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2023/09/15

持株会社とは?メリット・デメリットや設立方法【事例付き】

持株会社とは?メリット・デメリットや設立方法【事例付き】

近年増加している会社の組織形態に、持株会社があります。

この記事では、持株会社の定義やメリット・デメリット設立方法について現役のM&Aアドバイザーが解説していきます。また、国内の事例についても説明します。
持株会社についての知識を得たい方は、ぜひ参考にしてください。

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持株会社とは?

持株会社とは、他の会社を支配する目的で、当該企業の株式を保有する会社を指します。

持株会社の種類は「事業持株会社」と「純粋持株会社」があります。
事業持株会社と純粋持株会社の特徴と違いについて確認していきましょう。

▷事業持株会社とは?

事業持株会社とは、子会社の株を持ちながら、自社でも事業活動を行っている会社を指します。
一般的に「株式持ち合い」と言えば、事業持株会社のことで、系列会社同士で株式を持ち合います。1953年の独占禁止法の改正から認められており、「株式保有による国内会社の支配」を主な事業としなければ、他社株式の保有は自由になりました。

事業持株会社の特徴に、子会社と主従関係であることが挙げられます。
多くの場合、親会社が本業に従事し、新規事業や周辺事業などを子会社が担当するという経営形態はよく見られます。子会社の役員人事権は親会社が握っていることも多く、グループとしての一体感は純粋持株会社より強いと言えます。

▷純粋持株会社とは?

純粋持株会社とは、子会社の株を持つことのみを目的とした会社です。自らは事業活動を行いません。

単に「持株会社」と言った場合、純粋持株会社を指します。「ホールディングス」や「グループ」と社名についていることが多いです。
これらの会社は、グループ内の会社の株式を保有し、グループ全体の中核を担当しています。主な業務は、株式を保有しているグループ内企業の支配で、子会社の配当金が売上となります。

1997年独占禁止法の改正により、日本でも形態が認められるようになりました。

純粋持株会社の特徴として、親会社の打ち出すグループ全体の経営戦略内では、子会社自体に事業活動の独立性を認めています。つまり、純粋持株会社の子会社は利益や財務面で独立した事業体としての運営を求められます。そのため、グループとしての一体感は、事業持株会社より弱いと言えます。

これ以降、本記事では純粋持株会社について詳しく解説していきます。

持株会社のメリット

持株会社(純粋持株会社)のメリットは、以下の通りです。

1.節税効果がある
2.経営権を集約できる
3.株式の分散を防止できる
4.事業効率を改善できる

それぞれ順番に解説していきます。

▷持株会社(純粋持株会社)のメリット①:節税効果がある

持株会社のメリットとして、相続税の節税効果が挙げられます。
相続税は、個人が亡くなった人から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。業績が良い企業であればあるほど、相続税の負担は大きくなります。

自社の株式を持株会社に移転させます。その後、株式ではなく持株会社を後継者に引き継げば、子会社である事業会社の利益は含み益となり法人税の課税対象になるため、節税効果が生まれます。

とはいえ、持株会社による節税策が、税務署で認められないケースも起きているため、注意が必要です。

▷持株会社(純粋持株会社)のメリット②:経営権を集約できる

持株会社を設立して経営権を集約することで、事業会社は事業に特化できるようになるというメリットがあります。

また、子会社が自立した法人として独立採算の経営が行われるため、経営責任を明確化できます。

▷持株会社(純粋持株会社)のメリット③:株式の分散を防止できる

持株会社として事業承継すると、株式分散を防止できます。
相続による事業承継の場合、前経営者が所有する既存の事業会社の株式は、後継者以外の相続人にも分配される可能性があります。

後継者以外にも株式が分散してしまった場合、経営の不安定化を引き起こし事業運営で大きな問題に発展するリスクがあります。

ですが、持株会社の場合、後継者が設立した持株会社が既存の事業会社の株式を全て保有できるため、株式を所有するのは持株会社のみとなります。結果、後継者が持株会社を通じて事業会社の議決権を行使できるようになります。

▷持株会社(純粋持株会社)のメリット④:事業効率を改善できる

経営判断を持株会社が一手に引き受けることで、意思決定をスムーズにし、素早く柔軟に変化へ対応していくことが可能です。
グループとして最適な戦略立案や、意思決定ができるようになります。これにより、事業効率の改善が可能になります。

既存の事業持株会社では判断しづらかった、新規事業や将来有望事業への資本投下なども行いやすくなります。

持株会社のデメリット

持株会社は経営権の集約や事業効率化ができる一方、注意すべき点もあります。

1.譲渡の際に税金がかかる
2.子会社化のためにコストがかかる
3.バックオフィスのコストが増加する

それぞれ説明していきます。

▷持株会社(純粋持株会社)のデメリット①:譲渡の際に税金がかかる

持株会社のデメリットとして、経営者が持株会社に既存の事業会社の株式を譲渡すると、「譲渡所得」に対して約20%の譲渡益課税が発生します。

ただし、「譲渡所得」は他の所得と合算されないので、高額所得者であるオーナーにとって有利に働くケースもあります。

▷持株会社(純粋持株会社)のデメリット②:子会社化のためにコストがかかる

子会社化するためには株式を50%以上保有する必要があります。
そのため、初期コストがかかります。

また、持株会社のメリットである経営と事業の分離による効率化の成果が出るまで時間がかかりますため、時間的なコストも視野に入れておく必要があります。

▷持株会社(純粋持株会社)のデメリット③:バックオフィスのコストが増加する

法人が増えるため、バックオフィスの重複が避けられず、コストが増加するリスクがあります。
経理や総務、人事等のバックオフィス部門は会社ごとに必要です。同グループ内とはいえ独立した別会社であるため連携が難しく、重複を避けられません。業務のスリム化やコスト削減の努力が必要です。

