業界毎の事例

2025年7月4日

スポーツチームのM&Aとは?プロの野球球団やサッカーチームの事例を紹介

スポーツチームのM&Aとは?プロの野球球団やサッカーチームの事例を紹介

M&A(企業の合併・買収)は、ビジネスの再編・成長戦略に欠かせない手段です。近年では、スポーツビジネスの分野でもその活用が進んでおり、プロ野球球団やJリーグクラブの買収も注目を集めています。

本記事では、プロ野球球団やサッカークラブの買収事例を、その背景や目的、買収後の成果などにも触れて解説します。

安田 亮
この記事を監修した専門家
公認会計士・税理士・1級FP技能士
安田 亮
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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スポーツチームでM&Aが盛んな理由

スポーツチームでM&Aが盛んな理由としては、M&Aによって大きなシナジー効果が得られ、買収する企業と買収される球団の双方にとって成長が見込めるためです。

買収する企業にとってM&Aは、自社の知名度向上やブランディングといった目的があります。成長中の企業は誰もが知っている球団やチームを買収することで知名度を上げ、さらなる成長を遂げることができます。また、買収される球団やチームにとっても、買収する企業が持つ集客力や販売チャネル、経営ノウハウを手に入れることで、より効率的に観客を動員することができます。

※シナジー効果とは、相乗効果や協働作用とも言われ、複数の事業が掛け合わされることによる、単純な足し算以上の効果のこと。

▷関連記事:M&Aにおけるシナジー効果とは?種類や成長戦略のための分析方法、成功事例を紹介

プロ野球球団のM&A事例

日本のプロ野球球団は現在12球団ですが、そのうちの複数の球団は、IT企業によって運営されています。

野球は他のスポーツと比べても人気が高く、買収する企業は球団の持つ圧倒的な知名度を求めて買収に踏み切ります。ここでは、プロ野球球団のM&A事例についてご紹介します。

1.株式会社ディー・エヌ・エーによる横浜ベイスターズの買収

2011年、株式会社ディー・エヌ・エーは株式会社東京放送ホールディングスおよび株式会社BS-TBSから株式の一部を取得する形で、横浜ベイスターズの買収を行いました。買収後、株式会社ディー・エヌ・エーは自社が持つデータ分析やマーケティングの強みを生かしてユニークなイベントを多く行いました。具体的には女性に特化したイベントの開催やチケットの返金サービス、球場でのオリジナルフードの開発などです。

また、2015年には横浜スタジアムを買収し、球団と球場を一体としたビジネスを展開することで観客動員数を増やしていきました。その結果、買収以前は赤字であった経営をわずか5年で黒字化することに成功しました。さらには球団自身の成績も向上し、2016年・2017年にはCS進出、直近の2024年には日本シリーズ優勝を果たし、好循環へとつなげています。

その後も、株式会社ディー・エヌ・エーのスポーツ事業は業績を伸ばしています。2024年3月期の決算では、スポーツ事業の売上収益は全体の20%を占めました。ゲーム事業(39%)やライブストリーミング事業(31%)に次ぐ割合であり、スポーツ事業は株式会社ディー・エヌ・エーの主力事業領域へと成長しています。

2.ソフトバンク株式会社による球界参入

2005年、ソフトバンク株式会社は経営不振であった株式会社ダイエーから当時の福岡ダイエーホークスを買収し、福岡ソフトバンクホークスが誕生しました。ソフトバンク株式会社は2006年にボーダフォン日本法人を買収して携帯電話市場に本格参入しており、この球団買収により日本全国での知名度を獲得、全国的な携帯電話のマーケットシェアを拡大させました。

また、2012年には莫大な球場使用料の削減を目的として、シンガポール政府不動産投資会社GICリアルエステートから約870億円で本拠地球場である福岡Yahoo! JAPANドーム(現在はみずほPayPayドーム福岡)を買収しました。買収後、球場での大迫力のビジョンの設置や多彩な座席の販売、全照明のLED化などを行い、2017年には史上2番目となる約253万人の来場者数を記録しました。

福岡ソフトバンクホークスの売上高は、2024年2月期に350億9,100万円を記録し、国内のプロ野球球団の中でも有数の規模を誇ります。

その他、ベースボールキッズへの協賛やメセナシート(協賛企業から提供された観戦チケットを利用して、各種スポーツ団体・福祉団体を招待する事業)の活用など、企業のCSR活動の機会提供にも積極的です。

3.大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの球団統合

2004年のシーズン終了後、プロ野球オリックス・ブルーウェーブと大阪近鉄バファローズの両球団が合併し、「オリックス・バファローズ」が誕生しました。これは、企業が所有するスポーツチーム同士による日本プロ野球初の球団統合(事実上のM&A)であり、大きな社会的注目を集めました。

当時、近鉄は経営状況の悪化を背景に球団の単独経営が困難となり、オリックスとの合併交渉が進められました。球団の合併はファンの反発やリーグ構成の変更など多くの課題を伴いましたが、最終的には2004年末に正式に統合が完了し、パ・リーグでの球団数維持が可能となりました。

この事例は、企業によるプロスポーツへのM&Aが実際に成立した数少ないケースであり、チームブランドの継続性やファン対応の重要性、多数のステークホルダーとの調整が求められることを示しています。

