経営・ビジネス

2023/09/29

多角化戦略とは?メリット・デメリット、成功させるポイントを解説

多角化戦略とは?メリット・デメリット、成功させるポイントを解説

企業の戦略はいくつかありますが、多角化戦略とは「自社の経営資源を新たな製品・市場に展開することで、成長を実現する」という戦略です。今日の企業においては、多様化する社会のニーズに応えるためにも、既存事業に一本化し続けるするだけでなく新たな展開を考える必要性があり、需要の面からも重要性が窺えます。

そこで本記事では、多角化戦略の概要やその4種類の戦略法をご紹介します。多角化戦略を取り入れるメリット・デメリット、成功させるためのポイントも解説しますので、参考にしてみてください。

多角化戦略とは?

多角化戦略とは、企業における成長戦略のひとつで、保有する資産を活用して新しい事業を展開する取り組みです。経営学者イゴール・アンゾフが「成長のマトリクス」を提唱し、企業の成長戦略を「製品」と「市場」の組合せにより、次の4つに分類しました。そのうちのひとつが、多角化戦略です。

既存製品新規製品
既存市場市場浸透戦略
既存市場における既存製品のシェア拡大を目指す
新・製品開発戦略
既存市場に新製品を投入して売上高拡大を目指す
新規市場新・市場開拓戦略
新市場に既存製品を投入して市場拡大を目指す
多角化戦略
新市場に新製品を投入して事業の多角化を目指す
アンゾフの成長マトリクス

新たな事業を展開するためには、さまざまな角度からの分析・調査が必要です。新たな製品を販売するためには、ノウハウや資金はもちろん、物流やマーケティングにいたるまで幅広い知識が求められます。また、多様化するニーズに対応する柔軟性も必要でしょう。

多角化戦略は、4つの中で最も難易度が高い戦略です。しかし、単一の事業による経営悪化の回避や新規事業における成長拡大も期待できることから、注目される戦略といえます。

多角化戦略4つの種類

多角化戦略には、以下4種類の戦略方法があります。
それぞれの特性を理解し、自社に適した戦略を取り入れましょう。

水平型多角化戦略

企業が保有する経営資源を用いて開発した新製品を、既存事業と似た市場で展開する戦略のことを、水平型多角化戦略といいます。

例:家庭用ベッドを製造する会社が、介護用ベッドの製造に着手する

新たな設備投資が不要で、資金負担が軽減できるのがメリットです。既存の技術や販売ルートなどを活用できるので、収益が出るまでのスピードが早く、リスクが少ない戦略といえます。

垂直型多角化戦略

既存事業をとりまく上流・下流に当たる分野を新たに開拓する戦略を垂直型多角化戦略といいます。この戦略では「生産→加工→販売」といった一連の流れを自社で担うことを狙いとします。

垂直型多角化戦略を取り入れた企業のひとつに「セブンイレブン」があります。株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、自社で製品を造り、店舗で販売を行っています。と謳っているように、多角化によりサプライチェーンの工程を包括して内製しました。

この場合、既存事業と同じ分野における多角化なので、既存事業の知識やノウハウを活用でき、シナジー効果が期待できることがメリットです。しかし、その分野の成長が伸び悩むと、業績も悪化するリスクも考えなければなりません。

集中型多角化戦略

集中型多角化戦略は、自社の強みとなる技術やノウハウを活用した製品やサービスを、新たな分野に進出させる戦略です。集中型多角化戦略により、成功を収めた有名企業のひとつに「富士フイルム」があります。カメラ製品を手がける「富士フイルム株式会社」は、フイルムの主成分であるコラーゲンを活用して「化粧品製造」を展開しました。

独自の経営資源を利用することで、新たな分野でも競合他社との差別化ができるのがメリットです。
新たな分野への参入となるので、成功を収めれば既存事業の収益を超える可能性もあります。

集成型(コングロマリット型)多角化戦略

既存事業と関連がない、新しい分野で事業展開する戦略が集成型(コングロマリット型多角化戦略です。有名企業による集成型多角化戦略といえば「ユニクロ」が挙げられます。2002年、株式会社ユニクロは、既存分野とは異なる「野菜販売」を展開しました。経営結果は赤字となりましたが、失敗を機に既存分野に注力し、2006年に「GU」が誕生しています。

多角化戦略のメリット

複数の事業を展開する多角化戦略は、事業や収益の拡大だけではなく、他にもさまざまなメリットがあります。ここでは、多角化戦略3つのメリットを紹介しましょう。

リスクを分散・軽減できる

多角化戦略の最大のメリットは、リスクを分散・軽減できる点です。既存事業だけでは、情勢や消費者ニーズの変化、収益悪化となると直接的に影響を受けてしまいます。

多角化で既存事業のマイナスを新たな事業でカバーできるため、収益が下がるリスクを減らせるのです。
多数の事業展開は、複数の収益源確保につながるので、特定事業の悪化を抑制できます。このようなリスクの分散・軽減は、事業を展開するうえで非常に大きなメリットとなるでしょう。

