よくわかるM&A

2023/09/29

個人事業主の事業承継のやり方や流れを解説|承継で注意するべきポイントとは

個人事業主の事業承継のやり方や流れを解説|承継で注意するべきポイントとは

店舗を構えて飲食店を経営されている方、デザイナーやシステムエンジニアとして個人で活躍されている方など、近年では多くの方が個人事業主として事業を経営されています。

ただし、引退を考え、事業承継を検討されている方の中には、どのように事業を引き継げばよいかわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、個人事業主の事業承継のやり方や流れ、注意するべきポイントなどを解説します。個人事業主で事業承継を考えている方はぜひ参考にしてください。

\資料を無料公開中/
年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
資料
【主なコンテンツ】
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと

会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
1分で入力完了!

個人事業主の事業承継のやり方

個人事業主は法人と異なり、経営者が自分の名前で事業を行い、事業用資産も個人で所有している点が特徴です。事業用資産を後継者へ引き継ぐ場合には以下の3つの方法があり、資産の移転に伴う税金の問題も発生します。

・相続
・贈与
・売却(M&A

それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

●相続

相続は、個人事業主が亡くなった後に、相続によって後継者へ事業を承継する方法です。
遺言を残し、財産の承継先を明らかにしている場合には、後継者への事業承継を比較的円滑に進めることができます。一方、遺言がない場合は遺産分割協議が必要となり、事業に必要な資産を後継者へ集中して承継できないケースもあります。そのため、相続で事業承継をする場合には、遺言の活用が重要なポイントです。
なお、相続で承継される資産には相続税が課されます。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える金額には相続税が発生するため、税負担に必要な資金の確保が必要です。

●贈与

贈与は個人事業主が存命のうちに、後継者へ無償で不動産などを承継する方法です。自分の子どもに生前贈与する場合の他、経営能力に優れた従業員や外部の人間、信頼できる親族などへ贈与する場合などがあります。
店舗や敷地など、事業用資産を贈与した場合には評価額に応じて後継者に贈与税が課されます。生前贈与では暦年課税贈与や相続時精算課税贈与などの制度があるので、必要に応じて活用しましょう。

●売却(M&A)

売却(M&A)は、個人事業主が後継者に事業を売却して承継する方法です。従業員や外部の個人・企業に事業を承継する際によく採用されています。
個人事業主は後継者から対価を得られるため、創業者利益の獲得、引退後の生活資金の確保などの利点があります。なお、売却益には所得税が課されます。

個人事業主の事業承継の流れ

個人事業主の事業承継の流れは以下のとおりです。

1.後継者の確保

2.廃業の手続き

3.後継者の開業の手続き

それぞれを項目ごとに解説します。

1.後継者の確保

個人事業主の事業承継では、まず後継者の確保が大切です。先代の個人事業主と事業を引き継ぐ後継者の関係は、一般的に親子が多くなっています。中小企業庁が公表している「小規模企業白書」(2019年版)によると、個人事業主の親子による承継は76.7%と高い割合を示しています。これは小規模な法人と比較しても高い数値です。

ただし、子どもを含め、親族に後継者が見つかるとは限りません。親族に後継者が見つからない場合は、第三者への承継も選択肢として考慮する必要があります。

近年は、後述する後継者人材バンクやマッチングサイトなどのサービスがあり、M&A仲介会社などの専門業者も存在します。必要に応じてこのようなサービスや専門業者を利用することも、個人事業主における事業承継の手段の一つです。

なお、先代の個人事業主が築きあげた事業を短期間で後継者に承継するのは簡単なことではありません。後継者の育成や経験・ノウハウの伝達などを十分に実施してから事業を承継するようにしましょう。

2.廃業の手続き

個人事業主が事業を承継する場合には、税務署や各種行政機関に対して廃業手続きをする必要があります。税務面での主な廃業手続きは以下のとおりです。

・個人事業の開業・廃業等届出書

・青色申告の取りやめ届出書

・事業廃止届出書(消費税)

