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2024/07/02

不動産M&Aとは?手法からメリット・デメリットや最新事例まで紹介

不動産M&Aとは?手法からメリット・デメリットや最新事例まで紹介

不動産M&Aは、不動産を取得する1つのスキームとして注目される手法です。不動産M&Aでは、所有権そのものではなく、不動産を所有する法人ごと譲り受けます。一般的な不動産売買と比較して、税制面での有利さが手法に採用される理由の1つです。

本記事では、不動産M&Aの概要や手法、メリットやデメリットを解説します。近年の不動産業界におけるM&A事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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不動産M&Aとは?

不動産M&Aとは不動産の取得を目的に行われるM&Aで、譲渡企業の経営権や事業の取得を目的に行われる通常のM&Aとは目的が異なります。

通常のM&Aでも譲渡企業が所有する不動産は引き継がれますが、あくまで主眼は経営権であり、不動産が目的ではありません。
不動産を目的としたM&Aが採用される背景には、一般的な不動産売買で不動産を取得するよりも、M&Aで取得したほうが税制面のメリットがあるためです。廃業を検討する企業でも、不動産M&Aが採用される場合があります。

不動産M&Aの手法と税金

不動産M&Aで選択されるスキームは、株式譲渡と会社分割が一般的です。

株式譲渡は譲受企業が譲渡企業の株式を取得して、企業ごと不動産を引き継ぎます。会社分割は譲渡企業が持つ権利義務の全てまたは一部を、譲受企業に引き継ぐスキームです。

株式譲渡と会社分割では、次の税金が課されます。

M&Aのスキーム課される税金
株式譲渡所得税
会社分割適格要件を満たす場合課税関係は生じない
適格要件を満たさない場合法人税または所得税

株式譲渡のスキームを選択した場合、株主の譲渡所得に20%の所得税が課されます。

通常の不動産取引の場合は、売却益に対して約30~35%程度の法人税と、売却に伴い株主が配当を受ける場合には所得税が課されるため、不動産M&Aのほうが税制面で有利です。
会社分割は、組織再編税制の適格要件を満たした場合、原則課税関係が生じません。ただし、適格要件を満たさない場合は、法人に対する法人税や株主に対する所得税が課される場合があるため、注意が必要です。

▷関連記事:株式譲渡とは?株式譲渡と事業譲渡の違いや注意事項を解説【動画付】
▷関連記事:会社分割とは?手続きの流れ・吸収分割と新設分割の期間や事業譲渡との違いを解説

不動産M&Aのメリット・デメリット

メリットデメリット
譲渡企業・大幅な節税につながる
・廃業コストを軽減できる
・譲渡先の選定にハードルがある
・手続きに時間がかかる
譲受企業・税制面の効果を得られる
・購入費用の軽減につながる
・簿外債務などのリスクがある
・デューデリジェンスなどの費用がかかる

不動産M&Aにはいくつかのメリットがある一方、デメリットも存在します。経営戦略として不動産M&Aを採用する場合は、事前にメリットとデメリットを比較・検討しましょう。

譲渡企業(売り手)のメリット

譲渡企業のメリットは、通常の不動産売買と比較して大幅な節税の可能性がある点です。

会社清算を選択した場合は、設備の処分費用や登記の費用、解散・清算に必要な事務手続きの労力がかかります。一方、廃業時に不動産M&Aを活用すると、廃業にかかる費用や労力の削減が可能です。

譲渡企業(売り手)のデメリット

譲渡企業が不動産M&Aを利用する場合、譲渡先とのマッチングにハードルがある点がデメリットです。その他、不動産M&Aでは事業用の不動産だけではなく、資産や負債、許認可なども引き継ぐため、完了するまで時間を要する側面を持ちます。

譲受企業(買い手)のメリット

譲受企業のメリットは、譲渡企業と同様に税制面での効果が得られる点です。通常の不動産売買では登録免許税や不動産取得税などが課されますが、不動産M&Aではこれらの税金は通常課されません。

