最近、ニュースやCMなどで「M&A」という言葉をよく耳にするようになったと思いませんか?そうは言っても、M&Aと聞いて自分にはあまり関係のないものという印象を持っている方も多いかもしれません。昨今、メディアでは事業承継問題や後継者問題などの社会情勢の変化に絡み、M&Aに関するニュースが取り上げられる機会が増えています。M&Aを題材にした有名なドラマの影響や、「買収」という強い言葉の印象、また一時期大きなニュースとなったファンドによる乗っ取りというイメージも強く、M&Aとは何か、というよりも「怖い」などの感情による印象を抱いている方も多いのではないでしょうか。
しかし、昨今、M&Aが新たな事業展開や既存事業をスケールさせるための戦略や手段として活用されることも増えています。お手持ちのスマートフォンを開いてみてください。「Instagram」や「YouTube」、「楽天トラベル」などのサービスを利用していませんか?実は、これらのサービスはM&Aを行って多くの方が利用するサービスへと成長しているのです。実際に、普段多くの方が利用しているアプリやお店にも、M&Aを行っているサービスはたくさんあります。
本記事では「いつも使っているお店やサービスもM&Aを行っていたの?」と意外に思うような事例を紹介します。遠いようで実は近くにあったM&Aの事例を通して、よりM&Aを身近に感じてもらいたいと思います。
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
身近なM&A事例(国内編)
1.無印良品(1990年)
「無印良品」は、1980年に株式会社西友のプライベートブランド商品として誕生し、一部の西友、西武百貨店、ファミリーマートにて販売を開始しました。その後、株式会社良品計画として1989年に西友から独立し、翌1990年3月、西友社から「無印良品」の経営権を譲受けました。
シンプルで自然志向な「無印良品」の商品のイメージは、西友から生まれていたのです。現在、無印良品は国内外合わせて928店舗(国内:454店舗・海外:474店舗 ※2018年2月期)と、展開を拡大しています。
2.楽天トラベル(2003年)
楽天株式会社は2003年、マイトリップ・ネット株式会社の「旅行の窓口」を323億円で譲受けました。
日本最大級の宿泊サイトである「楽天トラベル」を使って、ホテルや航空券、ツアーなどを予約したことがある人も多いのではないでしょうか。この「楽天トラベル」、元々はマイトリップ・ネット社の「旅行の窓口」というサービスでした。2003年に楽天社がマイトリップ・ネット社の全株式を、当時の親会社である日立造船株式会社から譲受け、100%子会社化しました。
楽天社はその他にも多くのM&Aを重ねており、「楽天トラベル」のほか、「楽天証券」や「楽天カード」などのサービスもM&Aにより譲受けた事業です。M&Aにより新規事業を展開してきた代表例ともいえるのが楽天社です。
3.FURYU(2007年)
2007年、大手電機メーカーであるオムロン株式会社の完全子会社、オムロンエンタテインメント株式会社のMBO(マネジメントバイアウト)により、フリュー株式会社として独立しました。もとのオムロンエンタテインメント株式会社は、オムロン株式会社においてエンタテインメントに特化する事業を行っていました。
フリュー社は、現在ではプリントシール機市場で国内シェア約80%を誇る企業となっていますが、その代表的な事業は元々、オムロンエンタテインメント社が行っている事業でした。この事業譲渡はオムロン社が経営資源の選択と集中を行うなか、メイン事業とエンタテインメント事業の高いシナジーが期待できないとの判断のもと実施されました。
4.TOWER RECORDS(2012年)
株式会社NTTドコモは、2012年7月にCD/DVDの販売を行うタワーレコード株式会社を子会社化しました。
「TOWER RECORDS」といえば、「NO MUSIC, NO LIFE.」のコピーで知られる、音楽好きなら誰もが知っているCDショップです。ドコモ社はCD・DVDにおけるEコマース事業への進出を加速させるべく、同社が主に展開するモバイル事業とのシナジーを見込んで、M&Aを実施しました。
現在「TOWER RECORDS」の一部店舗や「タワーレコードオンライン」では、支払い手段としてドコモ社が提供する「d払い」が利用でき、また共通ポイントサービスである「dポイント」との連携が進んでいます。
5.COCO壱番屋(2015年)
ハウス食品グループ本社株式会社は、2015年11月2日から12月1日にかけてカレー専門店「CoCo壱番屋」を運営する株式会社壱番屋の株式公開買い付け(TOB)を行い、子会社化しました。(譲渡金額:301億円)
