経営・ビジネス

2023/10/02

資産管理会社とは?メリット・デメリットや設立手順をわかりやすく解説わかりやすく解説

資産管理会社とは?メリット・デメリットや設立手順をわかりやすく解説わかりやすく解説

「資産が増えたのに、税金ばかり取られて困る」「相続税の対策をしたい」と悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。資産管理会社を活用することで、大幅な節税対策ができるだけではなく、相続問題のリスク回避もできます。

本記事では、資産管理会社の概要と設立するメリット・デメリットを解説します。設立の手順にも触れますので、不動産や株式などを多く所有し、活用を検討する方はぜひ最後までご覧ください。

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資産管理会社とは

「資産管理会社」とは、資産を所有している人が、資産管理を目的として設立する法人のこと。
資産には、以下のものが含まれます。

・現金
・預貯金
・債券
・不動産
・株式 など

一般的な企業とは異なり、資産管理以外の事業活動は一切行わないため「プライベートカンパニー」と呼ばれています。主な収入源は「不動産資料収入」と「保有株式の配当収入」の2つです。

資産管理に、個人ではなく資産管理会社を活用する理由は以下のとおりです。

・財産が資産管理会社の株式になるため、遺産分割がしやすいから
・設立者や家族を役員登用し、会社の経費として役員報酬が支払えるから
・運営に必要な経費は、法人税の課税所得から控除されるから

上記以外にもさまざまな利点があるため、多額の資産を所有している経営者の間では、資産管理会社を設立する人が増加しています。

資産管理会社を設立する6つのメリット

ここでは、資産管理会社を設立することで得られるメリットをご紹介します。

①法人化することで大幅な節税ができる

保有資産から得られる利益が同じ金額であったとしても、個人のままではなく「法人化」をすることで大幅な節税ができます。

「個人」と「法人」では課される税金の種類が異なり、それぞれにかかる税負担は以下のとおりです。

個人税率
・所得税
・住民税
・個人事業税 など
年収5,000万円(課税所得4,000万円)以上最大で55%
法人実効税率
・法人税
・法人住民税
・法人事業税 など
※東京都のケース
所得400万円以下21.421%
所得400万円以上〜800万円以下23.204%
所得800万円以上33.585%

個人事業主として資産運用や副業を行った場合、そこで得た収益に対しても高い税率が課せられます。
一方、法人の実効税率は最大約33%のため、個人と比較すると税率が20%以上もの差があることがわかるでしょう。

つまり、同額の所得でも「個人」として申告すれば半分以上が税金として徴収されるということ。
しかし「法人」が得たものとすれば、7割ほど手元に残せるのです。

②所得を分散して税金の負担を軽減できる

個人が保有する資産から得た所得は、本人しか受け取れません。
しかし、法人が資産を所有する場合は「役員報酬」という形で家族に給与を支払うことで、所得を分散できます。

所得分散による節税効果は、以下のとおりです。

・所得税率が下がる
・給与所得控除を受けられる
・法人税が減る

法人化をして、個人の所得を親族にわけると所得税率を下げられます。
また、親族が受け取る報酬は「給与」になるため、対象となる親族は給与所得控除を受けられるのです。
さらに、渡した報酬は経費として扱えるため、申告をすれば法人税が減る効果もあります。このように、法人化による個人所得の分散は、さまざまな節税効果につながります。

③経費の範囲が広がる

個人事業主よりも、資産管理会社を設立して法人化したほうが対象経費の幅が広がります。
事業活動に直接必要な費用だけではなく、一部の「間接経費」も申請可能です。
主に、以下の経費が認められています。

・生命保険料
・社宅の家賃
・法人名義である車の維持費
・旅費規程に則った日当
・雇用している親族への報酬や退職金

法人化により、さまざまな費用を経費として扱うことが可能です。

④社会保険に加入できる

資産管理会社の役員は、役員報酬を受け取ることで「給与所得者」になるため、社会保険に加入できます。

個人事業主が加入する国民年金や国民健康保険より保証内容が充実しているため、社会保険に入れるのは大きなメリットです。さらに、役員として雇用している親族も加入できるため、追加の負担なく扶養に入れます。

⑤相続問題の手間と争いのリスクを軽減できる

資産の贈与または相続には、10〜55%の税率が課されます。相続された親族は「10ヶ月以内に金銭で支払う」ことが義務付けられていることをご存知でしょうか。

現金でなく、不動産のような「モノ」を相続した場合、納付金の調達に苦労することがあるでしょう。そこで、資産管理会社を立ち上げて不動産を会社の所有物にすると、相続項目から除外できます。

会社保有の不動産は株式に証券化し、親族にわければ相続争いやトラブルの防止になるでしょう。

⑥利益と損失を長期にわたって均一にできる

資産管理会社を設立すると「欠損金の繰越控除の期間が個人より長くなる」というメリットが。
繰越控除とは、その年の赤字を翌年以降に繰越して、次年度の利益から差し引いて帳消しにする制度のことです。

繰越が認められている期間は、以下のとおり。

・個人:最長3年
・法人:最長10年

資産管理会社にとって、損益と利益を長期にわたり平均化できるのは有利といえるでしょう。

資産管理会社を設立する2つのデメリット

ここでは、資産管理会社を設立するデメリットをご紹介します。
資産管理会社の設立は、マイナス面も踏まえたうえで検討しましょう。

コストがかかる

資産管理会社を立ち上げるには、さまざまな費用がかかります。

・設立費:株式会社は約30万円、合同会社は約15万円(資本金の額によって異なる)
・維持費:税金や税理士への報酬
・資産移転費:個人名義の資産を会社に移転する際の登記費用や税金

