M&Aによって事業を譲受する場合、その会社が特定子会社に該当することがあります。
特定子会社は、IPO時や上場後に異動が生じた際に開示義務があるため、M&Aを実施する場合は特定子会社について把握しておくことも大切です。
また、特定子会社と似た言葉に特例子会社もあるため、違いが気になる方もいるでしょう。
本記事では特定子会社の概要やIPOに関する注意点の他、特例子会社との違いなども解説します。M&Aの実施を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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特定子会社とは
特定子会社とは、以下のいずれかに該当する子会社のことをいいます。
1. 親会社(有価証券報告書の提出会社)の最近事業年度に対応する期間において、当該提出会社に対する子会社の売上高の総額または仕入高の総額が、当該提出会社の仕入高の総額または売上高の総額の10%以上を占める子会社
2. 当該提出会社の最近事業年度の末日において、純資産額が当該提出会社の純資産額の30%以上に相当する子会社(当該提出会社が債務超過である場合を除く)
3. 資本金または出資の額が当該提出会社の資本金の額の10%以上に相当する子会社
例えば、親会社の売上高のうち、子会社による仕入金額が10%以上を占めている場合は、上記1の要件に該当するため、特定子会社となります。特に、親会社が子会社からの仕入れに頼っている場合などが当てはまるでしょう。
また、単純に純資産が親会社の30%以上ある子会社も特定子会社に該当します。こちらは規模が大きく、業績の良い子会社が当てはまるケースが多いです。
以上から、特定子会社は、業績・バランスシート面においてグループ内で重要な位置づけにある子会社といえるでしょう。
特定子会社と特例子会社の違い
特定子会社と似た言葉に「特例子会社」がありますが、この2つは全く別の会社形態です。
特例子会社とは、障害者雇用の促進および安定を目的として設立される子会社を指します。日本では法律によって、従業員が一定数以上の事業主には、法定雇用率以上の割合で障害のある方を雇用する義務が定められています。
特例子会社には以下のようなメリットがあります。
・障害の特性に配慮した仕事の確保や職場環境の整備が容易となり、障害のある方の能力を十分に引き出すことができる
・職場定着率が高まり、生産性の向上が期待できる
・障害のある方を受け入れるための設備投資に集中できる
・親会社と異なる労働条件の設定が可能となり、弾力的な雇用管理が行える
特例子会社を設立せずに障害のある方を雇用しても問題ありませんが、上記のメリットを踏まえて設立を検討する企業もあります。
なお、特例子会社を設立するためには、以下の認定要件を満たす必要があるので、覚えておきましょう。
会社 | 要件 |
親会社 | 当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること(子会社の議決権の過半数を有するなど) |
子会社 | 親会社との人的関係が緊密であること(親会社からの役員派遣など)雇用される障害者が5人以上かつ全従業員に占める割合が20%以上であること、または、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者および精神障害者の割合が30%以上であること障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること(障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置など)その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること |
特定子会社の保有に関する主な注意点
特定子会社を保有する際はいくつか注意点があります。特定子会社を保有する可能性がある場合は、しっかりと把握しておきましょう。
IPO時に特定子会社の開示をする
特定子会社を保有する会社が上場申請をする場合は、上場時に特定子会社を開示しなければいけません。
そのため、上場時は上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)や有価証券届出書、目論見書の「関係会社の状況」で、保有する特定子会社の記載が必要です。
また、上場後に提出する有価証券報告書にも「関係会社の状況」という項目があり、特定子会社について開示する必要があるので覚えておきましょう。
異動時に臨時報告書を提出する
特定子会社が子会社でなくなったり、特定子会社でなかった会社が特定子会社になったりした場合は、臨時報告書で開示が必要です。
臨時報告書には会社の名称、住所、代表者の氏名、資本金または出資の額、事業の内容などを記載し、財務局および金融庁に提出しなければいけません。
その他、以下の内容も開示する必要があるので、覚えておきましょう。
・特定子会社の異動前後における親会社の所有にかかわる当該特定子会社の議決権の数
・当該特定子会社の総株主等の議決権に対する割合
異動時に決算短信を開示する
上場会社は、以下の内容が定まった場合に、直ちにその内容を開示する義務があります。
・事業年度の内容
・連結会計年度にかかわる決算の内容および四半期累計期間の内容
・四半期連結累計期間にかかわる決算の内容
特定子会社の異動が生じた場合は、決算短信の期間中における重要な子会社の異動でも、開示をしなければいけません。
特定子会社に限ったことではありませんが、グループ企業で増資や減資を行った際は注意しましょう。
特定子会社の税法上の扱い
特定子会社という文言は税法にも記載があり、定義が異なる点に注意が必要です。税法による特定子会社は、「国内かつ持株比率等が50%超の法人」をさします。
該当する子会社を持つ会社は「特定子会社の株式等に係る控除額に関する計算書」を提出しなければいけません。
その他、自治体によっては「出資関係図(特定子会社となる法人に対する持株割合を記載した出資関係図)」を添付しなければいけないこともあります。必要な書類は自治体によって異なるため、確認が必要でしょう。
まとめ
特定子会社とは、業績・バランスシート面においてグループ内で重要な位置づけにある子会社です。IPO時や異動が生じた際は、特定子会社を開示しなければいけません。
また、特定子会社と似た言葉に特例子会社がありますが、こちらは障害者雇用の促進および安定を目的として設立される子会社をさすため、違いを理解しておきましょう。
なお、税法上での特定子会社は定義が異なり、該当した場合は所轄の事務所に所定の書類を提出しなければいけないので、注意が必要です。
M&Aによって子会社化する場合は、さまざまな法律が関係するため、本格的に検討するのであれば専門家に相談することをおすすめします。
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