宿泊業界の現状と鮮明になる「経営の二極化」
インバウンド需要の回復により市場の関心が高まる一方で、宿泊業界では「経営の二極化」が鮮明になっています。2025年に発生した宿泊業の倒産件数は89件と2年連続で増加し、休廃業・解散を含めると計267件の事業者が市場から離脱しました。特に、大都市圏に比べてインバウンド需要が限定的な地方での倒産・廃業が75.3%を占めており、高単価・高付加価値を求めるニーズに応える設備投資ができない施設を中心に、淘汰が進んでいるのが現状です。

深刻化する「老朽化」問題と、M&Aによる事業再生
宿泊業は、5〜10年間隔でのリノベーションが不可欠な装置産業です。しかし、人手不足や原材料高・光熱費の高騰、さらにはコロナ禍の実質無利子・無担保融資の返済負担などにより、設備への投資余力が乏しい中小施設が多く存在します。実際、倒産要因に「老朽化」や「修繕」が含まれるケースは直近5年間で14.6%に達し、増加傾向にあります。 しかし、施設の老朽化や人手不足に悩む宿であっても、名物料理などによる根強いファンがいれば、スポンサー(譲受企業)の元で事業再生に成功するケースは少なくありません。宿の価値を正当に評価し、資金力のある最適なパートナーを見つけるためには、プロフェッショナルに相談することが「はじめの一歩」となります。

オーナーがM&Aの相談をためらう理由
多くの宿泊施設のオーナーは、以下のような不安からM&Aの相談をためらいがちです。
・「まだ考えるには早いのではないか」
・「相談していることが、従業員や取引先に知られてしまうのではないか」
・「先祖代々守ってきた宿を、自分の代で終わらせてしまってよいのか」
このような迷いや葛藤を抱えるのは、長年宿と従業員を大切に守ってきたからこそであり、当然のことと言えます。
「相談」=「決断(売却)」ではない
ここで押さえておきたいのは、「M&Aの相談=会社を売却する決断」ではないということです。M&Aはあくまで数ある選択肢の1つに過ぎません。現在の自社の価値がどれくらいあるのか、どのような企業が譲受の候補になり得るのかを知るための「情報収集」として、まずは専門家に話を聞くことが重要です。
選択肢が狭まる前に。「今」専門家に相談するメリット
老朽化が進んだ設備の修繕費が調達できずに事業継続が困難になるなど、経営体力による格差は拡大しています。資金繰りが限界に達し、修繕もままならなくなってからでは、選択肢は大きく狭まってしまいます。体力や資金繰りに少しでも余裕がある今こそが、M&Aを検討するベストなタイミングです。早い段階でプロに相談することで、情報漏洩のリスクを防ぎながら、従業員の雇用維持やブランド(のれん)の存続など、オーナーの希望を叶える最適なパートナー企業を見つけることが可能になります。

宿泊業界におけるM&Aは、施設の老朽化対策や人材確保といった課題を解決し、宿を次世代へと発展させるための前向きな経営戦略です。株式会社fundbookでは、10万社規模の譲受企業データベースと、各業界に精通した専門チームが、オーナー様の想いに寄り添ったM&Aをサポートします。着手金無料・完全成功報酬制を採用しておりますので、情報収集の段階でもお気軽にご相談ください。
M&A事例のご紹介
現在宿泊業のM&Aにおいて、「食」「温泉」「衛生面」の3つに譲受企業が関心を示しやすいという傾向があります。以下の事例で、「温泉」に強みを持つ老舗旅館がM&Aを選択した背景やその後をご紹介します。
400年の歴史を持つ「秘湯」の強みを活かした老舗旅館のM&A
| 譲渡企業 | 譲受企業 | |
| 企業名 | 有限会社須賀谷温泉 | 大和財託株式会社 |
| 事業内容 | 温泉旅館「須賀谷温泉」の運営 | 不動産・建築領域等を活用した資産価値共創事業 |
| 所在地 | 滋賀県 | 東京都 |
| 売上高 | 約1億7,000万円〜3億円(推定) | 367億円 |
| 資本金 | 非公表 | 1億円 |
「温泉」の強みとポテンシャル
滋賀県長浜市にある「須賀谷温泉」は、戦国武将の浅井長政やお市の方、そして家臣たちが傷を癒すために湯治に通ったと伝えられる、400年以上の歴史を持つ老舗旅館です。 同館の最大の強みは、滋賀県内で初めて採用された「源泉かけ流し」の温泉です。湧出時は無色透明でありながら、空気に触れると赤茶色に変わる独特の「ヒドロ炭酸鉄泉(含鉄泉)」は、神経痛や冷え性、疲労回復などに高い効能があり、折り紙付きの名湯として熱烈なファンを抱えていました。
M&Aに至った背景:業績好調な中での「前向きな事業承継」
須賀谷温泉はコロナ禍の時期を除き、長年にわたって黒字経営を継続していた優良施設でした。一方、買い手となった大和財託株式会社は、収益不動産の開発や建築、賃貸管理を自社で一貫して行う総合不動産会社です。同社は新規事業としてホテル・旅館の自社開発・運営への本格参入を目指しており、視察に訪れた代表が須賀谷温泉の「温泉の質」や「地元食材の美味しさ」という圧倒的なポテンシャルを高く評価。 結果として、2024年9月に株式を100%譲り受ける完全子会社化が成立し、歴史ある宿の暖簾と従業員の雇用が守られることとなりました。
M&Aのその後:異業種のノウハウを取り入れた「旅館の進化」
M&A後、須賀谷温泉は買い手企業のノウハウを取り入れ、旅館の価値をさらに高めるための改革(PMI)を次々と実行しています。
強みを活かした施設リニューアル 買い手企業が持つ建築・設計・施工のプロフェッショナルな知見を活かし、古き良き魅力を残しながら、計画的なリノベーションとリブランディングを進めています。
①「ペット同伴客室」など新たな顧客層の開拓
公式サイトをスマートフォン対応で見やすく刷新し、写真や動画で温泉や会席料理(近江牛など)の魅力を発信。さらに、ペット専用アメニティを備えた「ペット同伴専用客室」のWeb予約を新設し、高単価で長期滞在を見込める新たなニーズを取り込んでいます。
②適正な価格改定による収益性の向上
需要や季節に応じたダイナミックプライシング(変動料金制)を導入し、客室単価を適正化。結果として、M&A後の下期経常利益が上期の2倍を見込めるほど、大幅な収益改善を実現しています。
③買い手企業の「社員研修の場」としての活用
買い手企業の新卒社員を旅館の現場へ派遣し、接客や清掃業務を体験させる現場研修を実施しています。現場目線での業務改善や新たな宿泊プランの提案を行うなど、本社と現場の意識を統一させるユニークな相乗効果が生まれています。
この事例からわかるように、独自の「温泉」や「食」といった強い魅力があれば、たとえ地方の小規模な旅館であっても、異業種の大手企業や投資家から非常に高く評価されます。設備の老朽化や後継者不在で行き詰まる前に、ご自身が守り続けてきた「宿の強み」が社会でどのように評価されるのかを知るためにも、まずは一度、M&A専門家へのご相談をおすすめします。