また、法人を設立すると、廃業するにも手間やコストがかかります。会社の解散決議や清算人選任・生産結了といった手続きも必要になるため、設立は慎重に検討しなければなりません。

保有資金は自由に使えない

資産を移転して会社保有となった資金は、個人目的で自由に使うことはできません。オーナーが資産管理会社のお金を使いたい場合は、会社から個人へ資金を動かす必要があります。

資産移転コストとして役員報酬や配当を支払いますが、総合課税として扱われるため、最大約55%の税金が発生します。

役員報酬の金額についても会社法で厳密に定められているため、個人の裁量で決められません。
法人の保有資金を移転するにはコストと手間がかかるので、資産の配分は慎重に行いましょう。

資産管理会社を設立すべき人の特徴

所得が一定の水準を超えると、法人化したほうが税制上有利になります。
ここでは、資産管理会社を活用したほうがよい人の特徴をご紹介します。

・株式投資で収益を得ている個人投資家
・資産運用・副業を行っている会社員
・相続税がかかると予想される資産家
・オーナー社長

個人の場合、所得税と住民税を合わせて最大55%もの税を負担しなければなりません。
しかし、法人に課される法人税の実効税率は、最大でも約34%。

大幅な節税効果が期待できるだけではなく、経費の範囲も広がり、社会保険の手厚い保障も得られるでしょう。自身の収入と照らし合わせて、資産管理会社の設立をぜひ検討してみてください。

資産管理会社を設立する手順

資産管理会社を設立するためには「設立登記」を行います。
会社を新しく設立する際の手順は、以下のとおりです。

【会社設立の流れ】
・会社設立時に必要な基本事項を決める
・会社の登記に必要な書類と資本金を用意する
・法務局へ提出する

それでは、順に確認していきましょう。

①会社設立時に必要な基本事項を決める

まずは、会社を立ち上げるときに必要な以下の5項目を決めます。

・社名
・本店所在地
・出資者
・資本金の額
・決算月

【社名】
「株式会社」や「合同会社」の前後に名称を入れて定めます。すでに商標権登録されている名称や、行政官庁の名前・複雑な記号は使えません。

【本店所在地】
法人の登録簿に記載される住所です。銀行からの融資を検討する場合「営業エリアに本店所在地が入っているかどうか」が基準になる場合もあります。

【出資者】
資産管理会社の所有者であり、最終意思決定者を指します。資産家本人の意向を尊重するためには、過半数は出資しておきましょう。なお、役員報酬を支払う親族は、出資者である必要はありません。

【資本金の額】
資本金は1円からできます。事業会社と違って、資本金の額は重視されていないため少額でも可能です。ただし、資本金が1,000万円以上の場合は、第一期目から消費税の課税対象となるため注意しましょう。

【決算月】
事業年度終了後、2ヶ月以内に決算書類の承認を受けて法人税の確定申告を行うため、事業の区切りを決めなければなりません。決算月はいつでもよいのですが、1〜3月は公認会計士や税理士の繁忙期と重なるので、避けたほうがよいでしょう。

②会社の登記に必要な書類と資本金を用意する

設立登記に必要な書類や資本金を準備しましょう。
あらかじめ用意するものは、以下の6つです。

・代表者印・社印・銀行印
・定款
・登記書類
・開業届
・就任承諾書
・出資金・会社設立費用

【代表者印・社印・銀行印】
法人を立ち上げる際には、法務局に登録する3種類の印鑑を準備しましょう。

【定款】
会社の基本的なルールを定めたものです。法務大臣が任命した公証人の認証を受けなければなりません。インターネットに掲載されている雛形をもとに作成することもできますが、必要に応じて司法書士に依頼しましょう。

【登記書類】
法務局へ提出する、資産管理会社の設立登記のための書類です。一般的には司法書士に依頼します。

【開業届】
個人が事業を起こした際に、税務署へ提出する書類です。「青色申告承認申請書」も合わせて提出すると、欠損金の繰越控除を受けられます。設立初年度は経費がかさみ赤字になることが多いため、届出をしておくと開業費として経費削減ができます。

【就任承諾書】
会社役員への就任を承諾した旨を証明する書類です。役員全員に、以下の内容を記入してもらいます。

・記入日
・本人の名前と住所
・「〇〇(会社の名称)の設立時取締役に選任されたので、その就任を承諾します」の文言

【出資金・会社設立費用】
法人の銀行口座を開設して資本金を振り込んだら、通帳コピーを法務局へ提出します。 設立費用も、別途準備しておきましょう。

③法務局へ提出する

登記申請書類を作成したら、法務局へ提出しましょう。1〜2週間ほどで、資産管理会社の登記が完了します。

まとめ

今回は、資産管理会社を設立するメリット・デメリットを解説しました。

かつては、資産家の節税・相続などを目的として設立されていた資産管理会社ですが、近年では個人投資家や副業サラリーマンなども設立することから、より注目されています。

法人化することで、節税・相続対策・事業継承などさまざまな効果を期待できるでしょう。一方で、コストや事務負担などデメリットがあることも念頭におかなければなりません。資産を多く所有している方や相続の悩みを抱えている方にとって、本記事がお役に立てると幸いです。

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