「ココイチ」の愛称で親しまれ、国内外併せて約1500店舗を展開する「CoCo壱番屋」は、実は「バーモントカレー」などのブランドを手がけるハウス食品社の子会社となっています。
このM&Aに関して、ハウス食品グループ本社代表取締役社長の浦上博史氏は、海外展開について「外食のプロの壱番屋のほうが展開のスピードが速い」と話しており、今後の海外展開において「CoCo壱番屋」ブランドを活用していくことも狙いとしているようです。
身近なM&A事例(海外編)
1.BOOKING.COM(2005年)
「Expedia」と並び、世界の2大OTA(オンライン旅行代理店)と評される「Booking.com」も、M&Aを経て成長したサービスです。
プライスライン・グループ社は、オンライン旅行サービス「Priceline.com」を運営していましたが、2005年7月にオランダのOTAであるBookings社を譲受けました。現在はその「Booking.com」が収益の柱となっており、2018年には社名を「ブッキング・ホールディングス(Booking Holdings Inc.)」に変更しました。
M&Aを経て「Booking.com」が、プライスライン・グループ社のメインブランドとして成長し、社名を変更するまでに至りました。
2.YOUTUBE(2006年)
Google社は2006年、YouTube社を16億5,000万ドルで譲受けました。
小中学生の「なりたい職業ランキング」の上位にあがる「YouTuber」が世間を席巻し、飛ぶ鳥を落とす勢いでいまなお成長を続ける「YouTube」も、もとはGoogle社がM&Aで譲受けたサービスです。
「YouTube」は、2006年にM&Aをした当時は創立からわずか18か月の新興企業で、売上もほとんど生まれてない状態でした。早い段階でM&Aをした「YouTube」ですが、2020年までに年間売上が200億ドルに達する可能性があると報じられており、Google社によるM&Aの大きな成功例と言えます。
3.INSTAGRAM(2012年)
SNS世界最大手のFacebook社は2012年、Instagram社を最終的に約7億1,500万ドルで譲受けました。
「Stories」や「IGTV」、「ShopNow」など、次々と魅力的な機能追加がなされ、今では若年層を中心に10億人以上が利用する「Instagram」。このサービスも、実はM&Aを経て成長を続けているサービスです。2010年10月にリリースされた同サービスですが、リリースから一年半で約3,000万人のユーザーを集めました。
M&Aが行われた2012年当時は社員がわずか13名、売上もほとんどない状況でしたが、「Instargam」の成長を驚異と感じたFacebook社による巨額の買収となりました。
一方、インスタグラム社の共同創業者がフェイスブック社を退職するという報道(9月25日付)もあり、今後のサービスの方向性に改めて注目が集まっています。
まとめ
今後、M&Aはより身近に感じられるようになってくると考えます。
一般的にM&Aへの理解があまりない方の中には、M&Aへのネガティブなイメージを持っている方もでしょう。M&Aは大企業が行うもので、社名や取引先、従業員を含め企業をまるごと変えてしまうような印象があるのかもしれません。
現在では後継者問題の解決策であったり、人材不足に対応する方法として、中小企業のM&Aがメディアに取り上げられることも増えてきました。そのようにM&Aの良い面がメディアを通して世の中に伝わることで、M&Aのイメージ自体がポジティブになってきていると感じます。
実際に、多くの場合で譲受企業は譲渡企業とのシナジーを見込んでM&Aを行います。そのためパートナーとして一緒に成長を目指すことが多く、譲渡企業の従業員の雇用も継続されることがほとんどです。多くの企業が融合後のシナジーを見込んで友好的なM&Aを目指し、M&A後の融合プロセス(PMI)においても、中長期の期間で丁寧に行っています。
このように、今後M&Aに対するイメージはよりポジティブになり、社会に受け入れられることで、M&Aは更に身近になってくると思います。
この記事では、国内外の数多くのM&A事例の中から、よりM&Aを身近に感じていただけるような事例を集めました。このように私たちが何気なく生活の中で触れているサービスでも、さまざまな場面でM&Aが活用されています。
今回取り上げた事例の他にも、普段から自然と触れているもので実はM&Aで事業展開をしている会社があるかもしれません。視点を変えてみると、M&Aに対するちょっと難しいイメージも、身近で親しみやすいものに変わるのではないでしょうか。
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