よくわかるM&A

2023/09/15

M&Aにおける一般社団法人と公益法人の違いは?手法やメリット・市場動向を解説

M&Aにおける一般社団法人と公益法人の違いは?手法やメリット・市場動向を解説

近年、公益法人によるM&Aが活発になっています。複数の公益法人がM&Aを行うことにより、ノウハウや技術の共有を行うことができるため、お互いに利益を得ることが期待できます。

一般社団法人のM&Aに関しては、これまでは経営権の移転のために事業譲渡を行うケースはありましたが、合併の手法は選択できませんでした。しかし、2008年の公益法人制度改革関連三法の施行により、合併を選択できるようになりました。

この記事では、一般社団法人と公益法人のM&Aの手法(スキーム)の違いやメリット、近年の公益法人の動向を紹介します。

【無料資料】
上場企業に負けない 「高成長型企業」をつくる資金調達メソッド
資料
会社が成長している今、「次の打ち手」にお悩みではありませんか?
本資料では自社をさらに成長させるために必要な資金力をアップする方法や、M&Aの最適なタイミングを解説しています。

・縮小する日本経済市場を生き抜くために必要な戦略とは?
・まず必要な資金力を増強させる仕組み
・成長企業のM&A事例4選

M&Aをご検討の方はもちろん、自社をもっと成長させたい方やIPOをご検討の方にもお役立ていただける資料ですので、ぜひご一読ください。
1分で入力完了!

法人の定義は?一般社団法人と公益法人の違いとM&Aの手法(スキーム)の違い

法人の定義は?一般社団法人と公益法人の違い

法人とは、社会的活動を営みや物品の売買や所有、契約といった、人と同じような権利能力を認められた組織のことです。

法人は、公的な事務を行う公法人と、国家や公共団体の影響を受けない私法人に分けられます。さらに私法人は、会社などの営利法人と、医療法人やNPO法人などの非営利法人に分類されます。

今回は、一般社団法人と公益法人のM&Aについてお話します。まずはそれぞれの法人について定義を確認しておきましょう。

一般社団法人とは、一般社団・財団法人法に基づいて設立された営利を目的としない社団法人を指します。一方で、公益法人とは一般社団法人のうち、公益を目的とする事業を行う法人をいいます。行政庁に公益申請を行い、認定を受けられれば公益社団法人・公益財団法人になります。例えば、社会福祉法人、学校法人や医療法人などが挙げられます。

次に、一般社団法人と公益法人の売買、合併方法の違いとM&Aの手法や仕組み(スキーム)について紹介します。

売買方法の違い(株式譲渡ではなく経営支配権譲渡)

まず、一般社団法人も公益法人も売買方法に違いはありません。

一般社団法人・公益法人のM&Aの特徴としては、株式会社と異なり株式を発行していないため、株式譲渡のように株式の売買を行えません。そのため、経営支配権を移転することになります。その際には、社員(評議員)の立場を譲渡、譲受する必要があります。

M&Aの手法に関しては、基本的には合併や事業譲渡のM&Aスキームが行われます。

合併方法の違い

前述の通り、一般社団法人も公益法人も売買方法に違いはありませんが、合併の方法は異なります。

合併を行う対象法人が一般社団法人(一般財団法人)のみの場合は、合併を行う相手は一般社団法人(一般財団法人)である必要があります。

一方で、公益社団法人(公益財団法人)は一般社団法人(一般財団法人)との合併を行うことができます。その理由は、先述の通り公益社団法人・公益財団法人は行政庁に公益申請を行い認定を受けており、法人の基礎は一般社団法人または一般財団法人であるためです。

税率の違い

公益社団法人は公益事業を目的としている法人であり、行政による厳しい許可要件を満たす必要があります。事業が公益目的事業と認定されれば、法人税が非課税になるなどの税制上の優遇措置を受けられます。

また、M&Aの税率の違いは、合併を行う際にある一定の要件を満たすかどうかによって、「適格合併」と「非適格合併」に分類されます。適格合併になると、一般社団法人も公益法人も株式会社が合併を行う場合と同様に税制上の優遇を受けられます。

適格要件には、「被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業とが相互に関連するもの」などのいくつかの条件あります。また、法人の支配関係によっても要件は異なります。

