経営・ビジネス

2023/10/03

事業承継税制はデメリットの把握が大切!制度を活用する時のポイントも解説

事業承継税制はデメリットの把握が大切!制度を活用する時のポイントも解説

事業承継において、贈与税・相続税の納税猶予を受けられる事業承継税制の活用を検討している方も多いのではないでしょうか。

しかし、事業承継税制は大きなメリットを得られる反面デメリットもあるため、制度を活用するのであればデメリットを把握しておくことが大切です。また、事業承継税制を利用して円滑に事業承継を実施するためには、いくつかのポイントを抑えておく必要があります。

本記事では、事業承継税制のデメリットを紹介し、制度を活用する時のポイントも解説します。

▷関連記事:事業承継とは?成功に向けたポイントや基礎知識を解説

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事業承継税制とは

事業承継税制は、後継者が引き継ぐ会社の株式を生前贈与や相続で取得した際、一定の要件を満たすことで承継時の納税を猶予または免除される制度です。

近年、日本では中小企業経営者の高齢化が深刻な問題となっています。後継者が見つからずに廃業を余儀なくされる中小企業が増えると、雇用が失われてしまうだけではなく、地域のインフラにも大きな影響を与える可能性があるでしょう。

また、中小企業の事業承継では、以下の点も大きな課題として挙げられます。

  • ・後継者が承継時にかかる資金を十分に確保できない
  • ・承継時に発生する多額の贈与税・相続税により経営が締め付けられてしまい、事業承継を円滑に行うことが困難

このような課題を解消し、円滑に事業承継を行えるよう2009年度に事業承継税制が創設されました。

▷関連記事:事業承継税制の会社要件とは?間違えやすい従業員の定義や数え方も詳しく解説

事業承継税制改正で新設された特例事業承継税制とは

事業承継税制は2018年度の税制改正で、従来の一般措置に加えて、10年間の特別措置が創設されています。特例措置で変更になった主な点は以下です。

  • ・対象株式数の上限(3分の2)を撤廃し、「全株式」を対象とする
  • ・贈与100%、相続80%であった納税猶予割合を「贈与、相続ともに100%」とする
  • ・親族外を含む複数の株主から、「代表者である後継者(最大3人)への承継」も対象とする
  • ・継続要件であった5年間平均8割の雇用維持を「実質撤廃」

事業承継税制(一般措置)は、要件の厳しさや適用後のリスクの高さから利用しづらい制度でしたが、特例措置の創設によって要件の緩和とリスクの軽減が行われ、一般措置より利用しやすい制度になりました。

また、10年という特例期間を設けることで、事業承継を促進させる効果も期待できると考えられます。

令和4年度の税制改正により特例承継計画の提出期限が1年延長

特例措置の適用には、特例承継計画の提出が必要です。特例措置が創設された当初は令和5年(2023年)3月31日までとなっていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和4年度の税制改正により、提出期限が1年延長されました。

そのため、令和6年(2024年)3月31日までに特例承継計画を提出し、都道府県知事の認定を得られれば、事業承継税制の適用を受けることができます。ただし、適用期限の10年間は延長されておらず、令和9年(2027年)12月31日までとなるので、覚えておきましょう。

事業承継税制の5つのデメリット

事業承継税制は、一定の要件を満たすことで贈与税・相続税の納税猶予を受けられるため、事業承継を実施するのであれば活用したい制度です。

特に、特例措置が設けられている10年間はより利用しやすい制度になっているため、事業承継を考えている経営者は早めの準備をおすすめします。

また、事業承継税制はメリットが多い反面、デメリットもあります。事業承継の活用を検討するのであればデメリットも把握しておくことが大切です。ここでは、主なデメリットを5つ紹介するので、把握しておきましょう。

特例承継計画の策定・手続きに労力が必要

事業承継税制の特例措置を利用するためには、令和6年(2024年)3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、認定を受けなければいけません。

特例承継計画とは、株式等を承継するまでの期間の事業計画や、後継者が株式等を取得した後の5年間の事業計画などを記載したものになるので、作成には一定の労力が必要です。

また、特例承継計画の作成後は、都道府県知事へ提出する前に認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けなければいけないので、手続きも時間がかかります。

このように、事業承継税制の適用を受けるためには、事業計画の作成や手続きに労力や時間がかかることを覚えておきましょう。

納税猶予が取消になる可能性がある

事業承継税制は、適用されたからといって何もしなくて良いわけではありません。適用後5年間は都道府県庁へ「年次報告書」、税務署へ「継続届出書」を毎年提出しなければいけない他、6年目以降も3年に1度、税務署へ「継続届出書」の提出が必要です。

また、適用後は、取消事由に該当しないよう細心の注意を払う必要もあります。主な取消事由は以下です。

  • ・雇⽤の平均8割維持要件を満たさなくなった場合
  • ・議決権同族過半数要件を満たさなくなった場合
  • ・同族内筆頭要件を満たさなくなった場合
  • ・上場会社・⾵俗営業会社に該当した場合
  • ・年次報告書を未提出または虚偽の報告等をしていた場合
  • ・資本⾦を減少した場合