現在も「オリックス・バファローズ」として球団経営は続いており、2021年以降3年連続でCS進出を果たすなど、再び強豪球団として注目を集める存在となっています。

プロサッカーチームのM&A事例

サッカーチームでも、国内外を問わず多くの買収が行われています。企業の買収目的は知名度獲得のみならず、スポーツ分野への進出や地域活性化にありますここでは、日本企業によるサッカーチームの買収事例についてご紹介します。

1.楽天株式会社によるヴィッセル神戸の買収

2004年にはプロ野球に参入して東北楽天ゴールデンイーグルスを設立し、野球業界でも大きな成功を収めてきた楽天株式会社ですが、2014年にJ1リーグクラブチームのヴィッセル神戸を運営する株式会社クリムゾンフットボールクラブを買収してJリーグにも参入しました。

楽天グループのマーケティング展開や東北楽天ゴールデンイーグルスの運営を通じて蓄積してきたプロスポーツ事業の経営ノウハウを活かして、ヴィッセル神戸の強化やホームタウンである神戸の活性化を図ることを目的としています

楽天は現在プロ野球球団とJリーグサッカーチームの両方を保有していますが、2017年9月にはアメリカのプロバスケットボールチーム「ゴールデンステート・ウォリアーズ」とのパートナー契約を締結するなど、今後もさらにスポーツ事業に力を入れていくでしょう。

なお、2019年には台湾のプロ野球チームである「ラミゴモンキーズ」を買収しています。台湾では「台湾楽天市場」を中心にエコシステム(経済圏)の構築が進んでいますが、人気球団の買収を契機にさらなるエコシステムの拡大を目指しています。

2.RIZAPグループ株式会社による湘南ベルマーレ買収発表

2018年4月、RIZAPグループ株式会社は、当時の筆頭株主であった株式会社三栄建築設計とともに「株式会社メルディア RIZAP 湘南スポーツパートナーズ」という合弁会社を設立し、J1リーグに所属する湘南ベルマーレの経営権を取得しました。

RIZAPグループ株式会社は、Jリーグ業界参入により、多くのグループ会社を抱える独自のマーケティングノウハウを活用して新たな観客やサポーターの獲得を行っています。

また、RIZAPグループ株式会社としてもトップアスリートを対象としたトレーニングメソッドの開発に本格的に取り組み、そこで得られた技術や知見を一般の方向けのサービスや商品の開発へつなげていくとしています。

RIZAPグループ株式会社は、2025年シーズンもユニフォームパートナーを継続中です。チームへの支援とともに、同社が展開するコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」を通じて、湘南地域の活性化を進めています。

3.株式会社サイバーエージェントによるFC町田ゼルビア買収

2018年10月、株式会社サイバーエージェントは、J2リーグで活動するFC町田ゼルビア(株式会社ゼルビア)を約11.4億円で買収しました。なお、議決権の取得割合は80%とされています。この買収による、スタジアムをはじめとしたインフラ整備や経営基盤の強化、積極的な補強によって、FC町田ゼルビアは2023年のJ2リーグで優勝を果たし、2024年シーズンでJ1昇格を実現しました。また、シーズンを通じた健闘の結果、J1リーグでも3位の成績を残し、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場権を獲得しました。

株式会社サイバーエージェントは、自社のインターネットサービスを用いてサポーターへの情報提供や新たな客層の確保も目指しています。

その他、知名度の向上はもちろん、Jリーグに参入することで自社が持つインターネットテレビ局「ABEMA」のコンテンツの充実を図ることを目的としており、双方がシナジー効果を期待してのM&Aであると言えるでしょう。

4.合同会社DMMによるベルギーのサッカーチーム買収

合同会社DMMは動画サービスやゲームを主軸として事業を行っていますが、それ以外にも英会話・仮想通貨・競馬・競輪・エネルギー事業など、多岐にわたるサービスを提供しています。そんな中、2017年11月にベルギー1部リーグのサッカーチームSTVV(シント=トロイデンVV)の経営権を取得したことを発表しました。

合同会社DMMは単に広報のためだけにチームを買収したわけではなく、サッカー事業から収益を得ることが可能だと判断し買収に踏み切りました。なお、同社が持つネットワークや行動力を通じて日本選手の獲得や日本企業との連携を行い、チームの強化を進めるとしています。

合同会社DMMによる買収以降、シント=トロイデンVVには多くの日本選手が移籍しました。欧州ビッグクラブへ移籍した選手や日本代表に選出された選手を輩出するなど、サッカー界の発展に貢献しています。

まとめ

近年、IT業界の成長が著しく、多くのIT企業が続々とスポーツチームに参入しています。一見無関係に見える2つの業界も、スポーツチームが持つ知名度という強みと、IT業界が持つマーケティング・経営ノウハウ・ネットワークという強みが合わさることで、大きな成長を遂げています。買収する企業側としても知名度を得られるだけでなく、球団やチームから大きな収益を上げることも可能です。

このように異なる業種間によるM&Aにおいても、お互いの長所を活かすことでシナジー効果を発生させることができます。今後、スポーツチームに限らず、大きな成長へとつながる異業種間のM&Aも広がっていくのではないでしょうか。

ただし、M&Aが成立するまでには、法務や税務、財務などの専門的な知識が必要な場面が多く存在します。fundbookでは、M&Aの豊富な実績のもと、各業界に精通した専門チームや士業専門家がサポートします。M&Aを検討する企業の方は、ぜひfundbookにご相談ください。

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