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2023/09/14

事業譲渡の際に株主総会を開催する必要はある?株主総会が必要・不要な場合と議事録に記載すべき項目を解説

事業譲渡の際に株主総会を開催する必要はある?株主総会が必要・不要な場合と議事録に記載すべき項目を解説

組織再編による事業撤退や他の事業の拡大を考え、M&Aのいち手法である事業譲渡を検討する方が増えています。事業譲渡を行うことで、それまで培ったノウハウや従業員、取引先との関係も含めて相手企業へ譲り渡すことが可能です。事業譲渡の手続きを進めるには、取締役会の決議もしくは株主総会における特別決議が必要です。取締役会設置会社の場合、取締役会にて決議を行うことが可能ですが、場合によっては株主総会を開く必要があります。

本記事では、事業譲渡の手続きにおいて株主総会が必要になる条件や、法務手続きと事業譲渡の流れについて、わかりやすく解説します。

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事業譲渡において株主総会の特別決議が必要になる条件

一部の例外を除き、譲渡企業は事業譲渡を行う際に、株主総会において承認をとらなければいけない旨が会社法にて定められています(会社法467条)。
しかし株主総会が必要となるかどうかは、条件によって異なります。本項では株主総会が必要になる条件と不要な場合について解説します。

株主総会が必要となる場合

以下のいずれかの条件を満たす場合には、事業譲渡の効力発生日の前日までに株主総会による承認が必要です。会社法467条の各項目に、以下のように記載されています。

・譲渡企業の全ての事業を譲渡する場合
※重要であるかどうかの基準は、株主の重大な利害にかかわる事業再編か否かの観点から、量的及び質的双方の側面で判断されます。また、事業の帳簿上の価額が会社の総資産に対して1/5を超えているかどうかも基準となります。

・当該子会社株式の全部または一部を譲渡する場合
※以下の2つの条件を満たしている場合に株主総会が必要になります。

①譲渡する株式または持分の帳簿価額が、譲渡企業の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の1/5(これを下回る割合を定款で定めた場合にあってはその割合)を超えるとき
②譲渡企業が、効力発生日において子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき

・他社の事業を全て譲受する場合
・事業における全賃貸や経営の委任、損益を共通にするといった契約や変更、解約に関する手続きをとる場合
・対価として譲渡先へ交付する資産の帳簿価額の合計が、該当する株式会社の純資産額(法務省令で定めた算定方法による)の1/5を超えている場合
※以下の3つの条件を満たしている場合に株主総会を開く必要があります。

①譲渡する資産を株式会社を設立する前から保有している場合
②譲渡する事業に使用する場合
③会社が設立されてから2年以内である場合

株主総会が不要となる場合

前項の条件に該当していたとしても、例外となる場合があります(会社法468条に規定)。

譲受する側の会社が、事業譲渡しようとする会社の株式を9割以上保有している(特別支配会社である)場合、最終的に特別支配会社の意向通りになるため、手続きを省くために株主総会による決議は不要となります。

また、特別支配会社でない会社がすべての事業を譲り受ける場合でも、以下の項目Ⅰの割合が項目Ⅱと比べて1/5未満である場合には株主総会は不要とされます。

Ⅰ.他の会社の全事業を譲受する対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
Ⅱ.純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

ただし、一定数の株式を保有する株主から反対する旨の通知があった場合は、事業譲渡の効力発生日の前日までに株主総会が必要となります(会社法468条3項)。

事業譲渡の法務手続き

譲渡予定の事業の規模が大きい場合には、公正取引委員会への届出が必要なケースもあります。条件として、以下の3項目が挙げられます。

・譲受企業の国内売上高合計額が200億円を超える
・譲渡企業の国内売上高が30億円を超え、全ての事業を譲渡する
・他の会社の事業の重要部分を譲渡し,譲渡の対象部分に係る国内売上高が30億円を超える

※ここで述べる「重要部分」は、先述した会社法467条の記述とは異なります。

ここでは譲渡する資産が1つの経営単位として機能し、客観的に価値を有していると認められる場合を指します。なお、重要部分であっても国内売上高が30億円以下であれば届け出の必要はありません。

事業譲渡の手続きの流れ

1.「取締役会の決議」
取締役会を置いている会社では、事業譲渡の決定にあたり取締役会での決議が必要となります。取締役会を置かない会社では、2人以上取締役がいる場合過半数の決議を取ることで決定が可能です。

2.「事業譲渡契約の締結」
事業譲渡に関する社内決議が完了したら、譲渡側と譲受側双方において契約の締結を行います。契約の締結だけでは効力は発生せず、所定の手続きや期間を経た後となります。

3.「臨時報告書の提出」
有価証券報告書の提出義務があり、事業譲渡によって譲渡側または譲受側で前年度末の資産額が3割以上変動(増減含む)する場合、または売上高が前年度実績より1割以上変動(増減含む)する場合、内閣総理大臣へ臨時報告書を提出します。

4.「公正取引委員会への届出」
一定の規模を有する会社は、事業譲渡にあたり公正取引委員会への届出も必要です。届出の受理後30日以上を経たのち、事業譲渡が可能となります。

5.「株主への通知または公告」
事業譲渡の手続きが始まったら、効力が発生する20日前までには株主等へ公告・通知を行い、買取請求の機会が認知されるようにします。

6.「株主総会の特別決議」
株主総会が必要なケースで行います。条件は先述した通りです。

7.「監督官庁による許認可」
事業譲渡完了後、譲渡した事業の許認可について再び取得する必要がある場合、監督官庁へ申請します。

8.「財産等の名義変更手続き」
譲渡側から譲受側へ移動する資産のうち、不動産など名義変更が必要なものは登記の変更手続きが必要です。

このほか、株主名簿や役員異動に伴う登記の変更手続きなど、附随する必要な手続きはすべて行う必要があります。

▷関連記事:事業譲渡の手続きとは?進め方や期間、債権者保護の手続きまでを解説

株主総会の議事録に記載する項目

事業譲渡にあたっては、株主総会において議事録を作成する義務が会社法によって定められています。

議事録の作成方法は、書面もしくは電磁的記録(データ)のいずれかになります。書面で作成する場合、会社法上は押印を義務付けられていません。しかし、定款で押印義務者を定めている場合は規定に従いましょう。

株主総会の議事録においては以下の項目を入れる必要があります。

・株主総会が開催された日時及び場所
・株主総会における議事経過の要領及びその結果
・会社法の規定により定められている事項で、株主総会において述べられた意見または発言があるときはその意見または発言の内容の概要(会社法施行規則72条3項)
・株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
・議長の名前
・議事録を作成した取締役の氏名

まとめ

会社の状況によって事業譲渡を行った際に株主総会を開く必要があるかどうかは異なります。会社法467条で詳細に定められた内容について、自社が該当するのか否かをきちんと確認しましょう。また、事業譲渡の手続きや議事録の作成についても、同様に会社法にて定められています。この手続きを間違えてしまうと正しく権利が譲渡されないので、注意しましょう。

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