上記以外にも取消事由は多数あります。要件を満たせない場合は事業承継税制の適用が取消となり、猶予されていた全額または一部と利子税を納付しなくてはいけないので、事業承継税制が取消になる要件はしっかりと把握しておきましょう。

廃業した場合は利子税が発生する

事業承継税制が適用された後に廃業した場合は、猶予されていた贈与税・相続税に加えて利子税を支払わなければいけないので、注意しましょう。

ただし、5年経過後であれば5年分の利子税は免除されます。また、特例措置では経営悪化による廃業の場合に、廃業時の価額で納税額を再計算する減免措置もあります。

とは言え、猶予されていた贈与税・相続税がなくなるわけではないので、一定のリスクがあることは覚えておいたほうが良いでしょう。

担保の提供が必要となる

事業承継税制を利用するためには、税務署に必要書類を提出する際に、納税が猶予される贈与税・相続税および、利子税の金額に見合う担保を提供しなればいけません。

担保として認められる財産には主に以下があります。

  • ・国債および地方債
  • ・社債その他の有価証券
  • ・土地
  • ・建物等で保険に付したもの(建物、立木、登録を受けた船舶、自動車、建設機材など)

中小企業の事業承継では、猶予される税額および、利子税に見合う担保を用意できないことも珍しくありません。そのため、一般的に事業承継税制を利用する場合は、猶予対象となる非上場株式の全てを担保にするケースが多いです。

M&Aの実施が難しくなる

事業承継税制が適用されている間は、基本的に株式の譲渡を行うことができません。株式を譲渡した場合は事業承継税制の適用が取消になり、猶予されていた贈与税・相続税および利子税を支払う必要があるため、M&Aの実施が難しくなる点に注意しましょう。

ただし、事業承継税制を利用する前に保有していた株式の範囲内で譲渡するのは問題ありません。なお、5年経過後に株式の譲渡を行った場合は、減税措置が適用され、売却時の価額で納税額を再計算します。

事業承継税制を活用する時のポイント

事業承継税制はデメリットもあるため、制度を利用するのであれば失敗しないためのポイントを抑えておくことが大切です。ここでは、事業承継税制を活用する時のポイントを紹介します。

専門家へ相談する

前述したように、事業承継税制は適用後も要件を満たさなければいけません。また、取消事由は多数あるため、基本的に現経営者や後継者のみで全てを把握するのは難しいです。

そのため、事業承継税制を利用する際は、信頼できる専門家に相談しながら、無理なく運用できる仕組みを構築する必要があるでしょう。

なお、専門家にも事業承継税制に詳しい場合とそうでない場合があるので、見極めて依頼するようにしてください。

計画的かつ早めに着手する

事業承継税制は手続きが煩雑な上に、特例措置を利用する場合は特例承継計画の策定と提出・認定が必要なため、早めに着手することが大切です。

また、そもそも事業承継には5年から10年の期間が必要とも言われています。事業承継税制の利用にかかわらず、事業承継を円滑に実施したいのであれば、計画的かつ早めの準備を心がけましょう。

メリットが大きいケースを把握する

事業承継税制は贈与税・相続税の猶予を受けられる点が最大のメリットです。つまり、自社株の評価額が高く、事業承継によって納める税金が高い場合は利用するメリットが大きくなります。

一方で、事業承継税制を継続して利用するためには、手間やコストがかかるので、納税額が少ない場合は、思ったほどのメリットを得られない可能性があります。

そのため、事業承継税制を利用する場合は、事前に贈与税・相続税の納税額を計算し、手間やコストを上回るかを検討しておく必要があるでしょう。

また、事業承継税制の適用後、5年以内に廃業してしまうと本来の納税額に利子税を上乗せして支払わなければいけないため、自社の業績も考慮して、最低でも5年間は良好な業績を維持できる状態かも確認しておく必要があります。

事業承継税制は個人事業主でも利用できる

以前、事業承継税制は法人のみが利用できる制度でした。しかし、2019年の税制改正によって個人版事業承継税制が創設されたため、事業承継税制が適用されれば、個人事業主でも事業用資産にかかわる贈与税・相続税の納税猶予を受けることが可能となりました。

個人版事業承継税制は、法人版よりも手続きが簡素化されており、適用後の要件も厳しくないので、事業承継を考えている個人事業主は、利用を検討してみても良いでしょう。

ただし、法人版よりは厳しくないとは言え、一定の要件を満たさなくては利用できないため、事業承継税制を利用するのであれば専門家に依頼するのがおすすめです。

まとめ

事業承継税制は、贈与税・相続税の納税猶予を受けられる制度で、事業承継時の納税負担を軽減できる点が最大のメリットです。

ただし、事業承継税制の利用には一定の要件がある他、適用後も満たさなければいけない要件が多数あります。

取消になってしまうと、納税猶予を受けていた税額に加えて利子税も支払わなければいけない場合があるため、デメリットをしっかりと把握した上で利用を検討しましょう。

なお、事業承継税制は手続きが煩雑で、個人で要件を把握するのが難しいです。そのため、事業承継税制は、専門家に相談しながら活用することをおすすめします。

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