また、譲渡企業が廃業を機に不動産M&Aを活用する場合、譲受企業は廃業コストを考慮したうえでの交渉が可能です。場合によって、不動産の購入費用の軽減につながります。

譲受企業(買い手)のデメリット

譲受企業のデメリットには、譲渡企業の簿外債務や偶発債務などのリスクまで引き継ぐ可能性が挙げられます。デューデリジェンスを行う場合、会計士や税理士などの専門家に支払う費用がかかる点もデメリットです。

不動産業界のM&A事例【2024年】

不動産M&Aとは?手法からメリット・デメリットや最新事例まで紹介

ここでは、直近の不動産業界のM&A事例をご紹介いたします。

エニグモによるNon Brokersの株式取得

-譲渡企業名/概要
Non Brokers株式会社/不動産売買プラットフォーム運営

-譲受企業名/概要
株式会社エニグモ/インターネットビジネスの企画・開発・運営

-M&A実施時期
2024年5月22日

-M&Aの目的・背景
株式会社エニグモは、Non Brokers株式会社の既存株式からの株式取得および第三者割当増資の引き受けを行いました。
株式会社エニグモは、インターネットビジネスの企画や開発を展開しており、プラットフォームの運営やデジタルマーケティングに強みを持つ会社です。
Non Brokers株式会社の不動産売却プラットフォーム「いえうり」や不動産購入サイト「チョク買い」とのシナジー効果が見込めること、新たな収益源を構築することなどの理由から、Non Brokers株式会社の株式を取得しています。

-M&A手法
株式譲渡

ランディックスによるリンネの子会社化

-譲渡企業名/概要
リンネ株式会社/中古マンションの売買仲介および売買

-譲受企業名/概要
株式会社ランディックス/不動産売買事業や不動産仲介事業など

-M&A実施時期
2024年4月9日

-M&Aの目的・背景
株式会社ランディックスは株式譲渡契約をリンネ株式会社と締結し、同社を完全子会社化しました。
株式会社ランディックスは、東京の城南エリアを中心に戸建住宅の売買や売買仲介を行う会社です。一方、譲渡企業のリンネ株式会社は独自開発した顧客管理システムで顧客との高いリレーション力を保有していました。
株式会社ランディックスは事業エリアの拡大を企図しており、リンネ株式会社が持つ顧客管理システムの構築力と営業管理能力の取得により、今後の事業拡張につなげようとしています。

-M&A手法
株式譲渡

HYUGA PRIMARY CAREによるMedicalMindの子会社化

-譲渡企業名/概要
MedicalMind株式会社/不動産賃貸業

-譲受企業名/概要
HYUGA PRIMARY CARE株式会社/在宅訪問薬局事業やプライマリケアホーム事業など

-M&A実施時期
2024年1月9日

-M&Aの目的・背景
HYUGA PRIMARY CARE株式会社は不動産賃貸業を営むMedicalMind株式会社の株式を取得し、子会社化しました。
HYUGA PRIMARY CARE株式会社は在宅訪問薬局事業のほか、病床と同程度の職員を配置するプライマリケアホーム事業を展開しています。
プライマリケアホーム事業のうち2施設をMedicalMind株式会社と建物賃貸借契約を結んでいましたが、同社を子会社化することにより、施設運営と保有を一体化させた事業運営を目指しています。

-M&A手法
株式譲渡

アーバネットコーポレーションによるケーナインの子会社化

-譲渡企業名/概要
株式会社ケーナイン/不動産の売買、仲介、賃貸借、管理など

-譲受企業名/概要
株式会社アーバネットコーポレーション/不動産開発販売、ホテル事業など

-M&A実施時期
2024年2月29日

-M&Aの目的・背景
株式会社アーバネットコーポレーションは株式会社ケーナインが発行する全普通株式を取得し、子会社化しました。
株式会社アーバネットコーポレーションは、東京23区における投資用ワンルームマンションの開発を中心に事業を展開する会社です。株式会社ケーナインは、東京都南西部および神奈川県北部で、戸建の分譲事業などを行っています。
株式会社ケーナインの子会社化により、同社がシェアを持つエリアへの事業拡大ならびにBtoC分野の経営資源獲得を目的としています。

