企業が新たな事業を始める際や負債を返済する場合には、資金調達を行う必要があります。企業が資金調達を行う方法として、金融機関や他社から資金を借りる「融資」と、新しい株式を発行して割り当てる「増資」の大きく2つに分類されます。「資金調達」と聞くと、多くの人は融資を思い浮かべ、調達は難しいと考えているかもしれません。
しかし、調達の選択肢として、特定の出資者(個人または法人)に自社の新株を割り当てる「第三者割当増資」という増資の方法があります。第三者割当増資は、未上場企業を含め、株式を公開していない企業でも資金を調達することができる可能性がある手法として利用されています。第三者割当増資などの増資で調達した資金は、返済義務がないことや同時に業務提携もできる、他社からの信頼を得られるなどのメリットがあります。
この記事では、資金調達をする際に知っておくべき融資と比較した際の増資、および第三者割当増資のメリットとデメリットを解説します。
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資金調達を増資・第三者割当増資で行う6つのメリット
増資には不特定多数の出資者に株式を割り当てる「公募増資」、既存の株主に対して株式を割り当てる「株主割当増資」、新規・既存株主問わず特定の第三者に対して新株を割り当てる「第三者割当増資」の3つに分類されます。増資全体のメリットと第三者割当増資のメリットで各々3つずつ挙げられます。
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増資のメリット
・財務基盤を強化できる
増資によって返済義務のない資金を得ることで、財務状況を安定させることができます。金融機関や他社からの借入金は利子を付けて返済する義務がありますが、増資で調達した資金は原則として返済する義務はありません。ただし、将来的に利益が出た際に株主に配当金を払う必要があります。
・資本金の増加によって金融機関からの信用を得やすくなる
増資によって企業の資本金が増加し、金融機関からの信用を得やすくなります。資本金とは、会社の設立時に株主から払いこまれる金額を指します。金融機関が融資する金額を決める際には資本金を参考にすることが多いため、資本金が多いことで会社自体の信用力が上がり、より多くの融資を受けられる可能性があります。
・出資者の影響によって発行会社も信用されやすくなる
出資者の信用があると、発行会社もそれに伴って信用できると判断されやすくなります。「信用できる」とは、「安定して利益を出し続けていること」を指します。出資者が法人の場合、恒常的に利益を出している企業が出資することは、発行会社も利益が高く出る見込みがあると判断されます。それにより、対外的に見て発行会社も信用ができるとみなされます。
第三者割当増資のメリット
・資本提携と並行して事業拡大、事業の多角化が可能
第三者割当増資によって、資本提携と業務提携を同時に行うことが可能です。第三者割当増資の特徴は、出資者を指定して増資を行うことができる点です。そのため既存の取引先を出資者として指定し、業務提携だけでなく資本提携を並行して行うことで事業の拡大や多角化を図ることができます。
・短期間で資金を得ることができる
多くの場合、第三者割当増資はあらかじめ出資者が決まっています。他の増資手法は最低でも2週間かかるのに対して、手続きを行う際には最短1日で募集株式の申し込みから株式発行まで行うことができます。
なお、第三者割当増資の手続きを行う際には大きく5つのプロセスを踏む必要があります。それは「募集事項の決定・公示」、「募集株式の申し込み」、「割当の決定」、「出資金の払込み」、「株式の発行・登記変更」です。その中でも特に時間がかかるのは「募集事項の決定・公示」で、これは「誰にどれだけの株式をいくらで割り当てるのか」を決める決議です。この出資者をあらかじめ決めておく契約を「総数引受契約」といいます(複数人が引き受けることも可能です)。
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・株主となる出資者を指定することができる
出資者を指定することができるため経営に積極的に介入する株主、いわゆる「物言う株主」を避けることができます。例えば、公募増資の場合などは発行会社が出資者を指定できず、身元がわからないというデメリットがあります。その点、第三者割当増資は出資者を指定できるため、安心して増資を行うことができます。
増資・第三者割当増資のデメリット
・株式の希薄化が原因で既存株主から反発される可能性がある
「株式の希薄化」とは、新規株式を発行し、発行済株式数が増加することで1株あたりの価値が相対的に下がることを指します。1株あたりの株価は「株価÷発行株式数」で算出することができます。増資を行った際には分母である発行済株式数が増加します。そのため、既存株式も含めて1株あたりの価値が低下します。これは既存株主も影響を受けるため、損失を防ぐために株式を手放す可能性があります。
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まとめ
本記事では、増資や第三者割当増資のメリットとデメリットをまとめました。増資を行うことで財務基盤の強化などのメリットがあるため、結果的に他社から信用を得ることができます。その中でも第三者割当増資は、出資者を指定して増資を行うことができるため、手続きを簡略化させ短期間で業務提携を図ることができます。
企業の資金は経営する上の基盤となります。ここに記載されたメリットやデメリットは最低限理解したうえで調達を行いましょう。