・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

・所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

その他、社会保険や労働保険に関しては年金事務所やハローワーク、屋号や商号など登記に関する手続きが必要な場合は法務局など、関連する行政機関で手続きを行います。

3.後継者の開業の手続き

先代の個人事業主の廃業手続きとともに、事業を引き継いだ後継者は開業手続きを実施します。税務面での主な開業の手続きは以下のとおりです。

・個人事業の開業・廃業等届出書

・青色申告承認申請書

・青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

・源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書

・消費税課税事業者選択届出書

・消費税簡易課税制度選択届出書

上記の他、従業員を雇用する際には給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出が必要となります。また、必要に応じて承継した資産や契約の名義変更などの手続きを行います。

個人事業主の事業承継で注意するべきポイント

個人事業主の事業承継では、後継者が負担する相続税や贈与税が問題となる場合が多くなっています。国は事業承継に関してさまざまな支援策を打ち出しているため、積極的に活用しましょう。また、個人事業主により異なる手続きも注意すべき点です。

●税負担への対策

個人事業主が事業承継の際に活用できる税制度には下記のようなものがあります。

制度名内容
個人版事業承継税制・個人事業主が一定の事業用資産の承継で支払う贈与税や相続税を猶予・免除する制度
・青色申告に係る事業の継続などの条件がある
小規模宅地等の特例・一定の宅地を相続した場合に相続税の課税価格が50~80%減額される制度
・相続の開始直前に事業用に使用されていた宅地などの条件がある
暦年課税贈与・財産を暦年課税贈与で生前贈与する場合、年間110万円の基礎控除を受けられる制度
・相続時精算課税制度との選択になる
相続時精算課税贈与・贈与者が60歳以上の父母または祖父母、受贈者が18歳以上かつ贈与者の推定相続人である子または孫の場合に適用可能な制度
・累積2,500万円までの贈与額が特別控除される


特に土地や建物などを承継する場合は、承継するものが金銭ではないため、承継後の相続税や贈与税の支払いに困難が伴う場合があります。上記のような制度を利用すると税の猶予や控除が受けられ、税負担の軽減が可能です。

●必要な手続き・書類は個人事業主で異なる

個人事業主の廃業の手続きは、基本的に個人事業の開業・廃業等届出書によりますが、青色申告をしている場合は青色申告の取りやめ届出書、消費税の課税事業者だった場合は事業廃止届など、個人事業主の状況により異なる手続きが必要なため、ご注意ください。

また、許認可が必要な業種では、所轄の行政機関での手続きが必要となります。例えば、理容・美容業では保健所や都道府県の担当部局への届出が、薬局は都道府県の許可が必要です。先代の個人事業主や行政書士などの専門家と相談しつつ、手続きを進めましょう。

個人事業主が事業承継で活用できるもの

個人事業主の事業承継では、子どもや親族など後継者が決まっている場合もあれば、後継者が決まっていない場合もあります。ここでは、個人事業主の方が事業承継の後継者探しで活用できるサービスを紹介します。

●後継者人材バンク

各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者人材バンクの事業を実施しています。後継者人材バンクとは、後継者不在の事業者の方と創業を希望する方をマッチングする仕組みです。

後継者人材バンクでは、創業を希望する方とのマッチングにくわえ、店舗や設備などの承継や経営理念・ノウハウなど知的資産の承継のサポートもあわせて実施することとしています。事業を存続したいけれども、後継者をなかなか確保できない個人事業主の方に役立つ制度です。

●マッチングサイト

後継者人材バンクのような公的な制度以外にも、民間のマッチングサイトも利用できます。マッチングサイトとは、インターネット上のシステムを利用し、事業を譲渡したい方と譲受したい方がマッチングできるサービスです。

マッチングサイトに登録すると、事業の譲受を希望する方とオンライン上でコンタクトをとれます。第三者へ事業を承継する際の選択肢の幅が広がるサービスとなっています。

まとめ

個人事業主の事業承継には、相続・贈与・売却(M&A)の3つの方法があります。事業用資産を後継者へ承継する場合には、相続では相続税、贈与では贈与税の対象となるため、注意が必要です。売却(M&A)して事業を承継する場合には、売却して得た対価に応じて所得税が課されます。

事業承継を行う際には、後継者の確保と事業の廃業・開業の手続きが必要です。後継者が見つからない場合には、後継者人材バンクやマッチングサイトを活用する方法があります。

個人事業主で事業承継をする場合、税負担への対応や事業により異なる手続きなど、専門的な知識を要するケースがあります。事業承継で不明な点、わからない点があるときはM&Aアドバイザーへのご相談をおすすめします。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望の方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談