持株会社化による効果が、バックオフィスコストを上回って得られるか、よく検討しましょう。

持株会社の設立方法

持株会社を設立する方法に関するイメージ

持株会社を設立する際には「株式移転方式」と「会社分割方式」があります。
それぞれの特徴をみていきましょう。

▷株式移転方式

株式転移方式は、既存会社が単独または複数で新たに会社を設立し、既存会社の持株会社とする方法です。
子会社が親会社を作り、自社株を100%保有させます。

事業に許認可がある場合でも、許認可の移転手続きが不要で、既存会社の事業運営への影響が小さいというメリットがあります。また、会社分割方式に比べ、資金調達や長期間に渡る調整が不要のため、再編手続きが比較的スピーディーです。

一方、税務上、資本金などの額が増加することで、法人住民税の負担の増加や配当還元価額が上昇してしまう可能性があるというデメリットもあります。

▷会社分割方式

会社分割方式とは、会社を複数の法人格に分割し、それぞれの法人格に組織・事業・資産を移転する組織再編行為の一つです。
つまり、自社を親会社として、新たに子会社を作ります。

成長部門を子会社として独立する、グループ内で重複する事業を1つの会社に集約する、一部事業を他社に譲渡する場合に利用されます。純粋持株会社では、グループ内の組織再編の際に利用されることが多いです。

メリットとして、株式の交付で実施ができるため、現金の準備が要りません。また、資産や契約などの引継ぎも可能です。株主にとっては、保有する株式に変更がないため煩雑さを感じにくいでしょう。すでに上場している企業の場合、再上場手続きは不要です。

一方、会社分割に際し、株主の3分の2以上の同意を得るための株主総会を開催しなければなりません。株式を対価として新会社に渡すため、株式評価も行う必要があります。株主開催も、株主評価も時間がかかるという点は注意が必要です。また、株式分割は税務上の取り扱いが非常に煩雑で、専門家でも経験を積んでいなければ難しいのもデメリットです。

なお、会社分割方式は、事業を新たに設立した会社が引継ぐ「新設分割」と既存会社が引継ぐ「吸収分割」があります。

新設分割は、既存の会社に分割した事業を譲り渡す吸収分割とは異なり、新たに設立した会社が事業を承継する分割方式です。原則的に新設分割では株式を交付します。
吸収分割はさらに2つの手法に分かれ、「物的分割(分社型分割)」と「人的分割(分割型分割)」があります。

分社型吸収分割(物的吸収分割)は、子会社を設立し、親会社が子会社の現金か、株式を承継する形式です。会社に株式を割り当てた場合、親会社と子会社の関係が成立します。
分割型吸収分割(人的吸収分割)は、兄弟会社を設立し、親会社が子会社の株式を全部または一部を承継する形式です。株主は親会社と子会社両方の株式を保有することになります。

持株会社の事例

ここでは、実際に持株会社化した事例についてご紹介します。

・株式会社電通
・パナソニック株式会社

順番に解説します。

▷株式会社電通

株式会社電通は2020年1月に純粋持株会社体制へ移行する方針を発表しました。
「経営効率を上げて意思決定をスムーズにし、素早く柔軟に変化へ対応していくため」としています。

また、今までの「電通」を中心としたフォーメーションが、グループのあり方にずれが生じていることを挙げています。電通は国内外を合わせると1,000社を超える規模にまで拡大しており、6万人を超える社員・従業員を抱えています。

海外ビジネスにおいてはすでに、日本の「電通」の出先機関としてではなく、独自に判断・進化をする自立企業とする判断をしています。その流れは国内でも起きており、「電通」の機能分化ではない広がりを見せているとのこと。それらを踏まえ、電通グループは持株会社として、「チーミング・カンパニー」となることを目指しています。

また、適正な統治の仕組みを確立することで、組織の一体性と法令順守を強化する狙いもあるようです。

▷パナソニック株式会社

パナソニック株式会社は 2020年11月に「社内分社によるカンパニー制にもとづくグループ経営」から、「より中長期的な視点での当社事業の競争力強化のため、当社を分割会社とする会社分割を実施し、当社を親会社とする持株会社制へと移行」すると発表しました。

パナソニックの社内インタビューで佐藤副社長は、パナソニックが持株会社化する最大の目的は、「事業ごとの競争力を磨きあげる「専鋭化」(※)の実現」と語っています。

パナソニックは人事制度など各種制度が全社共通でした。それが今回の純粋持株会社化によって、それぞれの子会社が業界に即して制度や仕組みを最適化できるようになります。狙いは事業競争力の強化です。
個別事業を専門的に担う「パナソニック コネクト株式会社」「パナソニック インダストリー株式会社」「パナソニック エナジー株式会社」については「専鋭化」を最優先に進めていく方針です。一方、「パナソニック株式会社」はシナジーが発揮しやすい事業体を1つにまとめつつ、シナジー創出と、傘下事業の収益化向上を図っていきたいとしています。

※…絞り込んだ領域で競争力を徹底して磨き上げる姿を示す造語

まとめ

純粋持株会社の仕組みは、日本の大企業でも徐々に取り入れられるようになりました。

持株会社化することで、経営権を集約でき、事業の効率化を図ることができます。一方で、導入時のコストや、バックオフィスの維持コストの増加、グループへの求心力の潜在的な問題なども内包しています。

持株会社のメリットを最大化させるためには、親会社がグループ全体の統制に注力する必要があるといえます。

また、中小企業の経営者も後継者への事業承継のために持株会社化を検討しているケースがあります。
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