シナジー効果が期待できる

多角化戦略は、シナジー効果が期待できるのもメリットのひとつです。シナジー効果とは、複数事業運営により双方に良い結果をもたらす効果のことです。

特に、関連多角化(既存事業と関連する分野への展開)の場合、既存事業で培った技術・ノウハウの活用で効率的な経営を行えます。本事業を基にして多方面への戦略を生みだすことができれば、軍資金を抑えられるだけでなく、企業の拡大も期待できるでしょう。

プロダクトライフサイクルに対応できる

プロダクトライフサイクルとは、製品(プロダクト)の「寿命」を指す言葉です。
製品が寿命に達するまでには、以下の変化をたどります。

【自社製品が寿命に達するまでの変化】
1.開発
2.導入
3.成長
4.成熟
5.衰退

昨今では、技術の発達により、市場に出回る製品の寿命は短くなりつつあることからも、自社製品の数が少ないと現代のニーズに追いつくことが難しく、収益も右肩下がりになるでしょう。

新事業に手を伸ばして自社商品数が増えれば、変化が激しいプロダクトライフサイクルにも対応可能となります。ひとつの製品が衰退期に入り収益がダウンしたとしても、他の製品でカバーできれば企業成長も安定するでしょう。

多角化戦略のデメリット

多角化戦略には、メリットだけでなくデメリットもあることを考慮しなければなりません。
ここでは、多角化戦略のデメリットを3つ紹介します。

コストがかかる

多角化戦略によって、収益拡大を目指すことは可能です。しかし、新事業を立ち上げる観点から考えると、市場開拓のためにマーケティング活動や新サービスの開発などに費用がかかります。
新事業が必ずしも成功するとは限らないため、投資資金が目減りする可能性があることを視野に入れましょう。

損失拡大の可能性がある

既存事業で軌道に乗り収益をあげたとしても、事業の複数展開により経営効率が悪くなると、損失拡大につながるでしょう。収益拡大を見込めるのが多角化戦略のメリットですが、複数の事業展開により既存事業に影響を与える恐れもあるのです。
多角化戦略は、自社企業が持つリソースを十分に把握したうえで、慎重に進めることをおすすめします。

ブランド価値低下のリスクがある

多角化を進めることで、既存事業のブランド価値低下につながるリスクもあります。仮にハイブランドの商品を扱うメーカーが突然、安さを売りにした飲食事業を展開したとなれば、これまでのイメージが覆るでしょう。
結果、既存顧客が離れて収益悪化になると、既存顧客どころか新規顧客の獲得も難しくなります。
ブランドイメージにも考慮したうえで、価値の低下や毀損を防ぐ対策が必要です。

多角化戦略を成功させるポイント

多角化戦略のメリット・デメリットを理解したところで、成功させるポイントをみていきましょう。
以下4つのポイントを抑えて、多角化戦略を成功へと導きましょう。

企業理念に沿って進める

企業理念とは「企業の行動指針」ですが、企業理念からかけ離れた多角化戦略はおすすめできません。
方針が大幅にずれると、企業が向かうべきゴールがわからなくなり、事業の一貫性も保てないでしょう。新事業展開での判断に迷うときには、企業理念に立ち戻りながら慎重に進めると、方向性を見失わずに済みます。

既存事業と関連性が近いものから展開する

基となる事業と関連性が近いものから展開を図り、これまでに培ったノウハウを活かせると、企業運営がスムーズになります。既存事業と似ている事業は、新たな技術や知識を取り込む必要がないので、収益につながるスピードが早まるのです。
しかし、関連性が近い事業でも、収益が右肩下がりになるリスクが0ではない点も視野に入れましょう。

規模を見極め段階的に始める

新規事業を始めるには、多額の資金や人材などの経営資源が必要です。
立ち上げ間もなく、大規模な多角化戦略を展開してしまうと、投資額も大きくなり回収が難しい状況に陥りかねません。

新規事業での収益が伸びない場合は、既存事業にも影響を与えてしまいます。
少額の投資から始め、事業の成長に合わせて段階的に経営資源の投入量を増やすと、リスク回避につながるでしょう。

M&Aを検討する

多角化戦略により新しい風を吹き込みたい場合は、M&Aの検討も視野に入れましょう。M&Aであれば、関連性が低い事業でも他社のノウハウを取り込めるので、シナジー効果もある程度予測できます。

M&Aは新たな資金投入が必要ですが、収益拡大が見込めるのであれば、自社内で多角化を行うよりもリスク軽減になるのです。M&Aは専門知識や経験が必要となりますので、実施の際は専門家への相談をおすすめします。

まとめ

今回は、多角化戦略のメリット・デメリットや、成功へ導くポイントを解説しました。企業を多角化することには、リスク分散やシナジー効果・プロダクトサイクルに対応可能など多くのメリットがあります。
一方で、コストや効率面でのデメリットもあるので、慎重に検討しなければなりません。自社の既存事業の特性や経営資源、技術を十分に分析して、適切な戦略を選択することが大切です。

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