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2023/10/02

企業売却価値の試算方法を9つ紹介!自己判断時に役立つ簡易版も解説

企業売却価値の試算方法を9つ紹介!自己判断時に役立つ簡易版も解説

M&Aにおいて企業売却価値の試算は、両者が納得する取引実施のために重要です。
買い手と売り手の両者にとって魅力的な企業価値を試算できれば、M&Aがスムーズになります。
企業売却価値の試算方法は複数あり、試算方法によって価値が変動する場合が多いです。

本記事では、企業売却価値における9つの試算方法をご紹介します。
M&Aを検討する際に利用できる試算方法も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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・M&Aの進め方や全体の流れ
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企業売却により得られる効果

まず簡単に企業売却で得られる効果について説明します。

企業売却には、買い手側と売り手側、双方に効果があります。両者の得られる効果は、以下のとおりです。

買い手売り手
・事業拡大
・人材確保
・節税対策
・事業継承
・従業員や取引先との関係の維持
・売上利益の獲得

買い手側は企業を買い取ることで、新規事業展開や既存事業の拡大となる可能性が広がります。会社全体の黒字割合を変えるために赤字会社を買収する場合もあり、結果的に法人税の節約につながるのです。

売り手側はM&Aによって企業を売れば、社員を守り取引先との関係を維持できる効果があります。さらに、後継者不足の課題を解決できます。

両企業への効果を最大限に得るためにも、慎重に価値を見定めながら取引を進めましょう。

企業売却価値の試算方法9つ

ここからは、企業売却価値の試算方法をご紹介します。
試算方法は大きく分けて3つのアプローチ方法があり、各方法ごとに試算方法が異なります

【3つのアプローチ方法】
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
・コストアプローチ

以下で詳しく説明します。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来得られるであろう収益を予測して企業価値に換算する方法です。将来の収益をある程度予測できるため、企業を買収する際に活用される試算方法となります。インカムアプローチの試算方法は、以下の3つです。

DCF法

DCF法とは、3〜5年分ほどのフリーキャッシュフロー(以下FCF)を基として、企業価値を算出する方法です。FCFは「企業が自由に使える現金」を指し、株主への配当金や事業拡大への設備投資などに用いられます。
DFC法は企業が生み出す収益を予測できるので、M&A取引の中でもよく用いられる手法です。DFC法を用いた企業価値算出の流れは、以下のとおりです。

1.1年ごとのFCFを計算する
2.割引率を計算する
3.FCFと割引率を基に企業価値を算出する

1~5年までの企業価値は「FCF ÷ (1+割引率)年数の累乗」で算出できます。
6年目以降は計算式が複雑になるので、検討する際はM&Aの専門家に任せるのが得策です。

収益還元法

収益還元法は「事業計画書」を基に将来得られる利益を計算し、現在の価値に落とし込む試算方法です。DCF法よりも簡単に計算できるため、M&A実施前に企業売却価値を把握する方法として活用されます。

事業計画書を判断基準にするため、計画の遅れや撤退といったリスク管理に関する検討が難しい点がデメリットです。企業価値の概算を出す場合は「収益還元法」を利用し、細かい数値を出す場合は「DCF法」を活用しましょう。

配当還元法

配当還元法は、非上場企業の株式評価額を算出する方法のひとつです。将来得られる期待配当額を算出し、現在の価値に還元します。

配当還元法は、経営者の采配によって配当金額を操作できるため、評価額の正確性が保証できません。非上場企業で株主が少数の場合に、株式評価額を把握する方法として効果的です。M&Aで利用されるインカムアプローチは、DCF法を利用する場合が多いでしょう。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは「市場」が示す企業価値を参考に、企業売却価値を決める方法です。マーケットアプローチには、4つの試算方法があります。

市場株価法

市場株価法は、上場企業の企業売却価値を算出する方法のひとつです。
毎日の終値データを1〜3ヵ月程度記録し、平均を算出して企業価値の参考にします。
期間を1〜3ヵ月程度と長めに取る理由は、一時的な株価の下落や上昇による影響をなくすためです。
上場企業の株価は、客観性が高い指標として一定の信頼がおける企業売却価値と言えるでしょう。

類似会社比較法

類似会社比較法は、M&Aで買い取る予定の企業が非上場企業である場合に活用される方法です。上場企業の中から買収予定企業と類似した企業を選定し、財務状況や売上高などを比較します。
類似項目としては、事業規模や顧客、取り扱い製品などです。
比較する企業によって企業売却価値の算出値に大きな差が出るため、企業選定には細心の注意を払いましょう。

類似取引比較法

類似取引比較法とは、類似企業のM&A事例を参考に企業売却価値を算出する方法で、別名「マルチプル法」とも呼ばれます。
M&Aの取引事例が多い事業の上場企業であれば、類似取引比較法が効果的です。
なぜなら、類似取引比較法は株価や事業内容などを比較して類似企業を選定し、その企業の価格設定理由や最終的な評価額を参考にできるからです。
事例が見つからない可能性もあるため、まずはM&Aの専門家に類似の取引事例がないか確認するとよいでしょう。