-M&A手法
株式譲渡

株式会社スピナによる株式会社安川ビルサービスの株式取得

-譲渡企業名/概要
株式会社安川ビルサービス/ビルメンテナンスサービス

-譲受企業名/概要
株式会社スピナ/不動産賃貸業

-M&A実施時期
2022年6月1日予定

-M&Aの目的・背景
西日本鉄道の子会社で不動産賃貸業を行う株式会社スピナは株式会社ドーエイの子会社である株式会社安川ビルサービスの全株式を取得しました。
安川ビルサービスは設立以来、清掃、一般・産業廃棄物収集運搬、建物管理、剪定・草刈など、安川グループをはじめとした顧客へのサービスを提供していました。
一方、スピナは、北九州における活動の歴史と、その中で培ってきた信頼を背景に、不動産賃貸業、総合ビル管理業、防疫業、緑化環境事業など幅広いサービスを提供する会社です。
本株式譲渡により、安川グループの資本効率化を図るとともに、スピナが保有する総合ビル管理業にかかわる豊富な経験とネットワークを活用することによる更なる品質、効率、サービスの向上を目的としています。 

-M&A手法
株式譲渡

LIV‐UPによるユニバーサルトラストの子会社化

-譲渡企業名/概要
ユニバーサルトラスト株式会社/不動産コンサルティング事業

-譲受企業名/概要
株式会社Liv-up/居住用不動産事業・収益用不動産事業

-M&A実施時期
2022年4月1日

-M&Aの目的・背景
株式会社Liv-upはユニバーサルトラスト株式会社の株式を取得し、2022年4月1日付けで子会社化しました。
ユニバーサルトラストは「洗練されたデザイン」「機能性/利便性」のバランスを追求したデザイナーズマンションの設計、開発、賃貸管理、不動産投資・相続に関するコンサルティングを行う企業です。
一方、Liv‐upは、東京都港区・渋谷区・目黒区・世田谷区等高い資産性を確保できる地域を中心に、高品質で安価な戸建住宅や収益不動産の開発販売を手がける企業です。
本件により、Liv-upはユニバーサルトラストの設計力を活かしたマンションの開発を積極化させることで成長を実現するだけでなく、開発用地の仕入営業を相互に協力することによりシナジー効果で案件組成件数の最大化を目指す狙いです。また、質の高い賃貸管理機能を有するユニバーサルトラストを起点にグループとしての賃貸管理戸数を拡大させ、安定収益の基盤とすることでグループとしての企業価値の最大化を目指します。

-M&A手法
株式譲渡

キムラタンによる不動産賃貸業の和泉商事の子会社化

-譲渡企業名/概要
和泉商事有限会社/不動産賃貸業

-譲受企業名/概要
株式会社キムラタン/ベビー・子供アパレル事業など

-M&A実施時期
2022年4月1日

株式会社キムラタンは、不動産賃貸業の和泉商事有限会社の全株式を取得し子会社化しました。

和泉商事有限会社は1970年設立で、全国に約70の収益物件を所有する不動産賃貸業を営む企業で、安定した収益を計上しています。
一方、株式会社キムラタンは1925年の創業以来、ベビー・子供アパレル事業をはじめ保育事業など幅広く展開する企業です。直近ではアパレル事業の業績悪化に伴い事業ポートフォリオの転換を決め、アパレル事業を大幅に規模縮小し、2021 年2月に事業を開始した不動産事業を第2の柱事業として拡大を図っていました。
本件により、全国に約 70 の収益物件を所有し、安定収益を計上する和泉商事の全株式を取得することで、赤字体質のアパレル事業の縮小と不動産事業への注力を加速させ、ブランド価値の回復・再起を狙っています。