スキームは「仕組み」という意味も持ち合わせていますが、M&Aに置ける税金に関する仕組みや条件は複雑なので、詳しくはM&Aアドバイザーや税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

公益法人(社会福祉法人・学校法人・医療法人)がM&Aを行うメリット

公益法人(社会福祉法人・学校法人・医療法人)がM&Aを行うメリット

公益法人がM&Aを行うことで享受できるメリットとデメリットとして、「社会福祉法人」「学校法人」「医療法人」を例にとって紹介します。

社会福祉法人がM&Aを行うメリット

社会福祉法人がM&Aを行うことにより、地域のニーズに応じた福祉サービスの提供を継続して行えます。また、運営体制の改善や事業の再生を図ることができ、提供するサービスのさらなる向上を見込めます。

社会福祉法人の存続により、利用者などの地域の住民への影響を抑えることも可能となります。

学校法人がM&Aを行うメリット

学校法人がM&Aを行うことにより、大手の学校法人のブランドを獲得できます。また、学校法人の組織形態の変更などによって、業務の効率化やより充実した教育の環境や質の向上などを見込めます。結果的に、学生数の増加も期待できます。

譲受する法人としても、吸収合併を行う場合は権利義務をそのまま承継するため、新規に学校法人を設立する必要がありません。そのため、有資格者の獲得や規模の拡大を図ることが出来ます。

例えば、2014年に行われた上智大学を運営する「上智学院」と栄光学園中・高校を運営する「栄光学園」など、カトリック教会イエズス会系の5つの学校法人による合併があげられます。この合併は、各学校が培ってきた海外との関係をもとに幅広い教育ネットワークを築いたり、多様な教職員を養成することが狙いでした。また、上智大学は人材不足も解消できるとの見方を示していました。

医療法人がM&Aを行うメリット

医療法人がM&Aを行うことにより、医院長や理事長は譲渡対価を受け取れます。また、医療法人に対して出資を行っている場合、出資した額の払い戻し請求を行うことにより残余額を受け取ることができます。

加えて、労務管理や資金繰りといった業務の負担が軽減されるため、医師としての本業に専念できるのです。

譲受する法人に関しても、新たに病院を開設するよりも短期間で既存の病院や有資格者を獲得できます。また、既存の病床を獲得することにより規模の拡大も図れます。

M&Aのデメリットとその対策方法

M&Aを行うメリットがある一方、デメリットもあります。

社会福祉法人がM&Aを行うデメリット

社会福祉法人が合併を行うデメリットとして、手続きが複雑という点があげられます。理事の3分の2以上の賛成や、定款で評議会の議決が必要とされている場合は、評議会の議決も必要となります。また、都道府県知事に対して認可の申請も行います。

学校法人がM&Aを行うデメリット

学校法人がM&Aを行うデメリットとしては、学校特有の教育方針や制度が合わない可能性があるということです。学校法人は公益性の高い組織であり、建学の精神や教育方針、カリキュラムはさまざまです。そのため、学校法人でM&Aを検討するときは学校特有の事情を考慮する必要があります。

医療法人がM&Aを行うデメリット

医療法人がM&Aを行うことにより、医療法人を譲り受ける法人は新たに病院開設許可申請を病院の所在地を管轄する保健所に届け出る必要があります。また、譲渡・譲受する法人双方にいえるデメリットとして、定款の変更を行う必要があります。変更に関しては、都道府県知事の許可が必要です。

今回紹介したように、公益法人がM&Aを行うことにより、メリットを得られる一方でデメリットもあります。M&Aを実施する前に都道府県知事に対して許可の申請などが必要であるため、事前に準備しておくことをおすすめします。また、M&A実施後にも双方の運営方針や業務ルールなどを統合するPMIを適切に進める必要があるでしょう。

▷関連記事:PMIとは?M&A成立後の統合プロセスについて株式譲渡を例に解説

公益法人のM&A動向

公益法人のM&A動向

ここでは、社会福祉法人、学校法人と医療法人の公益法人の市場規模とM&Aの動向について紹介します。

業界ごとの市場や競合について

まず、業界ごとの公益法人の市場規模について紹介します。

社会福祉法人の市場動向

厚生労働省の発表によると、2017年時点での全国の社会福祉法人数は20,798施設でした。これは2013年の19,636施設と比較して1,162施設の増加となりました。

