収の大きな理由と考えられます。

大型M&Aの事例から学ぶこと

最後に、大型M&Aの事例から学べることを解説します。M&Aを実施する場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

●M&Aを実施したあとのビジョンを明確にする

M&Aはゴールではなく、あくまで手段です。そのため、M&A実施後のビジョンを明確にもっておくことはとても重要となります。

例えばJTは、買収までに事業の選択と集中を進め、海外たばこ事業を強力に推し進めるとの明確なビジョンのもとM&Aを実施した結果、ドメスティック企業からグローバル企業へと変貌を遂げました。また楽天は、マイトリップ・ネット含めたさまざまなM&Aを実施した結果、グループシナジーの強化に成功しています。

自社のもつ強みや不足している部分を分析し、どのような経営資源をもつ企業を譲受すればどういったシナジーを得られるのか、事前に慎重に検討する必要があります。

●リスクに対して細心の注意を払う

明確なビジョンをもつことと同様に、リスクに対する配慮も大切なポイントです。新生銀行の事例で言えば、M&A後に生じた過払い金返還請求により、大きな痛手を被ってしまいました。

したがって、M&Aの対象企業の譲受により、どのようなリスクが生じるか、問題点はないか、事前に調査する必要があります。候補先の選定段階はもとより、基本合意後にもデューディリジェンスをしっかりと実施し、財務・法務・事業・税務などさまざまな面でのリスクヘッジが重要です。

M&Aで分からないことは専門家へ相談

今回紹介した事例のように、M&Aでは事前の準備やリスクに対するケアが必要となります。法務・財務・税務などさまざまな専門的知見からの分析を要する場合があり、そのプロセスは容易なものではありません。

もし、M&Aで分からないことがあった場合は、M&Aの専門家へ相談してみましょう。fundbookでは、クロスボーダーM&Aやベンチャー企業に対するM&A、中小企業での事業継承など、多くのM&A経験豊富なアドバイザーがM&Aをサポートします。

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まとめ

日本における大型M&Aは、バブル景気の時代に目につくようになり、近年も積極的に実施されています。100億円から1兆円を超える取引金額まで多種多様な規模の大型M&Aが行われており、その結果もさまざまです。

今回は、JTによるギャラハー買収の事例やソフトバンクの日本テレコム買収の事例など、複数の事例を紹介しました。M&Aを成功させるためには、事前にM&A実施後のビジョンを明確に持つことが必要であり、リスクに対する配慮も怠ることはできません。

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