-M&A手法
株式譲渡

綿半HDによる株式会社AICの連結子会社化

-譲渡企業名/概要
株式会社AIC /建物管理・不動産売買

-譲受企業名/概要
綿半ホールディングス株式会社 /小売事業・建設事業など

-M&A実施時期
2022年4月1日

-M&Aの目的・背景

綿半ホールディングス株式会社は、株式会社AICの全株式を取得し、2022年4月1日に連結子会社化しました。
AIC は、オフィスやテナントビル、マンション、アパート等の建物管理 ・不動産売買を行う企業でありプロパティマネジメントの提案やリノベーションによる収益性と資産価値の
高い物件へのバリューアップを得意とする企業です。
綿半ホールディングスは、本件により両社の長年培った経営資源や強みを相互活用することによる不動産情報の集約、物件管理機能の強化を図り、グループの更なる企業価値向上を推進する狙いです。

-M&A手法
株式譲渡

インベスコアグループによるTECRA株式会社のグループ会社化

-譲渡企業名/概要
TECRA/不動産クラウドファンディング事業

-譲受企業名/概要
インベスコアグループ/金融業・不動産開発業
-M&A実施時期
2022年2月22日

-M&Aの目的・背景
中央アジアにおいて広く事業展開を行っているインベスコアグループはTECRA株式会社との資本提携を行いました。
株式会社TECRAは、不動産を投資対象とするクラウドファンディングのプラットフォーム「TECROWD」の運用を行う企業です。
一方インベスコアグループはモンゴル・カザフスタン・キルギス・日本で事業を展開する金融業、不動産開発業を営む企業です。
株式会社TECRAは以前より、自身の持つプラットフォーム「TECROWD」の運用にあたって、対象不動産のマスターリースをインベスコアグループの一社であるInvesCore Property社(モンゴル)と締結する等、インベスコアグループと業務提携を進めていました。
本件によりインベスコアグループの一員となることで、同グループの有する国際的なネットワークの活用による新たな不動産投資の機会創出、共同での開発プロジェクトの強化・推進、国内外における投資事業拡大、といった様々な協働の機会が見込まれます。

GA TECHNOLOGIESによる不動産・資産形成コンサルのリコルディの完全子会社化

-譲渡企業名/概要
株式会社リコルディ/不動産コンサルティング事業

-譲受企業名/概要
株式会社GA technologies/

-M&A実施時期
2022年3月1日

-M&Aの目的・背景
株式会社GA technologiesは株式会社リコルディの株式を取得し、2022年3月に完全子会社化しました。
株式会社リコルディは「『人』と『資産』の価値をつなぐ」を経営理念とし、不動産や資産形成のコンサルティングの事業を行う企業です。単なる不動産販売に留まらず、顧客のライフプランにおけるオーナーシップ形成を支援しています。
一方、株式会社GA technologiesは中古不動産領域で、住まいにまつわるサービスをワンストップで提供する不動産テック総合サービスを提供する企業で、東南アジアなどに幅広く業務を展開する企業です。
本件を通じて、顧客の資産形成ニーズに応えるだけでなく、不動産取引のDX化を推進し、ひいては政府が推進する国内の投資環境の整備と不動産価値向上への寄与を目指しています。

-M&A手法
 株式譲渡および株式交換

まとめ

不動産M&Aは一般的なM&Aと異なり、不動産の取得を目的としたM&Aです。譲渡企業と譲受企業の双方に税制面のメリットがあることもあり、不動産を取得する選択肢の1つとして活用されています。

一方、譲渡企業にとっては不動産M&Aの譲渡先探しに時間がかかる点がデメリットであり、譲受企業にとっては簿外債務や偶発債務のリスクが考えられます。不動産M&Aを活用する場合は、メリットとデメリットの双方を考慮したうえで進めましょう。

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