類似業種比較法

類似業種比較法は、国税庁が財産評価のために利用する方法です。
算出方法は以下のとおり。

1.企業売却価値を知りたい企業(非上場企業)と類似する上場企業を複数選択
2.類似する上場企業の株価を参考に、1株あたりの評価額を算出

類似業種比較法は、主に非上場企業の相続税を算出する方法です。M&Aで利用されることはほとんどありません。
なぜなら、類似業種比較法を利用すれば、誰が算出しても同じ評価結果になるからです。
M&Aでは、買い手と売り手双方の経済的な合理性を示す必要があるため、M&Aの評価方法として向かないでしょう。

コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の「純資産」を基準に企業売却価値を評価する方法です。
コストアプローチには、以下の試算方法があります。

時価純資産法

時価純資産法は、企業の持つ純資産を時価に換算して価値を算出する方法です。
純資産の中には資産と負債が含まれますが、将来得られるであろうキャッシュフローや無形資産は含まれません。
つまり、時価純資産法は企業の将来性に目を向けず、現在の価値に焦点を当てて価値を評価する方法と言えるでしょう。

M&Aでは、企業の将来性も加味して価値の算出をする必要があります。
そのため時価純資産法を利用する場合は、企業の営業利益やブランド力を加味した値を加味した計算が大切です。

簿価純資産法

簿価純資産法は、貸借対照表を利用して純資産の金額を算出する方法です。
中小企業や非上場企業は、株価によって企業売却価値を算出することが難しいため、簿価純資産法を用います。

注意すべきは、簿価純資産法で算出される価値が「過去の価値」という点。
貸借対照表に含まれる土地や有価証券は、取得当時の原価を示すため現在の価値と比較すると差が出る可能性が高いのです。
また、将来の収益に関する企業価値を踏まえられない点でも、M&Aで利用する際は注意しましょう。

簡易的な企業売却価値の試算方法

ここではM&Aを検討する段階で、対象企業の企業売却価値を試算する方法をご紹介します。
M&Aの多くは株式での取引となるので、上記の計算方法を知れば自分で株価の概算を出せます。
自己判断をする際は、より正確な価格に近付けるように2つの計算方法を併用しましょう。

純資産法

純資産法とは、貸借対照表を使って資産と負債の差額を求める算出方法です。

純資産法の計算では、下記の項目を利用します。

・純資産額(資産合計ー負債合計)

・資産のうち「現金及び預金、貸倒引当金控除後の短期及び長期貸付金」の合計金額

・負債のうち「短期借入金、社債、長期借入金」の合計金額

・営業利益

・純資産調整額(資産の含み益ー資産の含み損ー未計上債務)

・実効税率(一般的には38〜42%)

・資本コスト(一般的には7〜10%)

・発行済株式総数

【計算方法】

項目の名称利用する番号、計算方法
基礎数値貸借対照表の純資産額純資産額
調整計算評価のための調整額純資産調整額
調整後純資産額(A)純資産額+純資産調整額
評価額発行済株式総数発行済株式総数
一株あたりの価格A÷発行済株式総数
参考:[事業継承ガイドライン20問20答|中小企業庁]

純資産法での注意点として「貸借対照表に表記がない項目の価値は評価できない」という点があります。

収益還元法

収益還元法も、必要な書類が事業計画書のみであるため、M&A検討前に株価の概算を出すのに有効な手段です。

事業計画で発表した利益を想定して企業売却価値を算出できるため、複数の企業を比較して検討する場合の指標として役立ちます。収益還元法の計算方法は、以下のとおりです。

【計算方法】

項目の名称利用する番号、計算方法
基礎数値の計算損益計算書の営業利益営業利益
実効税率実効税率
営業利益に対する法人税率等(B)営業利益×実効税率
税引後営業利益(C)営業利益-B
調整計算資本コスト資本コスト
還元価値(D)C÷資本コスト
加算:預貯金や貸付金現金及び預金、貸倒引当金控除後の短期及び長期貸付金の合計金額
減算:借入金や社債短期借入金、社債、長期借入金の合計金額
調整後価値(E)D+現金及び預金、貸倒引当金控除後の短期及び長期貸付金の合計金額-短期借入金、社債、長期借入金の合計金額
評価額発行済株式総数発行済株式総数
一株あたりの価格E÷発行済株式総数
参考:[事業継承ガイドライン20問20答|中小企業庁]

注意すべき点は、事業計画でわかる情報は、計画が問題なく進んだ際に得られる将来の収益率ということ。
計画が中断されて事業計画から大幅にズレが生じた際は、収益還元法で算出した株価と現実とは違う結果になるでしょう。

まとめ

本記事では、M&Aにおける企業売却価値の算出方法について解説しました。

上場企業と非上場企業、市場的観点と将来的観点など、事例によって算出方法が複数存在します。企業売却価値を算出する場合は、自社の状況と合わせて今回紹介した9つの試算方法を組み合わせて利用するとよいでしょう。

より確実な価値をお知りになりたい方には、M&Aの専門家に頼ることをおすすめします。

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