日本において、社会福祉法人は社会福祉の中心的な役割を担っています。そのため、国や地方公共団体からの補助によって支えられ運営されています。個人の社会福祉法人に関しても、零細経営を行っているところが多く補助金などの公的資金によって運営されています。

学校法人の市場動向

学校法人においては、少子化の影響などにより、特に私立大学の経営状態は苦しい状況となっています。

文部科学省の発表によると、私立大学においては入学定員充足率が100%以上の大学数の割合は、1996年度は96.2%を占めていました。しかし、少子化による影響により2017年度には60.6%に減少しました。

また、私立大学においては収入の77%を学生納付金が占めています。これは、国立大学の12%と比較しても大きく上回っており、学生数の減少が収入高や損益へ大きな影響を及ぼしています。定員割れの私立大学は全国で約39.4%にのぼりますが、今後も18歳人口の減少は加速していくと見られており、学生数の減少に伴い、市場規模の縮小が懸念されています。

医療法人の市場動向

厚生労働省の発表によると、2017年時点で全国の医療施設数は178,492施設となっており、2012年と比較して1,301施設の増加となりました。また医療法人数に関しても、2018年時点で53,944施設となっており、2013年と比較して5,124施設増加しています。

そのような状況の中、2000年代から厚生省によって行われている医療費抑制政策による診療報酬のマイナス改定や薬価基準の引き下げが行われ、病院の経営状況はますます厳しい状況に直面しています。

現在の社会福祉法人・学校法人・医療法人におけるM&A動向の認識と有効な手法(スキーム)

前述した業界ごとの公益法人の市場動向を踏まえて、ここではM&Aの動向と活用するべき手法(スキーム)を紹介します。

社会福祉法人のM&A動向

社会福祉法人は国や地方公共団体からの公的な資金により運営されてきました。このような状況の中で、厚生労働省は社会福祉法人のさらなる発展のために社会福祉法人の組織再編・事業再編を促そうとしています。具体的には、合併・事業承継などの手法を活用することで、より強固な経営基盤を持った社会福祉法人の創出、そしてさらなるサービスの向上などが期待されています。

また、法律の規定によれば、社会福祉法人は他の社会福祉法人と合併することが可能です。株式会社と異なり、公共性が強いことから当事者のみではなく、一定の範囲で所轄官庁が関与します。

学校法人のM&A動向

学校法人は少子高齢化や競争の激化などの影響による入学者数の減少により、厳しい経営環境におかれているケースが増加しています。そのため、入学者数の確保を目的とした学校法人同士の統合・再編の動きが活発化しています。

具体的な手法としては、学校法人間の垂直的統合と水平的統合があげられます。前者は、主に大学が高校や中等学校などを運営している学校法人と合併を行うことにより、付属校、系列校にするものです。後者は、主に大学が既存の学部を増設するために他の学校法人と合併を行うことにより、競争力を高めることが可能となります。

医療法人のM&A動向

医療法人は病院や診療所の医師不足や施設の老朽化などが進み、修繕費に資金を回すことができないといったことによる経営難に陥っているケースがあります。そのような状況の中で、地域の医療ニーズに応えるために病院事業を社団法人に譲渡するケースが増えています。

具体的な手法としては、合併や事業譲渡、出資持分*1譲渡が活用されています。特に、医療法人では出資持分譲渡が多く用いられています。その理由は、合併や事業譲渡は事前に行政に申請し、許可を得る必要があり、手続き期間も比較的長いのに対し、出資持分譲渡は、理事長含む役員などの変更届出および理事長の変更登記を行えば、手続き期間も比較的短期間でM&Aを行えるためです。

*1 出資持分:医療法人に金銭などの出資を行った者が持つもの

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件
▷関連記事:医療・病院業界のM&A事例11選【2022年/最新版】

まとめ

まとめ

一般社団法人か公益法人かによってM&Aの手法は異なります。また、業界によって公益法人がM&Aを行うことにより得られるメリット、注意しておきたいデメリットも変わります。

そのため、近年の市場動向やM&Aの動向をしっかり把握した上で、公益法人のM&Aを検討することをおすすめします。

▷関連記事一覧:M&Aの動向と業界別の事例

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談