会社の運営資金を得るためには様々な手法が存在しますが、株式を割り当てて資金を得る「第三者割当増資」という手法があります。
第三者割当増資はどのような会社でも実施できる可能性があり、資本の強化だけでなく業務提携も行うことができる利点の多い手法ですが、「株式の希薄化」というデメリットになり得る事象も存在します。本記事では、第三者割当増資の概要やメリット・デメリット、なぜ希薄化が起きるのかについてや、「25%・300%ルール」とは何かについて解説していきます。
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第三者割当増資の特徴・メリット・デメリットとは
「第三者割当増資」とは、新規・既存株主問わず特定の第三者に対し、新株を引き受ける権利を与える代わりに出資をしてもらうことを指し、M&Aのいち手法として用いられることもあります。多くの場合、事業シナジーが期待できる企業や取引先を対象に行われます。
他の増資手法としては、不特定多数から募る「公募増資」や、既存株主から募る「株主割当増資」が挙げられます。なお、非上場会社の場合、取引がある金融機関や自社の役員を対象に行う場合もあります。そのため第三者割当増資は「縁故割当増資」と呼ばれることもあります。
第三者割当増資の特徴は、実施する会社が出資者を指定できる点です。これにより「資本提携と並行して事業拡大、多角化が実現できること」と「最短1日で手続きを終えて出資を受けられること(総数引受契約を行う場合)」の2つのメリットがあります。
一方、デメリットとしては株主構成の変動や株式の希薄化(後述)により、出資者以外の既存株主が株式を手放す可能性があることです。株主構成の変動や株式の希薄化は既存株主にとってリスクとなるため、損失を防ぐために株式を手放す可能性があります。
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株式の希薄化が起こる原因と問題である理由
「株式の希薄化」とは新株を発行することにより、発行済株式数の1株あたりの価値および権利が低下することを指します。
具体的な仕組みとして、1株あたりの利益は「当期純利益÷発行済株式数」で決定します。ここで、第三者割当増資により新株を発行したタイミングでは分母である発行済株式数は増加する一方で、分子である当期純利益は変動しません。そのため、1株あたりの利益および議決権割合は減少します。これにより株主が株式を売却し手放す可能性があることが問題になります。
また、議決権割合が低下することで、株主1人が経営権に与える及ぼす影響力が低下します。仮に経営者が全株式のうち51%を保有していても、希薄化が原因で49%になってしまい、自社をコントロールする権利を失う可能性があることも重要な問題です。
第三者割当増資を行った会社にとっては、増資によって多額の資金を得たとしても、株価が下がることで今後の会社の運営に大きな影響を及ぼします。
一方で、新株を引き受ける会社が安定した大手企業の場合や、前向きな理由での増資である場合は、会社にとってメリットがあるとみなされます。その期待値によって株価が上がることで、既存株主にとってプラスに働くこともあります。
第三者割当増資における25%・300%ルール
株式の希薄化というデメリットから株主を守るために、東京証券取引所では上場企業向けに株式の発行に関するルールが設けられています。希薄化率(増資後の株式の議決権数÷増資前の発行済株式の議決権総数)が25%もしくは300%を超える第三者割当増資に対しては制限が設けられています。これを「25%ルール」「300%ルール」といいます。
具体的には25%以上(または支配株主の変更)の場合、株主総会における決議による株主意思の確認手続き、もしくは独立した第三者による必要性・相当性の意見が求められます。
300%を超える場合は、株主を守ることが難しいために原則として禁止となっています。それでも300%超の第三者割当増資を行う場合は、「株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ない」と認められる場合を除き、「株主の権利の不当な制限」(東証有価証券上場規程 601 条 1 項 17 号による)に抵触するとして、上場廃止というペナルティが下されることになります(東証有価証券上場規程施行規則 601 条 13 項 6 号による)。
このルールは2009年に定められたものですが、2010年には東京証券取引所はさらに規制を強化し、第三者割当増資について情報開示を強く求めることになりました。それにより、希薄化率が25%以上となる事例は規制前には全体の61%でしたが、規制後は36%にまで減少しています。
まとめ
第三者割当増資は、業務提携をしつつ資金を調達できるというのメリットがある一方、株式の希薄化という避けられない問題を解決するために既存の株主保護が必要になります。また、上場企業の場合は東京証券取引所によって定められている株式の発行数に関する25%・300%ルールに注意しましょう。